« 2011年11月 | トップページ | 2012年1月 »

2011年12月

2011年12月 1日 (木)

本気度を疑う核燃料サイクル撤退

 もんじゅをめぐって、行政刷新会議は「存続の是非を含め抜本的に見直すべきだ」と提言しています。本当にそうなのだろうか。本気度を疑ってしまいます。昨年の事業仕分けで凍結されたもの(例えば公務員宿舎)が解凍され、着工されようとしたのですから。来年度の「もんじゅ」関連予算215億円のうち22億円がムダと指摘されただけでした。残りの193億円は、もんじゅ関連として使われるのです。言っていることと、やっていることが正反対です。推進派は騒がない。その沈黙には「言うだけ言わせておけ」という含みがあるといわれています。

 この政策提案を受け、原発事故担当相は「一つの曲がり角に来ている。廃炉を含めた抜本的な対策が必要」との考えを示しました。

 その一方で、電気事業連合会は「核燃料サイクルは不退転の決意で取り組む」と述べています。

 更に、日本原撚は、原発事故担当相の見解に対し、「高速増殖炉(もんじゅ)の研究開発は国としてしっかり進めるべきだ」と反対しました。

 このように執着している「もんじゅ」とは何者でしょうか。

1 「もんじゅ」の目的

 原発がある限り、使用済み核燃料は増え続けます。これを保管している六ヶ所村の貯蔵量は90%を超え、新たに受け入れる余地はほとんどないと言われています。その結果、行き場を失った使用済み核燃料は各地の原発敷地内に保管され続けています。今度の福島原発事故で「保管プール」の存在が明らかになりました。その「保管プール」も残り30%程度で、あと6年弱で満杯になります。そのため、「保管プール」の設計容量を超えて使用済み核燃料をプールに保管しようと計画しています。(リラックキング)。過密状態となり、冷却機能が失われたときの危険度は更に大きくなります。

 このような事態を解消する手法として、核燃料サイクルという概念があります。これについて説明します。

 天然ウランは濃縮・加工されウラン燃料となります。原発はウラン燃料を消費して発電します。その発電によって燃やされた燃料(使用済み核燃料)は、六ヶ所村再処理工場で新たな燃料であるMOX燃料やプルトニウム燃料に加工されます。MOX燃料は福島原発でも使われていました。プルトニウム燃料は「もんじゅ」の燃料となります。更に、「もんじゅ」で使用済みとなった燃料は、再処理工場で再びプルトニウム燃料に再生されます。このループが半永久的に行なわれ、天然ウランの輸入は不要となるわけです。「夢の原子炉」となる皮算用でしたが、そのサイクルは六ヶ所村再処理工場と「もんじゅ」の事故で絶たれています。

2 外国における開発と撤退

 アメリカの場合

 1955 高速増殖炉(FBR1)が暴走し、炉心溶融する。

 1966 高速増殖炉(Eフェルミ1号)が炉心溶融する。

 1984 高速増殖炉の研究を中止し、全面的に断念する。

 イギリス、ドイツ、フランス、ロシアの場合

 全て重大事故を続発し、開発に失敗し断念した。

 「夢の原子炉」は「悪魔の原子炉」であった。

 日本の場合

 1985 「もんじゅ」の建設着工

 1995 出力5%で発電を開始したが、3ヶ月後に出力を40%に上昇したところ、冷却系配管からナトリウム(冷却材)が漏洩して火災事故が発生した。

 2010 「もんじゅ」の運転を再開したが、機器の一部が炉内に落下し運転を停止した。

 2025 実証炉、2050までに実用炉の計画を立てている。

3 日本における開発予算

 2010までにつぎ込んだ費用は1兆810億円にも上るといわれています。それだけつぎ込んでも完成の目途は立っていません。こんな状況で2050まで更に経費を投入するのでしょうか。外国の例を見ても明らかなように、失敗は目にみえています。

4 原発より危険なプルトニウム発電

 原子炉の冷却材はナトリウムで、水に触れれば爆発し、空気に触れれば火災を起こします。危険極まりない冷却材です。

 炉心を冷却するためのナトリウム配管と発電用タービンを回すための水蒸気配管は金属の壁1枚を隔てて熱交換を行います。そこの圧力差は130気圧にもなります。ナトリウムと水が接触すれば大爆発となり手の施しようがありません。 

 運転中の炉心温度(軽水炉では300℃)は500℃にもなリます。当然、ナトリウムの流れている配管は高温となります。運転時の配管は大きく熱膨張し、停止時は大きく熱収縮します。この膨張・収縮を吸収するため、配管は肉厚を薄く、複雑に曲がりくねっています。地震に対する強度は原発よりも弱く、地震に見舞われれば、配管は破断し、ナトリウムが漏れ火災や爆発を引き起こします。

  プルトニウムはウランの数十万倍もの毒性を持っています。再処理するより、そのまま処理するほうが毒性は少ないと言われています。 

 ここまで述べてきて、このような「もんじゅ」に何故こだわるのか、疑問が湧いてきます。何故でしょうか。

1 日本は使い道のないプルトニウムを持たないことを国際的に公約させられています。プルトニウムを処分するために、何が何でも「もんじゅ」を作ろうとしてます。

2 いつでも核兵器を作れるのだというアピール。(ものぐさ 核武装と原発)

3 諸般の状況からみて、プルトニウム発電の可能性がゼロであることは関係者の間では周知の事実でしょう。まだ見込みがあると考えているとしたら大ばか者です。そうであるとすれば、その理由の一つは天下り先の確保でしょうか。この関係者の老後のために、貴重な税金を今後もつぎ込んでいくのです。

 たったこれだけの理由で、国民は原発の恐怖におびえながら生活していかなければならないのでしょうか。

 消費税論議の前に、このようなムダ使いをなくして欲しいものです。

2011年12月 2日 (金)

浜岡原発 防波壁18m検証

 浜岡原発の津波対策として、中電は海抜18mの防波壁の工事に着工し、2012年12月に完成させると言っています。この防波壁で浜岡原発を津波から守ることができるのでしょうか。検証します。

 福島原発を襲った津波の映像は、今も目に焼きついています。まず津波の高さ等の定義をします(気象庁HP)。

 津波の高さ 津波がない場合の海岸線における潮位(平常潮位)から、津波によって海面が上昇したその高さの差を言います。

 遡上高    海岸から内陸へ津波がかけ上がる高さを言います。「遡上高」は気象庁から発表される「津波の高さ」と同程度から、高い場合には4倍程度までになることが知られています。

 津波において考慮しなければならないのは「津波の高さ」ではなく「遡上高」であることが分かります。そして、その「遡上高」は最大で4倍にもなリます。

 国、中電、過去の文献から津波の高さを調べてみます。

1 石橋克彦氏論文(原発震災)に対する科学技術庁原子力安全局の回答。

 津波による水位上昇は最大5m、満潮時と重なっても5.8mが妥当。海岸線に平行に10~15mの砂丘があり、安全性に問題ない。  1998.10.1

2 中電資料より  

 津波の「遡上高」は10m。18mの防波壁で津波は防げる。

3 日本地震学会(静岡市)  1498年の明応東海地震による遡上高は15~20m。 2011.11  

4 東海・東南海・南海地震の連動性評価研究プロジェクト  十数分~数十分の時間遅れを持って南海、東南海、東海地震が連動発生した場合には、浜岡原発付近の想定津波高さは11m程度に達する。 2009.5

