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2012年4月

2012年4月 4日 (水)

改めて年間被曝 20ミリシーベルトとは

 現行の「警戒区域」と「計画的避難区域」の2区分は、「避難指示解除準備区域」、「居住制限区域」と「帰還困難区域」の3区分に再編されます。

 これに伴い、4/1から田村市と川内村は、「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」に再編されることとなりました。前者は年間被曝量20ミリシーベルト以下の地域であり、後者は年間被曝量20ミリシーベルト超から50ミリシーベルト以下の地域です。

 この地域は、宿泊はできないものの、立ち入り許可は不要となり、出入りが自由となリます。住民は早速、自宅を訪れて片付けるなど帰還へ向けた準備を始めました。放射線の健康への不安や除染の効果がはっきりしない中での帰還準備だと思います。

 特に、健康への影響については、識者の間でも分かれています。「1ミリシーベルトを越えると発癌のリスクが増加する」という識者もいれば、「100ミリシーベルトでも健康に影響がない」という識者もいます。

 「避難指示解除準備区域」は、年間被曝20ミリシーベルト以下の地域です。ここで、改めて20ミリシーベルトとは何かを考えてみます。

 国際放射線防護委員会(ICRP)は、原発事故が起きた後に、周辺に住む人の年間被曝限度量は、2007年の勧告に基づき、1~20ミリシーベルトの範囲が妥当とする声明を発表しました。日本における現在の基準は、一律に1ミリシーベルトです。福島原発事故の影響が収まっても、放射能汚染は続く可能性があると指摘し、汚染地域の住民が移住しなくても良いよう、ICRPは、日本政府に配慮を求めたようです。

 福島原発事故以降における識者の主張を見てみましょう。

 一部の識者は次のように言っています。

・ 100ミリシーベルト以下なら、健康への影響は心配ない。

・ ICRPの基準はもともと、余裕をもって設定している。1~20ミリシーベルトという数字なら、健康に全く影響ない。

・ 世界平均の年間被爆量2.4ミリシーベルトに比べ、日本は1.5ミリシーベルト。ガン患者が多いというデータはない。

・ 成田からニューヨークを航空機で往復すると0.2ミリシーベルト。7往復すると日本国内の年間被爆量に達する。商社マンにガンが多いわけではない。

・ イランのラジウム温泉で有名な保養地では年間200ミリシーベルト。ガンの増加は認められていない。

・ 「1ミリシーベルトを超える被曝は危険だ」には科学的根拠はない。

・ 生き物には放射線被曝で生じる傷を修復する機能が備わっている(修復効果)。

・ 被曝すると免疫が活性化されるから、少ない被曝は安全、むしろ有益(ホルミシス効果)。

 一方、これに異を唱える識者は

・ ICRPの言う「一般人の被曝は、年間1ミリシーベルト以下」は「放射線と人体に関する考え方」において世界のコンセンサスとなっている。欧州の学者は年間0.1ミリシーベルトを主張している。

・ 事故前、年間被曝量の限度が1ミリシーベルトであったのに、事故後20ミリシーベルトまで安全というのはおかしい。事故を境にして、放射線に対する耐力が増すものではない。

・ 「年間被曝量20ミリシーベルト」と言うのは、安全だから20ミリシーベルトにしたわけではない。「健康上は20倍の危険があるが、緊急事態だから、汚染地域の住民が移住しなくても良いように配慮をしてくれ」ということだ。

・ 被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない。最小限の被曝であっても、人類に対して危険を及ぼす可能性がある。・・・アメリカ科学アカデミーの委員会(BEIR:電離放射線の生物学的影響に関する委員会)。

・ 「低線量の被曝では細胞の修復効果自体が働かない」というデータがある。

 といっています。

 後者が真実を言っているとすれば、前者を唱える識者や住民帰還を進める政府関係者の本音は以下のようなものでしょうか。

1 20ミリシーベルト程度に基準値を上げなければ、かなり多くの住民が移住しなくてはならず現実的ではない。10ミリシーベルトとすると帰還できない人が増加する。

2、健康に被害はあるものの、発癌リスクは小さいので、この程度で我慢してくれ。

 ICRPは低被爆でも発癌リスクがあるといっているのに、一部の識者は100ミリシーベルトでも心配ないといっています。何らかの意図があるように感じます。正直に言うと住民がパニックを起こすと考えているのでしょうか。それとも、住民に噓を言っているのでしょうか。

