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2013年11月11日 (月)

特定秘密保護法案は戦前の治安維持法か 原発問題で一般人も逮捕

 「特定秘密保護法案は、戦前の言論統制や治安維持法を連想させる」と漠然と述べたが(ものぐさ 特定秘密保護法案 原発報道で逮捕か)、理解を深めるため、治安維持法の歴史と内容について勉強してみました。

 世紀の悪法と言われた治安維持法は、以下のような改正と解釈の変更を繰り返し、牙を剥き、国民を恐怖のどん底に落としていったのです。特定秘密保護法案もこれと同じような道ををたどるのでしょうか。原発も言論統制され、国民に真相が明らかにされずに、再稼動への道をまっしぐらに進むのでしょうか。

 1 「治安維持法」は大正14年4月22日に公布されました。その第一条は「国体(注1)を変革し、又は私有財産制度を否認することを目的として結社(日本共産党)を組織し、又は情を知りて之に加入したる者は10年以下の懲役、又は禁固に処す。前項の未遂罪は之を罰す。」と定めています。

 この法律は、対象とする結社を特定化し、「国体の変革」や「私有財産制度の否認」のみを禁止したものであり、濫用の恐れのない制限的な法律です。

 しかし、結社を組織していないにも関わらず、以下の事件が起き、逮捕者が出ているのです。この時点で、拡大解釈をして、弾圧を強めていこうとする意思が当局にあったようです。

① 正式令状を取り付けることもなく、出版法容疑で下宿、自宅などを捜索し、京大生や同志社大生を検束し、文書多数を押収した。同法の付随的なものである第二条(協議罪)、第三条(煽動罪)を適用したのです。政治結社が確認できなくても左翼学生分子を弾圧するには同条文は格好の武器でした。・・・京都学連事件(昭和元年1月逮捕)

② 国鉄名寄駅の鉄道労働者らが芸術研究や社会科学研究を目的とした結社(日本共産党とは無関係)を設立。治安維持法容疑(言いがかりとしか思えない私有財産制度否認容疑)で検挙され有罪の判決を受ける。・・・北海道集産党事件(昭和3年5月結審)

 2 「治安維持法」は3年後の昭和3年6月29日に「治安維持法中改正緊急勅令」として非立憲的な手段で改悪されました。その第一条は「国体を変革することを目的として結社を組織したる者、又は結社の役員其の他指導者たる任務に従事したる者は死刑、又は無期若しくは5年以上の懲役若しくは禁固に処し、情を知りて結社に加入したる者、若しくは社の目的遂行のためにする行為を為したる者は2年以上の有期の懲役、又は禁固に処す。私有財産・・・・」と定めています。

 「治安維持法」との違いを見てみましょう。第一は、「死刑、又は無期」の導入であり、第二は「目的遂行の為にする行為」の追加規定です。第二の意味するところは、「目的遂行の為にとる手段のいかんを問わない、恐ろしく範囲の広いものであり、その行為が客観的に見て結社の目的遂行のためになっている」、と当局が認定すれば罪にあたると言うことです。シンパ(ある人物や団体の政治的思想に賛同し信奉者となった人、又は団体)のみならず党員の活動も罪になるのです。

 一例を紹介します。昭和4年、約700名の共産党指導者が逮捕されました(4.16事件)。同事件の弁護に当たっていた日本労農弁護士団のメンバーが、日本共産党の「目的遂行の為にする行為をなす者」として検挙されました。「弁護活動の自由」も侵害されると言うことです。又、昭和4年から5年にかけて、党員はもちろん、一切のフラクション(政党が労働組合や大衆団体などの組織の内部に設ける党員組織)、資金提供者及び文化運動などの外郭組織の関係者まで検挙されたのです。

 昭和3年から「思想犯保護観察法」が公布される昭和11年までの検挙者は5万9253名に昇りました。

3 「転向(注2)」者に対する「予防拘禁(下記、第三十九条)」的な役割を持つ「思想犯保護観察法」が昭和11年5月29日に公布されました。その第四条は「保護観察に付せられたる者に対しては居住、交友、又は通信の制限、其の他適当なる条件の遵守を命ずることを得」と定めています。保護司はまさにプライバシーや行動の自由を侵害することを職務としているのです。

