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2012年7月16日 (月)

黒川事故調査報告書 津波前、原発破損の可能性あり

 7/6、国会事故調査委員会(黒川委員長)の最終報告書が公開されました。

 それによれば、重要な機器・配管類のほとんどが実際に調査・検証できない原子炉格納容器内にあり、多くの重要な点が未解明であるにも関わらず、東電は事故の主因を津波とし、「安全上重要な機器で地震により損傷を受けたものはほとんど認められない」と中間報告に明記し、政府事故調査委員会も同じ趣旨を記しています。

 国会事故調査報告書は、具体的な証言や数値を示しながら、「津波到達前の地震動により、小規模の冷却材喪失事故が起きた可能性がある」と明記しています。

 近く、政府事故調査委員会は「津波原因説」で最終報告書を提出するようです。この差異を明確にするためにも、時系列的に国会事故調査報告書の要点をまとめてみます。

 この報告書は、HP「国会東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」からダウンロードすることができます。報告書は「ダイジェスト版」、「要約版」、「本編」からなります。是非、「本編」を読んでみてください。

 1号機の事故進展の経緯を以下示します。

14時46分頃      M9の地震発生、福島原発は震度6強。

14時46分直後    原子炉建屋4階で出水(作業員証言)。この付近にはIC(非常用復水器 注1)の大型タンク2基が設置されている。5階の使用済み核燃料プールの地震時のスロッシングによる溢水でないことを確認しているが、現場調査ができないため出水元は不明。

14時47分33秒    スクラム(原子炉緊急停止)開始。

14時47分33秒直後 MSIV(主蒸気隔離弁 注2)は突然閉止し、原子炉圧力は上昇。通常運転時の原子炉圧力は6.8MPa。

14時48分03秒    激しい揺れが襲う。

14時48分53秒    激しい揺れ(はぎとり波は最大675ガルで、基準地震動600ガルを上回る)が50秒程度続き、その後、急速に収まるものの揺れは40秒間続く。

14時52分        原子炉圧力は7.2MPaに上昇し、ICが自動起動。

15時少し前       「ゴー」と言う音。ICの配管から出る音ではないか(運転員証言)。「ICタンクの水温はせいぜい70℃、蒸気どころか湯気も出ない」と事故調は蒸気説を否定。

15時02分        ICの起動により、原子炉圧力は6.8MPaから4.5MPaに急降下。

15時03分        ICを手動停止し、原子炉圧力は急上昇。

15時27分        津波第1波(沖合い1.5km)を観測、波高は4.5m。

15時29分        津波第1波原発到達。東電の写真により、海水ポンプ(注3)の被水停止はない。海水ポンプが被水すると、60秒後に非常用ディーゼル発電機は停止(2、4、6号機)するが、1号機の海水ポンプは停止しない設計となっている。

15時35分        津波第2波(沖合い1.5km)を観測。波高は7.5m。

15時35~36分     非常用電源喪失。

15時37分        津波第2波原発到達。

 以上の証言及びデータから、津波到達前に原子炉は破損していたのではないかの疑問が生じます。以下、列挙します。

1 津波第2波の原発到達時刻15時37分前に、非常用電源は喪失しており、津波以外の原因による喪失の可能性があります。その原因は不明ですが、「津波による電源喪失」と断定することはできません。

2 14時48分53秒に始まった激しい揺れは最大675ガルで、基準地震動600ガルを上回っています。この長く激しい揺れは、原発全体に「繰り返し荷重」として作用し、疲労破壊が起きやすく、機器・配管系への影響を増大させます。このようなことは、耐震設計上、あってはならないことです。

 この揺れによる小破口冷却材喪失事故(SB-LOCA)が起きた可能性については、(独)原子力安全基盤機構(JNES)も否定できないとしています。原子炉の水位・圧力に関する東電の実測値(14時45分~15時45分)は、配管の微小な貫通亀裂(0.3平方cm)から冷却材が噴出したとするシミュレーション(ものぐさ 津波到着前に原発はつぶれていた)と一致しています。この場合、10時間で72tの冷却材が失われ、燃料損傷が起きても不思議ではありません。15時少し前に運転員が聞いた「ゴー」と言う音も(SB-LOCA)の可能性を否定していません。

 この事実は、政府事故調査委員会の主張「もし配管が破断すれば、原子炉圧力と水位が急激に低下する。よって地震による配管の破断はなかった」を否定しています。

3 14時46分直後における原子炉建屋4階からの原因不明の出水も、配管類の破損による可能性を否定できません。

4 ICを手動停止(15時03分)したのは、原子炉冷却材の1時間当りの温度変化を55℃以下とする運転規則によるものだと、東電は主張しています。ところが、運転員は、原子炉圧力の降下が早いので、IC系配管や他の配管から冷却材が漏れていないのかを確認するため、ICを手動停止したと述べています。この時、運転員は配管類の破損を疑っていたのです。運転員の説明は合理的で判断は適切であるのに対して、東電の説明は合理性を欠いています。

5 14時47分33秒直後 MSIV(主蒸気隔離弁)が突然閉止し、原子炉圧力は上昇しました。配管類の破損がなければ、上昇した原子炉圧力により、SR弁(蒸気逃がし弁 注4)が開放され、主蒸気はサプレッションチェンバーに流入し、水で凝縮され、原子炉圧力は下降する。この動作を自動的に繰り返し、原子炉内の圧力を一定に保ちます。ところが、運転員はSR弁の開閉音を聞いていません(2号機の運転員はこの開閉音を聞いています)。このことからも、地震動による原子炉系配管の破損の可能性は否定できません。

6 このように重要なSR弁の作動圧力が記述されていません。インターネットによれば、「原子炉圧力7.3MPaで逃がし弁機能が作動し、7.7MPaで安全弁機能が作動する」とあります。運転員はICの操作により、1時間程度原子炉圧力を7MPaに制御していました。SR弁の作動圧力7.3MPaに到達しません。この操作によってSR弁は作動しなかったとは考えられないでしょうか。素人考えです。

 以上、多くの事実が地震動による原発破損の可能性を示唆しています。津波対策はもちろん大事ですが、最大の地震動を想定して原発の安全性を再評価すべきです。バックチェックもなしに再稼動してはなりませんし、原発敷地内の活断層が指摘されているにも関わらず、原発再稼動など論外です。

(注1) 冷却水を蓄えた「復水タンク」に、原子炉圧力容器で発生した高圧蒸気を通し、蒸気を凝縮し、再び原子炉に戻す装置

(注2) MSIVの閉止により、タービン建屋への蒸気の流れは止まる

(注3) 非常用ディーゼル発電機(敷地高さ10m)を冷却する海水ポンプ 

(注4) バネ式安全弁で開閉動作に電源を必要としない 

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