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2011年12月17日 (土)

原発コスト 8.9円/kw・hは目くらまし

 報道によれば、「コスト等検証委員会」は原発による発電コストを8.9円/kw・hと算定しました。何だ、従来よりも高くなったが、化石燃料と同程度ではないかとの感想を持ちました。

 その反面、本当だろうかと思いました。

 発電コストには大規模な除染費用は含まれていないといいます。

 廃炉には40年以上もかかります。天文学的な費用になるでしょう。

 コスト等検証委員会の報告書を見てみましょう。

 40年に一基の原発事故が起きることを想定して、損害賠償や廃炉費用を5.8兆円と見積もりました。事故費用0.5円/kw・h、自治体への立地費用1.1円/kw・h等を04年の試算に加算して、今回の試算は算出されました。

 また、損害賠償1兆円につき、発電コストは0.1円/kw・h増加し、核燃料サイクルをやめれば0.4円/kw・h減少するとも言っています。

 「コスト等検証委員会」は、発電コストのみならず、事故リスク 対応費用やCO2対策費用、政策経費などのいわゆる社会的費用も加味した徹底的な検証を行 ったと言っています。

 原発コストの徹底検証について、「コスト等検証委員会」の報告書より抜粋します。 

 割引率3%、稼働率70%、稼動年数40年を前提として試算されています。計算式及び各費用額は以下となります。

 {資本費+運転維持費+燃料費+社会的費用(CO2対策費用+事故リスク対応費用+政策経費)}÷発電電力量(kw・h)=1kw・h当りの原発コスト

1 04年における原発コスト試算値   5.9円/kw・h

 この数値に下記の増加分(ピンク色)を加算します。

2 資本費  (減価償却費、固定資産税、水利使用料、 設備の廃棄 費用の合計)

 建設費の上昇で2.5円/kw・h(04年より、0.2円/kw・h上昇)となる。

3 運転維持費  (人件費、修繕費、諸費、業務分担費の合計)

 修繕費、人件費の上昇で3.1円/kw・h(04年より、1.0円/kw・h上昇)となる。

4 核燃料サイクル費  (核燃料サイクル費はフロントエンドとバックエンドの合計値となります。フロントエンドはウラン燃料とMOX燃料の合計値であり、バックエンドは再処理、中間貯蔵、直接処分、高レベル廃棄物処理の合計値です)

 この部分は原子力委員会(技術等小委員会)に試算を依頼しました。下記のモデルごとに原発コストは異なります。

・ 再処理モデル 使用済核燃料は全て3年後に再処理をするモデル

 ウラン燃料0.7円、MOX燃料0.2円、再処理1.0円、高レベル廃棄物処理0.1円で、合計 2.0円/kw・hとなる。

・ 現状モデル 使用済核燃料の半分は20年貯蔵後に再処理をし、残りの半分は50年貯蔵後に再処理を行うモデル 

 ウラン燃料0.8円、MOX燃料0.1円、再処理0.5円で、合計 1.4円/kw・h(04年より0.1円/kw・h減少)となる。

・ 直接処分モデル 使用済核燃料は全て、54年後に直接処分をするモデ ル 

 ウラン燃料0.8円、中間貯蔵0.1円、直接処分0.1円で、合計 1.0円/kw・hとなる。

5 福島原発事故をうけた追加的安全対策

 緊急安全対策、非常用発電設備、原発と再処理施の外部電源の信頼性確保、シビアアクシデント対応、各社独自の対策。(ものぐさ)海江田元大臣が玄海原発の再稼動を許可し、世間の反発をうけた対策がこれです。1プラント当り194億円と見積もり、合計 0.2円/kw・h上昇する。

6 政策経費 (小規模電源を除く)・広告費・寄付金(他の電源とも共通)

