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2012年5月 9日 (水)

埋め立て基準 8000ベクレルは大丈夫か

 政府は、放射性廃棄物で汚染された汚泥や焼却灰、がれき等の処理の基準を定め、各自治体に埋め立てをお願いしています。

 その基準で埋め立てし、果たして安全なのでしょうか。発生するであろう放射性廃棄物の量と濃度をあらかじめ算出し、適当に線引きしているようにしか見えません。そして、その基準を各自治体は信用していないとも聞いています。

A 放射性汚泥や焼却灰の処理に関する環境省の基準を見てみます。           

 放射性濃度(ベクレル/kg)               新基準(2011.8) 

100ベクレル以下              製品段階で基準内ならセメントなどに再利用可能

8000ベクレル/kg以下           管理型処分場に埋め立て可能

8000ベクレル超~10万ベクレル以下  安全性を評価して埋め立て可能

10万ベクレル超               コンクリート壁など放射線を遮蔽できる施設で管理 

 更に、2011.9.25には、今まで決まっていなかった1kgあたり10万ベクレルを超える瓦礫の焼却灰についても、放射性物質の流出を防止する措置を取れば埋め立てを認める方針だ。具体的には、セメントで固めた上で、雨水の流入や地下水への流出を防ぐ措置が取られた施設であれば埋め立て可能としている。

 「8000ベクレル以下」という基準について、環境省は「埋め立て終了後に処分場の表面を土で覆うと99.8%の放射線を遮蔽できる値だ。年間0.01ミリシーベルト以下に抑えられ、住民の健康への影響は無視できる。埋め立て処分中でも年間1ミリシーベルトを下回る。」と述べ、住民の不安を払拭しようとしています。

 「原子炉等規正法の定義する放射性廃棄物とするか否かの基準100ベクレル」について、環境省は「100ベクレルという基準は、リサイクル利用で市場に流通しても問題がなく放射性物質として扱う必要のないレベルだ。原発内で使われたコンクリートや金属をリサイクルするための基準だ。土で遮蔽して処分する焼却灰としての基準と混同してもらっては困る。」と当惑している。(2012.3.10)

B それでは「原子炉等規正法」に書かれている基準を見てみます。

 その基準は、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第六十一条の二第四項に規定する製錬事業者等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則」の別表において、セシウムで100ベクレル/kgと定められている。

C 日本弁護士連合会は、2011年(平成23年)7月29日、「放射能による環境汚染と放射性廃棄物の対策についての意見書」を首相等に提出しています。以下示します。

 放射性廃棄物かどうかを区別する基準については、現行のクリアランスレベルである10μSv/年を基本として定める値(セシウム137については、100ベクレル/kg)によるべきであり、したがって、100ベクレル/kg 以上のものについては、放射性廃棄物として厳重な取扱いが必要であるものとすべきである。

さらに、8000ベクレル/kg を超えるものについては、その移動・保管の際に、一般公衆の被ばく線量限度である1mSv/年を超えるおそれがあるので、特に厳重な取扱いが必要である。

 福島原発事故以前では、セシウム137が100ベクレル/kg 以上であれば放射性廃棄物として、低レベル放射性廃棄物処理施設で長期保管することとされていた。

 100ベクレル/kg 以上のものについては、放射性廃棄物として厳重な取扱いが必要であるものとすべきである。

 8000ベクレル/kg まで一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)における埋立て処理(最終処分)を認める政府の暫定方針は、放射性廃棄物としてのクリアランスレベルを80倍に緩和するものであり、問題である。

 セシウムの半減期は30年、8000ベクレル/kg のセシウムを含む廃棄物が100ベクレル/kg 未満となり、通常の廃棄物となるまでに約200年を要する。その長期の間、放射性廃棄物については、他の廃棄物と区別しての管理、流出や飛散の防止その他の特別な管理、継続的な監視管理体制が必要となる。

D それでは、首長、国民の見方はどうでしょうか。

1 最終処分場の確保について国の回答不十分。廃棄物の安全性と世論形成を国は行なうこと。最終処分場を確保・調整すること。風評被害が生じた場合は賠償の対象とすること。・・・ 静岡県市町会(2011.11) 

2 国は風評被害を賠償の対象にすると明記せよ。・・・静岡市長

3 がれきを受け入れた場合、県外に委託している最終処分場は普通の焼却灰すら受け入れなくなる。・・・富士宮市長

4 国が明確な回答をしても、反対する人は反対する。・・・島田市長

5 国の言うことは信じられないというのが住民感情。・・・沼津市長

6 国が本気で広域処理を考えるなら、被害が起きた場合の補償を明確に示さないと住民は納得しない。・・・静岡大教授

7 埋め立て可能な焼却灰のセシウム濃度を1kgあたり8000ベクレルとしているが非常事態の基準だ。安全だという根拠が薄く、無責任だ。密封容器に入れるなど検討すべきだ。・・・静岡大准教授

