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2012年10月

2012年10月 1日 (月)

原子力規制委員会 安全基準の策定 その1

 9/19、原子力規制委員会は発足しました。国会同時人事を経ない状況でのスタートです。「原子力村」出身者と称される委員長及び委員に対し、国民は不信感を持っています(ものぐさ 原子力規制委員会は中立か)。

 田中俊一原子力規制委員長は、「原子力村」批判について、「出身や仕事によって十把一からげに判断することには反対だ」と述べ、レッテルを貼られることに反発しました。同委員長の所属した日本原子力研究所(旧原研)は、基礎研究が主で、電力会社や経産省とは関係が薄い、と言われています。

 昨日、テレビ出演している同委員長を見ました。学者らしい、物静かで、誠実そうな顔立ちで、利権にまみれ修羅場をくぐりぬけてきた人の顔ではありませんでした(もっとも、人を見る自信はありませんが)。「この人に任せよう」と言う気持ちになったところです。

 同委員長は、国民の批判に釈明し、同委員会の中立性を唱えていました。今後、注視することは、安全基準の内容と再稼動問題です。発足時に同委員長が言ったことと、その後、具体化した事実との差異を注意深く監視していかなければなりません。

 そこで、発足時における同委員長の発言内容をここに記しておきます。

1 再稼動

 ・ (再稼動を判断する)政府の暫定基準を見直すまでゴーサインを出すのは無理。

 ・ 見直し作業が終わるまで再稼動の判断はしない。 

 ・ 活断層の影響があると判断された原発は再稼動を認めない。

 ・ 大飯原発については、防災対策もできていないなか、夏の電力受給などを考えた政治的な判断である。基準には抜けがあると思うので今後詰めたい。

2 安全基準 

 ・ 新たな安全基準の策定は10ヶ月程度かかる。

3 40年廃炉

 ・ 40年ルールの延長は「相当困難」。

 ・ 安全性にわずかでも曇りがあればちゅうちょなく運転終了を判断する。

 ・ 40年廃炉ルールの妥当性を検討。

4 新増設(大間原発、島根3号機)

 ・ 新たな安全基準に不適合なら運転を停止する。

 ・ 建設を待てというつもりはない。しかし新基準ができるのを待ったほうが無駄がない。

 どのような安全基準を作るかがもっとも重要です。福島原発事故を検証し、地震学者や原子炉設計者の意見を取り入れ、妥協のない安全基準とすべきです。地震のないアメリカの設計規準で作られた原発であることも考慮されなくてはなりません。再稼動ありきで、安全基準に手心を加えてはなりません。

 いままで、「新耐震審査指針(2006年)に適合したものは安全である」とされていました。当然、この安全基準よりも厳しいものにしなくてはいけません。(ものぐさ 「バックチェック」と「バックフィット」で原発は安全か)。

 大飯原発を再稼動するために政府が根拠とした暫定安全基準でもよいはずはありません。

 最近の地震学の知見を取り入れた安全基準としてください。「近距離にある活断層は相互に関連せず、地震は連動して起きない」とした審査基準は見直してください。複数の活断層が関連すれば、活断層の総延長は増大し、それに比例するように地震規模は増大します。従来、この甘い審査基準により、電力会社は地震規模を過小に評価し、原発を作り続けてきました。

 原子炉建屋やタービン建屋等の耐震力も見直すべきです。建屋の耐震力の違いによる配管破断の可能性も検討されなければなりません。脆性破壊の問題も考慮すべきです。使用済み核燃料プールは安全でしょうか(ものぐさ 脆弱な原発構造)。

 安全基準を定めるに至った経緯や根拠や議論内容は公表されなければなりません。同委員会の透明性が問われます。同委員会以外の専門家の批判にも耐えられるでしょうか。

 再稼動するためには、全ての原発を新安全基準にバックフィットさせなければなりません。厳密にバックフィットできているかが重要です。そこに、妥協があってはなりません。

 原発事故が起きたときの住民の被曝防止や避難についても、安全が担保されなければなりません。大飯原発で事故が起きれば、避難道路が破壊される可能性もあります。住民避難や事故対策の車両も通れません。この問題を解決しなければ大飯原発の再稼動はできません。

