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2013年2月 7日 (木)

日本学術会議 核のゴミは「暫定保管」と「総量管理」で 

 2010年9月、内閣府原子力委員会委員長は日本学術会議に対し、「高レベル放射性廃棄物の処分の取り組みにおける国民に対する説明や情報提供のあり方についての提言」を依頼しました。詳しくは「HP 回答 高レベル放射性廃棄物の処分について 日本学術会議」を見てください。

 背景は、2000年6月に制定された「最終処分法」に基づく処分地選定が国民の反対により一向に進まないことにあります。そこで、同委員長は「地層処分」ありきの政策のままで、「国民を上手く説得する方法を提言してくれ」と同学術会議に依頼したのです。

 この依頼に対して、日本学術会議は人文・社会科学と自然科学の分野から委員を人選し、同委員会はスタートしました。ところが、2011.3.11、東日本大震災が起き、福島原発が炉心溶融し、放射能を環境に撒き散らすという事故が発生しました。これにより、同委員会は地層所処分の概念や最終処分地選定のあり方にも改めて再考の必要があるとし、地層処分ありきではなく、提言は白紙の状態から見直されることになりました。

 以下、同委員会の提言を列挙します。ここで扱う「高レベル放射性廃棄物」とは、再処理により生ずる「高レベル放射性廃棄物」のみならず、直接処分が実施されることとなった場合の「使用済み核燃料」を含みます。

1 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し

 「最終処分法」に基づく政策(最終処分地選定)が、各地で反対に遭い、行き詰まっているのは、説明の仕方の不十分さというレベルの要因に由来するのではなく、より根源的な次元の問題に由来していることをしっかりと認識する必要がある。

 これらの問題に的確に対処するためには、従来の政策枠組みをいったん白紙に戻す覚悟で見直さなければならない。

2 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保

 超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たり、現時点の科学には限界がある。特定の専門的見解から演繹的に導かれた単一の方針や政策のみを提示し、これに対する理解を求めることは、もはや国民に対する説得力を持つことができない。

 施設建設という利害関心が先行して安全性/危険性に関する認識を歪めてはならない。様々な立場の関係者が排除されることなく討論を尽くすべきである。

3 暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築

 原子力発電をめぐる大局的方針政策についての国民的合意を得る努力を十分に行わないままに、最終処分地選定という個別的な問題が先行している。手続き的に逆転した形でなされてきた。広範な国民が納得するような大局的方針を示すことが不可欠であり、それには暫定保管と総量管理の2つを柱に原発政策を再構築することが不可欠である。

 <暫定保管>とは、「高レベル放射性廃棄物」を一定の暫定期間に限り保管することであり、その後のより長期的期間における責任ある対処法を検討し決定する時間を確保するために、回収可能性を備えた形で、安全性に厳重な配慮をしつつ保管することである。その期間は数十年から数百年程度となる。

 「暫定保管施設」等の関係施設の適地選定に際しては、地震・火山活動・地殻変動が活発に生じている「変動帯」や活断層が存在する地域を専門的見地から除外し、また将来的に断層が活動する可能性が小さい地域を選定する作業がまず必要である。長期に安定した地層が日本に存在するかどうかについて、科学的根拠の厳密な検証が必要である。さらに、万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界があることを明確に自覚する必要がある。

 暫定保管は、回収可能性を備え、他への搬出可能性があるため、あらかじめ貯蔵終了後の処理・処分方法(例えば、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体での最終処分)を定めた上で30~50年間安全に貯蔵・管理する中間貯蔵とは異なる。

 暫定保管が実現するまでの安全管理は喫緊の課題である。アメリカでは乾式貯蔵するとの政策転換が出されている。

 <総量管理>とは、高レベル放射性廃棄物が無制限に増大していくことに対する歯止めとしての概念である。その意味するところは「総量の上限の確定」と「総量の増分の抑制」であり、原発政策と大きく関係(例えば、2030年原発ゼロか15%か20~25%)する。

 社会が直ちに脱原発を選択する場合には、「総量の上限の確定」が可能となり、処分すべき高レベル放射性廃棄物の最終的な総量が数量的に把握される。

 社会が一定程度の原発の継続を選択する場合には、「総量の増分の抑制」の考え方を厳格に適用し、総量の増分を厳しく管理しなければならない。

4 負担の公平性に対する説得力ある政策決定手続きの必要性

 受益圏である中心部の生み出す高レベル放射性廃棄物を周辺部に負わせるという構造は、「受益圏と受苦圏の分離」を伴う不公平なものであるという批判がなされてきた。「受益圏と受苦圏の分離」は、高レベル放射性廃棄物に対する大都市圏の無関心を引き起こしてきた。この不公平な状況に由来する批判と不満に対して、電源三法交付金など金銭的便益提供という政策手段により処理しようとするのは、適切でない。金銭的手段による誘導を主要な手段にしない形での立地選定手続きの改善が必要である。