 「この程度の発癌リスク(下記参照)なら、不慣れな土地で暮らすストレスより、故郷で今まで通りの生活をしたい。早く自由に出入りできるようにしてくれ」と思っている住民も少なからずいるでしょう。故郷は放射能で汚染されてしまいました。除染効果もはっきりしません。政府は、放射能に対するリスクを住民に向かってはっきり言うべきです。そして、故郷に戻るか、離れるかの選択を住民に委ねるべきです。政府は卑怯です。

 原発再稼動問題に話を移します。原発立地自治体及びその周辺の自治体に聞きたい。福島原発事故と同等な事故が起きた場合、放射能が飛散します。年間20ミリシーベルト以下であれば、帰宅可能となるが、発癌リスクは事故前の20倍に上昇します。そして、東電や政府の賠償額も今まで見てきた通りです。一旦、事故が起きれば、東電も政府も冷酷で不誠実です。それでも貴方は原発の再稼動を認めますか。

 追記) 首相官邸HPから引用した文章を抜粋します。

 「放射線から人を守る国際基準 ~国際放射線防護委員会(ICRP)の防護体系~」によれば

 平常時には、身体的障害を起こす可能性のある被ばくは、絶対にないように防護対策を計画します。その上で、《将来起こるかもしれないがんのリスクの増加もできるだけ低く抑える》ことを、放射線防護の目的としています。
そのため、放射線や放射性同位元素を扱う場所の管理をすることにより、一般人の被ばくは年間1ミリシーベルト以下になるようにしています(公衆の線量限度)。また、放射線を扱う業務に従事し、被ばく線量を常時観測できる人には、5年間に100ミリシーベルトという被ばく線量限度を定めています(職業被ばくの線量限度)。

 と記載されています。

 また被曝を受けた場合の癌発症率はどうでしょうか。識者によると

年間1ミリシーベルトでは    1万人に1人

年間10ミリシーベルトでは   1000人に1人

年間20ミリシーベルトでは   500人に1人

と書かれています(注1)。

 (ものぐさ:日本人の自然被曝 5ミリシーベルト

 

2012年4月 6日 (金)

原発立地首長は脱原発に舵を切れ 

 原発マネーは立派な「はこ物」を作り、道路を整備し、原発関連雇用を生み出し、民宿や飲食店は賑わいを見せていました。しかし、原発の建設が一段落すると、交付金等の原発マネーが減少し、「はこ物」の減価償却、維持費、人件費が負担となり、新たな原発を誘致しない限り、自治体の運営は「ニッチモサッチモ」いかなくなりました。財政の半分を原発マネーに頼っている自治体も少なくありません。原発マネーで作った「はこ物」は、むしろ、自治体の足かせになっています。

 福島原発事故により、原発の増設は望めません。再稼動も困難です。原発立地周辺住民の反原発の声は大きくなっています。原発立地自治体はどうしたらよいのでしょう。当該地域の声を集めてみました。

1 原発立地の恩恵

 民宿には作業員が泊まり、若者は電気会社に就職した。ここは僻地だったが、原発のおかげで地域は発展した。

 原発は地域振興の起爆剤になった。

2 立地地域の現状

 公共施設は老朽化しているが、耐震工事もできない。

 高齢者が多く、集落の風景は他の過疎地と変わらない。

 人口も減少している。

 道路は土砂崩れで、頻繁に通行止めとなる。

3 立地自治体の悩み

 原発は怖いが、親族や近所に原発関連の仕事をしている人が多く、脱原発とは言いにくい。

 脱原発に代わる具体的な地域振興が見出せない。

 産業・雇用を守るため原発は必要。

4 脱原発への動き

 「復興ビジョン」で、洋上風力発電など再生可能エネルギーの実証実験施設や、放射能に関する最先端の治療・研究施設の誘致。・・・福島県いわき市

 風車の発電能力を試す風洞実験施設の誘致・・・福島県いわき市

 「自然共生・国際医療産業都市構想・・・宮城県岩沼市

 バイオマスエネルギー関連事業・・・福島県川内村

 原発なき町作りを見据えた「地域ビジョン検討会」の発足・・・山口県上関町

 廃炉や廃棄物の処理や安全対策についての研究拠点(人材育成、平和・安全規制の基盤研究、世界最高水準の大強度陽子加速器施設)。原子力イコール発電ではない。・・・茨城県東海村