 検証

 原子力安全局が言う水位上昇は、「津波の高さ」を指すのでしょうか。それとも「遡上高」を指すのでしょうか。あいまいな表現ですが、ここでは「津波の高さ」と解釈します。原子力安全局が予想する「津波の高さ」は6m弱です。気象庁が言うように、4倍を「津波の高さ」に乗ずると、「遡上高」は24mとなります。これでは、18mの防波壁は役に立ちません。

 中電は資料で「遡上高」は10mであり、18mの防波壁で津波は防げると言っています。明応東海地震による遡上高15~20mと大幅に違います。明応東海地震を考慮すれば18mの防波壁で津波を防ぐことができません。 

 日本地震学会(静岡市)の言う明応東海地震による遡上高は15~20mです。18mの防波壁は役に立ちません。

 東海・東南海・南海地震の連動性評価研究プロジェクトでは「津波の高さ」は11mとしています。これに気象庁が言う4倍を乗ずると、「遡上高」は44mになります。話になりません。  

 中電は上記の矛盾を感じているのでしょうか。その他、敷地内の対策として、防水構造扉の二重化や水密扉による津波の侵入防止を図っています。福島原発の津波による破壊状況を見れば、この対策は子供だましのように感じます。

 その他に、中電は津波の到達を20分と想定しています。県が予想する5分(第3次地震被害想定より)よりも4倍も遅く到達する前提で津波対策を進めています。県も自治体も「5分と言わずできるだけ早く」との目標で訓練や防災対策にあたっています。自治体の避難対応に比べ中電の対応は随分のんびりしています。到達時間を遅くすれば、それほど迅速な対応が必要ではありません。その分、津波対策にかける費用も安くなるのでしょう。

 「遡上高」も津波到達時間も最悪の状態を想定して、対策を立てて欲しいものです。これで「想定外」といわれればたまったものではありません。

 

 

2011年12月 3日 (土)

原発輸出

 原発の海外輸出に必要な原子力協定が国会承認される見通しとなりました。原発輸出に反対は65%にも及び賛成とする人の30%を2倍も超えているのに何故、国民を無視した政策をするのでしょうか。

 その理由は、「国際的な信用力を確保するためだ」とか、「インフラ輸出という民主党の成長戦略の一環だ」とも言われています。これが国益を守るということなのでしょうか。また、国内向けの「脱原発」と海外輸出は矛盾しています。危険なものであれば、何故輸出するのでしょうか。もしかしたら国内向け「脱原発」は噓かもしれません。日本が輸出しなければ他の国が輸出する。だから日本が輸出するのだとも言っています。それに海外での原発事故は関係ないと考えているのでしょうか。

 ヨルダンへの原発輸出について、建設予定地が内陸の乾燥地帯で冷却水の確保が不安だといわれています。このようなことが後で明らかになるなど、お粗末きわまりありません。調査不足です。原発事故が起きたらどのように補償するのでしょうか。

 日本エネルギー経済研究所顧問は、原発は温暖化防止となり、再生エネルギーは電気料金のコストアップを招くと述べています。ウラン採掘、核燃料や原発製造、廃棄物処理、廃炉処理、損害賠償費を考慮しても、温暖化を防止し、原発コストは安いといえるでしょうか。福島原発事故以後、国民はそんなことはないだろうと思い始めました。原発の安全神話も崩れてしまいました。それどころか、原発の危険性を知っていたにも関わらず、既得権益のみを追求し、原発の推進を押し進めてきました。

 福島原発事故がなかったかのように、同氏は原発輸出を匂わせています。安全性を最高水準に高め、それを前提にして原発輸出を考えればよいとも述べています。新安全神話の登場です。電力不足が深刻化しているアジアでは原子力発電の必要性が高まっている。アジア輸出は国策に合致する。同氏は以上のような理屈で原発輸出を肯定しています。

 最後に、同氏は、国が最終的なリスクを執って進める必要があるとも述べています。絶対安全であれば、国の補償などいりません。民間で勝手に進めてください。

 しかし、福島原発事故は、無様な安全管理システムを国民の前に露呈しました。更に、事故の収束もおぼつかなく、廃炉には、30年以上も必要と言われています。廃炉に関する技術も確立されておらず、今後の研究課題となります。

 九州大学副学長は、対外補償問題について危惧を呈しています。私は、こんなリスクが隠されていることをはじめて知り驚いています。原発の運転管理や人材育成、燃料供給や廃棄物処理までを請け負う「フルパッケージ」型原発輸出であると、同氏は言っています。民間企業だけではリスクが大きすぎるので、官民一体の輸出であり、万が一事故があった場合、賠償金全てが、国民の税金となるそうです。

 スイスの教授は「スイスで福島原発並みの事故が起きれば、その賠償額は366兆円に上る」と言っています。日本の借金の1/3です。こんな契約内容を、国民は認めません。これが国益にかなうのでしょうか。国は福島原発事故の損害賠償額は5兆円といっています。おとなしい日本国民はこの程度で納得してしまうのでしょうか。5兆円ありきの除染や賠償費用となっています。外国で事故が起きれば5兆円程度で済むでしょうか。外交力の劣る政府です。日本がつぶれてしまいます。原子力産業やそれに関連する企業は利益を得るでしょうが、事故の担保は、国民の税金です。どこまでバカにされているのでしょうか。

 どのような契約が締結されているのか、万が一の損害賠償額はいくらになるのか、事故後の対外信用はどうなるのか、国民に明らかにしてくれませんか。国民は知る権利があります。

2011年12月 5日 (月)

東電原発事故中間報告

 東電は、中間報告として、福島原発事故の調査結果を公表しました。東電が社内で調査報告書作成し、第三者で構成された「社外の事故調査検証委員会」が検証してから、この報告書は公表されました。そのような手続きからすれば、この報告書は一定の客観性を持ったものと受け取れます。それによれば、「地震による配管など主要設備の損傷を改めて否定し、想定外の津波で全電源が喪失し、原子炉を冷却できなかったことが事故の原因である」と結論付けられています。また、「国の審査を受けて、運転を進めてきた」とも述べています。責任はないといっているのでしょうか。専門家の主張する津波情報、地震情報を真摯にうけて対応してこなかった結果が福島原発事故ではなかったのでしょうか。

 まず、頭をよぎったのは、正直に調査した結果の中間報告なのであろうかと思いました。案の定、東電が従来主張してきたことの繰り返しでした。正直期待しなかったのですが、案の定でした。

 東電は福島原発の事故時の操作手順書のほとんどを黒塗りして国会の委員会に提出しました。過去の隠蔽事故もあります。このような東電から提出された中間報告書を本当に信用できるでしょうか。

 「九電やらせメール問題」では、郷原委員長による「第三者委員会の報告書」を無視し、九電は独自見解に基づいて経産省に報告書を提出しました。九電に都合の良い部分は採用し、不都合な部分は無視するならば、中立な「第三者委員会」など不要です。九電は、郷原氏など委員長にしたことを後悔したのでは。もし、郷原氏が九電に都合の良い報告書を提出していたなら、このような問題は表面化しませんでした。九電を評価するとすれば、郷原氏を委員長にしたことです。

 以上のような事項を思い浮かべると、東電は自己に都合の良い報告書を作り上げ、検証委員会のお墨付きをもらい、この報告書の正当性を世間にアピールすることが目的だったのではないかと勘ぐってしまいます。委員会メンバーは東電が選定したのでしょう。

 そこで、東電のHPに記載されている中間報告書をかなり荒く拾い読みしてみました。検証委員会は、「調査や検証の方法が適切であるか」、「事実関係について客観的な証拠などに基づいて調査されているか」、「調査内容が妥当であるか」、「第三者に対してわかりやすく説明しているか」を主な視点として、東電の調査内容全般について、計4回の検証を行なっています。以下、見てみましょう。

