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2012年9月

2012年9月 1日 (土)

核燃料サイクルは軍事目的だったのか

 8/27、原発事故担当相は、核燃料サイクルについて、「技術は残し、世界に貢献できる道を探るべきだ」と述べ、更に、「再処理技術の確立で世界の核不拡散に貢献でき、国連安保理常任理事国に核軍縮を迫れるかも知れない」と指摘しています。 

 この発言には「まやかし」が感じられます。第一に、高速増殖炉「もんじゅ」を核とする核燃料サイクルは破綻しています。第二に、核燃料サイクルは、軍事目的そのものだったのではないかとの疑念があります。第二の点について、記述します。

 「原子力の平和利用が原発である」、と洗脳されて、国民は原発を受け入れてきました。

 戦後、正力氏や中曽根元首相らの手によって、原発がアメリカから導入され、現在、世界第3位の原発保有国となっています。

 核燃料サイクルとは、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出し、これを高速増殖炉で燃やし、核分裂しないウラン238をプルトニウムに作り変える一連の工程です(注1)。しかも、発電しながら消費した以上のプルトニウムを再生産するので、これを繰り返せば、永久のエネルギー、夢のエネルギーを保有することができるはずでした。

 日本は、戦後、核兵器を所有したかったが、アメリカはこれを恐れ、核不拡散条約への署名を迫り、日本の核兵器開発を阻止しました。ドイツにも同様でした。

 日本は非核3原則を法制化し、核を「持たず、作らず、持ち込まず」を国是として、アメリカとの粘り強い交渉を経て、再処理、高速増殖炉という核燃料サイクルの研究、開発、利用の自由裁量を手に入れました。もっとも、これは、2018年までの30年間の期間限定の核燃料サイクルに関する包括的合意でした。

 核燃料サイクルの完成により、日本は、核兵器は持たないが、いざとなれば、いつでも核兵器を作れる施設と技術を持っているということを世界に示すことができるのです。これは、核兵器を持っている抑止力ではなく、「核の技術による抑止力」と言われています。このことから、核燃料サイクルは、軍事目的そのものだとも言われています。

 現在、再処理工場は稼動せず、高速増殖炉「もんじゅ」は破綻しています。現実問題としてプルトニウムは作れません。プルサーマルで誤魔化しているとも聞きます。こんな状態で、「核の技術による抑止力」を持っていると言えるのでしょうか。

 この技術により、日本が対外的なバランスを執っているとしたら、核燃料サイクルが廃止されてしまった場合の日本の安全保障はどうなるのでしょう。以下、3つの選択肢があります。

1 核兵器を持とうと思えばもてる経済力、技術力を持ちながら、核兵器の「持たず、作らず、持ち込まず」という「非核3原則」の立場。これは日本の表向きの立場です。かなりの外交力が必要です。

2 核兵器を持とうと思えばもてる経済力、技術力を持ちながら、核兵器の「持たず、作らず、持ち込まず」という「非核3原則」の立場をとりつつ、「核の技術による抑止力」を維持しようとする立場。これは日本の裏の立場です。核燃料サイクルは破綻しており、これは非現実です。外国も見透かしていることでしょう。

 核燃料サイクルは破綻し、プルトニウムは作れません。心配です。日本は「軍用プルトニウム」を既に保有していると聞きます。「常陽」で作られた19.2kg(純度99.2%)、「もんじゅ」で作られた17kg(純度99.8%)です。原爆製造に必要な純度は93%です。これで20発の原爆ができると言われています。これが抑止力になるのでしょうか。

3 一方、ドイツは、戦後、核不拡散条約に署名する時点で、、「核の技術による抑止力」を放棄し、周囲国の核武装への嫌疑を払拭して信頼を回復し、EUの中心的存在となっています。核燃料サイクルを持っていません。これで安全保障が担保できるのでしょうか。

 しかし、西ドイツは、アメリカの核兵器を国内に持ち込みたいと考え、ソ連がSS-20を配備した時に、上限150発に限ってアメリカの核弾頭を自由に使用できる「核シェアリング」を認めさせています。結果として、ドイツは核兵器を保有しているのです。

 以上、見てきました。政府は、いくら予算がかかろうと、国民の安全を脅かそうと、この(核燃料サイクルと言う)国策を続け、日本の安全保障を担保しようと考えています。しかし、核燃料サイクルは破綻し、軍用プルトニウムは製造できません。ドイツのように150発もの自由に使用できる核兵器も持っていません。日本は丸腰なのでしょうか。

