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2012年10月 1日 (月)

原子力規制委員会 安全基準の策定 その1

 9/19、原子力規制委員会は発足しました。国会同時人事を経ない状況でのスタートです。「原子力村」出身者と称される委員長及び委員に対し、国民は不信感を持っています(ものぐさ 原子力規制委員会は中立か)。

 田中俊一原子力規制委員長は、「原子力村」批判について、「出身や仕事によって十把一からげに判断することには反対だ」と述べ、レッテルを貼られることに反発しました。同委員長の所属した日本原子力研究所(旧原研)は、基礎研究が主で、電力会社や経産省とは関係が薄い、と言われています。

 昨日、テレビ出演している同委員長を見ました。学者らしい、物静かで、誠実そうな顔立ちで、利権にまみれ修羅場をくぐりぬけてきた人の顔ではありませんでした(もっとも、人を見る自信はありませんが)。「この人に任せよう」と言う気持ちになったところです。

 同委員長は、国民の批判に釈明し、同委員会の中立性を唱えていました。今後、注視することは、安全基準の内容と再稼動問題です。発足時に同委員長が言ったことと、その後、具体化した事実との差異を注意深く監視していかなければなりません。

 そこで、発足時における同委員長の発言内容をここに記しておきます。

1 再稼動

 ・ (再稼動を判断する)政府の暫定基準を見直すまでゴーサインを出すのは無理。

 ・ 見直し作業が終わるまで再稼動の判断はしない。 

 ・ 活断層の影響があると判断された原発は再稼動を認めない。

 ・ 大飯原発については、防災対策もできていないなか、夏の電力受給などを考えた政治的な判断である。基準には抜けがあると思うので今後詰めたい。

2 安全基準 

 ・ 新たな安全基準の策定は10ヶ月程度かかる。

3 40年廃炉

 ・ 40年ルールの延長は「相当困難」。

 ・ 安全性にわずかでも曇りがあればちゅうちょなく運転終了を判断する。

 ・ 40年廃炉ルールの妥当性を検討。

4 新増設(大間原発、島根3号機)

 ・ 新たな安全基準に不適合なら運転を停止する。

 ・ 建設を待てというつもりはない。しかし新基準ができるのを待ったほうが無駄がない。

 どのような安全基準を作るかがもっとも重要です。福島原発事故を検証し、地震学者や原子炉設計者の意見を取り入れ、妥協のない安全基準とすべきです。地震のないアメリカの設計規準で作られた原発であることも考慮されなくてはなりません。再稼動ありきで、安全基準に手心を加えてはなりません。

 いままで、「新耐震審査指針(2006年)に適合したものは安全である」とされていました。当然、この安全基準よりも厳しいものにしなくてはいけません。(ものぐさ 「バックチェック」と「バックフィット」で原発は安全か)。

 大飯原発を再稼動するために政府が根拠とした暫定安全基準でもよいはずはありません。

 最近の地震学の知見を取り入れた安全基準としてください。「近距離にある活断層は相互に関連せず、地震は連動して起きない」とした審査基準は見直してください。複数の活断層が関連すれば、活断層の総延長は増大し、それに比例するように地震規模は増大します。従来、この甘い審査基準により、電力会社は地震規模を過小に評価し、原発を作り続けてきました。

 原子炉建屋やタービン建屋等の耐震力も見直すべきです。建屋の耐震力の違いによる配管破断の可能性も検討されなければなりません。脆性破壊の問題も考慮すべきです。使用済み核燃料プールは安全でしょうか(ものぐさ 脆弱な原発構造)。

 安全基準を定めるに至った経緯や根拠や議論内容は公表されなければなりません。同委員会の透明性が問われます。同委員会以外の専門家の批判にも耐えられるでしょうか。

 再稼動するためには、全ての原発を新安全基準にバックフィットさせなければなりません。厳密にバックフィットできているかが重要です。そこに、妥協があってはなりません。

 原発事故が起きたときの住民の被曝防止や避難についても、安全が担保されなければなりません。大飯原発で事故が起きれば、避難道路が破壊される可能性もあります。住民避難や事故対策の車両も通れません。この問題を解決しなければ大飯原発の再稼動はできません。

 万が一原発事故が起きたとき、住民は故郷を捨てなくてはなりません。急性障害、晩発性障害で死に至る可能性もあります。「それでも金のため、原発の再稼動を認めますか」と、30km圏内の住民の了承を得ることも再稼動の要件の1つです。

 「被曝する可能性のある全住民の移転は可能か」も再稼動の要件です。移転先の土地や賠償費用及び移転費用は確保できるのでしょうか。福島原発事故による住民の苦しみを見てください。絶望的です。「新安全基準に従っているから、原発事故は起きない」などと言う新たな安全神話を持ち出さないでください。「20ミリシーベルト以下なら帰還しても安全です」などと言わないでください。

 六ヶ所村が爆発したらどうなるのでしょう。高木仁三郎氏は、廃液100立方メートルのタンクが破壊され、1%の放射能が外部に放出したときの試算をしています。雨天の場合、半径100kmを超える範囲が緊急避難地域(100ミリシーベルト)となり、半径360kmの範囲は10ミリシーベルトになると言います。240立方メートルの廃液が放出すれば、全土は終わりになると言います(ものぐさ 怖い六ヶ所村再処理工場)。

 真の安全基準ができれば、、その対応への莫大な費用から、廃炉となる原発も当然出てくるでしょう。地震国日本における原発の耐震性についても真面目に取り組んで欲しい。そうすれば、2030年を待たずに原発はゼロとなるでしょう。

 追加) 9/24、原子力規制委員会は次のように言っています。

1 政府が原発の再稼動の前提としてきた「ストレステスト」については、再稼動の判断の根拠としない。

2 ストレステストについて、地震と津波に限定した想定がこれでよいのかは議論がある。

3 原発運転の是非は、社会的、政治的判断を伴う。規制委員会が再稼動を認めた原発を動かすかどうかは、政府、政治の問題だ。

 これについて、異論があります。経産相は「規制委員会が安全性を判断する以上、内閣の誰かがその判断を否定することはできない」と述べています。独立性の高い機関とすべきだとの趣旨で、内閣から独立した「3条委員会」として発足した経緯もあります。同委員会は、全ての責任を背負って再稼動の判断をしてください。責任の所在が不明確な組織の再稼動など誰が納得するでしょうか。

 

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