 万が一原発事故が起きたとき、住民は故郷を捨てなくてはなりません。急性障害、晩発性障害で死に至る可能性もあります。「それでも金のため、原発の再稼動を認めますか」と、30km圏内の住民の了承を得ることも再稼動の要件の1つです。

 「被曝する可能性のある全住民の移転は可能か」も再稼動の要件です。移転先の土地や賠償費用及び移転費用は確保できるのでしょうか。福島原発事故による住民の苦しみを見てください。絶望的です。「新安全基準に従っているから、原発事故は起きない」などと言う新たな安全神話を持ち出さないでください。「20ミリシーベルト以下なら帰還しても安全です」などと言わないでください。

 六ヶ所村が爆発したらどうなるのでしょう。高木仁三郎氏は、廃液100立方メートルのタンクが破壊され、1%の放射能が外部に放出したときの試算をしています。雨天の場合、半径100kmを超える範囲が緊急避難地域(100ミリシーベルト)となり、半径360kmの範囲は10ミリシーベルトになると言います。240立方メートルの廃液が放出すれば、全土は終わりになると言います(ものぐさ 怖い六ヶ所村再処理工場)。

 真の安全基準ができれば、、その対応への莫大な費用から、廃炉となる原発も当然出てくるでしょう。地震国日本における原発の耐震性についても真面目に取り組んで欲しい。そうすれば、2030年を待たずに原発はゼロとなるでしょう。

 追加) 9/24、原子力規制委員会は次のように言っています。

1 政府が原発の再稼動の前提としてきた「ストレステスト」については、再稼動の判断の根拠としない。

2 ストレステストについて、地震と津波に限定した想定がこれでよいのかは議論がある。

3 原発運転の是非は、社会的、政治的判断を伴う。規制委員会が再稼動を認めた原発を動かすかどうかは、政府、政治の問題だ。

 これについて、異論があります。経産相は「規制委員会が安全性を判断する以上、内閣の誰かがその判断を否定することはできない」と述べています。独立性の高い機関とすべきだとの趣旨で、内閣から独立した「3条委員会」として発足した経緯もあります。同委員会は、全ての責任を背負って再稼動の判断をしてください。責任の所在が不明確な組織の再稼動など誰が納得するでしょうか。

 

2012年10月 8日 (月)

原発直下の活断層

 原発敷地内において、活断層の可能性が否定できず、再調査を指示されている原発が相次いでいます。活断層が直下にあれば、小さな揺れでも建屋が傾く可能性があります。活断層であれば、立地不適格となり、廃炉を迫られる可能性があります。