4 「泣く子も黙る治安維持法」は、昭和16年3月10日に「治安維持法 改正法律」として公布されました。太平洋戦争開戦(昭和16年12月8日)のまさに直前の公布です。同法のポイントを見てみましょう。

 第一に、国体変革に対する厳罰化を更に進めました。旧法は「5年以上の懲役若しくは禁固」としていたものを、新法では「7年以上の懲役」となっています(第一条)。もちろん最高刑は死刑です。

 第二に、「国体変革」結社を支援する外郭団体を組織する行為に処罰規定が導入されました(第二条)。旧法で曖昧になっていた「目的遂行の為にする行為」の処罰規定を明文化したのです。これにより、当局は何の負い目もなく逮捕できたのです。これも最高刑は死刑です。

 第三に、「国体変革のための組織を準備することを目的」とする準備結社にも処罰規定が導入されました(第三条)。当局は、予防的に鎮圧する措置を講じたのです。同じく最高刑は死刑です。

 第四に、結社とはいえない集団による分散的・個別的な活動を規制する規定が挿入されました(第四条)。研究会や読書会までもが規制の対象になりました。最高刑は無期懲役です。

 第五に、結社にも集団にも関係のない個人が「国体変革の目的たる事項」を宣伝したり、行為をしたりするのを禁止する規定が新設されました(第五条)。今の中国や北朝鮮と同じです。最高刑は10年の懲役です。

 第六に、「国体を否定することを目的として結社を組織したるもの・・・」についても、最高刑は無期懲役です(第七条)。国体変革と異なった文言です。この法律の下では、「国体を承認しないこと」が罪だというのだから、恐ろしいことではありませんか。天皇制を認めないということが罪になるのです。

 第七に、受刑者が刑期満了となっても、獄中で「改悛」せず「転向」しなかった場合、再犯を予防する目的で獄中に拘禁し続けることが可能となりました(第三十九条)。

 以上見るように、法令の拡大解釈が遠慮会釈なく行なわれ、見せしめのために検挙し、これに負い目を感じた当局は、拡大解釈を正当化するために、次々と法律を改正していきました。この時代、一部の指導者の強権により、国民は言論の自由を奪われ、日本は負けると判っていた戦争に突入していきました。ミッドウェー海戦、第二次ソロモン海戦、第三次ソロモン海戦、レイテ沖海戦で負け続けているにも関わらず、国の情報操作(大本営発表)により、国民は戦況を知ることができませんでした。

 特定秘密保護法案は何が秘密であるかも明確ではなく、法案は抽象的で、拡大解釈される余地が(「その他」の部分が11ヶ所もある)数多くあります。何も知らないまま、一般人がある日突然逮捕される可能性もあります。半世紀前、日本は世紀の悪法といわれる治安維持法を制定し、数々の弾圧を行なってきました。このような素地が日本の指導者の中にあると考えるのは私だけでしょうか。秘密保護法案と治安維持法には同じ匂いを感じます。

 「治安維持法」下での裁判は、全く機能を果たしていません。徒労に終わっています。原発の違法性を訴えた原告が、国策であることを理由に、全て敗訴の判決を受けている状況と同じだと思いませんか(ものぐさ 原発訴訟 裁判所は機能したか)。

 一般人がある日突然される場合について、報道はその一例を紹介していました。

① 原発の非常用発電機が津波により影響を受けないかと心配になったA氏は、電力会社に問い合わせるも「セキュリティー上の理由」で教えてもらえない。

② 友人の警察官に聞くも「警備の関係は特定秘密の関係で微妙な位置づけだ」と断られてしまう。

③ A氏は、再度警察官に非常用発電機の位置を執拗に聞くも、断られる。

④ 行動を監視していた公安は、A氏を特定秘密の漏洩を「そそのかした」として逮捕した。

(注1) 「主権=統治権の所在」を指す。つまり「誰が主権者であるか」と言う点に着目した国家権力のありかたに関する概念であり、日本の国体は「天皇が主権者であり、統治権を総攬(権力などを一手に握り収めること)すると言う建前を指す。

(注2) 思想や政治的な主張・立場を変えること。日本共産党の理論を放棄すること。

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