 ふじのくに新エネルギー等導入倍増プラン(太陽光温泉発電等)。風力発電は建設中も含め県内に22ヶ所、85基あり、総発電量14万kw。・・・静岡県

 風力発電量は原発7~40基分の資源量がある。東北は風力資源の宝庫。・・・環境省試算。

 以上です。

 増設が見込めない状態で、原発マネーは先細りです。それでも、原発立地自治体は再稼動による延命を図っています。しかし、このままでは、いずれ過疎地となります。

 また、原発マネーがあるから、新たな産業の振興に対して、思考停止に陥っているようにも見えます。

 原発被害に見舞われた福島原発周辺の自治体は、原発の廃炉を宣言し、新たな産業を興そうとしています。今からでも遅くありません。原発を廃炉として、新たな産業を興してみませんか。崖っぷちに立った気持ちで挑戦してみませんか。そして、子孫が安心して暮らせる故郷を構築しなおして見ませんか。

 放射能の影響が30km以上にも及び、最悪事態には、首都圏3000万人の避難も考えられた福島原発事故を見ても、立地自治体の判断だけで再稼動は認められません。「原発マネーが入るから」、「地域振興が期待できないから」、という理由で、尚、再稼動するなど、周辺自治体は認めないでしょう。

 30数年前に原発を誘致した関係者は、政府の安全神話を信じ、地域の未来を本当に願っていたことでしょう。状況が変わった今、危険なものを運転し、財政悪化招き、負担を将来の世代に押し付けることが正当化されるでしょうか。

 現実路線をふまえた妥協案も模索されていますが、明日にも、第二の福島原発事故が起きないとはいえません。事故が起きた場合、妥協策を進めた人はどんな責任をとるのでしょうか。もはや、「国が安全であると言った」などの言い訳は通用しません。

 上記自治体は、脱原発に向けた試みを始めました。私なりに、脱原発の具体策を考えて見ます。

1 今後、半世紀にも及ぶ廃炉事業があります。廃炉には一基当り何千億円もの費用が必要です。雇用は確保されるでしょう。その間に、新たな産業を育ててください。

2 上記に見るように、自然エネルギー特区や、核研究施設の誘致計画もあります。地熱発電等地域の特徴を生かした事業もあるでしょう。

3 タービン建屋を利用しての、LNG発電も可能です。この場合、原子炉をボイラに置き換えるだけですみます。

4 農漁業の見直し。大間のマグロは昨年高値で取引されました。地元住民は、「何故、大間原発を誘致したか後悔している」とも言っています。日本周辺の海は、魚介類の宝庫ではないですか。その点、絶対的な「強み」を田舎は持っています。

5 浜岡原発の近くにあるスズキ自動車は、一時、工場の撤退を考えたようです。牧之原市は、あわてて永久停止決議をしました。スズキ自動車からの税収は市の財政の多くを占めています。原発ゼロにすることで、自然豊かな地域として、観光も、企業誘致も期待できます。原発関連道路は立派に整備されているから。40年前の高度成長は望めません。幸せの考え方も代わるでしょう。沖縄の人口は増加しているとも聞きます。

6 国策で進めた原発政策が間違っていたのです。政府は、その償いとして原発廃炉交付金を地域振興対策として交付してください。その原資は、従来電気料金として徴収されていた原発関連費でも良いし、4000億円もの原発関連研究費でも、核燃料サイクルの埋蔵金2兆円でもよいでしょう。

 「国が具体像を示せ」といっても、国策で進めてきた原発を自ら否定することであり、具体像を示さないと思う。報道や、知識人や、切羽詰った原発立地自治体がその具体像を示し、政府に突きつけるしかありません。

2012年4月11日 (水)

大飯原発再稼動の茶番劇

 大飯原発再稼動は、政治家の判断に任されることとなりました。これまで、経産相の発言はコロコロと変わり、首長や識者は再稼動に懸念を表明しています(ものぐさ:大飯原発 再稼動か)。

