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2012年2月10日 (金)

「バックチェック」と「バックフィット」で原発は安全か

 福島原発事故の教訓を受け、1/6、原子炉等規制法改正案の骨子が政府より発表されました。その骨子は7項目よりなり、その中には「原発の40年廃炉」や「バックフィット制度導入」が含まれています。

 新たに加わる「バックフィット制度」と、今まで義務付けられてきた「バックチェック制度」の内容に触れ、原発の再稼動についてどうあるべきか考えてみます。

1 バックチェック

 原子力安全委員会は、「既設原子力施設の安全性評価(バックチェック)の概要」を次のように説明しています。詳しくは、同HPを参考にしてください。

 新耐震審査指針(2006年)の決定と同時に、原子力安全委員会は原子力安全・保安院に対し、既設の発電用原子炉施設等について、新耐震審査指針を踏まえた耐震安全性を確認するよう要請しました。

 その流れは

 原子力安全委員会から原子力安全・保安院への「バックチェック」の要請。原子力安全・保安院から事業者への「バックチェック」指示。事業者による「バックチェック」実施。それでは、事業者はどんな項目を実施するのでしょうか。

① 地質調査等
② 耐震安全性評価で用いる基準地震動の策定
③ 施設の耐震安全性評価の実施
④ 地盤の安定性評価の実施
⑤ 地震随伴事象評価の実施
◎ 新たな知見が得られれば、適切に反映

事業者は評価結果を原子力安全・保安院に報告。原子力安全・保安院は評価結果の妥当性を確認。原子力安全・保安院は妥当性確認の結果を原子力安全委員会に報告。原子力安全委員会は原子力安全・保安院の報告に関し検討。以上です。

 要するに、新耐震審査指針(2006年)を踏まえた耐震安全性を確認するように事業者に指示し、その結果を報告させるというものです。2006年以前に作られた原発についても、新耐震審査指針を満たしているかを事業者に評価させるものです。

 それでは、「バックチェック」はすべての原発で行なわれたのでしょうか。報道によれば、この「バックチェック」は多くの原発で終わっていないし、原子力安全・保安院の審査も遅いといいます。新耐震審査指針(2006年)に適合しているか評価されないまま多くの原発は稼動しています。

2 バックフィット

 今回、骨子である「バックフィット制度」については、「既存の原発にも最新基準への適合を義務付けるバックフィット制度」を導入する、としか記述されていません。

 たまたま、2011.1.25の「第3回原子力委員会定例会議議事録」を見つけたので、バックフィットに関する発言を紹介します(簡略化しています)。バックフィットに関する考え方が伝わってくると思います。詳しくは「第12回原子力委員会資料第2号」を見てください。この発言が福島原発事故1.5ヶ月前であることも興味深いですね。 

・ 新しい世代の原子炉ほど安全性が高くなる。

・ 古い世代の原子炉に対して、新しい原子炉並みの安全性を要求される。その対策が低コストで、安全性がかなり向上するならその対策は実施すべきである。

・ 既存の他のタイプの原子炉について、同じ種類の対策の実施を求めて、同様の安全性の向上を実現しようとすると、とてもお金がかかると分かっていたらどうでしょうか。

・ こういう場合、米国では、その原子炉は現在十分安全であるか、その新しい対策の費用は、その効果から考えて過剰といえる金額かどうかを検討して、そうだと判断されれば、それを強制されないことになります。

・ 耐震設計審査指針(2006年)の通りに設計すると著しい補強作業が必要なときは、他の方法で同等の安全性を達成しても良いとして欲しかった。

・ 国際社会では、炉心溶融事象が起きるとして、それが災害をもたらす可能性を減じるために、溶融炉心を受けるコアキャッチャーと呼ばれる対策を安全設計要求の一部にしようという議論がなされていることです。

・ そんな対策を追加することは難しい古い原子炉には、何か、もっと費用の安い代替策で置き換えてこの目標を達成することを認めるという、そういうバックフィットルールを合わせて定める必要があるのではないかと考えているのです。

・ 炉心溶融を一遍見てしまうと、深層防護の観点から、そこまでは起きるとして、その結果に対する対策を用意すべきだという意見が強くなるのですね。チェルノブイリ事故の影響を経験したヨーロッパは、伝統的にとりあえず炉心溶融は発生するとして、その対策はと話を進めるところが昔からあったんですが、それがいまや最近国際社会で主流になりつつあると聞いています。

以上です。

 「バックフィット」とは、古い世代の原子炉を、新しい世代の原子炉に適合させることであるが、費用の点で困難ならば、もっと費用の安い代替案で置き換えて、この目標を達成しようというものらしい。福島原発事故以前には、相変わらず、人命よりも「費用対効果」のほうを重視しています。炉心溶融対策としてのコアキャッチャーの例でよく判ると思います。決して、最新のものに置き換えるわけではありません。これでは、「バックチェック」も「バックフィット」も同じで、言葉を変えただけではないかと勘ぐってしまいます。いつか聞いたことのある「ストレステスト」と同じような響きです。代替案の妥当性についても注視していく必要があります。さも思い切ったことをすると見せかける「カタカナ標記」には気をつけましょう。

3 再稼動の条件

 最も新しい原発は、2004年建設着工、2009年運転開始の泊原発3号機です。建設着工前に設計は終了しているのだから、最新の原発でさえ新耐震審査指針(2006年)前の原発でしょう。M6.8の中越沖地震で信頼性の失われた新耐震審査指針に「バックフィット」させることにどのような意味があるのでしょう。

 地震学者の知見や福島原発事故の検証をふまえた新基準に従って、再稼動の是非を判断すべきです。新基準に対し、どの程度の余裕があるのかのストレステストの実施も必須事項です。

 

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