 報告書には、「地震発生から津波到達までの発電所の運転データ等の各種記録の評価、地震の観測記録を用いた設備の揺れ方の解析、1~4号機と同規模の地震動が確認された5、6号機を含め可能な範囲での設備の目視による確認を行なった」との記述があります。

 それにより、「地震による重要機器への影響を伺わせる事実はない」と結論付けています。

 更に、「3/11の14時52分から15時30分頃にかけて、圧力・水位共に上昇・下降を3回繰り返していた理由については、原子炉圧力容器の急激な温度変化によって、容器の健全性を損なうおそれを避けるために、1時間あたりの温度の下降を55℃以内に抑えることを定めた操作手順書を遵守するため、運転員が非常用復水器を制御して運転していた結果である。」と説明しています。「手順書に従った上記操作は妥当」と結論付けています。

 そして、「津波到達直後の電源喪失によって復水器の弁が閉まったために、原子炉内の蒸気を冷やす機能を喪失した」と述べています。

 この点に関して、田中氏(元原子炉製造技術者)は、「原子炉の緊急停止直後は、核分裂生成物による崩壊熱により、圧力が上昇するときだ。そのとき圧力が低かったとすれば、どこからか、水か蒸気が流出し、圧力が抜けていたと考えることができる。」と述べています。東電の中間報告書は、水位と圧力の上昇・下降の理由を説明しているだけで、田中氏の危惧している事項に言及していません。14時52分から15時30分頃の津波到達前に、この現象はおきています。地震による破壊があったかなかったかの大きな争点であると思います。

 地震発生は14時46分、津波到達は15時42分です。その間の全データを詳細に解析すれば、地震による破壊状態が明確になるのではないでしょうか。東電は中間報告において地震直後からの生データを提供しています。

 特に、反原発を主張している専門家は、「中間報告添付資料」を参考にして、再検証してくれませんか。東電が選定した委員の検証では素直に認めることができません。

 そういえば、東電は「炉心溶融の結果、格納容器下部にまで燃料が落下し、コンクリートを溶解し、鉄製の容器本体35cmまでに迫っていた」とするシミュレーション結果を公表しました。しかし、格納容器の下部は目視していないわけです。限られたデータを基にした結果であるに過ぎません。シミュレーションで用いたデータを公開してください。各研究者が評価すれば、違った結果になるかもしれません。自己に都合の良いデータのみを採用しているのではないかと、私個人は疑ってしまいます。

 中間報告書は、「地震による配管」など主要設備の損傷を改めて否定し、想定外の津波で全電源が喪失し、原子炉を冷却できなかったことが事故の原因である。原因は未曽有の津波である。」と結論付けています。

 真の原因究明は、国会や政府、民間の事故調査委員会に期待するしかありません。

 特に、事故・調査検証委員会(畑中洋太郎委員長)に期待しています。菅元首相は事故調査委員会について、「独立性、公開制、包括性を基本とし、委員には過去の関係者を入れず、国内外に事実を公開し、技術面だけではなく、制度や組織などが事故にどのような影響を及ぼしたのか包括的に検討してもらう」と述べていました。

2011年12月 9日 (金)

原発コスト 10円/kw・h その1

 政府の「コスト等検証委員会」は原発による発電コストを10円程度と試算し、火力発電所並みであることを公表しました。従来原子力発電は最も安いといっていたことを思えば大きな進歩です。

 報道によれば、事故賠償、追加安全対策、核燃料サイクル開発費、立地コストなどがコスト見直し要因として含まれているようです。

 しかし、この算定にはいくつかの問題を含んでいるようです。「コスト等検証委員会」は計六回開催されています。最終的にどうなっているのか判りませんが、第一回議事要旨より興味深い点を拾い読みしてみます。この委員会には、大島堅一立命館大学教授が参加しています。心強く感じます。

1 中間処理施設の整備費

 中間貯蔵とか最終処分といったような、国全体としての政策が決まらないとコストの計算ができないようなものについては、この中には盛り込んでいないということなっております。

2 除染費用

 この試算は、賠償紛争審査会の中間指針に基づいて計算しておりますので、あくまで財物価値の喪失に対する賠償額は財物価値を上限とする。つまり、例えば1億円の価値を持つ森林があったとすれば、それに対する賠償は1億円を上限とすると計算しております。したがいまして、例えばその森林を除染するときに2億円かかりましたという場合については、その分についてはこの試算には含まれておりません。

 財貨価値以上は発電コストに含めないということでしょう。更に、財貨価値を固定資産税評価額とすれば、土地の取引価格よりもかなり低額になってしまいます。間違っているかも知れません。(ものぐさ)

3 原価算定方法

 例えば再処理のコストが7,000億円かかるのか、2兆2,000 億円かかるのかわからないという状況のときに、かかるかどうかわからないようなコストを原価に織り込むわけにはいかないので、比較的固めの数字、この場合なら7,000 億円を使って料金をまず算定し、実際にもっとかかることが判明してから修正するという発想が料金原価算定の大原則だと思います。本当に7,000 億ですむのか、2兆2,000 億かかるのかわからないという不確実な状況であるならば、この幅でコストが出てくる可能性があることをきちんと示すことが誠実な態度だと思います。

4 電気事業者の持つプラントごとのデータ

 単にモデルで計算したり、あるいは推測したりということではなくて、事業者が持っているリアルなデータ踏まえて現実性のあるコスト計算になるようにしていただければと思っております。普通の事業者、自由競争の世界での事業者なら経営情報ということで許される情報でも、総括原価と地域独占で守られた独占事業者が、そんなものを経営情報だと言って社会に出さないことは許されるのか。

5 事業者にとってのコストなのか、国民にとってのコストなのか

 国民にとってのコストか

 国家から、あるいは自治体から、本来事業者が技術開発しなければならないところを国家が肩代わりしていたり、あるいは立地対策、特に原子力は多いと思いますが、立地対策を国家が自ら肩代わりするところがあって、そこはやはり国民にとっては負担しているコストです。

 事業者にとってのコストか

 社会的なコストで比較をするのは当然。この電源を推進することは社会的にどれだけのコストかを示し、それをもとに選択をする。

 以上、興味深い議事録です。 

 その他、私事の見解を付け加えます。検証委員会に先立って、内閣府原子力委員会は事故コストを最大で1.6円/kw・hとしています(ものぐさ 原発事故コスト 1.6円)。原発1基につき、500年に1度の重大事故を想定して1.6円としました。

 これに対して、検証委員会は事故コストを0.5円/kw・h と見積もっています。原発1基につき2000年に1度、50基ある国内では40年に1度の重大事故を想定しています。これは妥当でしょうか。地震の発生頻度が増加しています。原発は集中して立地しています。福島原発事故同様、複数が同時に重大事故事故を起こす可能性は十分あります。現実問題として、30年で3基の原発が重大事故に見舞われました。10年に1度の重大事故です。そうすると、事故コストは1.5円/kw・hとなります。

 拾い読みしたので、整合性が取れていないかも知れません。このコストの問題は重要であると感じています。今後の、検証を注視していかなければなりません。

2011年12月10日 (土)

原発コスト 10円/kw・h その2

 政府の「コスト等検証委員会」は原発による発電コストを10円程度と試算し、火力発電所並みであることを公表しました。従来原子力発電は最も安いと言っていたことを思えば大きな進歩です。

 報道によれば、事故賠償、追加安全対策、核燃料サイクル開発費、立地コストなどがコスト見直し要因として含まれています。

 しかし、この算定にはいくつかの問題を含んでいるようです。「コスト等検証委員会」は計六回開催されています。最終的にどうなっているのか判りませんが、第一回議事要旨から興味深い点を抜粋しました。この委員会には、大島堅一立命館大学教授が参加しています。心強く感じます。

