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2013年4月 1日 (月)

福島原発 甲状腺障害

 2/14、福島県が行なっている子供(震災時18歳未満)の甲状腺検査において、新たに2人が甲状腺がんと診断され、あわせて計3人となりました。原発周辺13市町村3万8114人の中から見つかりました。子供の甲状腺がんの発生率は100万人に1人が通説であるが、今回の検査では、1万人に1人の割合であり、100倍も大きいこととなります。他の7人にも甲状腺がんの疑いがあり、約8割の確率で甲状腺がんの可能性があると言われています。疑いのある人を含めた10人の内訳は男性3人、女性7人です。因みに、甲状腺の診断結果は、異常なしの「A1」判定、5mm以下の結節や20mm以下ののう胞ありの「A2」判定、5.1mm以上の結節や20.1mm以上ののう胞をありの「B」判定、直ちに二次検査を要する「C」判定に区別されます。

 これに対して、県民健康調査委員会は、原発事故の影響ついて否定的な見解を示し、県が秘密裏に進めた「準備会」では「がん発生と原発事故の因果関係はない」と見解をすり合わせ、県立医大教授は、「チェルノブイリ原発では最短で4年後に発症が増加している」「元々あったものを発見した可能性が高い」「原発事故との因果関係は考えにくい」と語っています。チェルノブイリ原発事故(1986年)後の1996年に、甲状腺がんが放射能の影響であると国際的に認められているにも関わらず、県はその否定にやっきのようです。

 事故から26年経過したチェルノブイリ原発事故による甲状腺がん患者(事故当時の年齢が18歳未満)の推移を見てみます。データは、ウクライナ内分泌代謝研究センターのものです。ウクライナの子供の人口1200万人に対し、事故前の甲状腺がんは年間4、5例でした。ところが、年間の発症数は事故後26年たった今でも増え続けています。事故発生時で19人だったものが、1年目で26人、2年目で23人、3年目で39人、4年目で62人、5年目で70人、10年目で189人、20年目で474人、そして昨年は700人です。そして、甲状腺がん患者(事故当時の年齢が14歳未満)の10万人当りの年間発症数は、5年目で1人、10年目で3人、15年目で7人、そして、23年目の2009年における発症数は10万人当たり9人です。2009年は、実に1万人当たり1人の発症割合です。その割合は、現在の福島県と同じではありませんか。目を疑って、何度もデータを見直しました。

 ウクライナでは、いつ患者数が減少するのかわかりません。全ての子供が事故発生時の1986年に被爆したにも関わらず、発症時期が何故異なるのでしょう。これは、被曝線量が高い人は早く発症し、低い人は遅く発症するのではないかとも言われています。チェルノブイリ原発事故と福島原発事故の被曝量の差がどの程度か判りませんが、事故から2年経過しただけで、「因果関係は考えにくい」と言うべきではありません。

 また福島県は、内部被曝の検査においてホールボディーカウンタ(注1)に比べて精度が高いとされる尿検査に難色を示しています。専門家は、「被害を低く評価するため少しの内部被曝でも検出できる尿検査はやりたくないとの本音を見せたくなかったからでは」と批判しています。

 更に、子供の内部被曝を調べるための乳歯保存についても福島県は「反原発の命の主張」とレッテルを張り、拒否のための情報収集をしていました。

 食物、水、土ぼこりの吸入等により、放射性物質は体内に取り込まれ、内部被曝量は増加します。特に、肺に付着した放射性物質は、組織の細胞膜を介して、放射線を放出し続け、DNAを傷つけます(ものぐさ 内部被曝とウクライナ基準 報道されない内部被曝 年間被曝量20ミリシーベルトとは 町に武田教授がやってきた)。