 原発は平和利用ではなく、核燃料サイクルを前提とした軍事利用であることを国民に明確にし、日本の安全保障を担保するにはどうすべきかを、政府は国民に問う必要があります。日本の原子力、安全保障に関する戦略を国民に示すべきです。報道は、この問題点を明確にして国民に問いかける義務があり、国民は知る権利があります。

 私は、中国の脅威が現実化する中で、「非核3原則」の「持ち込まず」を削除して、核兵器を所有すべきだと考えます。この場合、近隣国に対して、無用の刺激を与えるかもしれません。

 ドイツ以外の核兵器を持たない国の軍事戦略も参考にすべきですが、政府は丸腰で戦う外交力を持てるでしょうか。

 軍事目的としての核燃料サイクルなど、「張子の虎」であり、「竹光」であり、「絵に描いた餅」だとも思います。

 関連記事(ものぐさ エネルギーの安全保障にもならない日本の原発)。

 (注1) ウランは、核分裂するウラン235(ウラン中の含量0.7%)と核分裂しないウラン238(99.3%)からなります。ウラン238に高速中性子を衝突させてプルトニウム239を生成する装置が高速増殖炉であり、純度98%のプルトニウム239が炉心のブランケット内に生成されます。原爆製造に必要な純度93%より遙かに高い純度です。

  

2012年9月 7日 (金)

本当 原発ゼロで電気料金2倍の3万2243円

 9/4、経産相は「原発をゼロにすると、火力発電と再生可能エネルギーの比率が高くなり、電気代を含む家計の光熱費は、月最大3万2243円となり、10年実績の1万6900円の2倍に上昇する」と指摘しました。

 本当だろうか。国民を「原発再稼動容認」に誘導する狙いがあるのでは。

 これについて、某新聞は、

・ 省エネ技術や節電行動を無視した、いわば“非現実的な数字”である。省エネ性能の向上や節電の広がり、さらに次世代自動車や省エネ住宅などの普及予測から、年間の総電力消費量は現行の1.1兆kw・hから0.8兆kw・hに減少する(政府予測は1兆kw・h)。

・ 発電単価が高くなっても家庭の電力消費が大きく減るので、電気代は今より半減する。

・ 消費電力の大きい粗鋼生産量をかさ上げするような政府試算である。

・ 家庭で約3割節電すれば、電気代は2010年と変わらない(大阪府市エネルギー戦略会議)。

・ 電力会社の地域独占など非効率を改めれば電気代は下がる。

・ 福島事故の損害賠償や除染費用が20~75兆円に上り、立地対策費などを適切に反映させれば、原子力の発電コストが最も高くなる。

 等、指摘しています。

 エネルギー戦略会議が国民に提示した「エネルギー・環境に関する選択肢」には、2030年で原発ゼロとした場合の各研究機関の試算が記載されています。

 国立環境研究所は1万4000円、大阪大学・伴教授は1万5000円、慶応義塾大学・野村准教授は2万1000円、地球環境産業技術研究機構は2万円でした。今回提示された3万2243円と大きく異なっています。各研究機関内の試算を見ても、原発比率の違いによる料金は、0~3000円程度の差異に収まっていることも付け加えておきます。原発比率は、あまり影響していないとも見えます。

 20年も先の技術革新や環境変化を考慮せず試算しているようにも感じます。私なり検討してみます。

 コスト等検証委員会の報告書によれば、各電源の1kw・hのコストは以下のようになっています。上段が2010年、下段が2030年です。

     原子力 石油  石炭 天然ガス 小水力  地熱   風力 太陽光 一般水力 

2010年  8.9円 22.1円  9.5円  10.7円   19.1円   9.2円  9.4円  30.1円   10.6円 

2030年   -   25.1円 10.3円 10.9円   19.1円   9.2円  8.6円  12.1円   1.06円     

 全電源に占める各電源比率は、以下となります。上段が2010年、下段が2030年です。

       総発電量 原子力 石油  石炭 天然ガス 太陽光 一般水力

2010年  1.1兆kw・h  26% 10%    24%    29%     1%    9%

2030年  1.0兆kw・h   0%  6%     21%   38%     26%       9%

 これを見ると、太陽光発電コストは、2010年と比べ半分程度安くなり、他はほとんど変わりません。原発コストが、石炭や天然ガスによる発電コストと同程度であることも指摘しておきます。また、2030年において、電源構成比は、原発が0となり、天然ガスと太陽光が突出して大きくなります。コストを引き上げないためには、天然ガスの輸入単価を下げ、太陽光発電パネルのコストダウンと発電効率を高める必要があります。以下見ていきましょう。

