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2013年9月13日 (金)

トリチウム 飲んでみろよ

 日本原子力学会は、同原発内に大量にたまり、海への流出が問題となっている放射能汚染水の成分のうち、高性能な浄化装置でも除去が難しいトリチウム(H3 三重水素)を、自然の海に含まれる濃度まで薄めてから海に放出することを提案しました。トリチウムは通常の水を構成する水素の放射性同位元素で、性質が似ているため、除去するのが困難なのです。

 トリチウムの海洋放出に際しては、濃度を連続的に監視するほか、住民や諸外国への事前説明が不可欠とも指摘しています。

 原子力規制委員長も8月、海洋放出を検討課題とする考えを示しています。同委員長は講演で 汚染水の海洋への影響について、「おおむね港の中で、(港湾の)外に出ると(放射性物質は)検出限界以下だ」と指摘し、その上で同委員長は、「必要があれば、(放射性濃度が)基準値以下のものは海に出すことも検討しなければならないかもしれない」と述べています。

 しかし、港湾内の海水は1日で50%が入れ替わっており、専門家は「海水で希釈され検出限界以内になっているだけで、トリチウムは海洋に拡散していると考えなくてはならない」と見ています。

 東電は2011年5月から今年7月までに20兆から40兆ベクレル(注1)のトリチウムが海に出たと試算しています。この数値について、同委員長は「とてつもなく大きな値に見えるが、トリチウム水としてどれくらいか計算すると最大で35グラムくらいだ」と述べ、十分に低い水準であるとの認識を示しています。

 放出濃度も大事だが、放出量はどこまで増えるのでしょうか。また、分子レベルでDNAを傷つけるトリチウムに関して、35gという数値を引き合いに出すことに違和感を覚えます。35gのトリチウム水を飲んだらどうなるのでしょう。100ベクレル/kgの水に換算したら、20兆ベクレルの水は、2000億kgにもなります。

 某新聞は、「トリチウムが出すベータ線のエネルギーは非常に弱く、皮膚を通過できないので、体の内部まで入っていかない。体内に取り込んでも、組織に蓄積せず、尿と一緒に排出される。10日もすれば、最初に取り込んだ量の半分になる。放出基準濃度1立法センチ当たり60ベクレルより高い場合は、希釈して濃度を下げれば良い」と述べています。

 東電は、トリチウムの特性を以下のように説明しています。「福島原子力発電所でのトリチウムについて・・・平成25年2月28日」より。

① 化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれている。

② 半減期は12.3年、食品用ラップでも防げる極めて弱いエネルギーのベータ線しか出さない。

③ 水として存在するので人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される。

④ 濃度限度のトリチウムを毎日2リットル摂取した場合の被ばく線量は年間0.76ミリシーベルトで 1ミリシーベルト以下。

 トリチウムを含む水道水と20兆ベクレルものトリチウムを比較し、さも安全であると錯覚させることに違和感を感じます。

 水としての存在のみ強調しているが、他の有機物と結合する可能性もあります。細胞等への結合に言及していないのはなぜでしょうか。

 食品用ラップも通さないと強調しているが、消化管の内側に食品用ラップが張ってあるわけではありません。

 毎日2リットル摂取した場合でも、年間被曝量は0.76ミリシーベルトで1ミリシーベルト以下であると主張しているが、この1ミリシーベルトと言う数値は色々なところで引き合いに出されています。まず、日本人の年間被曝量は5ミリシーベルト(ものぐさ 日本人の年間被曝 5ミリシーベルト)と言われています。138ベクレル/kgの食品を毎日摂取した場合、年間被曝量は1ミリシーベルト(ものぐさ 報道されない内部被曝)であるとも言われました。呼吸することによる内部被曝もあります。汚染土壌からの外部被曝もあります。胃のX線集団検診は0.6ミリシーベルトです。天然の放射性物質であるポロニウム210(注2)などが含まれる魚貝類を摂取することで、年間1ミリシーベルトの内部被曝を受けるとも言われています。トリチウムからの被曝量にだけ焦点を当てて、0.76ミリシーベルトだから安全だというのも可笑しな話です。被曝量の合計値で、安全か否かを判断すべきです。

 「高度情報科学技術研究機構」はトリチウムについて以下のように記述しています。ピンク部が上記と随分違います。

 飲料水や食物から摂取されたトリチウム水は胃腸管からほぼ完全に吸収される。トリチウム水蒸気を含む空気を呼吸することによって肺に取り込まれ、そのほとんどは血液中に入る。血中のトリチウムは細胞に移行し、24時間以内に体液中にほぼ均等に分布する。また、トリチウムは皮膚からも吸収される。最近問題になっているのは有機成分として取り込まれた場合の有機結合型のトリチウムで、一般に排泄が遅く、体内に長く留まる傾向がある。トリチウムは水素と同じ化学的性質を持つため生物体内での主要な化合物である蛋白質、糖、脂肪などの有機物にも結合する。経口摂取したトリチウム水の生物学的半減期が約10日であるのに対し、有機結合型トリチウムのそれは約30日~45日滞留するとされている。トリチウム水を一時に多量摂取することは現実的にはあり得ないが、低濃度のトリチウム水による長期間被ばくの場合を考えねばならない。

 安倍首相は「放射能汚染水は完全にブロックされている」と述べています。素人が考えても「噓」だと感じます。同委員会は「非科学だとは思わないし、政治家の発言としては問題ない」と微妙な発言をしています。一方、東電は、「1日も早く安定させたい」と述べ、首相発言を事実上否定しています。たぶん東電のほうが正しいのでしょう。

 このように、現状を甘く捉え、後から「噓」だとばれる発言を、今まで何度も聞かされてきました。「冷温停止状態」しかり、「直ちに影響はない」しかり。数え上げたらキリがありません。

 現時点で海洋放出しか考えられないので、危険であると判っていても、理屈をつけて海洋放出するのでしょう。

 トリチウムが安全であると主張している人は、テレビの前で自分の妻子に飲ませてみることを提言します。自分たちは、いつも安全な場所にいて、安全、安全と主張しているのです。

(注1) 20兆ベクレルとは「1秒間にトリチウムが20兆個崩壊すること。

(注2) 半減期は138.376日。半減期が短い分、極めて強い放射線を持ち、崩壊時にアルファ線を放出する。

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