 首相・3閣僚は4/6、原発の新安全基準を決定しました。以下、新安全基準決定までの流れを示します。

1 4/3、政府は、福島原発事故の知見を反映した「暫定安全基準」を示すように、原子力・安全保安院に指示した。

2 4/5、3閣僚は、再稼動のための安全性の判断基準を了承した。これは、保安院が3月にまとめた30項目の安全規制をベースとしている。

3 4/6、首相・3閣僚は、新安全基準を決定した。なぜか、「暫定安全基準」が「新安全基準」に化けています。

 そして、再稼動までの流れを示します。

1 原子力安全・保安院は新安全基準を満たしているかを関電に確認すると共に、関電に対して中長期の安全対策について、実施計画を提出させる。

2 首相・3閣僚は、上記事項が妥当であるか確認する。

3 経産相が関電から実施計画について説明を受ける。

4 首相・3閣僚で安全性を確認する。

5 経産省が地元(おおい町、福井県)に説明する。

6 首相・閣僚会合で地元理解が得られているか確認する。

7 再稼動。

 多くのステップを踏んで安全確認がなされているようですが、原子力村関係者の茶番劇のように見えます。保安院の専門部会で指摘された問題点(井野教授の発言)については、なんら深く追求されませんでした。

 原子力村住人は、原発は多重の壁で守られ絶対安全ですと噓を言い続けてきました。燃料ペレット、圧力容器、格納容器、建屋、緊急冷却、補助電源、と幾重もの安全が喧伝されていましたが、福島原発では、すべて機能しませんでした。多重の安全といっても、結局1重でしかなかったのです。このステップにも、同様の胡散臭さを感じます。

 暫定安全基準がなぜ翌日、新安全基準になるのか。拙速で場当たり的といわれています。「暫定」との文言が消え、これは永久的な基準となる可能性があります。いつか聞いた、ガソリンの暫定税率と同じです。

 新安全基準が不十分であることは、首長や識者が発言しています。

 新安全基準は、極端に言えば、玄海原発再稼動の要請を地元に説明した海江田元経産相の言った基準とほぼ同じで、できていることを新基準に盛り込んだだけです。

 首相・3閣僚は原発に関して素人です。彼らは何をもって安全と判断するのでしょうか。猛勉強したのでしょうか。彼ら独自の安全に関する専門委員会を立ち上げたのでしょうか。聞いていません。保安院や安全委員会の判断を追認するだけでしょう。政治判断すべきではありません。事実に基づいた科学的な見地からの安全基準でなくてはなりません。世間は「再稼動ありきだ」と言っています。

 地元自治体や周辺自治体の意向が随分気になるようですね。安全に関しての確固たる自信があれば、自信をもって地元を説得できるのに。周辺自治体の挙動を伺っているようです。自治体や住民がちょっとでも隙を見せれば、ここぞとばかりと、再稼動に舵を切ってくるのは目に見えています。

 民主党内の二つのプロジェクトチームは、再稼働に対して、「時期尚早」、「速やかに」という正反対の提言案をまとめているようです。「大阪市長が再稼動問題で政府批判をしている」、「消費増税よりも評判が悪くなる」、「橋下氏にカードを与えるだけだ」などの懸念を受けて、無理をしない方向へ軌道修正したとの背景があるようです。。

 再稼動問題は消費増税よりも大義名文がありません。大阪市長の言動や、国民の反発が怖いのでしょう。次の選挙での落選が怖いのでしょう。 

 3/12には福井県の住民ら約260人が、大飯原発3、4号機再稼働の差し止めを求める仮処分を大阪地裁に申し立てたました。昨年8月には、滋賀県の住民も大津地裁に再稼働差し止めを求める仮処分を申し立てています。これについても注視していきましょう。

 東電が、「電気料金の値上げは義務であり権利だ」といってみたり、なんら誠意のない賠償方針等を見るにつけ、政治が、国民不在の再稼動を強引に推し進めるのを見るにつけ、東電や政治に対する不信感が増大していきます。何を言っても信頼できない状態にまでになってしまいました。関係者は気が狂っているように見えます。

2012年4月15日 (日)