 発電事業者が発電のために負担する 費用ではないが、税金で賄われる政策経費のうち電源ごとに発電に必要と考えられる社会的経費。

 立地交付金や研究開発などで、1.1円/kw・h上昇する。広告費・寄付金について、今回の試算では算出していない。

7 事故リスクへの対応費用

 将来発生するかもしれない事故に対応 するための費用。原子力委員会(技術等小委員会)に試算を依頼しました。

 試算の時点で明らかな費用として、東電福島第一原発事故での追加的な廃炉費用が約 1.2兆円、損害賠償費用が一 過性のもとして約 2.6兆円、初年度分が約 1.0兆円、2年度以降の損害(単 年度分)が約0.9兆円と試算しています。この費用をモデルプラントベースに補正して約5兆円としたが、検証委員会ではより精査して5.8兆円としました。 総発電量を2,882億kw・hとし、0.5円/kw・hとなります。尚、損害額が1兆円増加すれば、事故リスク費用は0.1円/kw・h増加し、10兆円で0.9円/kw・h、20兆円で1.7円/kw・hとなります。

 環境省は除染対策費用を1.1兆円と見積もっています。更に、土地、建物等の価値(財物価値)の喪失、または減少を5,707億円と見積もっています。実態に合わせた時価を基準とすべきとの意見もあったが、固定資産評価額を基準に算定しました。

 コスト等検証委員会のまとめ。

 事故費用が確定していないため、原発コスト8.9円/kw・hは最低価格である。事故費用が1兆円増加するたびに、0.1円事故リスク対応費用は上昇する。損害額が10兆円なら原発コストは9.3円/kw・h、20兆円なら10.2円/kw・hとなります。

 現時点で推計不能とされている費目及び現時点で含まれていないことが明らかな費用は以下のとおり。

・ 生命・身体的損害

・ 政府による航行危険区域及び飛行禁止区域の設定に係る損害など政府指示にかかる損害

・ 地方公共団体等の財産的損害

・ 高濃度汚染地域対策費用

・ 除染により生ずる廃棄物等の中間貯蔵施設整備費用

・ 最終処分関係費用

 判らないなりに勉強してみて、結構良心的な検証委員会だなと感じました。ピンク部を合計すると、8.8円/kw・hとなります。なんとなく、算出根拠の内訳が見えてきたようです。やれやれ。(ものぐさ)。

 それでは、各費用の妥当性について検証します。

1 環境省は除染対策費用として1.1兆円を見積もっています。除染費用の上限を固定資産税評価額とし、それ以上の除染費用は原発コストに含めていません。固定資産税評価額は、通常の売買価格に比べてかなり低いと聞いています。住民のことを考えれば、いくら費用がかかっても徹底的に除染すべきです。民間報道によれば、最も費用が大きい広域の除染費用が含まれていないとも聞いています。識者によれば、除染費用は28兆円にもなり、それだけで発電コストは12~16円/kw・h増加するようです。それを加えれば、原発コストは21.3円/kw・hにもなるそうです。

2 追加的な廃炉費用を1.2兆円と見積もっています。民間シンクタンクでは10年間で20兆円と見ています。廃炉に40年もかかります。天文学的な費用になるのではないでしょうか。

3 現時点で推計不能とされている費目及び現時点で含まれていないことが明らかな費用もあります。これについてもおおよその費用を見積もってください。

4 原発事故は40年に1基として、原発コストを計算しています。40年で4基の事故がおきました。10年で1基として計算すべきです。

 このような不正確な部分を加味した上で、幅を持たせた原発コストを算出しなければ検証委員会の存在価値はありません。この幅を持った数値を元にエネルギー計画が審議されなければなりません。含まれていない費用が、片隅に申し訳程度に書かれているだけです。

 更に、核燃料サイクル費用と事故リスクへの対応費用は原子力委員会(技術等小委員会)に丸投げされています。各委員会を経由してくるたびに、本質がぼけてくるといわれています。コスト等検証委員会は「核燃料サイクル費用と事故リスクへの対応費用」について、責任を持たないのでしょうか。

 検証委員会は、細かいところ(判っているところ)はきめ細かく算出しているようですが、大きな費用が予想されるところは除外しています。8.9.円/kw・hのみが一人歩きしそうです。注意しましょう。

 電事連会長は「他電源と比べて遜色ないことが示された。原発の経済的優位性は変わらない。仮に損害が20兆円としても遜色ないといえるのではないか。」と言っています。

 推進派の本音はこんなところでしょう。コスト等検証委員会はデキレースなのでしょうか。

 

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