 原発コスト計算に当たっての大島委員の要望事項を記載します。

1 理想的条件を前提にした計算。

 理想的な条件(例えば実績がない長期運転、非常に高い設備利用率、重大事故は起きない、高速増殖炉サイクルを枠外に置いて計算等)によるものは最低コストである。現実的な状況を考慮した計算をすること。

 特に費用がかかる再処理について下記費用を追加すること。

 ・ 再処理施設の稼働状況にみあった想定とすること。

 ・ 再処理施設で重大事故が起こった場合の費用を含めること。

 ・ 日本の原子力政策(全量再処理を前提としている)にもとづき、全量再処理した場合のコスト計算を行うこと。

 ・ MOX燃料、使用済燃料の処理・処分費用。

 ・ ウラン廃棄物の処理・処分費用。

 ・ 高速増殖炉サイクルの費用

2 安全神話を前提としたコストに事故コストを追加すること。

 事故収束費用。損害賠償費用(少なくとも中間指針に含まれている全ての項目が計算される必要がある)。 除染費用(周辺地域)。廃炉費用、原状回復費用。

 保険市場で評価した場合の保険料率(kWhあたり)と事故コストを参考にすること。

3 原子力施設以外の安全対策コストを追加すること。

 ・ 立地上の安全性の確保(地震や津波が起きない地点に[新規]立地、ないしは建て替え。)に要するコスト。

 ・ シビアアクシデント対策、周辺施設との隔離、防災対策コスト。

 ・ 福島の事故を見ると、60km 圏までかなりの濃度で飛んでいる。それに対する防災対策には、防災訓練も必要になってくる。そうした多重防護に関わる追加的なコスト。

 以上です。

 コスト計算の結果からも、原発の是非が判断されなければなりません。福島原発の事故及びその被害を真摯に受け止めたコスト計算をすべきです。とても割が合わないから、こういうことは起きないなど、新たな安全神話を持ち出してコスト計算をすべきではありません。

 次回は、第二回の「コスト等検証委員会」を勉強してみるつもりです。興味のある方は原文を読んでみてください。何か新しい発見があると思います。

2011年12月11日 (日)

脱原発 かっこいい

 12/16にも、政府は福島原発の冷温停止を宣言するようです。一方において、二本松市渋川地区の米から780ベクレルのセシウムが検出されたり、30年を超える廃炉作業は経験したことのない未知の領域に挑戦しなければならず、原子力損害賠償紛争センターには300件の事案が持ち込まれ、粉ミルクからセシウムが検出されたり、汚染水が漏れ出したり等、数々の問題が顕在化し、発生しつつあります。食や健康への不安はこれからも続いていきます。

 原発輸出を具体化する原子力協定は衆議院を通過しました。採決では、公明、共産、社民、みんなの党が反対したほか、民主党からは1人が反対し、約15人が退席したといいます。ちなみに、各党の議席数は公明21人、共産9人、社民6人、みんな5人、民主302人です。民主党議員の実に286人が原子力協定に賛成したことになります。286人は原発推進派なのでしょうか。それとも、誰かの顔をたてて、賛成に回っているのでしょうか。前者であれば驚きであり、後者であれば情けないですね。いずれにしても、議員からは原発に関する賛否の声が聞こえてきません。沈黙しているのでしょうか。虎視眈々と世論を見つめているのでしょうか。

 政府機関である「エネルギー調査委員会」では、減原発への賛否が噴出し、結論は次回に持ち越しです。半分程度が、原発維持または推進のようですね。

 政府の「コスト等検証委員会」は原発による発電コストを10円程度と試算し、火力発電所並みであることを公表しました。従来、原子力発電は最も安いといっていたことを思えば大きな進歩です。しかし、この算定にはいくつかの問題が含まれているようです(ものぐさ 原発コスト10円/kw・h その1 その2)。「経営・財務調査委員会」は、スリーマイル島原発事故の経験を踏まえ、廃炉費用は少なくとも1兆5000億円に上ると見ています。東電幹部は数兆円とも言っています。民間のシンクタンクは10年間で最大20兆円になると推計しています。年間国家税収の半分にもなります。

 20兆円の廃炉費用といわれてもなお、国のリーダたちは原発を推進して行くのでしょうか。

 一方、原電の元役員は12年間富岡町に住み、福島原発事故に見舞われました。事故が起きるまで原発推進者でした。元役員は、避難生活を振り返って、「避難時の貧しい食料事情、行政からの情報不足、誠意のない東電の賠償対応、元の生活に戻れるか判らない不安等」と向き合ううちに原発への考えを変えていったと言います。無念を書き綴った本の出版後、原発OBから「よくぞ書いてくれた」との手紙をもらったとも言います。そしてこの経験をを発信し続けていくとも言っています。

 この元役員の原発への変化を、私は遅きに失したとは思っていません。また、元役員を責める気にもなりません。しいて言えば、勇気をもってよくぞ言ってくれたとの思いです。願わくば、原発への疑念が起きた時点で世に発信して欲しかった。誤解を覚悟で言います。元役員は原発事故に遭遇して、悲惨な現実に直面して初めて反原発を言い出しました。結果的にあとの祭りです。人間は弱いものです。浜岡原発の近くに住んでいる私も、今回の福島原発事故で初めて原発の恐ろしさを知りました。恐ろしいものだと気がついた時点で考えを変える勇気を持ちたいものです。

 全国54基も在る原発立地自治体の首長、電力会社役員、御用学者、経産省官僚、経団連、原発メーカ役員、報道関係者、政治家に言います。わが身や家族が原発事故に遭遇したことに思いを巡らしてみてください。違った結論になりませんか。わが身や家族は原発から遠く離れているから、他人事だと思っているとしたら悲しいですね。

 今まで声を出せないでいた原発OBもたくさんいるでしょう。自ら原発を推進してきた反省も込めて声を発して欲しいものです。それが原発を進めてきたものの償いのような気がします。

 牧之原市長は超党派国会議員の勉強会で決議に至った経緯や、原発周辺自治体が抱える不安について講演をしました。市長も浜岡原発から3kmの距離に住み、非常な危機感を持ったといっています。

 元役員の不安や恐れも、牧之原市長の心配も、福島原発事故に遭遇した住民の不安や恐れそのものです。 

 廃炉に30年もかかる現実、今尚続く放射能汚染と健康に対する不安、元役員等の悔恨、牧之原市議会の永久停止の決議等、脱原発の流れに竿をさすことはできないと感じています。

 私は、永きに渡って反原発を唱えてきた関係者を立派だと思い始め、「かっこいい」とも感じるようになりました。なぜなら、わが身を犠牲(昇進もなく、白眼視され、嫌がらせをされてきたといわれています)にしてまで国民のために行動してきたのですから。企業も、首長も、タレントも、コメンテータも、学者も、国民も「クリーンエネルギー、脱原発」を唱え、それが、「かっこいい」と映るような雰囲気を作っていきたいものです。

 原発事故を反省せず、尚推進しようとしている人達の原発推進に関する「哲学」は感じられますか。その哲学を堂々と述べていますか。私は「かっこわるい」と感じます。

2011年12月17日 (土)

原発コスト 8.9円/kw・hは目くらまし

 報道によれば、「コスト等検証委員会」は原発による発電コストを8.9円/kw・hと算定しました。何だ、従来よりも高くなったが、化石燃料と同程度ではないかとの感想を持ちました。