 電気料金の比較のため、「電気料金単価×電源比率」を計算し、評価の指標とします。細かなものを除き、原子力、石油、石炭、天然ガス、一般水力の合計としました。但し、2030年については、1.1兆円から1兆円に需要電力が減少するので1.1で割ります。

2010年  8.9×26+22.1×10+9.5×24+10.7×29+30.1×1+10.6×9=1116    

2030年  (8.9×0+25.1×6+10.3×21+10.9×38+12.1×26+10.6×9)/1.1=1189/1.1=1080

上記計算から2030年の電気料金は3%程度安くなります。政府試算と大きく違います。間違っているのでしょうか。

 更に、発電コストを引き下げるため、以下のような指摘もあります。

1 膜多接合太陽電池、ポストシリコン超高効率の太陽光パネルが開発 され、発電コストは2030 年に7円 /kw・h となる(コスト等検証委員会)。

2 電力自由化で電気料金は安くなる。

3 日本の天然ガスの輸入単価は、アメリカに比べ3倍、EUより2~3割高い。これは、日本の電力会社の買い方に工夫がないということだ。総括原価方式で守られているため安く買う必要がない。シェールガスの量産化で石油や天然ガスの単価は更に安くなる。

 上記を考慮して、2030年時点の電気料金を再度計算します。太陽光発電を7円/kw・h、天然ガスによる発電を7.6円/kw・hで計算すると、

2030年  (8.9×0+25.1×6+10.3×21+7.6×38+7×26+10.6×9)/1.1=931/1.1=846

となり、2010年に比べ25%も安くなります。

 これ以外に、風力発電、地熱発電、発送電分離、電力自由化、省エネの推進(注1)、日本近海でのメタンハイドレード(ものぐさ 脱原発はシェールガスとメタンハイドレードで)の産出により、更に電気料金は安くなります。某新聞の「電気料金は半減する」との主張は、あながち荒唐無稽ではありません。これに比べ、原発には除染・賠償費用、更なる安全対策費用等が加わり、発電コストは8.9円/kw・hより高くなることは間違いありません(ものぐさ 原発コスト 8.9円/kw・hは目くらまし)。

 政府は「電気料金3万2243円」を突然発表しました。作為的なものを感じます。計算根拠を示さなければ納得できません。計算データを提示し、専門家の公正な判断を仰ぐべきです。報道は専門家の助けを借りても、政府発表を検証し、その結果を国民に提示すべきです。

 政府は、「原発は絶対安全だ」、「原発による発電コストは最も安い(総合エネルギー調査会原子力部会 99年試算では5.9円)」、「原発なしでは電力不足」、「安全でもないのに大飯原発再稼動」等、国民を欺いてきました。たぶん「電気料金3万2243円」も噓でしょう。 

 (注1) 世界の省エネは、2030年までに省エネを実施しない場合の潜在的エネルギーの30%に達する(米 エクソンモービル社)。ハイブリッド車の出現により、1995年と比べ、燃費は40%以上向上している。今年の夏、全国平均気温が過去3番目に高かったにも関わらず、原発の稼動が2基であったにも関わらず、8月のピーク需要を猛暑だった10年夏と比較すると、使用電力は関電11.1%減、九電9.5%減、四電8.6%減でした。今夏、最悪のピーク需要であった8/3、関電は他電力から500万kwを融通できたと言い、大飯原発なしでも乗りきれた計算だ。全国民の努力の結果です。

 関連記事 (ものぐさ 原発ゼロでも経済は失速しない) 

 

 

2012年9月11日 (火)

浜岡原発 津波以外の危険

 浜岡原発に建設される18mの防潮堤により、原発は安全である、と中電は主張していますが、果たして安全なのでしょうか。

 原発は、18mの防潮堤で守れないことを以前述べました(ものぐさ 浜岡原発 津波高さ21mは18mの防潮堤で安全か 浜岡原発 津波高さ21mは18mの防潮堤で安全か その2)。以下、簡単に復習します。

