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2013年2月11日 (月)

原発 新安全基準にパブリックコメントを(地震・津波)

 2/7、原子力規制委員会は、「発電用軽水型原子炉施設に係る新安全基準骨子について」に関する意見募集を開始しました。募集期間は2/7~2/28までの22日間です。判りにくい資料(注1)で、1ヶ月間は短いように感じます。

 骨子や報道から、その内容を勉強してみます。

 以下、地震・津波骨子案。

1 国会事故調査委員会が福島原発1号機の現地調査を決めていたことに対して、東電は「同号機の4階は真っ暗で放射線も高く危険である」との虚偽説明を同委員会にしました(13年2月7日に判明)。この東電の説明により、同委員会は現地調査を断念し、報告書は「現地調査できないため、出水元は不明」との記述で終わっています(ものぐさ 黒川事故調査報告書 津波前、原発破損の可能性あり)。同号機4階部分には非常用復水器の配管などがあり、下請け作業員も「地震直後、水が噴出しているのを見た」と証言していました(ものぐさ 津波到着前に原発は壊れていた)。地震で原発が壊れたとなれば、新安全基準も見直しが必要です。同委員会の再調査が終わるまで、新安全基準の作成は見送るべきです。・・・ものぐさ

2 重要な安全機能を有する原子炉施設(以下、施設と言う)は、将来活動する可能性のある断層等(活断層のほか地震活動に伴って永久変位が生じる断層に加え、支持基盤を切る地すべりが含まれる)の露頭がない地盤に設置すること。同断層等については、12~13万年前以降に活動していないことが証明できない限り、40万年前以降にさかのぼって活断層を調査。重要施設直下での確認が困難な場合には、当該断層の延長部で確認される断層等により判断する。・・・骨子案

 上記要件を満たさなければ施設を建設することは認められない。活断層の基準はこれまでより厳しくなる。地下で延びる活断層の立体的な精密調査を原発によっては新規に要求。原子炉建屋などの重要施設の建設を活断層の真上に認めない。法的な強制力で運転停止を命令。・・・報道

3 基準地震動、基準津波の策定において、「残余のリスク」(策定された基準地震動、基準津波を上回る影響が施設に及ぶことにより、重大な損傷事象や大量の放射性物質が放散し、周辺公衆に対して放射線被曝災害が及ぶリスク)が存在することは否定できない。よって、「残余のリスク」小さくするため努力が払われるべきである。・・・骨子

 原発ごとに海底地形や地質構造を調べ、最大の津波の高さを想定する「基準津波」を策定。・・・報道

 基準津波という概念が登場しました。基準地震動については、旧指針と変わわらないように感じます(ものぐさ 残余のリスク)。どこまで強化されているのか全くわかりません。・・・ものぐさ 

 原発は震度6程度で壊れると言う識者もいます(ものぐさ 脆弱な原発構造)。これらは改善されているのでしょうか。・・・ものぐさ

4 重要な安全機能を有する施設の全てはSクラスとする。以下、骨子。

① 原子炉冷却材圧力バウンダリー・・・原子炉の通常運転時に原子炉冷却材を内包し、原子炉容器内と同様の圧力条件となり、かつ一次(原子炉)冷却系の圧力障壁を形成するもので、それが破壊されると冷却材喪失事故となる範囲をいう。通常、原子炉圧力容器、一次系(原子炉冷却系)配管などが含まれるが、冷却材喪失事故時に隔離される部分は該当しない。

② 使用済み核燃料貯蔵施設。③ 津波防護機能を有する施設。

④ 原子炉の緊急停止のために急激に負の反応度を付加するための施設、及び原子炉の停止状態を維持するための施設(原子炉緊急停止装置か?)。⑤ 原子炉停止後、炉心から崩壊熱を除去するための施設(再循環ポンプや緊急炉心冷却装置か?)。⑥ 原子炉冷却材圧力バウンダリ破損事故後、炉心から崩壊熱を除去するための施設。⑦ 原子炉冷却材圧力バウンダリ破損事故の際に、圧力障壁となり放射性物質の放散を直接防ぐための施設(原子炉格納容器か?)。⑧ 放射性物質の放出を伴うような事故の際に、その外部放散を抑制するための施設であり、前項以外の施設(ベント装置か?)。

 防潮堤などの津波対策施設は原子炉圧力容器などの重要施設と同様、最高水準の耐震性を要求。活断層があれば建設のやり直しを要求。・・・報道

 ②、③は新たに追加されています。④~⑦までは報道でも解説がなく、理解できません。・・・ものぐさ

5 重要施設は基準津波に襲われても海水が到達しない高台に設置するよう求め、敷地の高さが十分に取れない場合は、防潮堤などの設置を要求した。また、それでも水が敷地内に入ってきた時に備えて、重要な設備を水から守る水密扉などの設置を求める。・・・報道