 その反面、本当だろうかと思いました。

 発電コストには大規模な除染費用は含まれていないといいます。

 廃炉には40年以上もかかります。天文学的な費用になるでしょう。

 コスト等検証委員会の報告書を見てみましょう。

 40年に一基の原発事故が起きることを想定して、損害賠償や廃炉費用を5.8兆円と見積もりました。事故費用0.5円/kw・h、自治体への立地費用1.1円/kw・h等を04年の試算に加算して、今回の試算は算出されました。

 また、損害賠償1兆円につき、発電コストは0.1円/kw・h増加し、核燃料サイクルをやめれば0.4円/kw・h減少するとも言っています。

 「コスト等検証委員会」は、発電コストのみならず、事故リスク 対応費用やCO2対策費用、政策経費などのいわゆる社会的費用も加味した徹底的な検証を行 ったと言っています。

 原発コストの徹底検証について、「コスト等検証委員会」の報告書より抜粋します。 

 割引率3%、稼働率70%、稼動年数40年を前提として試算されています。計算式及び各費用額は以下となります。

 {資本費+運転維持費+燃料費+社会的費用(CO2対策費用+事故リスク対応費用+政策経費)}÷発電電力量(kw・h)=1kw・h当りの原発コスト

1 04年における原発コスト試算値   5.9円/kw・h

 この数値に下記の増加分(ピンク色)を加算します。

2 資本費  (減価償却費、固定資産税、水利使用料、 設備の廃棄 費用の合計)

 建設費の上昇で2.5円/kw・h(04年より、0.2円/kw・h上昇)となる。

3 運転維持費  (人件費、修繕費、諸費、業務分担費の合計)

 修繕費、人件費の上昇で3.1円/kw・h(04年より、1.0円/kw・h上昇)となる。

4 核燃料サイクル費  (核燃料サイクル費はフロントエンドとバックエンドの合計値となります。フロントエンドはウラン燃料とMOX燃料の合計値であり、バックエンドは再処理、中間貯蔵、直接処分、高レベル廃棄物処理の合計値です)

 この部分は原子力委員会(技術等小委員会)に試算を依頼しました。下記のモデルごとに原発コストは異なります。

・ 再処理モデル 使用済核燃料は全て3年後に再処理をするモデル

 ウラン燃料0.7円、MOX燃料0.2円、再処理1.0円、高レベル廃棄物処理0.1円で、合計 2.0円/kw・hとなる。

・ 現状モデル 使用済核燃料の半分は20年貯蔵後に再処理をし、残りの半分は50年貯蔵後に再処理を行うモデル 

 ウラン燃料0.8円、MOX燃料0.1円、再処理0.5円で、合計 1.4円/kw・h(04年より0.1円/kw・h減少)となる。

・ 直接処分モデル 使用済核燃料は全て、54年後に直接処分をするモデ ル 

 ウラン燃料0.8円、中間貯蔵0.1円、直接処分0.1円で、合計 1.0円/kw・hとなる。

5 福島原発事故をうけた追加的安全対策

 緊急安全対策、非常用発電設備、原発と再処理施の外部電源の信頼性確保、シビアアクシデント対応、各社独自の対策。(ものぐさ)海江田元大臣が玄海原発の再稼動を許可し、世間の反発をうけた対策がこれです。1プラント当り194億円と見積もり、合計 0.2円/kw・h上昇する。

6 政策経費 (小規模電源を除く)・広告費・寄付金(他の電源とも共通)

 発電事業者が発電のために負担する 費用ではないが、税金で賄われる政策経費のうち電源ごとに発電に必要と考えられる社会的経費。

 立地交付金や研究開発などで、1.1円/kw・h上昇する。広告費・寄付金について、今回の試算では算出していない。

7 事故リスクへの対応費用

 将来発生するかもしれない事故に対応 するための費用。原子力委員会(技術等小委員会)に試算を依頼しました。

 試算の時点で明らかな費用として、東電福島第一原発事故での追加的な廃炉費用が約 1.2兆円、損害賠償費用が一 過性のもとして約 2.6兆円、初年度分が約 1.0兆円、2年度以降の損害(単 年度分)が約0.9兆円と試算しています。この費用をモデルプラントベースに補正して約5兆円としたが、検証委員会ではより精査して5.8兆円としました。 総発電量を2,882億kw・hとし、0.5円/kw・hとなります。尚、損害額が1兆円増加すれば、事故リスク費用は0.1円/kw・h増加し、10兆円で0.9円/kw・h、20兆円で1.7円/kw・hとなります。

 環境省は除染対策費用を1.1兆円と見積もっています。更に、土地、建物等の価値(財物価値)の喪失、または減少を5,707億円と見積もっています。実態に合わせた時価を基準とすべきとの意見もあったが、固定資産評価額を基準に算定しました。

 コスト等検証委員会のまとめ。

 事故費用が確定していないため、原発コスト8.9円/kw・hは最低価格である。事故費用が1兆円増加するたびに、0.1円事故リスク対応費用は上昇する。損害額が10兆円なら原発コストは9.3円/kw・h、20兆円なら10.2円/kw・hとなります。

 現時点で推計不能とされている費目及び現時点で含まれていないことが明らかな費用は以下のとおり。

・ 生命・身体的損害

・ 政府による航行危険区域及び飛行禁止区域の設定に係る損害など政府指示にかかる損害

・ 地方公共団体等の財産的損害

・ 高濃度汚染地域対策費用

・ 除染により生ずる廃棄物等の中間貯蔵施設整備費用

・ 最終処分関係費用

 判らないなりに勉強してみて、結構良心的な検証委員会だなと感じました。ピンク部を合計すると、8.8円/kw・hとなります。なんとなく、算出根拠の内訳が見えてきたようです。やれやれ。(ものぐさ)。

 それでは、各費用の妥当性について検証します。

1 環境省は除染対策費用として1.1兆円を見積もっています。除染費用の上限を固定資産税評価額とし、それ以上の除染費用は原発コストに含めていません。固定資産税評価額は、通常の売買価格に比べてかなり低いと聞いています。住民のことを考えれば、いくら費用がかかっても徹底的に除染すべきです。民間報道によれば、最も費用が大きい広域の除染費用が含まれていないとも聞いています。識者によれば、除染費用は28兆円にもなり、それだけで発電コストは12~16円/kw・h増加するようです。それを加えれば、原発コストは21.3円/kw・hにもなるそうです。

2 追加的な廃炉費用を1.2兆円と見積もっています。民間シンクタンクでは10年間で20兆円と見ています。廃炉に40年もかかります。天文学的な費用になるのではないでしょうか。

3 現時点で推計不能とされている費目及び現時点で含まれていないことが明らかな費用もあります。これについてもおおよその費用を見積もってください。

4 原発事故は40年に1基として、原発コストを計算しています。40年で4基の事故がおきました。10年で1基として計算すべきです。

 このような不正確な部分を加味した上で、幅を持たせた原発コストを算出しなければ検証委員会の存在価値はありません。この幅を持った数値を元にエネルギー計画が審議されなければなりません。含まれていない費用が、片隅に申し訳程度に書かれているだけです。

 更に、核燃料サイクル費用と事故リスクへの対応費用は原子力委員会(技術等小委員会)に丸投げされています。各委員会を経由してくるたびに、本質がぼけてくるといわれています。コスト等検証委員会は「核燃料サイクル費用と事故リスクへの対応費用」について、責任を持たないのでしょうか。

 検証委員会は、細かいところ(判っているところ)はきめ細かく算出しているようですが、大きな費用が予想されるところは除外しています。8.9.円/kw・hのみが一人歩きしそうです。注意しましょう。

