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2012年1月18日 (水)

福島原発事故の刑事責任を東電幹部に問えないのか

 JR尼崎脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長に対し、1/12神戸地裁は無罪を言い渡しました。

 05年、JR福知山線電車が制限時速70kmのカーブに時速115kmで侵入し、106人の乗客が死亡。09年に、神戸地検が前社長を起訴していたものです。

 無罪の骨子は(解釈が間違っているかも知れません)

速度超過による脱線を前社長が認識していたとする証拠はない。

ATS整備を指示すべきとする予見可能性は認められない。

過失犯は個人を対象とする。

被告に過失は認められない。

等です。

 更に、「経営者の過失責任が認定された判例」を検察が引用したことに対し、「自己に都合の良い結論のみを援用(自説のよりどころとして、他の文献や事実などを引用すること)し、表層的」と退けました。 これに対して、「無罪のまま終わればJR西日本は間違っていなかったと認めることになる。」、「前社長の責任が問えないなら、司法の限界が見えた。経営陣や企業の責任を問えるよう法改正が必要。」等の声が、被害者から上がっている。

 世間の常識に法律が添っていないなら、法律を変更すべきです。

 米国は、事故の原因究明を優先させるため、事故当事者に真実を語らせ、再発防止を優先させる考えのようです。業務上過失犯の処罰規定はありません。

 福島原発事故に対する東電の経営者や原子力安全・保安院の過失責任は問えないのでしょうか。福島原発事故に対しても、「事故に都合の良い結論のみを援用し、表層的」と裁判所は判断するのでしょうか。逆に、「原発事故に対する客観的な事実に基づく経営者の過失責任」を証明できれば、東電の経営者や原子力安全・保安院を有罪にできるのではないでしょうか。

 過失責任の有無を検証してみます。

1 想定以上の津波の可能性は分かっていた。

 事故前、東電の想定津波高さは1~4号機で津波高さ5.7mであった。しかし、8/25の報道によれば、東電は福島原発への大津波を予想していました。その根拠を示します。

・ 福島原発への10mを超える津波の襲来は08年に分かっていた(保安院も分かっていたと推測します)。

・ 08年4~5月、東電は、「津波高さは5,6号機で10.2m、1~4号機で8.4~9.3m」と試算していた。これは地震調査研究推進本部の見解を基に試算したものです。東電は津波対策を実施しないばかりか、2年半以上保安院に試算結果を報告をしなかった。 

・ 事故前の3/7、「原発に10mを超える津波が押し寄せる可能性がある」との試算結果を東電は保安院に報告していた。

2 シビアアクシデント対応がずさんであったこと。

 スリーマイル島やチェルノブイリ原発事故を教訓に日本でも、原子力安全委員会は、アクシデントマネジメントの整備を勧告。国は電力各社に整備を要請した。だが、国は現行の安全対策で原発の安全性は十分確保できるとして整備を電力会社に義務付けず、自主努力で行なうようにとどめた。これを受けて、電力会社は、安全性と費用を秤にかけた整備を行ないました。その中途半端な対応の結果が福島原発事故でした。

 シビアアクシデント対策を規制要求すると、現行の規制に不備があることになってしまい、説明に矛盾が生ずるとの懸念があったといわれています。そこで、「複合災害が発生する蓋然(がいぜん)性はきわめて低く、現在の防災体制は妥当」であると、保安院は結論付けました。自己矛盾を表面化させたくないために、防災体制を見直さなかったのです。こんなことがまかり通っていたのです。

3 事故の隠蔽

 福島第一、第二、柏崎刈羽原発の原子炉ひび割れ6箇所を3箇所と改ざんしていたことが、元GE技術者の内部告白により明らかになりました。当時の社長以下、社長経験者5人が引責辞任しました。この件に関しては、組織的な改ざんの可能性もあり刑事告発の可能性もあったが、厳重注意で終わりました。 

4 事故の教訓に学ばないこと

 M6.8の中越沖地震で、柏崎刈羽原発の至るところが破壊し、地盤も傾き、原発耐震指針(2006)の信頼性が揺らいでいました。それでも原発を稼動し続けた責任はないのか。福島原発は地震前に壊れていたという見解もある。(ものぐさ 津波到着前に原発は壊れていた

5 東電と原子力・安全保安院の馴れ合い体質

 原子力村に代表されるように、各組織間の馴れ合い体質が、福島原発事故を引き起こしました。安全性をないがしろにして、経済性を優先して法律が作られ、規制や整備が要請されていました。

 これらにより、東電の経営者や原子力安全・保安院の過失責任は問えないのでしょうか。「経営者の過失責任が認定された判例」に十分該当するのではないでしょうか。検察による起訴を願っています。検察が起訴しないなら、検察審査会へ訴えることはできないでしょうか。これは事故原因を究明することにもつながります。

 死刑制度が犯罪の抑止力となるのと同じく、東電に対する刑事告発は、第二の福島原発事故の抑止力になると思います。

  

 

 

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