« 原発 新安全基準にパブリックコメントを(地震・津波) | トップページ | 活断層 原子炉立地審査指針に違反する »

2013年2月15日 (金)

原発 新安全基準骨子にパブリックコメントを(シビアアクシデント)

 2/7、原子力規制委員会は、「発電用軽水炉施設に係る新安全基準骨子について」に関する意見募集を開始しました。募集期間は2/7~2/28までの22日間です。判りにくい資料(注1)で、1ヶ月間は短いように感じます。

 骨子や報道から、その内容を勉強してみます。

 以下、シビアアクシデント対策骨子案

1 シビアアクシデント対策では、「原子炉、格納容器、使用済み燃料貯蔵プールが著しい破損に至るのを防止する対策を講じなさい」と要求しています。骨子のなかの「包括的拡散抑制対策」は、「原子炉設置者は、炉心の著しい損傷及び格納容器の破損に至った場合、又は使用済燃料貯蔵プールの大規模燃料破損に至った場合など様々な事象に包括的に対処するために、敷地外への放射性物質の拡散を抑制する手段を整備すること」と述べています。

 想定外の事故が起きれば放射能が放散することを容認しています。そして、「抑制する手段を整備」とあるだけで、原発敷地境界で○○シーベルトに押さえなさいとは言っていません。想定したシナリオに沿って原発事故が推移せず、代替設備が有効に機能せず、最後の砦が破壊すれば、放射能は住民に降り注ぎます。

2 原子炉緊急停止(スクラム)に失敗した場合の代替設備として骨子は、①手動による原子炉スクラム操作、②代替制御棒挿入回路(ARI)の装備、③再循環ポンプを自動または手動でトリップさせる装置、④ほう酸水注入設備(SLCS)を要求しています。

 代替設備が本当に機能し、損傷の拡大を抑えることができるか厳しく見ていく必要があります。かつて、原発は5重のバリアで安全が保たれていると信用していた苦い経験があります。代替設備の実効性を外部専門家を交えて検証する必要があります。

3 骨子は「原子炉建屋への意図的な大型航空機の衝突に対して必要な機能が損なわれないよう適切な措置を講ずること、例えば、原子炉建屋と特定安全施設が同時に破損することを防ぐために必要な離隔距離(例えば100m 以上)を確保すること」と述べています。

 これは、航空機の墜落に備えて特定安全施設(第2制御室)を設け、遠隔操作による原子炉のコントロールを要求しているだけです。ミサイル攻撃や航空機墜落により、原子炉や配管類が破壊されれば、第2制御室の意味はなくなります。航空機等が墜落した場合の具体策は、外部火災を想定した泡放水砲等を用いた消火活動です。心もとない対策です。中国、北朝鮮の脅威が増しています。原発ごとにパトリオット地対空ミサイルの配備をお願いしたいくらいです。

4 骨子は、「炉心の著しい損傷及び格納容器の破損に至った場合、又は使用済燃料貯蔵プールが燃料損傷に至った場合に、敷地外への放射性物質の拡散を抑制する設備」を要求しているが、その具体策は放水設備です。これも心もとない対策です。

5 骨子は、「格納容器の破損を防止するため、格納容器内雰囲気の圧力及び温度を低下させる設備」として、フィルター付きベント設備を要求しています。

6 骨子は、「大規模なプール水の漏えい等により使用済燃料貯蔵プールの水位維持ができない場合の設備として」スプレー設備(水位維持できない場合でも、燃料冷却を維持できるものであること)を要求しています。

7 骨子は、「原子炉や格納容器等の破損に至った場合の敷地外への放射性物質の拡散を抑制する設備」として、放水設備を要求しています。

8 その他の報道

・ 第2制御室、非常用電源、冷却設備などを備えた「特定安全施設」、免震能力や放射線遮蔽能力を備えた「免振重要棟」、加圧水型原発のフィルター付きベト装置は3~5年程度の猶予期間を設ける。猶予を認める項目の選定や基準の運用方法によっては、安全対策が「骨抜き」になる恐れもある。来月以降、猶予のあり方を議論。一部委員は、猶予をつけないその他の対策で安全性は十分確保できると判断。3~4年原発が停止すれば故障など別のリスクが産まれる。しかし、元東電社長は「免震重要棟がなければと思うとゾッとする」と証言している。