 電事連会長は「他電源と比べて遜色ないことが示された。原発の経済的優位性は変わらない。仮に損害が20兆円としても遜色ないといえるのではないか。」と言っています。

 推進派の本音はこんなところでしょう。コスト等検証委員会はデキレースなのでしょうか。

 

2011年12月21日 (水)

「冷温停止状態」と「梅もどき」

 原子炉が「冷温停止状態」になったとして、政府は12/16にステップ2の達成を宣言しました。

 健全な圧力容器が100℃以下に冷却された状態が「冷温停止」である。専門家はこのように定義しています。メルトダウンで燃料の一部が圧力容器から格納容器に溶け落ちた福島原発に「冷温停止」を適用することに、専門家は疑問を呈しています。

 専門家の言う「冷温停止」とはどんな状態なのでしょうか。

1 原子炉停止後の圧力容器内の水温が100℃未満まで冷えて安定している状態。放射性物質が放出していない。

2 「圧力容器を開けても放射物質が放出されない状態である」とも九大教授は言っています。

 当然、圧力容器内部は水で満たされ、均一な温度を保ち、圧力容器内面も核燃料も100℃未満です。また、圧力容器は密閉されており、放射性物質は外部に漏れていません。このような状況を専門家は「冷温停止」と言っていたのです。

 それでは、政府の言っている「冷温停止状態」とは何でしょうか。

 「圧力容器底部の温度が100℃以下」かつ、「敷地境界での被曝線量が1ミリシーベルト未満」のクリアを、政府は「冷温停止状態」と定義しています。更に、放射性物質の放出量が管理・抑制されていることをステップ2の条件にも上げています。しかし、放出量は9/1~15時点で2億ベクレル/時、10/3~13時点で1億ベクレル/時、11/1~12/6時点で0.6億ベクレル/時と推移し、ここ1ヶ月は減少していません。

 「冷温停止状態」と本来の「冷温停止」の定義は、このように異なっています。更に詳しく見ていきましょう。

 1~3号機はメルトスルーし、核燃料は格納容器下部にまで落下しています。当然、圧力容器下部には穴が開き、圧力容器内部に冷却水は存在していないでしょう。圧力容器下部の温度といっても、その部分の空気温度を計測しているに過ぎません。そして、格納容器下部の温度は測定できていません。100℃以上となり沸騰しているかも知れません。

 格納容器は破壊され、汚染水は建屋内にたまり続けています。地下水に侵入しているかもしれません。

 事故当時に比べ、放射性物質の放出量は大幅に減少したとはいえ、0.6億ベクレル/時程度放出しています。放出量が管理・抑制されているのではなく、たまたま、敷地境界で1ミリシーベルト以下になっているに過ぎないのかも知れません。

 九大教授は次のように言っています。

 冷温停止状態であるといっても、原子炉の状態が好転したわけでも、健全な原子炉と同等の安全性を確保できたわけでもない。潜在する危険性が見えにくく、国民に誤解を与える。「冷やす」、「閉じ込める」機能がいまだ喪失している。燃料がどの程度冷やせているか不明で「止める」も完璧ではない。余震で水と燃料の構成が変われば「再臨界」の可能性もゼロではない。

 以上から、「冷温停止状態」は「冷温停止」と大きく異なります。圧力容器または格納容器の穴の開いた箇所を塞ぎ、放射性物質を閉じ込め、水を循環して冷却水、容器、核燃料の温度を100℃未満にして、初めて本来の「冷温停止」といえるのでしょう。

 原子炉が「冷温停止」し、住民が被曝しないことが帰宅条件の1つになっています。住民を危険な状態におくことはできません。その意味でも、「冷温停止」の定義を明確にすべきです。

 政府はステップ2を達成したように見せたかったのでしょう。そこで政府は、止むを得ず、本来の「冷温停止」という定義を変えてしまいました。そして「冷温停止状態」といった新造語を作ったのでしょうか。

 「梅もどき」という植物があります。決して「梅」ではありません。梅はバラ科、落葉樹、梅干として食用に供されます。「梅もどきは」モチノキ科、落葉樹、赤い実は観賞用です。「冷温停止もどき」というのが正しいでしょう。

 政府は、原発問題への世論の高まりを「冷温停止」にしたいのでしょうか。一旦、噓をつくと、その噓を隠すために噓を更に重ねてしまいます。我々国民にも、このような経験が少なからずあります。そして後で「しまった」と後悔します。今、国民の政府への信頼は大きく崩れています。真正面から問題に取り組まず、小手先の対応で、言葉遊びに終始しています。正直に実態を把握・説明し、その結果を国民に任せるしかないでしょう。野田首相は「不退転の決意」とよく言っています。指導力とは「決断力」と「説得力」だと言われています。野田首相は「説得力」に欠けていると感じます。何事も決まりません。説得するためには、誤魔化しがあってはいけません。正直でなくてはいけません。

 

2011年12月24日 (土)

いいねー 都内発電 600万kw

 東京都は、2020年までに都内の発電能力を600万kwに倍増させる方針であると発表しました。その内訳は、天然ガス(LNG)発電所(100万kw)の新設、コジェネレーションシステム(50万kw)、インフラファンドによる発電所(50万kw)等です。これは100万kw級の原発6基分に相当します。

 「美樹工業」は、つくば市に「つくばメガソーラー発電所(1,500kw)を建設し、来年7月に売電を開始するとしています。敷地は2万平方メートルで、500世帯分を発電するといいます。

 神奈川県は敷地3万平方メートルにメガソーラー発電所(2,000kw)を建設し、平成25年に発電を開始するといいます。

 ソフトバンク子会社「SBエナジー」は苫小牧の工業団地の未利用地480万平方メートルに国内最大のメガソーラー発電所(34万kw)を来年にも着工するといいます。これは、一般家庭10万世帯分の電力を賄え、将来的には1,000平方メートルに拡張するともいいます。

 そのほか、ソフトバンクは、800億円を投じ国内10ヶ所以上にメガソーラー発電所を建設する構想を持ち、35道府県と協議会をつくて候補地を選定しています。

ちなみに、1万平方キロメートルの敷地に太陽光パネルを設置(パネル面積の合計は、敷地面積の1/5)すれば原発での発電量をカバーできるといいます。その面積は日本における荒地の3/4程度に相当します。

 分散型小規模発電を推進するためには、電気料金の買取り価格の設定が大きく左右します。発電事業者が事業を継続できる程度の買取り金額でなくてはなりません。電力会社は独占状態を維持するために、買い取り価格をできるだけ低く抑え、小規模発電事業が成り立たないようにするでしょう。固定価格買取り料金を決定する審議会の経過を注視していく必要があります。

 東京都の発表に先立って、橋下大阪市長と石原東京都知事は、関西電力と東京電力に対し歩調を合わせて「発送電分離」の株主提案をすることで一致しました。

 電力コストを下げるためには、「発送電分離」が避けて通れないといいます。この制度により、多くの小規模発電業者は電力事業に参入できます。電力会社はこれに抵抗するでしょう。東京都と大阪市がタックを組んで株主提案をすることは大きなインパクトとなります。国民が電力会社を選ぶことができるようにしてもらいたいものです。

 電力コストを下げるためには、小規模発電事業者が参入しやすい買取り電気料金の価格設定と発送電分離が避けて通れません。旧電電公社の電話回線網が開放され、現在、多くの通信会社が通信サービスを提供しています。そして、国民は通信会社を選択できるようになりました。その結果、通話料金は大幅に低下し、インターネットを始めとした多くの産業が生まれ、それにより日本経済は成長しました。私も先日、フレッツ光を導入しました。光電話は日本のどこにかけても3分間8.4円です。これは驚きです。電気料金もこれと同じです。