・ 18mの防潮堤では21mの津波(3月7日の時点で21mとした津波高さは修正され、19mとなる)を防げません。浸水深さは、1~4号機で4~6m、5号機で7~9mとも言われています。一旦、防潮堤内に浸水した海水は防潮堤にさえぎられて排水できません。対応は一秒を争います。可能でしょうか。

・ 津波の遡上高は、津波高さの1~4倍にもなる。(気象庁HP)。21mの4倍は84mです。海抜40mに設置されるガスタービン発電機、燃料タンクや電源盤は機能するでしょうか。

 今回は、上記以外の危険性について述べます。

1 50tもの(冷却材用)再循環ポンプは、フロアーに固定することができず、支持部材や同配管で支えられているだけです。宙吊り状態です(ものぐさ 脆弱な原発構造)。配管系は地震動を吸収できると言われているが、実証実験で安全性が確認されているわけではありません。また、同配管の固有振動は地震の振動と一致(共振)しないように設計されていますが、支持部材が外れるようなことが起きれば、地震動の周期と配管の固有振動が一致する可能性も十分出てきます。この場合、配管は地震の振動に共振し大きく揺れ、破断し、大量の冷却材が喪失し、炉心は溶融します。中でも再循環水出口部のノズルに接続する配管の内径は450mm以上と極めて大きい。この部分が破断すると、大量の冷却材が失われる大口径破断(LOCA)となり、炉心溶融に直結します。5号機ではこの宙吊り方式を変更しています。宙吊り方式は危険である、ということを語っています。

2 配管は横向きに設置されているので、地震の上下動の影響を強く受けます。上下動は水平動の1/2の想定です。上下動と水平動の比率0.5は、平均的な数値に過ぎず、地震によっては1.0を上回るものもあります(阪神大震災)。比率が0.5以上の地震が起きた場合、配管は無事でしょうか。

3 地震動の想定は1000ガルに過ぎず、この想定を超える地震動があった場合、複数本の配管が破断する可能性があります。配管の1本が破断した場合、30秒で燃料が露出するが、複数本の破断が起きれば、更に短時間で燃料が露出します。再循環系の安全審査では、配管1本の破断とポンプ1つの停止しか想定していません。

3 原子炉建屋はタービン建屋より高い耐震力を有しています。当然、地震による揺れ方は両建屋で異なり、揺れの位相がずれる可能性があります。原子炉建屋(Asクラスの耐震力)とタービン建屋(Bクラスの耐震力)は配管で接続されているので、両建屋間で異なる隆起(あるいは陥没)が生じ、配管破断の可能性が生じます。設計上は1mのギャップを想定しているに過ぎません。

4 600m離れた沖合いに取水塔が設置され、海底下20mに設けた直径約5~7mの海底トンネルで、原発と取水塔はつながっています。地震動で取水塔や海底トンネルが損傷すれば、冷却水が取り込めず、炉心は溶融します。

5 格納容器内の高温・高圧蒸気は、ベント管、ダウンカマーを経て圧力抑制室に導かれ、水により凝縮します。この凝縮により、格納容器内の蒸気圧力は一定に保たれます。ところが、地震によるスロッシング(容器内の液体が、外部からの比較的周期の長い振動によって謡動すること)が起きると、圧力抑制室内のダウンカマーが露出し、格納容器内の高温・高圧蒸気は凝縮されず、圧力抑制室、ダウンカマー、格納容器と再循環し、圧力が上昇し続け、格納容器は損壊に至るのです。地震が起きないアメリカでは、このような状況を想定していません。日本は、地震を想定していないアメリカの原発を導入しているのです。

6 使用済み核燃料プールは縦14m、横13m、水深12mの容器で、プール底部の高さは地上15mです。地震動により、スロッシングが始まると、プールの水は側壁を越え、原子炉建屋に溢れでます。水が失われれば、燃料の冷却機能は失われ、燃料の溶融に進展します。M6.8の新潟中越沖地震では、7基全てのプールから溢水しています。

7 志賀原発では制御棒の引き抜けにより、臨界事故が発生しています。駿河湾沖地震(M6.5)では、浜岡原発5号機の地下2階において426ガルの地震動が起き、制御棒30本の駆動装置が故障しています。M9の地震となれば、駿河湾沖地震(M6.5)の5620倍のエネルギーが原発を襲うこととなります。

