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2012年9月 7日 (金)

本当 原発ゼロで電気料金2倍の3万2243円

 9/4、経産相は「原発をゼロにすると、火力発電と再生可能エネルギーの比率が高くなり、電気代を含む家計の光熱費は、月最大3万2243円となり、10年実績の1万6900円の2倍に上昇する」と指摘しました。

 本当だろうか。国民を「原発再稼動容認」に誘導する狙いがあるのでは。

 これについて、某新聞は、

・ 省エネ技術や節電行動を無視した、いわば“非現実的な数字”である。省エネ性能の向上や節電の広がり、さらに次世代自動車や省エネ住宅などの普及予測から、年間の総電力消費量は現行の1.1兆kw・hから0.8兆kw・hに減少する(政府予測は1兆kw・h)。

・ 発電単価が高くなっても家庭の電力消費が大きく減るので、電気代は今より半減する。

・ 消費電力の大きい粗鋼生産量をかさ上げするような政府試算である。

・ 家庭で約3割節電すれば、電気代は2010年と変わらない(大阪府市エネルギー戦略会議)。

・ 電力会社の地域独占など非効率を改めれば電気代は下がる。

・ 福島事故の損害賠償や除染費用が20~75兆円に上り、立地対策費などを適切に反映させれば、原子力の発電コストが最も高くなる。

 等、指摘しています。

 エネルギー戦略会議が国民に提示した「エネルギー・環境に関する選択肢」には、2030年で原発ゼロとした場合の各研究機関の試算が記載されています。

 国立環境研究所は1万4000円、大阪大学・伴教授は1万5000円、慶応義塾大学・野村准教授は2万1000円、地球環境産業技術研究機構は2万円でした。今回提示された3万2243円と大きく異なっています。各研究機関内の試算を見ても、原発比率の違いによる料金は、0~3000円程度の差異に収まっていることも付け加えておきます。原発比率は、あまり影響していないとも見えます。

 20年も先の技術革新や環境変化を考慮せず試算しているようにも感じます。私なり検討してみます。

 コスト等検証委員会の報告書によれば、各電源の1kw・hのコストは以下のようになっています。上段が2010年、下段が2030年です。

     原子力 石油  石炭 天然ガス 小水力  地熱   風力 太陽光 一般水力 

2010年  8.9円 22.1円  9.5円  10.7円   19.1円   9.2円  9.4円  30.1円   10.6円 

2030年   -   25.1円 10.3円 10.9円   19.1円   9.2円  8.6円  12.1円   1.06円     

 全電源に占める各電源比率は、以下となります。上段が2010年、下段が2030年です。

       総発電量 原子力 石油  石炭 天然ガス 太陽光 一般水力

2010年  1.1兆kw・h  26% 10%    24%    29%     1%    9%

2030年  1.0兆kw・h   0%  6%     21%   38%     26%       9%

 これを見ると、太陽光発電コストは、2010年と比べ半分程度安くなり、他はほとんど変わりません。原発コストが、石炭や天然ガスによる発電コストと同程度であることも指摘しておきます。また、2030年において、電源構成比は、原発が0となり、天然ガスと太陽光が突出して大きくなります。コストを引き上げないためには、天然ガスの輸入単価を下げ、太陽光発電パネルのコストダウンと発電効率を高める必要があります。以下見ていきましょう。

 電気料金の比較のため、「電気料金単価×電源比率」を計算し、評価の指標とします。細かなものを除き、原子力、石油、石炭、天然ガス、一般水力の合計としました。但し、2030年については、1.1兆円から1兆円に需要電力が減少するので1.1で割ります。

2010年  8.9×26+22.1×10+9.5×24+10.7×29+30.1×1+10.6×9=1116    

2030年  (8.9×0+25.1×6+10.3×21+10.9×38+12.1×26+10.6×9)/1.1=1189/1.1=1080

上記計算から2030年の電気料金は3%程度安くなります。政府試算と大きく違います。間違っているのでしょうか。

 更に、発電コストを引き下げるため、以下のような指摘もあります。

1 膜多接合太陽電池、ポストシリコン超高効率の太陽光パネルが開発 され、発電コストは2030 年に7円 /kw・h となる(コスト等検証委員会)。

2 電力自由化で電気料金は安くなる。

3 日本の天然ガスの輸入単価は、アメリカに比べ3倍、EUより2~3割高い。これは、日本の電力会社の買い方に工夫がないということだ。総括原価方式で守られているため安く買う必要がない。シェールガスの量産化で石油や天然ガスの単価は更に安くなる。

 上記を考慮して、2030年時点の電気料金を再度計算します。太陽光発電を7円/kw・h、天然ガスによる発電を7.6円/kw・hで計算すると、

2030年  (8.9×0+25.1×6+10.3×21+7.6×38+7×26+10.6×9)/1.1=931/1.1=846

となり、2010年に比べ25%も安くなります。

 これ以外に、風力発電、地熱発電、発送電分離、電力自由化、省エネの推進(注1)、日本近海でのメタンハイドレード(ものぐさ 脱原発はシェールガスとメタンハイドレードで)の産出により、更に電気料金は安くなります。某新聞の「電気料金は半減する」との主張は、あながち荒唐無稽ではありません。これに比べ、原発には除染・賠償費用、更なる安全対策費用等が加わり、発電コストは8.9円/kw・hより高くなることは間違いありません(ものぐさ 原発コスト 8.9円/kw・hは目くらまし)。

 政府は「電気料金3万2243円」を突然発表しました。作為的なものを感じます。計算根拠を示さなければ納得できません。計算データを提示し、専門家の公正な判断を仰ぐべきです。報道は専門家の助けを借りても、政府発表を検証し、その結果を国民に提示すべきです。

 政府は、「原発は絶対安全だ」、「原発による発電コストは最も安い(総合エネルギー調査会原子力部会 99年試算では5.9円)」、「原発なしでは電力不足」、「安全でもないのに大飯原発再稼動」等、国民を欺いてきました。たぶん「電気料金3万2243円」も噓でしょう。 

 (注1) 世界の省エネは、2030年までに省エネを実施しない場合の潜在的エネルギーの30%に達する(米 エクソンモービル社)。ハイブリッド車の出現により、1995年と比べ、燃費は40%以上向上している。今年の夏、全国平均気温が過去3番目に高かったにも関わらず、原発の稼動が2基であったにも関わらず、8月のピーク需要を猛暑だった10年夏と比較すると、使用電力は関電11.1%減、九電9.5%減、四電8.6%減でした。今夏、最悪のピーク需要であった8/3、関電は他電力から500万kwを融通できたと言い、大飯原発なしでも乗りきれた計算だ。全国民の努力の結果です。

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