良くぞ言った、大阪市長。原発再稼動8条件

 大阪市長は、原発再稼動の前提条件としての8条件を国民に提示しました。その内容については、素人が見ても当たり前のことばかりです。原発に関しての国民が抱いている「もやもや」を見事に表現しています。その8条件を見てみましょう。

1 国民が信頼できる規制機関として3条委員会の規制庁を設立すること。

2 新体制のもとで安全基準を根本から作り直すこと。

3 新体制のもとで新たな安全基準に基づいた完全なストレステストを実施すること。

4 事故発生を前提とした防災計画と危機管理体制を構築すること。

5 原発から100キロ程度の広域の住民同意を得て自治体との安全協定を締結すること。

6 使用済み核燃料の最終処理体制を確立し、その実現が見通せること。

7 電力需給について徹底的に検証すること。

8 事故収束と損害賠償など原発事故で生じる倒産リスクを最小化すること。

 大飯原発の再稼動について、原発関係者は次のように発言しています。前原政調会長は、「5/5までに大飯原発を再稼動させたい」と言い、官房長官は、「再稼動には地元の同意は必要ない」と言っています。大阪市長の8条件について、「支離滅裂だ」とも官房長官は発言しています。首相・3閣僚の発言は、馬車馬のごとく再稼動に突っ走っているように聞こえます。経済界は、「再稼動なしには日本経済は持たない」と言っています。一昨年の猛暑となれば、今夏20%の電力不足が生ずると関電は言っています。安全性に意義を唱えている原子力安全委員会の提言にも耳を貸すこともなく、科学的根拠もなく、福島原発事故の現実を直視もせず、「再稼動ありき」の発言を繰り返し、再稼働に関して6回程度の議論を重ねただけで、安全性について十分検討したかのような猿芝居を演じています。

 今年になってからのこれらの発言は、政府関係者の焦りとも感じられます。「やりたい、やりたい」で最後は「強姦」も辞さない雰囲気のようです。

 一方、前述のように、大阪市長は、原発再稼動に関する8条件を掲げて、それを選挙争点にする模様です。これを受けて、民主党プロジェクトチーム40名は「再稼動には冷静な判断を」と発言していますが、はたして彼らは本気で脱原発を思っているのでしょうか。大方、選挙を意識した発言でしょう。

 誰が聞いても拙速な、一夜漬けの「新安全基準」を政府は再稼動の条件としています。福島の現実を直視できない政府こそ「支離滅裂」でしょう。気が狂っているようにも感じます。民主党も自民党も大方は原発推進で、次回の選挙では、原発問題は争点にならないと思っていましたが、大阪市長の8条件が出てきたことにより、政党の選択肢が増え、国民の原発に関する意思表示が選挙を通してできることは喜ばしいことです。

 大阪市長の発言により、政府は、再稼動に慎重になった模様です。ドイツ前首相は「脱原発は国民次第だ」と言っています。国民の声が、大阪市長を動かし、原発周辺首長を動かし始めています。滋賀県知事、京都府知事は、大飯原発を視察した後の会見で、安全性に疑問を呈しています。日本を破滅に導くのか否かの重大な局面です。6割程度の国民は脱原発ですが、その声を発する場もなく、いつしか、あきらめの気持ちが起きてしまいそうです。それが心配です。

 問題点を探し、明らかにし、真実を国民に知らせ、国民の判断を仰ぐ。その役割を首長や報道は果たして欲しいものです。先の、太平洋戦争で、ウヤムヤのうちに戦争に突入し、敗戦の責任をはっきりさせず、総括もせず、ウヤムヤのうちに「あたかも戦争などなかったように」時が流れています。原発問題で決して、これを繰り返してはなりません。

2012年4月20日 (金)

広瀬隆氏講演会より

 広瀬隆氏の講演会に行ってきました。福島原発事故直後に続き、2回目です。「参加費700円でこのような活動を応援できるなら」との気持ちもありました。熱弁を振るい、公演時間は3時間半にも及びました。参加者は会場いっぱいで、同氏の知名度の高さを感じました。

 メモ書きで間違っているかも知れませんが、その講演内容を列挙してみます。新たな事実についても知ることができました。「福島第一原発  真相と展望  アーニー・ガンダーセン著」の紹介も広瀬氏からありました。著書の中における同氏の発言についても、青色で追記しておきます。

