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2012年8月 8日 (水)

原発の電気料金は安くない

  8/2、静岡地方裁判所で行なわれた浜岡原発訴訟の第五回口頭弁論(ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記 その2)後の「記者会見兼報告会」で配布された「準備書面」が大変興味深かったので紹介します。

 推進派は原発推進の根拠として「原子力発電は他の発電より低コストである」と主張し続けてきました。

 2011年12月7日「コスト等検証委員会」は原発の発電コストを8.9円/kw・hと算出しています(ものぐさ 原発コスト 8.9円/kw・hは目くらまし)。

 この結果を受けて、電事連会長は「他電源と比べて遜色ないことが示された。原発の経済的優位性は変わらない。仮に損害が20兆円としても遜色ないといえるのではないか。」と言っています。8.9円/kw・hという数値が一人歩きすることが心配です。

 「コスト等検証委員会」のコスト計算は甘い前提条件で算出されており、その問題点を「準備書面4」は厳しく指摘しています。以下、私見を交えて示します。

1 原子力発電所の稼働率を70%と高く設定している。

 2002年以降、稼働率が70%を超えた年は3年しかない。静岡県の「原子力経済性等検証委員会」は浜岡原発の稼働率を65%と見積もっている(過去20年の実績)。稼働率が高ければ、電気料金は低コストになります。実際の稼働率を適用すれば、電気料金はもう少し高くなるでしょう。

2 事故処理費用の算出が不十分。

 「コスト等検証委員会」事故処理のコストを5.7兆円としているが、広域にわたる低線量の汚染地域の除染費用や、将来の健康被害の賠償金等は含んでいない。

 福島原発並みの事故がドイツで生じた場合、ライプチヒ保険フォーラムは最大損害額を730兆円(2011年5月)と試算している。

 「核燃料サイクル等技術検討小委員会第2回」では、原発事故の総被害額を279兆円と見積もっている。

 文科省の汚染マップの空間線量率0.2~0.5マイクロシーベルト/h以上の汚染地域は、2万平方km、飯館村(230平方km)の除染推定費用3,224億円から単純計算すると、除染費用は28兆円となる。

 日本経済センターが原子力委員会に提出した被害総額は20兆円、除染費用を加えると48兆円になる。

 事故処理費用を低く抑えるほど電気料金は安くなる。除染費用や損害賠償費用が5.7兆円を超えれば、更に電気料金は高くなる。

 損害額が1兆円増加すれば、事故処理費用は0.1円/kw・h増加(ものぐさ 原発コスト8.9円/kw・hは目くらまし)します。事故処理費用を48兆円とすれば、電気料金は4.8円/kw・h上昇します。100兆円ならいくらになるでしょう。 

 福島原発事故では、最終的な廃炉費用も、森を含めた除染費用も、賠償金の総額も決まっていません。こんな状態で、電気料金は8.9円/kw・hなどと言えるでしょうか。

3 事故発生率が甘い。

 「コスト等検証委員会」は事故の確率をIAEAの基準に基づいて、1.0×10のマイナス5乗/年・炉(1基の原発であれば10万年に一回の事故)としているが、事故の発生頻度は過去の実績を基に試算すべきである。

 事故発生率を国内商業炉の運転年数から算定すると、事故の確率は、2.0×10マイナス3乗/炉・年(1基の原発であれば500年に一回の事故であり、国内には50基の原発があるので、10年に一回事故が起きる)となる。

 事故発生率を10年に一回とすれば、事故処理費用は「コスト等検証委員会」の試算に比べて200倍も増加します(ものぐさ)。

 日本経済センターが原子力委員会に提出した被害総額48兆円、稼働率70%の事故リスクコストは13.7円/kw・hとなり、事故リスクコストのみでも、他の発電コストを超えてしまう。

 関連記事(ものぐさ 原発事故コスト 1.6円

4 廃炉やバックエンド費用を安く見積もっている。

 「コスト等検証委員会」は廃炉費用を680億円(モデルプラントは120万kw)としている。アメリカのスリーマイル島の原発は解体の途上であるが、これまでかかった費用は9億ドル(100円換算で900億円)以上である。出力16.6万kwの東海第一原発の解体費用は880億円と見積もられている。そのプラントの7倍(120万kw)もある原発の解体費用が680億円であるはずはない。

 更に、バックエンド費用として、使用済み核燃料の処理費用が含まれていない。新型転換炉実証炉「ふげん」は、本体の廃棄物処理に400億円、放射性廃棄物の処理に140億円必要であるという。

5 原発に要する膨大な政策コスト

 電源3法による原発立地自治体への交付金で、原発1基あたり40年間で1,240億円が交付されている。1970~2010年までにかかった政策コストを発電量で割ると、1.71円/kw・hである。

6 原発は揚水発電とセットである。

 原発は24時間一定の出力で運転しなければならない。当然夜間は電力が余る。その余った電力でダムに水をくみ上げるのが揚水発電である。この発電コストは1970~2010年の平均値で52.04円/kw・hである。この揚水発電に要するコストも原発コストに含めなくてはならない。原発がなければ揚水発電所は不必要であるから。

 以上見てきたように、コスト計算の根拠となった全ての費用に対し、「コスト等検証委員会」は最低限の数値を使って電気料金を算出しています。うがった見方をすれば、他の発電による電気料金と同程度となるように、計算したのではないかとの疑念がわきます。最悪の状態を想定した場合の電力料金も計算して欲しいものです。

 

 

 

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