8 震度7、M9の地震が発生し、上下動と水平動の比率が1.0程度の揺れに浜岡原発が襲われた場合、原子炉を緊急停止(スクラム)することができない可能性があります。

9 原発敷地は、砂浜や砂丘、河川を埋め立てて盛り土をして造成された土地です。旧浜岡町で液状化現象がみられたこと、静岡県も浜岡原発の敷地のほとんどで液状化の可能性があることを予測しています。液状化により、原子炉建屋が傾斜し、それによる配管の破断の可能性はないでしょうか。

 先日、アメリカの火星探査機が無事着陸しました。今後、生物の存在が調査され、数々の事実が地球にもたらされるでしょう。そのミッションは、1万とも10万(?)とも言われる鎖の連鎖にたとえられ、その1つでも切れれば、このミッションは成功しなかったと、担当者は述べていました。

 原発の部品点数は10万点以上(確か、車で3万点)でしょう。炉心溶融に達するまでのシナリオは、無数にあります。複合的なシナリオも想定されます。1つのシナリオだけをみても、炉心溶融を回避するには数多くのハードルがあります。防御システムの鎖のどれか1つでも切断されれば、事態は更に悪化していくでしょう。東電のテレビ会議で明らかになった担当者の右往左往ぶりを見れば、綱渡りの対応であったことは容易に想像できます。原子炉が爆発しなかったことは奇跡といっても良いでしょう。

2012年9月18日 (火)

どう見る 民主党原発政策

 9/14、政府は原発政策を明らかにしました。その骨子は以下の通りです。一見原発ゼロに向けての宣言のように見えるが、国民は期待してよいのでしょうか。以下、疑問点を挙げます。

1 (骨子)2030年代、原発ゼロが可能となるよう、あらゆる政策資源を投入する。

 「あらゆる政策資源」とは、太陽光発電に代表される自然エネルギーの導入、シェールガスに代表される天然ガスの買い付け価格の低減、発送電分離(機能または法的に分離)、電力自由化、スマートグリッド化、省エネ機器の開発、節電、固定価格買取制度、研究費や補助金の増額等を言うのでしょう。

 原子力政策には膨大な資金が投入されてきました。それに比べれば、他のエネルギー開発等に対する資金投入は微々たるものです。太陽光発電コストは、2030年には現在の30円/kw・hから7円/kw・hに低下するとも言われています。

 政策にどの程度の資金が投入されるのでしょうか。資金がなければ研究・開発は進みません。資金の投入程度が、政府の「やる気」の試金石となります。発送電分離や電力自由化は順調に進むのでしょうか。これも政府の「やる気」の試金石となります。監視していく必要があります。「原発をゼロとするために、徹底的に政策資源を投入する」と、政府は言うべきでしょう。覚悟がありません。

 30年代に原発をゼロにすると言いながら、島根3号機(進捗率 93.6%)と大間原発(同37.6%)の工事は再開されます。原発の安全基準は決定していません。国民に対し、この発言は「原発推進」と写ります。完成すれば50年代まで稼動でき、骨子と矛盾します。

2 (骨子)40年の運転制限を厳格適用し、安全確認された原発は再稼動する。

 「運転制限」とはどう言う意味でしょう。40年での廃炉と同じでしょうか。確認したいものです。条件を満たせば一定期間の延長を可能とする例外規定を「厳格適用」は認めない、と言うことでしょうか(ものぐさ 原発廃炉 40年は本当か)。

 9月に設立される原子力規制委員会の判断により、安全の確認された原発は再稼動します。しかし、委員長及び委員について、国会の同意が必要であるにも関わらず、人事案は審議されず、野田首相は国会閉会中にその人事を政治判断で認める模様です。委員長と2名の委員については、国民から疑問の声も出ています(ものぐさ 原子力規制委員会は中立か)。そのような委員会の判断を国民は納得できるでしょうか。同委員会の判断を監視していきましょう。