 活断層の問題にどう対処するか、原子力規制委員会の本気度が試されます(ものぐさ 原子力規制委員会 安全基準の策定 その1)。

 以下、指摘されている原発を列挙します。

1 活断層(注1)の可能性があり、追加調査を指示されたもの。

1-1 敦賀原発

 ・ 原子炉直下を通る破砕帯(注2)が活断層である可能性がある。浦底断層との連動を指摘。

 ・ 破砕帯は、地表を直線的に伸び、鎌で削ると軟らかい。古い断層とは言い切れない。

 ・ 敷地内を通る「浦底断層」と他の活断層とが100kmにわたって連動した場合の地震動の再計算を指示。

 ・ 期限 11月末。

1-2 志賀原発1号機

 ・ 活断層(S-1断層)の疑いが浮上し、専門家は「これぞ、活断層の典型」と言う。

 ・ 期限 2013年1月末。

 ・ 北9kmにある「富来川南岸断層」を調査。

1-3 東通原発

 ・ 活断層の可能性があり、再調査を指示される。

 ・ 12~13万年前から最近まで動いたような断層が複数あり。

 ・ 典型的な活断層と似た形状。

 ・ 期限 11月末。

1-4 大飯原発

 ・ 活断層の可能性がある。

 ・ 破砕帯の再調査を指示。

 ・ 12月末。

2 追加調査の必要性を検討中のもの。

2-1 浜岡原発

 ・ 弱面断層の可能性を指摘。

2-2 もんじゅ

 ・ 500m西の「白木ー丹生断層」という活断層を指摘。

 ・ 副断層の可能性を指摘。

 ・ 活断層ではないとの根拠が不十分。

 ・ 敷地内で破砕帯が9本確認。内8本は原子炉建屋の直下。

2-3 美浜原発

 ・ 1km東の「白木ー丹生断層」という活断層を指摘。

 ・ 同断層に引きずられて動く副断層の可能性を指摘。

 ・ 活断層ではないとの根拠が不十分。

 ・ 西10km沖の「B断層(21km)」と陸の「三方断層27km)」が連動した場合の地震動の再評価を指示。

2-4 高浜原発

 ・ 活断層でないとする根拠は不足。

 ・ 敷地内に「破砕帯」があり、追加検討を指示。

2-5 島根原発

 ・ 弱面断層の可能性を指摘。

 ・ 西にある3つの断層(51.5km)が連動した場合の再評価を指示。

3 活断層ではないとする事業者の主張を原子力安全・保安院が了承したもの。

3-1 女川原発

3-2 東海第2原発

3-3 伊方原発

 ・ 周辺の3つの断層(130km)が連動した場合、基準地震動を超える。

3-4 玄海原発

3-5 川内原発

4 継続審議中のもの。

4-1 泊原発

4-2 柏崎刈羽原発

 ・ 専門家は「活断層の年代評価を詳細にすべきだ」と指摘。

 ・ 1号機直下に「α」、「β」と言う断層あり。

 ・ 活断層の調査を開始。

 ・ 期限 2013年2月末。

4-3 福島第1原発

4-4 福島第2原発

5 建設中のもの。

5-1 大間原発

 ・ 専門家は下北半島の海底に活断層がある可能性を指摘。

 原子力規制委員会からの指摘を受け、電力会社は活断層の評価をしますが、活断層ではないと言うに決まっています。本来なら、その調査は、電力会社とは関係のない第三者機関に委ねられるべきです。電力会社のデータが捏造されているかも知れません。同委員会はそれを見抜くことができるでしょうか。注意深く監視していかなければなりません。

(注1) 断層の分類からみた活断層の定義

① 地震を起こす「主断層」  12~13万年前以降に動いた場合、活断層とみなす。、

② 近くの断層に引きずられて動く「副断層」  12~13万年前以降に動いた場合、活断層とみなす。、

③ 遠くの地震で地盤の弱い部分がずれる「弱面」  地面がずれる程度や建屋・設備への影響を電力会社に評価させ、稼動の適否を判断する。

(注2) 破砕帯の定義

 断層運動により、地層あるいは岩石が粉々に砕かれた部分が一定の幅をもち、一定の方向に延びている場合、その部分を破砕帯という。幅数cmの場合から数百mの場合まである。大規模な断層には大規模な破砕帯を伴う場合が多い

2012年10月11日 (木)

大間原発の危険性

 9/28、政府は大間原発の建設工事(進捗率 37.6%)を年内にも再開する方針を固めました。経産相は、「建設途上のものは原則の外側にある」として、再開を容認しました。

 9/14、政府は原発ゼロ政策の骨子の1つとして「原発の新増設はしない」と発表したばかりです(ものぐさ どう見る 民主党原発政策)。2030年に「原発ゼロ」とする方針と矛盾します。

 民主党の2枚舌、3枚舌には辟易していますが、より危険性の高いとされる大間原発の工事を何故再開するのでしょう。下北半島の海底には、活断層の存在が指摘されており(ものぐさ 原発直下の活断層)、大間原発は危険極まりない原発です。この危険な立地場所で、更に危険な「フルMOX燃料」によるプルサーマル発電をしようとしています。では、見てみましょう。

 プルトニウムの処理に困った政府は、ウラン燃料用に設計された原発に1/3程度のMOX燃料を装荷し、燃やしてしまおうと考えました。これがプルサーマル発電計画です(全17基・・・下記参照)。

 装荷1/3の原発でも危険であるのに、燃料の全てをMOX燃料としたプルサーマル発電を大間で運転しようとしています(国内唯一のフルMOX発電所)。使用済み核燃料から再処理されたプルトニウムを燃やすための原発です。政府は、「フルMOX燃料」用に原子炉を改良したとしていますが、果たして安全性でしょうか。推進派の言い分を検証します。

