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2013年7月16日 (火)

福井県の緊急避難計画

 原発の再稼動の条件の1つである「緊急避難計画」の策定が進んでいます。原子力規制委員長は2/13の記者会見において、同計画が「再稼動の条件の1つ」となるとの見解を述べていました(ものぐさ 安心できない緊急避難計画なら再稼動するな)。ところが、その計画の実効性に疑問を呈する自治体は少なくありません。

 敦賀原発、もんじゅ、美浜原発、大飯原発、高浜原発が立地する福井県の緊急避難計画はどの程度のものでしょう。

 同県の緊急避難計画は、「原子力発電所近接5km圏の住民避難計画」として、平成25年3月に策定されたが、UPZ圏内の同計画の策定はこれからだ。以下が、その計画の概要です。

・ すべてが半島部に位置することから、即時避難が必要となる原発近接地域の避難対応に当たっては、県、市町をはじめ、消防、警察、海上保安庁、自衛隊等の防災機関が一体となって、陸・海・空路あらゆる搬送手段により、迅速、確実に住民の避難を行う。消防、警察、海上保安庁、自衛隊等の防災機関と、具体的な運用等について調整を継続し、さらに実効性のある計画としていく。

・ 避難対象者は7631人(敦賀原発、もんじゅ、美浜原発は3~4kmと接近しており、複数の原発から5km以内の集落があり、その重複部分を除く)。

・ 原発事故の緊急事態を3つのレベルに区分。「警戒事態・・・第1段階」とは原発の重要な故障等、「施設敷地緊急事態・・・第2段階」とは冷却機能喪失や制御室の制御不能等、「全面緊急事態・・・第3段階」とは炉心冷却装置による注水不能や炉心溶融等を指す。

・ 国、県、市町、消防、警察、自衛隊、海上保安庁等への通報や連絡規定を明示(第1~3段階)。警戒本部やオフサイトセンターの設置(第1段階)。

・ バスの派遣準備を要請(第1段階)。自衛隊と海上保安庁に対し、緊急輸送の支援を行なうための出動準備を要請(第1段階)。

・ 一時集合施設を開設(主に学校)し、施設に対して、換気設備や窓・扉の気密性の向上等の放射線防護対策を実施(第1段階)。

・ 住民の避難準備(第2段階)。

・ バスの派遣要請(第2段階)。

・ 避難車両中継所の開設(第2段階)。・・・ここに集合後、住民は避難先に避難。

・ 避難先への住民受け入れの要請と住民の避難(第3段階)。

・ バスの派遣要請(第2・第3段階)。自衛隊と海上保安庁へ緊急輸送の支援を要請(第3段階)。

 以下、避難ルールです。

・ 自家用車により避難可能な住民は、自家用車による避難。

・ 自家用車により避難しない住民は、あらかじめ定めた一時集合施設に集合し、応急出動した自衛隊車両または県・市町が確保した避難用のバスによる避難。

・ 自衛隊車両等により避難車両中継所まで避難した住民は、緊急車両中継所から避難用のバスに乗り、県内の避難先へ避難。

・ 船舶およびヘリコプターにより避難を行う住民は、半島部の港湾・漁港または臨時ヘリポートから、避難先近辺まで移動し、その後、避難用のバスに乗り、県内の避難先へ避難。

・ 病院の入院患者、社会福祉施設の入所者は、バスによる避難。介助が必要な入院患者・入所者については、消防機関の救急車、福祉車両または自衛隊・海上保安庁の応急出動したヘリコプターにより搬送.。

・ 健康福祉センター及び市町に安定ヨウ素剤の備蓄を行い、住民に対する迅速な配布体制を整備。

 以下、検討します。

 各原発間の直線距離は、敦賀原発ーもんじゅ間3.7km、もんじゅー美浜原発間4.3km、美浜原発ー大飯原発間34.2km、大飯原発ー高浜原発間13.6kmです。敦賀原発、もんじゅ、美浜原発は驚くほど接近しています。