3 (骨子)原発の新増設はしない。

 現在建設中や計画途上の原発はどうするのでしょう。島根3号機と大間原発の工事は再開します。これは、工事再開を望む立地自治体に配慮したものです

4 (骨子)核燃料サイクル事業は続ける。

 この文言は矛盾しています。このような発言が政府の信頼を落とすのです。

 まず、核燃料サイクルの中核である高速増殖炉「もんじゅ」の実現は不可能です(ものぐさ 核燃料サイクルは軍事目的だったのか)。「もんじゅ」が稼動できないにも関わらず、六ヶ所村再処理工場は稼動します。プルトニウムは生産され続け、再処理に伴う高レベル放射性廃棄物は増え続けます。その付けは、将来の世代が10万年にもわたって負担することになります。プルトニウムを混入したMOX燃料によるプルサーマル発電も試みられていますが、原発よりも危険であり、地元の反発も強く、プルサーマル発電は不可能でしょう。

 また再処理工場が再稼動すれば、その過程で放出される放射性廃棄物は原発からのそれよりも遙かに危険度が高いといわれています(ものぐさ 六ヶ所村 核燃料再処理工場再開か  怖い 六ヶ所村再処理工場)。

 では、何故、このような矛盾した政策をし続けるのでしょう。

 1つには、立地自治体の立場を考慮しています。青森県と六ヶ所村は、同地域を最終処分場としないことを前提に再処理事業を受け入れました。その契約には、「①使用済み核燃料の最終処分場としない。②再処理が困難になれば、使用済み核燃料は青森県から搬出する。」と書かれています。②によれば、六ヶ所村の使用済み核燃料は、全国の原発に送り返され、全原発は、たちどころに停止に追い込まれます。使用済み核燃料の最終処分場を決める前に、このような事業を始めた当時の政府に責任があります。

 また、青森県は、「再処理に代わる振興策などありえない」と、核燃料サイクルの維持を訴えています。当然、核燃料サイクルの破綻や再処理の怖さは認識しているはずですが、再処理事業がなくなれば、自治体財源となる電源3法交付金が入らなくなります。青森県としてはお金の問題です。これに対しては、立地自治体の財政が破綻しないような期間限定の交付金の創設しかありません。

 2つ目は、アメリカ政府との関係があります。「原発ゼロ」を説明するため、9/12、政府は首相補佐官をアメリカに派遣しました。官房長官は「訪米の結果が当然考慮の対象になる」と記者会見で述べています。アメリカの対応によっては、「原発ゼロ政策」を撤回するということでしょうか。政府は国民の声より、アメリカの意向を重視しているようです。

 使用済み核燃料に含まれるプルトニウムの保有を、平和目的を前提に認める「日米原子力協定」の見直しが浮上しかねません。プルトニウム生産は、核燃料の再利用をするためであり、決して軍事利用ではないと言うのが日本の立場です。(ものぐさ 核燃料サイクルは軍事目的だったのか)。核燃料サイクルが破綻すれば、「何のためのプルトニウム生産か」とアメリカから追求されます。このように日本が怯える「日米原子力協定」とはどのようなものでしょうか。興味がわきます(ものぐさ 日本が怯える日米原子力協定)。日米安保条約を締結しているのだから、国益を損なわない方策をアメリカと本音で話しあうべきです。

5 (骨子)廃棄物の減量などを目指した研究を行い、年限を区切って成果を確認の上、研究を終える。

 9/12、民主党が提出した原案「高速増殖炉もんじゅは、廃棄物削減を目的とした期間限定の研究炉とする」と異なります。「研究炉」と言う文言が消えています。「研究炉」ではなく、「もんじゅ」をそのまま運転し続けるということでしょうか。以前起きた「ナトリウム火災事故」を思いだします。骨子の目的に沿った、危険性のない装置での研究を望みます。

 「もんじゅ」の予算を削ってでも、再生可能エネルギーに予算を投入してください。メリハリを付けた政策を望みます。

6 (骨子)再生可能エネルギーの発電量を現在の3倍(3000億kw・h)以上とする。

 具体的な数値目標は歓迎します。

7 (骨子)原発立地自治体への支援措置を講ずる。

 原発立地自治体は「原発ゼロ」により財政破綻します。電源3法交付金に代わる支援だとすれば、「脱原発」後の地域振興策に大きな役割を果たします(ものぐさ 原発廃炉交付金の新設をせよ)。これを指しているのでしょうか。

8 (骨子)戦略は検証を行い、不断(絶え間なく続く)に見直す。

 これは、当然です。しかし、国民が忘れた頃「こっそり」と原発推進に変更されてはかないません。経済官庁幹部は、「ゼロ目標を今後見直す可能性を広げた」と言っています。「原発ゼロ」にはできない、または原発推進もありえるということでしょうか。