1 ウラン燃料とMOX燃料の燃焼 

 ウラン燃料は、最初はウランのみが燃焼(核分裂)しますが、時間の経過とともに、燃料中にプルトニウムが生成され、このプルトニウムが燃焼するようになります。最終的には発電で得られるエネルギーの約3分の1はプルトニウムによって得られます。一方、MOX燃料の場合には、最初から主としてプルトニウムが燃焼します。したがって、原子炉内全体を見ると、ウラン炉心でもMOX炉心でもウランとプルトニウムが混在した状態で燃焼することに変わりはありません。

 (反論) ウラン燃料でも、プルトニウムが燃焼しているから、危険度は、MOX燃料によるプルサーマル発電と何ら変わらないと言ってます。

 ウランの燃焼により生じたプルトニウムは燃料棒内に均一に存在しています。 ところが、プルサーマル発電では、使用されるMOX燃料は原子炉内に均一に存在しているのではなく、ウラン燃料とMOX燃料はまだら模様に原子炉内に配置されています。原子炉全体にMOX燃料やプルトニウムが均一に存在しているわけではありません。ここが大きな違いです。

 ウランやプルトニウムは熱中性子を吸収することにより核分裂がおきます。MOX燃料はウラン燃料に比べて20倍も熱中性子の吸収力が大きく、核分裂反応も強い。この性質により、燃え方にムラが生じ、良く燃える燃料棒が過熱・破損しやすくなります。燃え方を均一にするための対策が採られているが、ウラン燃料ほど均一に燃焼しません。

2 フルMOX炉心の燃焼

 プルトニウムはウランに比べて中性子を吸収しやすいことから、MOX炉心は、ウラン炉心に比べて相対的に制御材(ほう酸水、制御棒)に吸収される中性子が少なくなり、制御材の効きが低下する傾向があります。また、MOX炉心では異常発生時の圧力上昇が大きくなる傾向があります。これらの特性を勘案し、設備上の設計対応として「ほう酸水注入系容量を増加する」ほか、設計余裕を増すために「一部の制御棒(ボロンカーバイド型)の中性子吸収効果を高め」、また「主蒸気逃がし安全弁の容量を増加」し、ウラン炉心同様、十分な安全性を確保します。

(反論) 原子炉を停止するには、燃料間に制御棒を挿入する必要があります。この制御棒の挿入により熱中性子の数が減少し、原子炉は停止します。

 熱中性子を多く吸収する性質をもったMOX燃料の周辺では熱中性子の量が少なくなります。そのため、緊急停止等、熱中性子を吸収して核分裂を停止させる制御棒を挿入しても、停止機能が遅れます。100万分の1秒単位で、出力上昇する可能性のある原発では、わずかな停止の遅れも致命的な状態を引き起こす可能性があります。

 地震で原子炉が揺すぶられると、燃料の表面にある泡(ボイド)がいっせいに流れ出し、そのために出力が急上昇する性質もあります。

 ほう酸水の増加等の対策を採らざるを得ないことが、装置の不安定さを物語っています。

3 段階的なMOX燃料の装荷

 初めに、3分の1程度のMOX燃料を装荷し、運転開始後5年から10年程度かけて段階的に全炉心までMOX燃料の装荷割合を増やしていきます。

 (反論) 従来の原発では、運転中のプルトニウムは、最大でも1%程度です。日本では、(装荷率1/3の原発で)プルトニウム含有率が最大13%(注1)という「世界で経験のない高濃度」で運転します。未知のMOX燃料を、試験もせずにいきなり商業利用で使うのが日本のプルサーマル発電です。大間原発では、高含有率のプルトニウムを炉心全部に装荷するのです。

4 MOX燃料の使用実績

 海外では、プルサーマルは早くから実施されており、フランス、ドイツ、ベルギーなどの欧州を中心とする各国で約40年にわたり、6,350体(2008年12月末現在)のMOX燃料が問題なく使用されています。日本では、これまでに軽水炉で合計6体のMOX燃料を使用し、燃料の健全性等に問題がなかったことが確認されています。

