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2013年7月18日 (木)

世界の原子力情勢を見れば脱原発はできない ?

 7/16、某理事長は「世界の原子力情勢を正しく認識すれば、一定度の原発は必要だ」と述べています。「世界の原子力情勢」について同氏は次のように言っています。

・ 東芝が米ウェスチングハウス社を買収し、日立は米GEと合弁会社を設立。原子力技術で指導的立場をとりたいオバマ大統領にとって日本の原子力産業は不可欠。

・ 米国の核の傘に守られているのに、日本が脱原発とは言えない。「甘えの構造」と写る。

・ 脱原発なら日米同盟に変化をきたす。

・ 中国と米国は「トリチウム発電」の共同研究を始めた。

・ 再稼動させて優秀な技術者を育成していくのが現実的だ。

・ 自国の原発の安全性に疑問を持ちつつ、海外では「安全」と言って原発を売り込む。辻褄が合わない。

 なんとも米国の出方を伺うような同氏の論理です。米国のために、国民が不安に思っている原発を再稼動するのですか。原発事故後の福島県民の塗炭の苦しみを感じていますか。福島原発のような放射性廃棄物の放出は、今後絶対起きないと確信しているのでしょうか。疑問です。米国のご都合主義から原発問題を考えると、同氏のような論理となるのでしょう。近視眼的な見方で、視野狭窄に陥っているようです。

 米国では、寿命を残して廃炉を決定する原発が相次ぎ、30数年ぶりの新設計画も頓挫する例が出てきました。シェールガス革命に加え、安全対策強化の影響で、原発が割高となったためだと言われています。市場原理が働けば、当然の結果です。

 トリチウム発電の共同研究云々は取って付けたような話です。価値があれば、日本も研究を始めれば良いだけのことです。トリチウム発電と再稼動は別問題です。

 ほとんどの国民が不安を持ち、安全神話を始めとする闇の部分を見た以上、国民は生理的に原発を嫌っています。このような技術に進んで有能な技術者は集まるでしょうか。技術者は、国民のためになり、国民に喜ばれるために、その技術を磨き、製品を世に送りたいと考えます。50年も経てば、ウランが枯渇し、衰退する産業です。果てしなく続く廃炉技術の研究にこそ、技術者は人生をかけて良いと思うのです。政府は早く方針を転換すべきです。さもなければ、廃炉技術においても外国の後塵(車・馬の走った後に立つ土ぼこり)を拝するでしょう。

 福島原発事故で原発の安全性は否定されました。原子力規制委員会は「過酷事故による放射能の拡散」の可能性を認めています(ものぐさ 原発 新安全規準骨子にパブリックコメントを(シビアアクシデント))。日本が原発の安全に疑問を持っていたとしても、日本が「安全だ」と言う原発を、海外の新興国は購入するでしょう。購入側は「安全だ」と言う言質が欲しいだけです。一旦事故が起きれば、その言質を盾に、多額の賠償金を要求するかも知れません。昨年1月、米サンオノフレ原発で、蒸気発生器から放射能漏れが起きた問題で、同原発を所有するSCE社は三菱重工に損害賠償を請求する方針を表明しています。契約上の最大賠償額は132億円のようです。

 同氏は、別の視点から柔軟に原発問題を考えて欲しい。「脱原発」をする。そのために何をしたら良いのか。そういう発想をして欲しい。その中には、米国への説得と代替案の提示。安全保障問題。核燃料サイクル撤退と再処理工場の閉鎖に伴う六ヶ所村対策。廃炉をし易くするための会計基準の見直し(これは既に始まっているようだ)。原発立地自治体への財政支援。国策で進め、嫌々これに従った電力会社への支援。色々あるでしょうが、問題解決できないことはありません。同氏は「脱原発には相当の覚悟が必要」と言っています。その覚悟は何かを示して欲しい。

 以下の現実を見つめてください。米国の「ご都合主義」に追従している場合ではありません。

 プルトニウムを燃料として発電する「もんじゅ」の実現性は技術的に不可能であり、世界は核燃料サイクルから撤退している。そして、ウランの埋蔵量は少なく、石油の数分の1、石炭の数十分の1と言われています。新興国が原発を稼動すれば、50年足らずでウランは枯渇し、原発は運転できなくなるでしょう(注1)。

 たった50年間原発を運転するだけで、膨大な量の高濃度放射性廃棄物が生成され、無害となるまでに10万年もかかります。

 シェールガスの埋蔵量はウラン燃料を遥かに凌ぎます。埋蔵量は188兆立法メートルで、その可採年数は400年と言われています。メタンハイドレードの埋蔵量は数千兆立法メートルで、日本列島周辺海域だけでも可採年数は100年と言われています。エネルギーを何故ウランに頼らなければならないのか理解に苦しみます(ものぐさ 脱原発はシェールガスとメタンハイドレードで)。

 日本は地震国であり、日本にとって原発は不向きなシステムです。外国に比べてその危険性は遥かに大きいのです。

 ドイツは脱原発を宣言しました。ドイツに出来ることがなぜ日本で出来ないのでしょうか(ものぐさ ドイツ前首相 脱原発を)。

(追記)

 同氏の発言から、米国は日本の原発維持を願っているように感じました。それなら、2018年に期限を迎える日米原子力協定に日本がビクビクすることはありません(ものぐさ 日本が怯える日米原子力協定)。使用済み核燃料の再処理ができず、プルトニウムが溜まり続けたとしても、スンナリ、同協定は再延長され、ウラン燃料の輸入は継続出来るでしょう。締結当初より、同協定の意味合いが変わってきているのでしょう。

 世界に対して、日本も米国も「できもしない再処理」を方便として使っているようです。日本も米国も同じ「穴の狢」となったのです。方便のために、国民を不安に陥れるのですか。マッピラです。

(注1) ウラン埋蔵量550万t。IAEAによれば、ウラン消費量は年7万t。よって、ウランの可採年数は約80年。世界の電力を全て原発で補うと仮定すると、ウラン消費量は年120万t。可採年数はたった5年。

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