1 3号機の爆発は、始め水平方向に広がった。これは水素爆発。その後、垂直方向に黒い塊が立ち上った。これは、3号機の使用済み核燃料プールにおける臨界爆発だ。この爆発で飛び散った核燃料の破片をブルトーザで土の中に埋めてしまった。破片にはセシウム、プルトニウムが含まれ、水溶性だ。海洋に溶け出し生体濃縮が始まる。3kmの範囲の海底から燃料の破片を探し出せ。

 原発から2km離れたところで、燃料が見つかっている。海中に沈んだ燃料の破片からセシウム、ストロンチウム、プルトニウムが水に溶け出し、生体濃縮が始まる。

2 東海地震では、浜岡原発直下で地盤が割れる。原子炉、使用済み核燃料プールから燃料を一刻も早く取り出し、中性子を遮断できる層を持ったキャスクに入れて保管せよ。モデルはドイツにある。

3 福島原発の最大の恐怖は4号機の使用済み核燃料プールだ。10~15年分の燃料が保管されている。同プールは地震で壊れやすく、水漏れが起きれば大量の燃料(ジルコニウム)が空気中で燃える。

 水をかければ、自ら発生した酸素がジルコニウムを酸化させ、水素が発生し爆発する。

4 余震で、4号機の使用済み核燃料プールが崩壊する可能性あり。この破壊を防ぐために、プール下部にコンクリートを打ち込んだが、作業場は放射線が強く、まともな工事ができたのか疑問だ。

5 3M-8233 N100防毒マスクを用意せよ。

6 双葉断層ではM7.9の内陸直下地震が起きる可能性あり。阪神大震災の8倍だ。東海第二原発には井戸川断層があり、大地震がおきる可能性あり。原電も認めている。双葉断層との連動も考えられる。

7 多くの中地震の後に大地震は来る。

8 浜岡原発には10mの砂丘があるといわれているが、去年の台風で砂丘は崩れた。18mの壁は津波に耐えられない。

9 津波が襲った場合、瀬戸内海は水の逃げ場がない。伊方原発は大惨事を招く。

10 大飯原発付近の宮津、舞鶴には大津波の記録あり。

11 補助電源が高いところにあっても、津波が運んでくる木材、岩、自動車等でケーブルは切断される。そうすれば冷却不能だ。

12 福島原発は、わずか500ガルで配管の破損がおきた。これが怖い。中越沖地震では2525ガルだ。物体は1000ガルで浮く。

13 今回は、明治三陸地震の津波高さ38、2mを超えた。遡上高さは40、5mだ。岩手県にも50mの津波の史実がある。世界記録は半世紀前にアラスカで起きた525mだ。

14 冷却用循環水は地下を通り、海に漏れている。

15 ヨーロッパ放射線リスク委員会(ECRR)では癌発症を次のように予測している。

100km圏内       10万人/10年間

100~200km圏内  12万人/10年間

16 福島原発事故以後、ドイツ放射線防護協会は、食品の出荷基準について、乳幼児から青少年は4ベクレル/kg、大人は8ベクレル/kgと定めた。

17 100ベクレル/kg以上は放射性廃棄物として扱っていた。事故後、この基準が8000ベクレル/kgに引き上げられたのはおかしい。

18 牛肉の出荷基準は100ベクレル/kgだが内臓には基準がない。ホルモン焼きとして食べられている。

19 水源の汚染が心配だ。放射能は山にぶつかり、雪で覆われた。雪どけ水が川に流れ、海に達する。河口海域の土壌に浸透し、魚介類に蓄積する。

20 食物連鎖により、西日本も安心できない。

 福島原発は以上のような状況にあると言ってます。津波を甘く見てはいけませんね。海中の燃料破片は至急回収する必要があります。海洋汚染をこれ以上広げないように対策を打ってください。

 冷温停止はほど遠いように感じます。住民の帰還は大丈夫でしょうか。万が一に備えて、政府は住民を退避させることを考えていないのでしょうか。こんな状況で、再稼動を強行しようとしています。「福島第一原発  真相と展望  アーニー・ガンダーセン著」の一読もお勧めします。

2012年4月25日 (水)