 放射線の強さは距離の2乗に反比例すると、言われています。すなわち、放射性物質から2mの距離における放射線の強さは、1mのそれより1/4に減少します。離れれば離れるほど被曝量は小さくなります。逆に、近づくほど増大し、放射性物質から50cmの距離の放射線の強さは、1mのそれより4倍に増加します。細胞膜に付着した時の放射線量は、細胞膜との距離を1μm(10のマイナス6乗メートル)とすれば、なんと1兆倍となります(注2)。あまり大きすぎて、計算間違いかと疑ってしまいます。間違っていたら指摘してください(注3)。モニタリングポストで常時観測されている外部被曝と異なり、内部被曝は簡単に計測できず、その影響も無視できません。計測をきちんとやり、適切な措置を早めに行うことは、住民の安心につながります。

 福島県は、住民を見ているのか、どこを見ているのか疑問です。福島県や国は、住民の受けた被曝量をあらゆる手段を使ってでも収集し、健康管理し、障害が出たときの対処や保障に結び付けていく責任を負っています。原発事故や放射線障害を過小に評価し、損害賠償額を低く抑え、原発事故の風化を積極的に図るなどの魂胆があるとすれば、言語道断です。水俣病の二の舞は避けたいものです。

 関連記事(ものぐさ 内部被曝評価はシーベルトではなくベクレルで)。

 (追記1) 弘前大学被曝医療総合研究所は、浪江町の町民2393人のデータを基に、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝量は最大で4.6ミリシーベルトと推定しています。この数値は、安定ヨウ素剤の服用基準(50ミリシーベルト)より低く、健康への影響は少ないと言います。この4.6ミリシーベルトは、11年7~8月に実施したホールボディーカウンタの数値と同4月の放射性ヨウ素の測定値からヨウ素とセシウムの比率を算定して、推定したものです。

 (追記2) 3/29、環境省は弘前市、甲府市、長崎市の3市で実施(3/8)した甲状腺検査の結果を公表しました。以下、福島県の結果とあわせて示します。

 福島県 年齢(0~18歳)  人数(13万3089人)   「A2」と判定された割合(41%)

 3市   年齢(3~18歳)  人数(4365人)      「A2」と判定された割合(57%)

 環境省は、「3市の数値が大きいのは、しこりが見つかりにくい0~2歳を対象にしていないことが原因」としています。それにしても、年齢対象を何故同じにしなかったのでしょう。見つかりにくい乳児が含まれているほうが判定割合が小さく出るのは当たり前です。何か意図があるのでしょうか。いずれにせよ、ウクライナのデータからも判るように、4~5年経過した時点まで待たざるを得ないようです。

 (追記3) 6/5現在。 事故発生当時18才以下だった子供、174,000人の内、甲状腺がん患者は12人、疑いのある患者は16人となった。

 (追記4) 8/21現在の福島県民健康管理調査(約36万人が対象)。事故発生当時18才以下だった子供、216,809人の内、甲状腺がん患者は18人、疑いのある患者は25人となった。うち4割は事故直後から4ヶ月後までの被曝量を行動記録などで推定する基本調査を終え、2ミリシーベルト未満。(追記1)では、4.6ミリシーベルトは、安定ヨウ素剤の服用基準(50ミリシーベルト)より低く、健康への影響は少ないと言っていますが、2ミリシーベルト未満でもがん患者が発生しているのは何故ですか。

 (追記5) 11/12、「県民健康管理調査検討委員会」は「甲状腺がんと確定した子供は26人、がんの疑いは32人」と記者会見で公表。がんが確定した26人は手術を受け、経過は良好という。原発事故と甲状腺がんの因果関係はないと、この期に及んでも言い張っている。

 (追記6) 2/8、「県民健康管理調査検討委員会」は「甲状腺がんと確定した子供は33人、がんの疑いは42人」と記者会見で公表。原発事故と甲状腺がんの因果関係はないと、この期に及んでも言い張っている。

 (追記7) 5/19、「県民健康管理調査検討委員会」は「甲状腺がんと確定した子供は50人、がんの疑いは39人」と記者会見で公表した。

 (追記8) 8/24、「県民健康管理調査検討委員会」は「甲状腺がんと確定した子供は57人、がんの疑いは46人」と記者会見で公表した。調査対象は、30万人。関連記事(ものぐさ 環境省 福島vs青森・山梨・長崎の甲状腺検査 統計的な有意差 ?