・ 火災対策として、ケーブル類は原則として難燃性の素材に交換。

・ 全電源喪失の対策は、少なくとも24時間分の容量があるバッテリーを設置し、電源車から充電できる設計とする。外部から燃料や予備品などの支援がなくても1週間は安全機能を確保できるよう求めた。

・ 何より肝心なのは、新基準は「再稼働のための条件」ではない。

・ 軽水炉は水で燃料を冷却する構造だ。水がなくなれば炉心溶融などの過酷事故を止められなくなる「根本的な弱点」は残ったまま。新基準が求める冷却手段の複数整備は当然必要だがそれで十分とも言えない。

・ 原発が新たな安全基準を満たせば、再稼働の重要な条件二つのうち一つをクリアすることになる。しかし、もう一つの重要な条件である住民の安全を守る「地域防災計画」づくりは各地で難航している。どれくらいの放射線量が検出されれば住民が避難を始めるのかなど肝心の規制委の議論が混乱している。避難ルートは確保されるのか。

・ 肝心の規制委員会には課題が多い。骨子は限られた人数の検討チームが短期間でまとめた。外部の専門家が意見を述べる場はほとんどない。

・ 原発から半径30キロ圏に大幅拡大された事故時の住民避難計画もモデルを示せず、自治体任せだ。

・ 新安全基準は既設の原発にも適用される。

 米国で設計された原発はそもそも地震を想定していないと聞きます。地震国日本での稼動は可能なのでしょうか。再稼動を前提に、安全基準は作られているような気もします。猶予規定を盛り込む等、原子力村の影がちらつきます。人命尊重より経済優先なのでしょうか。

 絶対安全な原発は存在しません。原発事故により大量の放射性物質が放散され、放射線被ばくによる災害が周辺公衆に対して及ぶことのリスクを同委員会は認めています(残余のリスク)。万が一の場合、住民が死亡したり、故郷を失うことは、日本の経済発展のために止むを得ないと考えているのでしょうか。この素朴な疑問に政府はどのように考えるのでしょうか。

 福島原発事故では、原子炉建屋の天井が吹き飛びました。第2制御室などあっても、原子炉自体がミサイル攻撃され、原子炉が爆発すれば、日本は壊滅です(ものぐさ 「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」と「瀬尾試算」)。

 いくつかの要求事項があるが、最後の手段は放水設備だけのようです。

 「工学システムには、故障のリスクがつきまとう。だから原発が事故を起こすことを国民は認識すべきだ」と述べています。第一に、事故がおき、放射能が漏れれば、地域や国が滅びる原発事故と自動車や火力発電所の事故を同列で扱うべきではありません。第二に、発言者に聞きたい。地方住民は死んでもかまわないのか。

 報道の歯がゆさを感じます。何故、素朴で根本的な問題提起をしないのだろうか(爆発すれば人が死ぬ。そこをどう考えるのか等。)。切り込み不足も感じます(防潮堤に衝突した津波は1.5倍程度に盛り上がり、敷地内に流入する等)。

 最後に、専門家や報道が新・旧安全基準の比較や代替設備の実効性を検証し、国民にわかりやすく説明してくれることを期待します。

 (注1) 資料は「発電用軽水型原子炉施設に係る新安全基準骨子案について」としてHP上に公表されています。骨子案は ①新安全基準(設計基準)骨子案 ② 新安全基準(シビアアクシデント対策)骨子案 ③新安全基準(地震・津波)骨子案からなります。

 

« 原発 新安全基準にパブリックコメントを(地震・津波) | トップページ | 活断層 原子炉立地審査指針に違反する »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 原発 新安全基準にパブリックコメントを(地震・津波) | トップページ | 活断層 原子炉立地審査指針に違反する »