 (反論) 試験も含め過去40年間世界中で使われたMOX燃料の合計数だけを根拠にしているに過ぎません。ドイツ・スイス・ベルギーでは、抽出済みのプルトニウムの在庫を燃やしたらプルサーマル発電を終了します。今後も再処理を行ってプルトニウムを抽出し、積極的にプルサーマル発電を続けようとしているのはフランスだけとなっています。日本の使用実績が6体と言うのもあまりにも少ない。

 未知のMOX燃料を、試験もせずにいきなり商業利用で使うのが日本のプルサーマル発電です。

 以上見てきました。如何に、プルサーマル発電が危険かと言うことがわかります。プルサーマル発電は根源的な危険性を持っており、その危険性を極力低下するために数々の対策が採られているのです。過酷事故が起き、その対策が効を奏しなかった場合、原子炉は爆発し、放射能がばら撒かれます。しかも、MOX燃料の放出する放射能の毒性は、ウラン燃料に比べて、α線で15万倍、中性子線で1万倍、γ線で20倍です。

 現在の軽水炉でプルサーマル発電を計画しているのは17基(大間原発含む)、導入されたのは4基です。4/12、内閣府原子力委員会・小委員会の後の「秘密会議」では、「10基程度の運転でプルトニウムは処理できる」との発言がありました。それならば、大間原発は不要です。

・ 導入済みのプルサーマル発電・・・4基

 玄海原発3号機(2009年運転開始)。福島第一原発3号機(2010年運転開始)。伊方原発3号機(2010年運転開始)。高浜原発3号機(2010年運転開始)。

・ 合意のとれているプルサーマル発電・・・5基

 浜岡原発4号機。高浜原発4号機。島根原発2号機。泊原発3号機。女川原発3号機。

 9/25、経産相は電力会社に対して、未着工の建設計画(注2)の自主的な撤回を促す姿勢を示しているが、どうなることやら。

(注1) 実証例は6.4%で試験炉でのデータに過ぎない。国内では3%。国内外3ヶ所と敦賀原発1号機の少数体試験の結果を使って実証したもの。敦賀原発1号機で試験されたMOX燃料は安全のため中心部に穴を開けており、穴のない燃料とは全く異なり、実証の役に立っていない。燃焼度の最も高い試験では、燃料棒が破損し、その破損形態はウラン燃料に見られないものだった(フランス)。

(注2) 敦賀原発3、4号機。浪江・小高原発。東通原発2号機(東北電力)。東通原発2号機(東京電力)。浜岡原発6号機。上関原発1、2号機。川内原発3号機。

2012年10月15日 (月)

面白いぜ 映画「東京原発」

 映画「東京原発」が、福島原発事故を契機に注目されています。DVDにもなっており、早速見ました。原発政策の問題点をパロディーたっぷりに表現したもので、大笑いしましたが、後味の悪いものでもありました。

 映画のストーリーは、都知事が東京に原発を誘致しようとする提案を都幹部に伝えるところから始まります。そして、フランスで再処理された核燃料をトレーラで福井まで輸送するシーンが同時進行します。

 まず、核燃料輸送の話です。MOX燃料が極秘裏にフランスから搬入されるのだが、地元の反対のため、福井の海から直接陸揚げできません。東京に陸揚げし、トレーラでこっそり福井に運ぶ計画です。これに対し、何も聞いていない都知事は激怒して責任者は誰かと問います。搬入担当者は、「国のやることに責任者などいない」と言ってのけます。トレーラは核ジャックされ、時限爆弾が仕掛けられます。犯人の目的は、この状況を生放送させることにありました。核燃料や濃縮ウランは、頻繁に首都高や東名を移動しています。容器が爆発すれば全都民は屋内退避。万が一、水に落ちれば、臨界に至り、屋内退避の意味もなくなります。