 これに対して、電力会社は抵抗するでしょう。これに国民はどう対処したら良いでしょうか。固定価格買取り料金が高くなることを国民は許容する必要があります。放射能におびえて暮らすより、電気料金が若干高いほうがましでしょう。しばらくすれば、電力会社間の競争原理が働き、電話料金と同じように、電気料金も安くなってくることでしょう。

 原子力村がタッグを組んでこれを阻止してきたらどうしましょう。余計な心配か。

 私の提案です。既存の電力会社と分離した「小規模発電所と送電網」を独自に持つことできないでしょうか。特に人工密集地帯である東京、大阪では効率的な送電網が建設できるのではないでしょうか。このブロック毎の送電網をカスケード的に接続して、全国の送電網を完成させるのです。そうして、既存の電力会社にも、この送電網を安い使用料金で使わせてあげましょう。

 

 

 

2011年12月25日 (日)

帰還困難区域指定より除染計画だろうが

 避難区域該当地域の首長らは「町を分断するのか」、「帰還に向けた除染やインフラ整備の工程を示すほう先ではないか」と不満をあらわにしています。

 政府は福島原発事故に伴い設定した警戒区域を来年4月に解除して、新たに被ばく線量に応じた三つの区域を設定するとしています。

 新たな三区分は、年20ミリシーベルト未満の「避難指示解除準備区域」、年20ミリシーベルト以上50ミリシーベルト未満の「居住制限区域」、年50ミリシーベルト以上の「帰還困難区域」です。

 一方、政府は、11/1から3/末にかけて行なう「モデル事業」、12/1から2/末にかけて行なう「役場やインフラ設備の除染」、3/1から始まる「本格除染」と、かなり大雑把な除染計画を12/16に発表しています。

 しかも、「モデル事業」は効果的な除染方法を探るための実験・調査です。委託事業先の日本原子力開発機構によれば、2メートル四方の屋上床面を高圧洗浄機で10分間洗浄し、その結果、表面の放射線量は16マイクロシーベルトから8マイクロシーベルトに減少したといいます。正直、10分間も洗浄してこの程度かという思いです。

 まさに、手探りの状態であり、その効果も芳しくありません。何の具体性もない除染計画を示した上で、政府は上記三区分を唐突に発表しました。除染の実現性もない状態で、三区域の定義と空間線量を示しただけです。早めに出すのは結構なことですが、これは政府の希望的数値でしかありません。しかも、その数値は妥当なのでしょうか。低線量被曝を長期にわたって受けることには、色々と異論が出ています。これで、住民は安心し、期待できるでしょうか。

 除染方法の確立ができなければ、計画などできるはずはありません。以下、その計画立案前に明確にしておなければならないことを列挙します。

1 除染対象はどこか

 住民の居住区域(住宅、道路、学校等)、田畑はもちろんですが、山林、河川はどうするのでしょうか。非常にあいまいです。

2 除染方法の確立と除染期間

 「モデル事業」で10分間の高圧洗浄をしたにもかかわらず、表面の放射線量は半分にしか減少していません。この洗浄の効果に疑問がわきました。仮に、このような方法で洗浄しても、20ミリシーベルトの地域は10ミリシーベルトにしかなりません。全区域の洗浄にどの程度の期間が必要になるのでしょうか。

 半径20km圏内の洗浄を考えてみましょう。その面積は、12億6500万平方メートル(1256×10の6乗)です。それを4平方メートルで割ると、314×10の6乗となります。4平方メートルの区分が314×10の6乗(ブロック)あるということです。これを洗浄するには3140×10の6乗(分)かかります。これを1000人が洗浄作業をしたとし、何年かかるでしょうか。換算するために、60(分)×24(時間)×365(日)×1000(人)=525.6×10の6乗で割り算すると、6年になります。

 2000人の作業員なら3年です。40km圏内の洗浄には4倍の8000人の作業員が必要です。間違っているかも知れません。各自計算してください。

 「モデル事業」は理想的な屋上床面の洗浄でした。住宅の屋根、道路の側溝、校庭、田畑、河川、山林で洗浄方法は異なるでしょう。各対象物に対しての洗浄方法とその効果は示されていません。特に山林の除染はどうするのでしょうか。山林内でのキノコ等の生産はどうなるのでしょう。絶望的な感じがします。また、山林から流れ出た雨水により、洗浄した田畑、道路側溝、河川の空間線量は再び上昇します。

 山林面積は川内村で9割、福島県で7割を占めています。樹木に付着したセシウムが降り注いだり、汚染された土砂が流れ出たことより再び線量が上昇したことが確認されています。

 神社境内の階段で、6月に7.7マイクロシーベルトであった空間線量は、9月には21マイクロシーベルトに上昇しています。6月に46,000ベクレル/kgの土壌は、9月に230,000ベクレル/kgに上昇しています。

 各対象物毎の洗浄方法や洗浄効果を明らかにすべきです。

3 除染の限度

 各対象物毎の除染効果はおおよそ見当がついているのではないですか。民家と山林との境界地域は除染しても空間線量は再上昇することが明らかになっています。「モデル事業」でもわかるように、理想的な床面でも空間線量は半分にしかなりません。政府は年1ミリシーベルトまで除染するといっています。どの程度の人員をかけどの程度の期間をかけるのでしょうか。明確な試算を住民に示すべきです。

4 居住基準

 年20ミリシーベルトは復旧時の暫定基準値です。何年、暫定基準値を適用するのでしょうか。ガソリンの暫定税率のようにはならないでしょうね。政府は年1ミリシーベルトまで空間線量を下げるといっています。20ミリシーベルトを1ミりシーベルトにするのにどのような方法で、いつまでかかるのか。何の当てもなく、期間も明示しないのは、無責任というべきです。廃炉計画と同様行き当たりばったりなのでしょうか。

 政府は、退避基準を年20ミリシーベルトと定めました。「政府ワーキンググループ 内閣官房」もこれを妥当な値と追認しています。インターネット中継では、東大の児玉教授が孤立無援の形で、これに反論していましたが、多勢に無勢で検証は終了しました。報道には、児玉教授の主張が記載されていません。少数意見も明らかにして、国民の判断を仰ぐべきだと思います。少数意見を無視して安全神話を推し進めた結果である福島原発事故の二の舞になりませんか。(注1)

 私は、年20ミリシーベルトの避難基準に納得できません。(ものぐさ 年間被曝量20ミリシーベルトとは

 年20ミリシーベルトは復旧時の暫定基準であること。一般人が入室できない病院等の放射線管理区域は、年5.2ミリシーベルトであり、医療従事者であっても妊婦は年1ミリシーベルトに抑えられています。

 ICRPは年20ミリシーベルト未満でも確率的に癌発症のリスクがあるといっています。

 改めて、訴えます。私は、放射線管理区域外の放射線量、すなわち年5.2ミリシーベルト未満を被曝退避基準とすべきであると思います。

5 工程表

 除染対象、除染方法と除染期間、除染限度、居住基準を明確にした上で、工程表を提示すべきです。この工程表は絵にかいた餅です。

 (注1) 後日、報道は「進歩著しいゲノム科学の成果も含め最新の知識で評価して欲しい。住民はそう思っているはずだ」と述べています。

2011年12月27日 (火)

浜岡原発周辺自治体の動き 12/26

 報道によれば、「電力供給の原子力依存率は30%(3.11の水準)でいい。それでも従来の目標(50%)より低いから減原発だ。もんじゅはやめてもいいが、再処理工場は守る。使用済み核燃料からプルトニウムを抽出し、MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料に加工して英仏並みに輸出していく」と霞ヶ関官僚はうそぶいています。