 (追記9) 12/25、「県民健康管理調査検討委員会」は「甲状腺がんと確定した子供は84人、がんの疑いは24人」と記者会見で公表した。甲状腺検査は4月から2巡目に入り、1巡目で「問題ない」とされた4人が「がんの疑い」と診断されている。

 (追記10) 2/12、「県民健康管理調査検討委員会」は「甲状腺がんと確定した子供は86人、がんの疑いは23人」と記者会見で公表した。4月からの2巡目の検査で、1人がんと診断された。

 (追記11) 2/27、小児科医・高松氏は、「112人に甲状腺がんが見つかっている。国立がんセンターの調査では、国内の子供たちの甲状腺がん手術は10万人に1.1人。2011年の浜通りの検査では、10万人に30人を手術している。異常多発だ。」と述べている。

 (追記12) 4/30、「県民健康管理調査検討委員会」は甲状腺がんと確定した子供は98人、がんの疑いは14人と公表した。対象者は36万7685人。実に発生率は3700人に1人となった。2巡目の検査で、15人ががん、24人ががんの疑いと診断された。

 (追記13) 12/1、甲状腺がんと確定した子供は100人、がんの疑いは13人となったた。これは、1巡目と2巡目を含めた結果であり、実に3300人に1人となった。子供の甲状腺がんの発生率は100万人に1人が通説である。これを大きく上回っているのは、精度の高いスクリーニング検査の結果であると関係者は言っているが、2巡目の検査(2015年9月末時点での検査者は18万人)でも、15人ががん、24人ががんの疑いと診断された。2巡目だけでも4700人に1人の割合だ。この事実を前にしても尚、関係者は「チェルノブイリ原発事故に比べ被ばく量が少なく、事故当時5歳以下の発症がないことなどから、放射線の影響は考えにくい」と言っている。放射線の影響であると、なぜ認めないのか。

 (追記14) 2/15、県民健康調査検討委員会は、甲状腺がんと確定した子供が100人を超え、全国の罹患率の数十倍になるとの最終案を大筋で認めた。この結果に対して「考えにくい」と評価しながらも「完全に否定できない」としている。放射能の影響をやっと認めた模様だ。2巡目の検査では、16人ががん、35人ががんの疑いと診断された。

 (追記15) 3/17、福島県民の健康調査の一環として県が実施している子供の甲状腺検査で、昨年末までに166人が甲状腺がんやがんの疑いとされた。有識者でつくる県の検討委員会は全国的な統計に基づいて推計される患者数に比べ「数十倍多いがんが発見されている」と指摘。検討委や環境省は「放射線の影響とは考えにくい」としている。

 (追記16) 9/15、福島県民の健康調査の一環として県が実施している子供の甲状腺検査で9/14、2巡目の甲状腺検査で新たに4人ががんと診断された。1巡目の検査を含めがんやがんと診断された数は174人にもなる。内訳はがんが135人、がんの疑いが39人。

 (追記17) 12/31、福島県民の健康調査の一環として県が実施している子供の甲状腺検査で、がん、ないしがんの疑いが184人。100万人当たり5.5人。

 (注1) 一般的に使用されているホールボディーカウンタの検出できる最低は尿検査よりも50~60倍高く「不検出」になるケースが多い。将来的に健康被害が生じても、証拠がなく、被害者の切捨てにつながる。

 (注2) 放射線源からの距離をr(m)、任意の距離の放射線の強さをA、比例定数をkとすれば、

   A=k/r          (1)

 で表され、r=1の距離における放射線の強さをA0とすれば、A0=kとなり、(1)式は

   A=A0/r          (2)   

 となります。ここで(2)式にr=1μm=10のマイナス6乗を代入すると、

   A=1,000,000,000,000となります。 

 (注3) 「距離が0になったら放射線の強さは無限大になるのか」との指摘があります。そんなことはありません。放射性物質の放出する放射線の強さが上限となります。かといって、問題がないと言うわけではなく、ある一定の距離に近づくまで、この法則は成り立つのです。  

 

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