 次に、原発の話です。突然、都知事は都幹部を前に原発誘致の考えを伝えます。それにより都の財政を立て直そうというのです。

 原発誘致により、次のような効果が期待できるというのです。、

1 「原子力発電等立地地域振興特別措置法」により、交付金が受け取れ、製造業者への税制優遇や固定資産税の収入も入る。

 都幹部は「都民の反対が起きる」等主張をするが、都知事の反論により、議論は誘致賛成に傾きます。その後のやり取りに移ります。

・ 電力の1/3を原発が担っている。電気のない生活は考えられない。停電すれば、都市は機能不全に陥る。・・・都幹部

・ 原発立地により、地方の自然景観は破壊されている。コンクリートの建造物や送電用の鉄塔だ。・・・都知事

・ 漁業権は買い取られ、農地や山林はつぶされる。農漁民がいなくなり、第一次産業は衰退する。・・・都知事

・ 都民が電気を使うために地方を犠牲にしている。・・・都知事

・ 東京の自然は破壊されているから原発は東京に似合う。原発支持者は東京に多い。・・・都知事

2 莫大な経済効果。

・ 山林や漁業権買取等、莫大な費用は不要。・・・都知事

・ 送電コストも下がり、電気料金も安くなる(業務用電気は、ドイツの2倍、フランスの3倍、アメリカの4倍)。経済が成長し、税収も増える。・・・都知事

3 エネルギーの有効利用。

・ 冷却のため、70%ものエネルギーを海に捨てている。海水温上昇により、海水中のCO2は空気中に放出する。温水を都市で循環し、冷暖房都市を作る。立地場所は、新宿中央公園でも、日比谷公園でも良い。官僚が進める原発を目の前に作る。地震に対して、原発は一番安全だ。キーワードは「安全、きれい、必要性」だ。・・・都知事

・ 「原発大好きキャンペーン」をしよう。・・・都幹部

 その後、専門家の意見を聞こうという都幹部の要請で映画は進行します。そこで明かされる事実は以下の通りです。

・ 建築基準法の耐震基準(200ガルの地震動)は、関東大震災を元にできた。震源地の相模湾では900ガルが観測された。東京は震源地から50kmも離れている。原発の耐震基準は建築基準の2倍程度、浜岡原発でも3倍だ。兵庫県南部沖地震は820ガル。

・ 原発ゼロでも電力不足にならない。火力、水力は発電能力の2~4割程度利用しているだけ。

・ 石油はプラスチック等生活用品を生むが、原発は電気と死の灰しか生まない。

・ 日本の情報公開はロシアに劣る(1999年 NDRC?の批判)。

・ チェルノブイリ原発事故により、事故作業員86万人中5万5千人以上が死亡。残りの87%も発病している(2000年ロシア発表)。

 以下、都民に対する都知事の問いかけ。

・ 原発支持者は東京に多いのに、何故地方に立てるのか。新潟、福島の原発に賛成し、東京への建設反対は矛盾している。傍観者でいることは賛成しているのと同じ。地方のわずかな反対者と、1億人の傍観者を生んでいる。都民は無関心で、原発誘致を別世界の出来事と思っている。

・ 「東京原発はリスクが大きい」と言うが、国や電力関係者にとってのリスクだ。彼らは死人の数と賠償金額を机上で計算している。5000人の村でも、1000万人の東京でも、そこに住む住民一人ひとりの背負う命のリスクは同じだ。

・ 日本で一番電気を浪費し、その恩恵にあずかっている都民がそのリスクを負わないでよいのか。

・ 4000億円の9割が原発関連費用だ。新エネルギーが遅れている最大原因はここにある。

 都知事の真の狙いは、「東京原発を公言し、無関心な都民の目を覚まし、大規模な議論を起こし」原発反対の声を上げさせることです。東京から原発ゼロを発信し、国民主導で国を変える。民衆の声を利用して国家プロジェクトにたてつくことです。

 核ジャックの犯人の目的も、原発の危険性を国民に知らせることにあります。

 10年前の2002年に映画化されたものですが、現在においても、強烈な問題を提起し、色あせていません。是非、DVDを見てください。この映画のヒントとなった広瀬隆著「東京に原発を」も読んでみる価値があるでしょう。地方に原発を建設し、何故電力消費地である東京に建設しないのか。「モヤモヤ」とした差別感を感じます。

2012年10月21日 (日)