エネルギーの安全保障にもならない日本の原発

 2009年の国連において、鳩山元首相は、2020年までに二酸化炭素排出量を25%減少させると発言し、世界の喝采を浴びました。

 そして、2010年6月の「エネルギー基本計画」は、2020年に向け全電源に占めるゼロエミッション電源(原子力と再生可能エネルギー)の比率を50%以上とし、原発を2020年までに9基、2030年までに14基増設すると言っています。二酸化炭素排出削減は、原発を推進させるための大義名分でした。

 福島原発事故を受けた後でも、原発推進派は、「日本はエネルギー資源が少ない。エネルギーは日本の生命線だ。脱石油を推し進め、日本独自のエネルギーを持たなければならない。それが原発だ。」と言い続けています。

 これと真逆の記事を読みました。「世界において、日本の原発は際どいバランスの上に成り立っており、日本のエネルギーにとって原発は何の安全保障にもなっていない。殺生与奪の権利を外国に握られている。」と、それは言っています。原発推進派の言っていることと全く違っています。こんな事実があったのかと驚きました。以下、紹介します。

 核の拡散を抑止する目的で1963年、核兵器不拡散条約(NPT)が国連で採択されました。1967年時点での核保有国、アメリカ、ソ連、イギリスに、フランス、中国が1992年に加わり、この5ヶ国が核兵器の保有を許されたのです。当然それ以外の国は核兵器の保有は禁止され、不自由な制約を課せられています。「日本と西ドイツの核武装の道を閉ざす」ことにNPTの7割方の目的はあったそうです。

 そして、アメリカ、イギリス、ソ連だけでなく、カナダやオーストラリアからも、日本がNPTに署名しないなら天然ウランを売ってやらないと脅しをかけられました。1970年に日本は不本意ながら、このNPTに署名させられたのです。NPTに違反すれば、天然ウランの輸入が止まります。そして原子力発電はできなくなります。日本の経済活動は、外国の思うがままに制約されてしまうのです。

 アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、中国との間には、二国間原子力協定も結ばされ、日本の原発にとって大きな縛りとなっています。いくつかの例を紹介します。

 大学における核爆発の研究が協定違反だとみなされて、核燃料を返せと言われました。純然たる学術研究における自由が侵害されたのです。

 カナダは、原子力輸出政策を大幅に転換し、原子力協定の改定を日本に申し入れました。これに日本が直ちに応じないとみるや、カナダ産の天然ウランの供給を停止しました。その後、協定の改定に応じ、供給停止は解除されました。

 日本が天然ウランに関して、濃縮、再処理、第三国移転等をする場合、カナダ、オーストラリア等の天然ウラン原産国の同意を事前に取らなければなりません(対日規制権という)。 

 輸入した天然ウランをフランス等で濃縮した場合、濃縮国フランスも日本に対して対日規制権を持ちます。

 使用済み核燃料をイギリスで再処理した場合、そこで出来たプルトニウム燃料についてもイギリスは対日規制権を持ちます。

 アフリカ産の天然ウランを日本の濃縮工場で濃縮した場合、アメリカ産の原子炉(例えば福島第一原発)で使用すると、その燃料は直ちにアメリカ産の燃料となり、アメリカは対日規制権を持ちます。

 以上見てきたように、あらゆる場面において外国の対日規制権の縛りを受け、いちいち、その国の同意を得る必要が出てくるのです。原子力発電を続ける限り、原料輸入、再処理等に関して強圧的な制限を受け続けるのです。原発についても外国に首根っこを押さえられているのです。こんな状況で、原発は日本のエネルギーの安全保障を担保しているといえるのでしょうか。

 六ヶ所村再処理工場や「もんじゅ」が成功すれば、使用済み核燃料は再処理され1.5倍にもなり、永久に核燃料のリサイクルが可能でした(核燃料サイクルという)。六ヶ所村再処理工場は再開の目途も立っていません。「もんじゅ」は、ナトリウム火災を起こし再稼動の目途も立っていません。冷却剤としてナトリウムを使うことが如何に危険かを露呈しました。再処理で産まれる「高濃度放射性廃棄物は10万年以上にわたり、厳重に保管しなければなりません。

 核燃料サイクルに固執する政府の本音は、「エネルギー安全保障の点からも自前のエネルギーを確保したい。そして、外国の対日規制権を排除したい。」と言うことなのでしょう。

