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2013年8月19日 (月)

浜岡原発の基準津波 63m ?

 高浜原発3、4号機の再稼動を目指す関西電力は最大津波の高さを想定する「基準津波」について、従来より約1.4m高い3.99mに引き上げました。 

 また、「第5721号浜岡原子力発電所運転差止請求控訴事件」を審理中の東京高等裁判所に提出された「準備書面18(津波による損傷防止並びに基準津波及び耐津波設計方針に係る審査ガイドについて・・・2013年6月27日)」には、浜岡原発を襲う基準津波は63mであると書かれています。 

 新たに出てきた基準津波(注1)は何を根拠に計算されるのでしょうか。

 まず、原子力規制委員会の資料「基準津波及び耐津波設計方針に係る審査ガイド・・・平成25年4月5日」は、基準津波の策定にあたって、以下の事項を要求しています。

1 基準津波は、地震のほか、地すべり、斜面崩壊等地震以外の要因、及びこれらの組合せによるものを複数選定し、不確かさを考慮して数値解析を実施し、策定すること(基本方針)。

2 津波を発生させる要因として、①プレート間地震、②海洋プレート内地震、③海域の活断層による地殻内地震、④陸上及び海底での地すべり(以後、地すべりと記す)、斜面崩壊、⑤火山現象(噴火、山体崩壊、カルデラ陥没等)を考慮すること(基準津波の策定)。以下、②~④については割愛します。

3 津波を発生させる要因として、以下の地震を考慮すること(プレート間地震)。

 ①プレート境界での大きなすべりにより強い揺れと大きな津波を生成する地震及び海溝直近の分岐断層まで同時に活動する地震及び、②プレート境界(海溝近傍)でのゆっくりとした大きなすべりにより強い揺れは伴わないが大きな津波を生成する津波地震。

4 国内外の津波事例を考慮し、調査結果を踏まえ、「プレート形状、すべり欠損分布、断層形状、地形・地質並びに火山の位置等から考えられる発生要因に応じた適切な規模の津波波源を考慮すること(基準津波の波源及び波源モデルの設定)。

5 地震発生域の深さの下限から海溝軸までが震源域となる地震(断層幅が飽和するような地震)を考慮していること(プレート間地震)。

6 日本周辺のプレート構造及び国内外で発生したMw9クラスの巨大地震による津波を考慮すること。

 プレート間地震に起因する津波波源の対象領域として、①千島海溝から日本海溝沿いの領域(最大Mw9.6 程度)、②伊豆・小笠原海溝沿いの領域(最大Mw9.2程度)、③南海トラフから南西諸島海溝沿いの領域(最大Mw9.6程度)を例示。

7 対象海域における既往地震の発生位置や規模を参考に、プレート境界面の領域区分(セグメントと呼ぶ)を設定し、セグメントの組合せにより、津波波源の位置、面積、規模を設定すること。

8 セグメントの組合せに応じた津波波源の総面積に対し、地震の規模に関するスケーリング則に基づいてモーメントマグニチュード及び平均すべり量を設定すること。

9 津波波源のすべり分布の不均一性(注2)を考慮して段階的にすべり量を設定すること。

10 基準津波を選定する際には、その規模が、敷地周辺における津波堆積物等の地質学的証拠や歴史記録等から推定される津波の規模を超えていること。

 理解し難い内容です。

 東京高裁に提出した「準備書面18」は浜岡原発という具体的事例により、「基準津波が63m」になることを説明しており、同書面により基準津波についての理解が深まるものと思います。以下、概略を記します。

・ 上記6項に例示しているように、津波波源の対象領域は南海トラフから南西諸島海溝沿いの領域とし、参考値ながら、その最大Mwは9.6としています。南海トラフの巨大地震モデル(駿河湾~日向灘沖)のMw9.1を大きく上回る地震を考慮せよと、要求しているのです。

・ 上記7~9項は、平均すべり量の設定やすべり分布の不均一性を考慮することを要求しています。すべり量が大きくなれば、プレートの沈み込み角度に応じて、上盤のプレートがどれだけ盛り上がるかが決まります。すべり量が2.2倍となれば、海底面の隆起量も2.2倍となり、それに応じて海面の上昇が全体に2.2倍になることを意味しています。

・ 構造計画研究所は、すべり量とMwとの関係を明らかにしています。横軸にMw、縦軸に平均すべり量をとったグラフは両対数目盛りとなっており、両者の関係はほぼ直線です。それによればMw9.6のときの平均すべり量は約20m、東北地方太平洋沖地震・津波のデータを基点として同じ傾きでMw9.6での平均すべり量を見れば、ほぼ30mです。ちなみに、東北地方太平洋沖地震では宮城県沖の日本海溝近傍においておよそ50m を越える大すべりが生じました。

・ 南海トラフの巨大地震モデルにおける津波高さは19m(ものぐさ 浜岡原発 津波高さ19mは22mの防潮堤で安全か その3)、この場合の平均すべり量は9mとされています。平均すべり量30mは9mの3.3倍であるので、津波高さも19mの3.3倍となる63mとなります。

 基準津波の策定では、上記6項に見るように、かなり広範囲な領域が設定されています。更に、地震規模に応じた平均すべり量の算定が重要であることもわかります。

 また10項に見るように、基準津波は、歴史的記録等を越えるものでなくてはならないことも重要な点です。

(注1) 実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則第5条(津波による損傷防止)は、「設計基準対象施設は、その供用中に当該設計基準対象施設に大きな影響を及ぼすおそれがある津波(以下、基準津波という)に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」と規定しています。

(注2) 東北地方太平洋沖地震による津波では、すべり分布の不均一性が観測されています。

 すべり量の大きい小断層から順に領域を拡げていき、その領域内の平均すべり量が全領域の平均すべり量の2倍、3 倍、4倍となる場合の各領域面積を求めると、全領域の平均すべり量の2倍となる面積比は約33%から40% 、同様に3倍では10%から20%、4倍では2% から11%である。当然、最大すべりは海溝付近となります。

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