浜岡原発県民投票条例 県議会否決

 5/13~7/11の2ヶ月にわたり、「浜岡原発再稼動の是非を問う県民投票条例」の制定を求める署名活動が行なわれました。受任者(署名活動をする人)8,229名、署名数(8/16現在)178,240名、有効署名数165,127名で、条例制定の規準となる62,000名の3倍弱を集めることができました。

 この結果を受け、「原発県民投票静岡」は、知事に署名簿と条例案を提出しました。県議会は、原案と修正案(有志議員による提出)を共に否決し、住民投票は実現しませんでした。原案は、賛成0、反対64、有志議員による修正案は、賛成17、反対48でした。

 ここで、原案において、不備と指摘された部分と、その修正案を記しておきます。

(原案)

・ 投票年齢は18歳以上。

・ 条例の施行日から6ヶ月以内の投票。

・ 市町に義務づけられていない投開票事務への協力を求めている。

(修正案)

・ 投票年齢は20歳以上。

・ 中電の安全対策が終わり、国が浜岡原発の再稼動の検討を開始た時に知事が実施する。

・ 市町が1つでも投開票事務を受託しないと決めた場合、県民投票は実施しない。

・ 県全体の投票率が50%未満の場合は開票しない。 

 福島原発事故以降、原発周辺の多くの市町が原発反対の決議等(ものぐさ 浜岡原発周辺自治体の動き 12/26)をしているにも関わらず、県議会の動きは鈍く、市民団体から提出された「永久停止・廃炉を求める」意見書を県議会は不採択とし、旗色を明確にしませんでした。その頃から、県議会は「何かおかしい」と感じていましたが、案の定、県議会は条例案を否決しました。原発推進の立場なのでしょうか。県議会議員には、切実な県民の声が届いていないのでしょうか。市町民の思いとあまりにも乖離しています。県民のための県議会議員ではないのですか。

 条例案に反対した県議会には、それなりの理由があるはずです。報道による情報から、その言い分を見てみます。結論から言うと、その理由は、説得力がなく、訳のわからない言葉の羅列でした。国や政府の意向ばかりを気にし、県民の声に耳を傾けず、本心は原発推進のようです。

1 再稼動するには極めて専門的な知識が必要で、(判断を)多くの住民に求めるのは適当でない。・・・御前崎市

(反論) 福島原発事故以降、マスコミや事故調査委員会は多くの報道をしています。県民が判断できる情報は開示されています。県民投票の実施にあたって、県民が再稼動の是非を判断できるように、第三者の作成した「賛成・反対論」の見解が開示されるとも聞いています。政府は討論型世論調査を実施し、同時に、国民の意見を広く聞くためパブリックコメントも募集しました(ものぐさ エネルギー・環境会議 3つのシナリオ)。 

 原発問題は、技術論だけで解決できるのでしょうか。政府も「原発に絶対安全はない」と認めています。県民の素直な感覚も尊重されるべきです(ものぐさ 原発再稼動の是非 倫理委員会を設立せよ)。

 この辺で、率直な県民の声を聴くことに、何か問題があるのでしょうか。

2 県議の中で原発に関する議論が不十分であったとの反省はある。党として議員連盟設立を提案する。・・・自民党

(反論) 原発事故から1年半以上経過しています。多くの市町議会は浜岡原発に対する決議を可決しています。県議会は職務怠慢です。「議員連盟設立」は、条例案を否決したことに対する県民への言い訳・ごまかしのように聞こえます。

3 会派の考えが同じ方向を向いていることがわかった。・・・自民改革会議

(反論) 「県議会議員のほぼすべてが、原発推進の方向で安心した」と言うことでしょうか。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」をもじって、「条例案、みんなで否決、怖くない」。

4 修正案を持ち出すことで県民の気持ちに沿うことができた。・・・公明党

(反論) 「市町が1つでも投開票事務を受託しないと決めた場合は県民投票を実施しない」とした修正案では、県民投票の実施は困難です。御前崎市やいくつかの市町は、「投開票事務」を受託しない可能性があります。そうすれば、県民投票は実施できません。修正案はアリバイ作りのようにしか見えません。

