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2013年2月25日 (月)

活断層 原子炉立地審査指針に違反する

 原発推進派と思われる某識者が「安全対策のコストを考えない原子力規制委員会の暴走」と発言していました。推進派がずっと言い続けてきた論理であるが、以下気になった点を反論します。

1 断層が見つかっても、同委員会には原発を廃炉にする権限はない。そこで、「重要施設を活断層の上に建ててはいけない」という安全基準を決める方針を出した。つまり今は、活断層の上に建設することは禁止されていないのだ。もちろん運転も禁止されていない。

 (反論) 問題となった原子炉立地審査指針の「原則的立地条件」を以下に記します。

 原子炉は、どこに設置されるにしても、事故を起さないように設計、建設、運転及び保守を行わなければならないことは当然のことであるが、なお万一の事故に備え、公衆の安全を確保するためには、原則的に次のような立地条件が必要である。

(一) 大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。

(二) 原子炉は、その安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること

(三) 原子炉の敷地は、その周辺も含め、必要に応じ公衆に対して適切な措置を講じうる環境にあること

 以上、見るように、(一)~(三)のいずれかに抵触すれば、立地条件を満たしません。以下、見てみます。

(一) 活断層は大きな事故の誘引となるような事象に該当すると考えます。地震により、活断層が数m隆起すれば、配管断裂や原子炉の傾きにより冷却材喪失事故が起こり、大きな事故に進展します。もちろん津波も大きな事故の誘引となります。

(二) 福島原発事故では30km圏内外の住民が避難し、故郷に帰れない人は16万人もいます。安全神話に騙されて、「放射能による被害は少ない」と言われてきましたが、福島原発事故では、多くの住人が避難することになりました。事故後、UPZ(緊急防護措置区域)は30km圏内とされ、その圏内で暮らしている住民は、例えば、浜岡原発(静岡)で80万人、東海第2原発(茨城)で93万人、大飯原発(福井)で14万人、全国(21道府県135市町村)で480万人にも上ります。東海原発2号炉が事故を起せば、800万人が癌死するといわれています(ものぐさ 「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」と「瀬尾試算」)。これで、十分に公衆から離れていると言えるでしょうか。そうは思いません。

(三) UPZ圏内の住民に対する避難計画の策定が各自治体で行なわれようとしています。同圏内(浜岡原発周辺)には80万人もの住民がいます。必要に応じ公衆に対して適切な措置を講じうる環境と言えるでしょうか。

 上記、見るように、全ての項目で立地条件を満たしていません。原子炉を設置するための原則的条件を満たさなくなった原発は、そもそも、立地し続けることができないのです。このことが原発廃炉の根拠です。百歩譲っても再稼動はできません。

 確かに、条文において、「活断層の上に原発を設置してはいけない」と明文化はされていません。法律の趣旨と、福島原発事故の実態を直視すれば、某識者の発言は正しくありません。法律が明文化されていないことを良いことに、運転さえできるという。恐ろしいことだ。

2 安全のコストはただではない。その費用は1兆円に達する。建築基準法が改正されても、古いビルを取り壊す必要がない。バックフィットを義務づけることは大きな副作用をともなう。改修ですめばいいが、運転期間は40年間に制限されており、古い原発は投資をしても回収できないので、廃炉にするものが増えるだろう。

 (反論) バックフィット(ものぐさ 「バックチェック」と「バックフィット」で原発は安全か)は小手先の対策であり、真の安全を目指すなら、基本設計からやり直す必要があると言いたいのでしょう。私もそう思います。裏を返せば、バックフィットでも安全ではなく、廃炉しかないのです。建築基準法を引き合いに出し、原発もそのままで良いとは笑止千万です。

3 東日本大震災と同じ規模の地震が他の地域で起こったとすると、津波による死者は1万5000人以上出るが、原発事故の死者は1人も出ないだろう。リスクに見合ったコストをかけるのが防災対策の原則である。

 (反論) 傲慢な論理です。確かに急性障害で死亡した人はゼロであったが、将来を悲観して自殺した人もいます。晩発性障害で苦しむ人もあるでしょう。現時点において、(事故の影響と見られる)甲状腺癌の見つかった人は3人となりました。福島原発事故以上の事故が発生し、多くの死者が出ることも否定しきれなくなりました。死者が出てからでは遅すぎます。

4 行政経験のない技術者は暴走する傾向が強い。エネルギー問題は社会全体のインフラであり、第一義的には経済問題である。安全性を追求するのは結構だが、まず常識的なバランス感覚を身につけてほしい。

 (反論) 原発は絶対安全だと喧伝され、国民は、シブシブその建設を容認してきたという歴史があります。安全神話が壊れ、社会的なインフラとしての原発は否定されつつあります。原発の代替エネルギー施設こそ、今後望まれる社会的インフラでしょう。経済問題解決のための原発の存在意義は完全に否定されました。賠償費用、除染費用、バックエンド費用を考えれば、経済的には百害あって一利なしです。経済問題しか念頭にないバランス感覚こそ危険です。

5 安全対策に1兆円かけ、古い原発が廃炉になると、その分だけ化石燃料の輸入が増える。これによって電気料金が上がるだけでなく、二酸化炭素の排出量も増え、大気汚染も悪化する。それによる健康被害は、少なくとも福島第一原発の事故より大きい。絶対安全を実現するのは簡単である。今のように原発を止めておけばいいのだ。運転しなくても核燃料があると危険なので、それもはずせば万全である。それが問題の解決にならないことは明らかだろう。原子力規制委員長も認めるように「原発のリスクはゼロではない」のであり、ゼロにすべきでもない。

 (反論) 今春3月にもシェールガスが米国から輸入される模様です。米国でのシェールガスの単価は、日本が輸入している天然ガスの20%程度です。原発のバックエンド費用や事故対応費用を加味すれば、原発による電気料金は決して安くありません。二酸化炭素の排出量増加もウソです。ウラン鉱石の算出・精製・輸送や、原発の建設資材の製造、原発建設、バックエンド処理施設の建設には多くのエネルギーが使われます。当然、これら発電行為以外の工程で多くの二酸化炭素が排出されます。原子力発電所内の発電行為では、某識者が言うように、二酸化炭素は排出しません。その代わり猛毒の放射能が生成されます。

 原子炉を冷却し高温となった海水は海に捨てられています。そのエネルギーロスは2/3にもなり、地球温暖化の原因ともなります。

 

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