8 国の基準はダブルスタンダードで県民の理解を得られない。・・・徳島

9 8000ベクレルでは住民の不安は取り除かれない。・・・鳥取

10 子供がガンになるかもしれない。国に安全といわれても信用できない。・・・神奈川県住民

E 2011.9.16の報道によれば、各自治体で検出された焼却灰の放射性セシウム濃度 は以下になります。 

岩手県   2万3000ベクレル    宮城県     1950ベクレル     秋田県    2300ベクレル     

山形県     2160ベクレル     福島県  14万4200ベクレル     茨城県    5900ベクレル

栃木県     2830ベクレル     群馬県      7500ベクレル    埼玉県     6410ベクレル    

千葉県   1万1500ベクレル    東京都       380ベクレル   神奈川県     1347ベクレル    

新潟県       61ベクレル     山梨県      2005ベクレル   長野県      820ベクレル   

静岡県      190ベクレル

F 検討します。

 埋め立て基準「8000ベクレル」と言う基準は、昨年8月唐突に示されました。それ以前の「原子炉等規正法」では、放射性廃棄物としての基準は1kgあたり100ベクレルでした。それ以上のものは放射性廃棄物として厳重に管理することが法律で義務付けられていました。突然8000ベクレルが出現したのです。放射被ばく線量の限度値が年間1ミリシーベルトであったものが、突然20ミリシーベルトに引き上げられたことと同じです。これでは住民は不安を抱きます。

 首長が言うように、絶対安全というなら、なぜ国は風評被害への賠償を確約しないのでしょうか。確約しないことは、問題が発生するかも知れないと思っているからなのでしょう。

 各放射能レベルに対応した保管方法が明確でありません。なし崩し的に日本各地に埋め立てられ、結果的に日本全土に放射能をバラマクことになるのです。果たして、広域処理は妥当な政策なのでしょうか。

 処分場として候補にあがっている地域住民の不安はもっともです。

 まず、住民の不安を払拭するよう、埋め立て処分に慎重な専門家の意見も取り入れ、真面目に保管方法を検討してください。200年も保管しなければなりません。放射能が漏れ出すことも考慮した埋め立て方法にしてください。絶対に漏れ出さないという保証はないのですから。

 二人の専門家が保管方法について述べていました。

 一人は、生活圏から離れた谷間にダムのような施設を作って埋め立てる方法です。谷底にはゼオライトや遮水シートをはり、上部は土で覆い放射線を遮蔽する方式です。

 もう一人は、汚染土壌を入れたコンテナを浅い地中に埋める方式です。埋め立てた場所がわからなくなると掘り直しが不可能になることを危惧しています。200年以上にわたっての保管となります。コンテナを通して、放射能が漏れ出すことを心配しているのでしょう。

 前者の考え方に怒りが生じてきます。第一は、またしても田舎に放射能を押し付けて平然とするのか。第二は、遮水シートで200年も保管できるという保証があるのか、そんなことはあるまい。第三は、地震によりダム直下に亀裂が入れば、地下水、河川に放射能が流出し、地域住民は被曝し、故郷を捨てなくてならない。そして、海も汚染する。第四は、8000ベクレル以下といっても、膨大な廃棄物を埋めることになる。おまけに埋め立て場所は、渓谷だ。山の両側から流れ込む大量の雨水はダムに流れ込む。谷底に集積する放射性廃棄物は高濃度となる。一旦ダムに亀裂が入れば、高濃度の汚染水が地域住民を襲う。    

 放射性廃棄物の処理を、苦渋の選択として国民にお願いしているのでしょう。地域の住民に我慢してくれと。しかし、賛否両論あるなかで、放射能汚染処理の問題にケリをつけていない中で、何事もなかったように、原発の再稼動を強引に推し進めようとしています。

 セシウムの半減期は30年。田畑、山林、河川、海洋に降り積もったセシウムは上流から下流へ流れ、食物連鎖を繰り返し、放射能汚染がほぼ永久に続く。原発から放出された放射能は、山に、海に、川に、田畑に、民家の屋根に、道路、公園に降り注ぎ、魚貝類、動植物に取り込まれ、人に摂取される。人からの排泄物は合併浄化槽を経て河川に、海洋に流れ、再び人に摂取される。人に取り込まれた放射能は、放射線を細胞に照射し、DNAを傷つけ、癌を発症させます。火葬場で焼かれたときに出る煙にも放射能があり、火葬場のフィルターにも付着しています。人骨に残ったセシウムは墓の中にも持ち込まれる。放射能の絶対量は変わらないのです。 

 原発が怖いのではない。原発により放出された放射能が怖いのです。死の灰とはよく言ったものです。

 200年も放射能は続くのに、放射能を怖いと感じる思いは1年足らずで半分に薄れてしまう。そして、ころあいを見計らって、政府はなし崩し的に原発を再稼動する。政府も怖いし、薄れる人間の気持ちも怖い。

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