 事故が第1段階から第3段階まで順を追って進展することを前提に、計画が作られているように感じました。もし、直下型地震に襲われ、原子炉が緊急停止に失敗し暴走した場合、事態は崩壊熱による炉心溶融のような穏やかなものではありません。核分裂反応が継続し、瞬く間に炉心冷却材が失われた場合でも、住民の安全は担保されるのでしょうか。このような事故には対応できない。よって、このような事態は起きないこととする。これでは、今までの安全神話と全く同じではないですか。

 一時集合施設に対する放射線防護対策はあらかじめ実施しておくのではなく、第1段階になって実施するようです。教室等は窓が多く、防護対策の実効性は保たれるのでしょうか。校庭から廊下を通って、教室に至るまでの防護対策は実施するのでしょうか。

 自宅・勤務先等から一時集合施設への避難は原則徒歩です。一時集合施設に集合した住民は、自衛隊車両等で緊急避難中継所に移動し、更に指定した避難先に移動することになります。

 緊急輸送用のバス、ヘリコプター、船舶は足りているのでしょうか。

 それでは、原発から一時集合施設、一時集合施設から避難車両中継所までの移動距離と時間はどの程度でしょうか。カーナビで拾って見ました(車による移動)。

原発       一時集合施設(距離/時間)       緊急避難中継所(距離/時間)

敦賀原発  → 西浦小・中学校(2.1km/3分)      → 敦賀市総合運動公園(15km/28分)

もんじゅ   → 常宮小学校(12km/19分)        →  敦賀市総合運動公園(8.6km/17分) 

美浜原発  → 丹生介護予防センター(1.5km/2分) → 美浜町総合体育館(19km/31分) 

           菅浜小学校                  → 美浜町総合体育館(12km/21分) 

           岬小学校                    → 美浜町総合体育館(23km/37分)

大飯原発  →  大島小学校(2km/3分)          → おおい町総合町民体育館 8.6km/13分

             はまかぜ交流センター           → おおい町総合町民センター(8.1km/13分)

           県栽培漁業センター             → 小浜市民体育館(12km/19分)

高浜原発  → 旧音海小・中学校(3.1km/5分)    →  和田小学校(14km/22分)

 上記に見るように、原発から一時集合施設までの距離は2~12km程度であり、徒歩による所要時間は30分~3時間です。また、道路の通行止めによる迂回路の有無も気になるところです。

 一時集合施設、避難車両中継所、半島部の港湾・漁港及び臨時ヘリポート、避難先は確定しているものの、避難経路の通行止めや台風等で船舶が接岸できない場合等、想定外への対応マニュアルは見当たりません。

 報道によれば、UPZ圏内の123市町村で「逃げられずに孤立の恐れのある集落」は約半数に上ると言われています。その内、福井県で孤立する集落は、高浜町、おおい町、美浜町、小浜市、若狭町、池田町、敦賀市、越前町、南越前町です。また、電気事業連合会資料(2011.2.3)によれば、UPZ圏内の人口は、敦賀原発では75.5万人、美浜原発では39.8万人、大飯原発では32.9万人、高浜原発では41.3万人。緊急避難者は30~75万人です。緊急避難計画の策定など、ほとんど不可能でしょう。できたら見てみたいものです。

 このように、避難計画は様々な問題を抱えています。福井県の避難計画が「絵に描いた餅」とならないことを祈るばかりです。悪く解釈すれば、「絵に描いた餅」でもかまわないから、計画をでっち上げ、再稼動の体裁を整えて良しとすることも考えられます。

 原子力規制委員会が規制基準を作成し、同委員会は規制基準への適合性を確認する。緊急避難計画と避難は自治体任せ。政府は経済優先で何が何でも再稼動する。3つの部署がてんでんバランバラで典型的な行政の縦割り。各部署が夫々最適であれば、全体の安全はどうでもよいと言うことでしょうか。

 重大事故が起きたら大量放射性物質が拡散する。→緊急避難計画は完全でない、またはその実効性が担保されていない。→それでも再稼動する。この論理はおかしくありませんか。

 (原発所在地)

 敦賀原発   福井県敦賀市明神町1番地

 もんじゅ    福井県敦賀市白木2丁目1番地

 美浜原発   福井県三方郡美浜町丹生66

 大飯原発   福井県大飯郡おおい町大島1-1-1

 高浜原発   福井県大飯郡高浜町田ノ浦1

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