 「霞ヶ関よ  お前は何様だ」と言いたい。同時にどうしようもない絶望感を感じます。

 事故後9ヶ月過ぎた原発立地住民の意識はどうなっているのでしょうか。12/26現在の浜岡原発周辺自治体の動きを列挙します。

1 御前崎市  EPZ圏内  「永久停止に困惑する」との意思表示。

2 牧之原市  EPZ圏内  「安全が担保されない限り永久停止」との決議を可決。再稼動は住民投票で(市長)。

3 掛川市    EPZ圏内  「周辺自治体や住民の了解等が得られない限り再稼動は認めない」との意見書を採択。

4 島田市    EPZ圏内  永久停止は拙速(市長)。

5 菊川市    EPZ圏内  「住民の理解が得られない再稼動は認めない」とする意見書を可決。

6 吉田町    UPZ圏内    「再稼動せず速やかに廃炉」を求める決議と意見書を可決。

7 藤枝市     UPZ圏内    「安全が担保されない限り再稼動は認めない」との決議を可決。

8 焼津市      UPZ圏内    「万全の対策が採られない限り再稼動は認めない」との決議を可決。

9 袋井市      UPZ圏内    「安全が担保されない限り再稼動は認めない」との決議を可決。

10 森町      UPZ圏内    「運転再開・永久停止の判断には県民のコンセンサスが条件」との意見書を採択。

11 県議会                      「永久停止・廃炉を求める」意見書は不採択。

 多くの自治体が廃炉、永久停止、再稼動不可の決議や意見書の採択をしています。住民の原発に対する不安や政府に対する不信が、市議会を動かしたのでしょう。

 一例を紹介します。掛川市の主婦らによる「浜岡原発を考える市民有志」は、「浜岡原発停止要望書」の提出、原発を考える講演会の開催、学校給食の放射能検査や安定ヨウ素剤配備の改善、原発ポスター展の開催等、活動を精力的に行なっているといいます。「思考停止はだめ。自分で考えで発言することが大切」とも言っています。

 ドイツの前首相は「脱原発は国民次第だ」とも言っています。

 冒頭のように霞ヶ関はうそぶき、政府は何を考えているのかわかりません。橋下氏は市長選に勝利し、その影響は全国に及んでいます。国会議員へのあいさつ回りでも、各政党の幹部は大阪市長に擦り寄っていました。その光景は見苦しくもあり、滑稽でもありました。節操のなさも透けて見えました。地方が国を変えていくであろう典型的な光景でした。全国の首長は大阪市の動向を固唾を呑んで見ていることでしょう。

 原発問題も同様です。政府、官僚はあてになりません。住民自らが意思を発信し、市議会を動かすしか方法がありません。

  

 

 

 

 

 

 

 

2011年12月30日 (金)

津波到着前に原発は壊れていた  

 政府事故調査検証委員会(畑村洋太郎委員長)は12/27に中間報告を公表し、公正中立な立場で、多くの問題を明らかにしてくれました。特に、原発関係者を除いた有識者による事故解析である点は評価します。案の上、この報告書に対する東電からの反論がありました。大きな事故を起こした当事者である以上、この報告書を真摯に受け止め反省する度量が欲しいものです。東電の官僚的な傲慢さが垣間見れます。これでは自己改革は難しいでしょう。

 中間報告で気になる点があります。国民は、「この原発事故が地震で起きたのではないか」と疑っています。政府、東電は津波対策をすれば原発は安全であるといった論調に終始しています。地震により、柏崎刈羽原発は事故を起こしました。津波ではありません。その他の原発でも、地震や老朽化で事故が発生しています。もし、地震で福島原発が壊れていたとしたら大問題です。津波対策だけでは、第二の福島原発事故が発生します。

 中間報告は「一部研究者の間には、原子炉圧力容器・重要な配管類の一部が、地震により破壊されたのではないかの指摘もある。当委員会のこれまでの調査では、そうした事実は確認できていない」と触れているだけです。

 「ええっー。そんな。突っ込み不足ではないか」。このように感じていたところ、翌日のテレビ報道は標記のような問題提起をしていました。まとめて見ます。私の感想や他の識者の主張も混在しています。

 1 二重扉により、津波は原子炉には入らない。よって、津波による配管等の破断は考えられない。

 2 17時50分、現場ホワイトボードには「IC組撤収。放射線高い。オーバースケール」との記載がある。こんなに早くキセノンはでない。

 3 スウェーデンでは3/22よりキセノン(ウランが核分裂してヨウ素ができ、それが自然崩壊したもの)が急上昇(従来の1000倍)した。これは炉心からの放射能だ。気象条件を入力して、逆算すれば、キセノンの放出は17時50分頃と推定できる。 

 4 元GE設計者曰く 「M9は設計の限界を超えている。この原発の耐震限度はM7~7.5だ」。

 5 東電は、「津波到着前の原子炉圧力容器の圧力変動は配管破断状態を示すものではない」と言っている。しかし、専門家は「同配管に0.3mmの穴を開けたシミュレーション結果は東電の提供した圧力容器の圧力変動と全く同じである」と言っています。これは穴が開いていた証拠ではないか。

 6 東電は5/16に「主要機器以外の細管などが破断して水漏れが起こった可能性については「なかったとは言い切れない」と、否定していない(週間エコノミスト)。

 7 現場作業員は次のように言っています。炉心から10mの位置で配管が落ちてきた。プールの水があふれていた。タービン建屋配管が落下した。天井クレーンが落ちた。

 8 田中氏(元原子炉製造技術者)は、「原子炉の緊急停止直後は、核分裂生成物による崩壊熱で圧力が上昇するときだ。そのとき圧力が低かったとすれば、どこからか、水か蒸気が流出し、圧力が抜けていたと考えることができる。」と述べています(ものぐさ 東電原発事故中間報告)。

 9 3/11、15時29分に1号機から1.5km離れたモニタリングポストで高いレベルの放射線量を示す警報が鳴った。大津波が福島第一原発に到着したのは数分後である。 

 以上のように、数多くの証言があります。地震による配管の断裂で原子炉が破壊し、津波到着により電気系統が制御不能となり、急速に炉心溶融へと突入していったのではないかとのストーリーも十分考えられます。

 このような証言や炉心データがありながら、中間報告書は地震による配管破断について、「そうした事実は確認できない」と述べているだけです。

 津波によるものか、その前の地震による配管破断なのかは、原発の安全対策を行なっていく上で極めて重要です。可能性がゼロでなければ、安全側にたった報告書とすべきであると考えます。

 事故経過の要約。

 14時46分     地震発生。

 15時11分以前  冷却材喪失事故のための格納容器内のスプレーが2台とも起動。 

 15時29分     モニタリングポストで放射線検出。

 15時42分     福島原発、津波到着。

 17時50分     「放射線モニタ指示上昇のため作業員撤収」。

 18時頃       核燃料の頭頂部まで水位が下がり「燃料の一部露出」。

             炉心の温度は急激に上昇。

 19時30分     燃料棒「全露出」。

             燃料被覆管は、1800度を超えて溶け始めた。

             20分ほどで炉心中央上部が溶けて崩落。

 21時        燃料ペレットが溶け始め、2800度に達した。

 21時16分     原子炉の水位が4.5m低下。

 翌2時46分    原子炉内の圧力、約70気圧が8気圧に低下。

 翌2時46分    格納容器内の圧力が7.4気圧に上昇。

 翌6時50分    炉心が完全に溶融(メルトダウン)した。  

« 2011年11月 | トップページ | 2012年1月 »