 防潮堤への衝突による津波の盛り上がりや遡上高、地震動による水密扉の実効性等について、骨子からはよくわかりません(ものぐさ 疑問 浜岡原発事故対策)。 

6 その他の報道

・ 全国に約2千本あるといわれる活断層大国の日本では「耐震設計で活断層との、共生は可能」との見方も出ている。

・ 活断層があってもどうすれば安全が保たれるか研究開発を進めればよい。

・ 活断層といかに共存し、地震に耐える構造を持つことの方が現実的な対応といえるが、あらゆる工学システムには、故障のリスクがつきまとう。極限まで下げてもゼロにはできないことを、規制委も国民の側も、しっかり再確認しておくべきである。

・ 「ゼロリスク幻想」の虜(とりこ)になると机上の空論に傾きやすい。原子力規制委員会が活断層判別の年代を一律40万年前までに拡大しようとしたのが典型だ。幸い現行の12万~13万年前も基準として維持されたが、甘美な理想論は迷路に通じる。

・ 原子力規制委員会は一部の要求項目について、一定の猶予期間を設ける方針だが、猶予を認める項目の選定や基準の運用方法によっては、安全対策が「骨抜き」になる恐れもある。原子炉格納容器を遠隔操作する「特定安全施設」(第2制御室)、緊急時対策所や加圧水型原発のフィルター付きベト装置が猶予対象。

・ 運転から30年以上経過した原発や、大きな地震や津波に見舞われやすい原発は補強や改修の費用がかさみ、廃炉に追い込まれる場合も出てきそうだ。

・ 軽水炉は水で燃料を冷却する構造だ。水がなくなれば炉心溶融などの過酷事故を止められなくなる「根本的な弱点」は残ったまま。新基準が求める冷却手段の複数整備は当然必要だがそれで十分とも言えない。

・ 本質的な問題にメスを入れることなく、小手先の対策に終わっている。

・ 肝心の規制委には課題が多い。骨子は限られた人数の検討チームが短期間でまとめた。外部の専門家が意見を述べる場はほとんどない。

・ 新安全基準は既設の原発にも適用される。

・ 運転期間を原則40年とする「40年運転制限制」については、4月段階で織り込む方向。

 米国で設計された原発はそもそも地震を想定していないと聞きます。地震国日本での稼動は可能なのでしょうか。再稼動を前提に、安全基準は作られているような気もします。猶予規定を盛り込む等、原子力村の影がちらつきます。人命尊重より経済優先なのでしょうか。

 絶対安全な原発は存在しません。原発事故により大量の放射性物質が放出され、放射線被ばくによる災害が周辺公衆に対して及ぶことのリスクを同委員会は認めています(残余のリスク)。万が一の場合、住民が死亡したり、故郷を失うことは、日本の経済発展のために止むを得ないと考えているのでしょうか。この素朴な疑問に対して政府はどのように考えるのでしょうか。

 脆性破壊や配管の減耗による冷却材喪失の危険はないのでしょうか(ものぐさ 原発廃炉 40年は本当か)。規定に盛り込めれているのでしょうか。

 「工学システムには、故障のリスクがつきまとう。だから原発が事故を起こすことを国民は認識すべきだ」と述べています。第一に、事故が起き放射能が漏れれば、地域や国が滅びる原発事故と自動車や火力発電所の事故を同列で扱うべきではありません。第二に、発言者に聞きたい。地方住民は死んでもかまわないのか。

 報道の歯がゆさを感じます。何故、素朴で根本的な問題提起をしないのだろうか(爆発すれば人が死ぬ。そこをどう考えるのか等)。切り込み不足も感じます(防潮堤に衝突した津波は1.5倍程度に盛り上がり、敷地内に流入する等)。

 「新安全基準は既設の原発にも適用される」というバックフィット制については、注意が必要です。経済的にもっと費用の安い代替策で置き換えてこの目標を達成することを認めると言うバックフィット制度にはしないでください。電力会社の思惑を忖度するような、非科学的な妥協の産物であってはなりません。(ものぐさ 「バックチェック」と「バックフィット」で原発は安全か)。

 最後に、専門家や報道が新・旧安全基準の比較を検証し、国民にわかりやすく説明してくれることを期待します。

 (注1) 資料は「発電用軽水型原子炉施設に係る新安全基準骨子案について」としてHP上に公表されています。骨子案は ①新安全基準(設計基準)骨子案 ② 新安全基準(シビアアクシデント対策)骨子案 ③新安全基準(地震・津波)骨子案からなります。

 

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