5 国家の基本政策である原子力行政の一端を県民投票で問うことは適当でない。・・・自民党

(反論) デンマーク(ものぐさ 原発で幸せになるか)は国民投票を実施し、その結果を受けて、政府は原発推進をあきらめました。リトアニア、イタリアア、スイスでも実施したと聞いています。地震の多い日本で原発推進を国策としたことに、国民は疑問を持ったのです。

6 18~19才は選挙人名簿に登録がなく、事務作業が膨大になる(原案に対する否決理由)。・・・全県議

(反論) 住民基本台帳があります。そんなに難しいことでしょうか。そのほかに工夫はないのでしょうか。やる気の問題です

7 既に浜岡の運転は停止している。10億円以上の費用をかけてやる必要があるのか。・・・自民改革会議(採決前)

(反論) 来年の県知事選と同時に実施すれば、問題はないでしょう。

8 再稼動の議論は13年度末の津波対策工事が完了してから。・・・民主党・ふじのくに県議団(採決前)

(反論) 中電は、18mの防潮堤の見学会を実施したり、広報誌でその安全性を強調しています。津波対策工事の完了まで県民投票を待つ理由がどこにあるのでしょうか。それこそ先送りです。

9 会派が割れないための最大公約数が原案否決と修正案の不提出だ。・・・ベテラン県議(採決前)

(反論) 誰のための県議会議員なのでしょうか。党利党略が県議会でも行なわれています。

10 修正案を提出しない。・・・自民党・民主党ふじのくに県議団(採決前)

(反論) 9項と同じ。

11 修正案は原案とかけ離れている。投票期日がはっきりしないような条例案には反対。・・・自民党(採決前)

(反論) 修正案に対する難癖のように感じます。条例案に署名した県民の思いを斟酌してください。間接民主主義が機能していません。県民は自らの意思を県議会に示したいのです。枝葉末節的な発言は、反対するための口実にしか聞こえません。

12 条例案の不備を指摘。・・・自民党改革会議・民主党ふじのくに県議団(採決前)

(反論) 11項と同じ。

13 原子力規制委員会の検証作業が必要で、安全性が判断できない状況だ。投票実施は困難。・・・自民党改革会議(採決前)

(反論) 福島原発の状況を見てください。検証作業は不可能です。同委員会の検証作業や安全基準の策定とは別個のものであると考えます。原発に関して、県民が判断できる様々な意見が出ています。

14 署名をした16万人に条文を十分に伝えきれていない。署名者の意向が十分反映された条例案でない。・・・民主党ふじのくに県議団(採決前)

(反論) 署名した人には条例案(原案)を明示し、その趣旨は十分伝えているはずです。十分伝えるには逆にどうすればいいのでしょうか。修正案に言及しているのであれば、反論は11項と同じです。

 「採決は、無記名投票。その理由として、個々の議員には事情がある。それぞれの意見を尊重しやすい環境を作るための配慮だ。条例案に反対を表明することへのためらいが個々の議員にあり、無記名投票は反対しやすくするための配慮だ」とも言っています。何故、(記名投票をして)正々堂々とその意思を県民に示すことができないのでしょか。

 「原発県民投票静岡」の代表は、「理由に説得力がなく、議会の形骸化だ」と述べています。正にその通りです。

 最終的な判断は県民がすべきではないでしょうか。なぜなら、事故が起こってしまった場合の結果は、県民が受け入れざるを得ないからです。

 県のマニュアルには、「条例制定案は完全である必要はなく、立法技術上の多少の不備は問わない」とあります。何故、法整備の問題だけに終始し、署名した県民の趣旨を理解しないのでしょうか。むしろ、県民の意志を(投票により)明確化したくないために、法整備を問題とし、条例案の否決に回ったとしか考えられません。県民に対して不誠実です。県民のための議員ではありません。

 政治家、電力会社、経済界からの圧力がかかり、各議員の体に毒が回ったのでしょうか。10/11、JA全中は、「脱原発」を決議し、太陽光発電等の導入や省エネルギーに取り組む姿勢を明確にしました。JA全中は、全国に709組合、組合員数949万人です。脱原発に向けて、大きなうねりのようなものを感じます。

 同代表は、「このままでは、県民の願いが空しいものになる。12月定例議会で、知事が条例案を(新たに)提案することを強く要望する」と述べています。

 

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