 安全性を担保するには住民が納得する安全性の確保とともに安全な地盤であることもその要件である。迷惑施設を建設する立地地域に対する受益の還元政策としては、安定な地層が防災上有利であることを活かし、政府・電力会社等の機能の一部を移転する、重要データの保管機能を持った施設を建設する、あるいは原子力・放射性廃棄物関係の大型研究拠点を設置する等である。そのような施設が併設され、実際に多くの人びとがそこで業務に従事し、生活の基盤を置くことは、高レベル放射性廃棄物の保管施設の安全性に対する社会的信頼を高める効果を持ちうる。

5 討論の場の設置による多段階合意形成の手続きの必要性

 暫定保管と総量管理についての国民レベルでの合意を得るためには、「様々な利害関係者が参加する討論の場を多段階に設置していくこと、公正な立場にある第三者が討論の過程をコーディネートすること、最新の科学的知見が共有認識を実現する基盤となるように討論過程を工夫すること、合意形成の程度を段階的に高めていくこと」が必要である。
 この手続きにより、「大局的政策についての合意形成から個別的な課題である高レベル放射性廃棄物の処分地の選定についての合意形成」へという適切な手続きを経ることが可能となる。従来の原子力発電政策に欠落していたものはまさにこれである。

6 問題解決には長期的な粘り強い取り組みが必要であることへの認識

 高レベル放射性廃棄物の処分問題は、千年・万年の時間軸で考えなければならず、これに伴う大きな不確定性の存在を免れない問題である。また、民主的な手続きの基本は、様々な選択肢に対して開かれた討論の場における十分な話し合いを通して、丁寧に合意形成を目指すものである。

 現時点での単一の意思決定で最終的な解を出しうるものとは考えられず、時間をかけた粘り強い取組みを覚悟することが必要であり、限られた利害関係者の間での合意を軸に合意形成を進め、これに当該地域への経済的な支援を組み合わせるといった手法は、かえって問題解決過程を紛糾させ、行き詰まりを生む結果になることを再確認しておく必要がある。

 以上見るように、政府は核のゴミが増え続ける現状を認識し、原発政策をどうするのか明らかにしなくてはなりません。核燃料サイクルが完成するので核のゴミなど考えなくても良いとか、将来放射能を無毒化できるとか、多重のバリアで埋設処分が可能(ものぐさ 高濃度放射性廃棄物は安全に保管できるか)などといったごまかしに国民は納得しません。そこで初めて、核のゴミ問題はようやくスタート地点に立ち、国民的議論へと進むことができます。なし崩し的に原発を再稼動した場合、核のゴミはどこまで増えるのでしょうか。国民は心配しています。原発政策を維持したままで、「核のゴミが増えるから、貯蔵施設を建設したい」と政府が言ったところで、国民は建設を認めるでしょうか。日本中がゴミだらけになります。

 暫定保管については、科学的に保管方法の安全性を評価し、誠意をもって国民に貯蔵施設の必要性を説明しなければなりません。そこには、金で有無を言わさず最終処分地を決定するような、従来の原子力政策で用いられた手法は通用しません。

 国民はバカではありません。将来世代の負担を少しでも少なくするため、核のゴミを何とかしようと考えるはずです。丁寧な議論を経て安全性が確保されるのであれば、受け入れようとする地域が必ず現れます。福島原発事故で生じた8000ベクレル以上の放射性廃棄物を受け入れる自治体は現れていません。これは政治家が信頼されていないからです(ものぐさ 埋め立て基準 8000ベクレルは大丈夫か)。

 暫定保管と総量管理と言う考え方は脱原発を進めるための穏やかな手法で、ある程度評価され得るものと考えます。ただ、「総量の増分の抑制値」を甘く設定し、原発維持にお墨付けを与えるようなことは絶対あってはいけません。「総量の増分の抑制」についても、時間とともに増し分を小さくし、最終的にはその増し分をゼロとしなくてはいけません。なぜなら、原発が稼動し続けているかぎり、核のゴミは増え続け、迷惑施設を次々に作っていかざるを得なくなるからです。

 同委員会は、使用済み核燃料について、①燃料プールでの保管 ②乾式貯蔵等での保管 ③暫定保管 ④最終保管の4段階からなる保管手順を提言しています。そして暫定保管場所の要件として、「回収可能性と他への搬出可能性」が上げられていますが、暫定保管中に事故等が発生し、放射性物質が周辺地域に及んだ場合、「回収可能性と他への搬出可能性」があるからといっても、他の地域がこれを受け入れてくれるでしょうか。暫定保管場所が最終処分地になりはしないかとの危惧があります。

 明日にも地震が発生し、原発事故が何時起こらないとも限りません。できるだけ早く脱原発することが基本です。全国各地が迷惑施設を受け入れるわけです。直ちに脱原発としなければ、国民は同委員会の提言を受け入れない可能性もあります。暫定保管については具体的方法が明確に定まっていません。これからの技術的な課題です。安全な最終処分地などは希望的願望に過ぎません。願わくば、直ちに原発を止め核のゴミの増加を止めて欲しいものです。

 核のゴミの処分方法がなく、各原発の使用済み核燃料が満杯(あと6年)となれば、原発の稼動はゼロとなります(ものぐさ 「核のゴミ」はどこに行くのでしょうか)。

   

  

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