 しかし、核燃料サイクルなどと言う夢のシステムは不可能であることが明らかになりました。これからはシェールガス発電の時代になるでしょう。日本近海には膨大な量のメタンハイドレードがあります。技術開発はこれからですが独自のエネルギーが持てるのです。シェールガスはそれまでのつなぎ役です。

 政府関係者は、出来もしない核燃料サイクルから目を覚ましてください。

2012年4月27日 (金)

浜岡原発 津波高さ21mは18mの防潮堤で安全か

 「原子力安全・保安院は浜岡原発に21mの津波が襲来しても、18mの防潮堤で安定冷却ができることを確認した」と、報道は伝えています。

 18m-21m=マイナス3mです。小学生でも理解できます。防潮堤を3m超えた津波が原発を襲います。この保安院の発表には唖然としました。以前は津波の高さを10m程度と中電は見積もっていました。だから18mの防潮堤で大丈夫だと(ものぐさ:浜岡原発 防波壁18m検証)。ところが内閣府の有識者検討会が21mの津波襲来の可能性を発表するや、中電は、あわてて安全性を再検討し、保安院は、中電の安全評価を了承したのでしょう。住民を不安に陥れないための保安院の優しさでしょうか。

 素人なりに検証してみます。

1 現在18mの高さの防潮堤を中電は建設しています。しかし、1.6kmにも及ぶ防潮堤の厚さは、たった2mです。18mという高さに目を奪われがちですが、この厚さ2mで十分安全なのでしょうか。

 東日本大震災の津波は、釜石湾口の巨大な防波堤を押し流しました(注1)。なんと防波堤の厚さは20mと巨大で、浜岡原発防潮堤の厚さ2mとは比べ物になりません。(ものぐさ:浜岡原発訴訟 傍聴記 その1

2 津波の周期は長く30分以上です。押しては返す波とは違います。21mの津波の壁が30分以上にわたって防潮堤を押し続けます。当然、原発は水没してしまいます。中電は防水構造扉の二重化や水密扉により津波の侵入を防止すると言ってますが、地震による防水扉の破壊は考えられないでしょうか。建屋自体をも押し流してしまわないでしょうか。

3 一旦、敷地内に津波が侵入し、建屋が水没すれば、津波が引いたとしても防潮堤が邪魔をして、建屋は水没したままです。こんな状態で、24.5mの高台に配置した移動式ポンプのホースを接続できるのでしょうか。あらかじめホースが接続されているのであれば、津波によりホースは引きちぎられてしまいます。笑い話。原発が水没すれば冷却は必要ないね。

4 地震で海底が隆起すれば、沖合い600mから取水槽までのトンネルは陥没し、取水槽に海水を引き込めなくなります。従って、高台の移動式ポンプでの冷却は不可能になります。

5 津波の遡上高は、津波高さの1~4倍にもなるといわれています(気象庁HP)。21mの4倍は84mです。24.5mの高台にある移動式ポンプは跡形もなくなります。

6 防潮堤の上3mの高さから滝のように津波は内側に流れ込みます。津波が内側を浸食し、防潮堤は、ひっくり返らないでしょうか。台風による堤防の決壊は、このメカニズムによると言われてます。釜石湾口防波堤もケーソン前後の水位差8.2m(港外側の最高水位10.8m、港内側の水位2.6m)により、大きな水平力が働き、押し流されました。

7 津波の圧力や地震動による冷却用配管の破断はないのでしょうか。冷却用配管の一部でも穴が開けば、高台にセットした移動式ポンプが働いたとしても炉心の冷却はできません。

 保安院の統括安全審査官は「津波の高さだけを考慮した暫定的な評価だ。」と言っています。津波の破壊力、直下型地震動による配管の致命的な破断等について検証されていません。この対策の占める割合は全体の1割程度で、残り9割の対策が欠落している、と言われています。しかし、多重防護の設計思想は福島原発事故で破綻しているとも言われています。

 関連記事はこちら (ものぐさ 浜岡原発 津波高さ21mは18mの防潮堤で安全か その2 疑問 浜岡原発津波対策)。

 (注1) 水深63mの海底に、東京ドームの7倍に当たる700万立方メートルの巨大なコンクリートの塊を沈め、その上にコンクリート壁を構築。厚さ20m、全長2km。海面高さ8m。

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