 以上見てきたように、国民、経済界、アメリカ、原発立地自治体等に配慮したギリギリの方針です。国難とも言うべき原発事故が起きたのです。願わくば、政治の強い意思や哲学を骨子として欲しいと感じました。「原発ゼロ」と言ったものの、「後は、野となれ、山となれ」と、政府が思っているとしたら、国民は浮かばれません。歯止めとして、この政策の法制化を望みます。

 

2012年9月23日 (日)

日本が怯える日米原子力協定

 「原発ゼロ」を説明するため、9/12、政府は首相補佐官をアメリカに派遣しました。官房長官は「訪米の結果が当然考慮の対象になる」と記者会見で述べています。アメリカの対応によっては、「原発ゼロ政策」を撤回するということでしょうか。政府は国民の声より、アメリカの意向を重視しているようです(ものぐさ どう見る 民主党原発政策)。

 このように日本が怯える「日米原子力協定とは、どんなものでしょう。昭和63年に結ばれた協定を見てみましょう。詳しくは原文を読んでください。条文と簡単な補足をします。間違っているかも知れません。

前文 

 両国政府は「平和目的利用のための原子力の研究、開発及び利用の重要性を認識し、協力を継続させ、かつ拡大させることを希望し、世界における平和利用のための原子力の研究、開発及び利用が不拡散条約の目的を最大限に促進する態様で行われることを確保すること」を誓約する。

 原子力は平和目的に限定し、核不拡散条約を遵守すると、日本はアメリカに対し誓約しています。

第2条1項 

 日本は資材(原子炉用資材)、核物質(ウラン、トリウム、プルトニウム等)、設備(原子炉の完成品)及び構成部分(設備の構成部分その他の物品)をアメリカから受領できる。

 協定に違反すれば上記物品をアメリカから輸入できないことになります。原発は停止します。

第3条 

 プルトニウム、ウラン233並びに高濃縮ウラン(ウラン235の濃度が20%以上)は、両国政府の合意する施設においてのみ貯蔵する。

 管理を行い、核を拡散させないための条文です。

第5条 

 核分裂生成物(プルトニウム、ウラン233、高濃縮ウラン)は、両国政府の合意により再処理できる。

 この規定により、六ヶ所村再処理工場での研究・開発等が可能となります。アメリカからの疑義があれば、再処理はできません。

第8条

 生産された核物質は、いかなる核爆発装置のためにも、いかなる核爆発装置の研究または開発のためにも、いかなる軍事目的のためにも使用してはならない。

 原爆の製造・研究を禁止したものです。

第12条

 第3条から第9条まで若しくは第11条の規定に違反した場合、アメリカは、この協定を終了させ、核分裂生成物のいずれかの返還をも要求する権利を有する。

 核燃料をアメリカに没収されることになります。

第14条

 協定の解釈または適応に関し問題が生じた場合には、両国政府は相互に協議する。

 冒頭の官房長官派遣は、この条文によるものと思われます。

第16条

 協定は30年間効力を有する。

 2018年にこの協定は終了するので、日本が原発を稼動するためには、再協定が必要になります。

 では、何故怯えているのでしょう。「原発ゼロ」であれば、使用済み核燃料の再処理は必要ありません。再処理しないにも関わらず増産し続けるプルトニウムをアメリカは「何故だ」と追求します。軍事目的ではないかと疑います。協定違反となり、ウランの輸入は停止し、核分裂生成物をアメリカに返還しなくてはなりません。たちどころに原発は停止します。これを恐れているのでしょう。

 これに違反しないために、日本は、できもしない核燃料サイクルを続ける決定をしたのです。詭弁もいいところです。アメリカに言い訳が立つと考えたのでしょう。このような見え透いた噓をアメリカはお見通しです。

 決して軍事目的で原発を運転しているのではない、とアメリカを始め世界を説得すべきです。正心誠意(ものぐさ 野田首相変節 減原発)の外交を怠っているとしか思えません。こんな説得はめんどくさいと考えているのでしょうか。

 ドイツも原発ゼロを宣言しました。全原発が停止するまで、ドイツも使用済み核燃料が増え続けます。ドイツで許されることが、何故日本で許されないのでしょうか。日本の外交努力は不足しています。

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