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2013年12月 2日 (月)

IAEA 年1~20ミリシーベルト  許容

 10/21、IAEA(国際原子力機関)は、「除染をしている状況では、年1~20ミリシーベルトの如何なる個人被曝も許容される」との発言をしています。

 これをきっかけに、各方面からIAEAに追従するような発言が上がってきました。

 原子力規制委員長は「20ミリシーベルトまで許容したほうがいいと言うのが世界の一般的な考えだ」、伊達市長は「1ミリシーベルトを掲げている限り住民の帰還はありえない。5ミリシーベルトぐらいが現実的だ」、自民党環境部会は「IAEAと連携して目標を設定し直すべきだ」と述べています。

 一方、チェルノブイリを12年3月に視察した内閣府の報告書は、「チェルノブイリ法」の意義を否定していることが12/1の報道で明らかになりました。

 チェルノブイリ原発事故により放射線被害を受けた市民の保護に関する「チェルノブイリ法」は

① 年間追加被曝線量5ミリシーベルト超は「移住義務地域」。

② 同1ミリシーベルト超~5ミリシーベルト以下を「移住権利地域」。

と定め、被災者の健康管理や年金増額などの支援策を国は実施しています。

 「旧ソ連政府は事故から36時間後にチェルノブイリ周辺の区域から住民の避難を開始した。およそ1週間後の1986年5月までに、当該プラントから30km以内に居住する全ての人間(約11万6000人)が移転させられた。その他、チェルノブイリから半径350km以内でも、放射性物質により高濃度に汚染されたホットスポットと呼ばれる地域においては、農業の無期限での停止措置および住民の移転を推進する措置が取られ、結果として更に数10万人がホットスポット外に移転した。」と言われています(ものぐさ 緊急時避難準備区域解除へ ?)。

 驚くことに、民主主義国家である日本の政府関係者は、共産圏であった旧ソ連より国民に対し冷酷のようです。

 20ミリシーベルト未満云々の発言が出てきた背景には、除染に要する膨大な費用に比べて効果の限界がはっきりしてきたと言う現実があると言われています。実際、都路地区の除染前後の放射線量は毎時0.63マイクロシーベルトから0.34マイクロシーベルト、と半分にしか下がりません。

 住民を帰還させるための政府のシナリオは以下のようになるのでしょうか。

 ①政府は、とりあえず除染と言うパフォーマンスを演じ、国民の意識が薄まり、住民が諦めるまでの時間稼ぎをした。②2年半が経過し、(始めから判っていたことだが)除染効果がないことがデータ的にも明らかになってしまった。③そろそろ潮時だ。④幸い20ミリシーベルト未満では、健康への影響は直ちに出ない。⑤幸いIAEAも、「年20ミリシーベルトの如何なる個人被曝も許容される」と発言した。⑥現実問題として(住民の安全を犠牲にして、原発事故をなかったことにするためにも)住民の帰還を早めなければならない。⑦住民の帰還が始まれば、国民は原発事故を忘れ去る。

 まず、ICRPは被曝許容値をどう規定しているのでしょうか。

① 平常時の被曝量 1ミリシーベルト/年。

② 緊急時の被曝量 20ミリシーベルト~100ミリシーベルト/年。緊急時とは放射線を制御できていない状態。

③ 復旧時の被曝量  1ミリシーベルト~20ミリシーベルト/年。復旧時とは放射線のコントロールは取り戻したものの、その場に放射性物質が残ってしまった状況を想定。事故が収束したあとの復旧時になり、住民がその土地に住み続ける場合に該当。

 ICRPは、癌、白血病、遺伝的障害の発生率が被曝線量に比例して増加することを認めています。障害発生の確率がゼロとなるしきい値は存在しない。したがって確率的影響は、被曝線量を合理的に達成できる限り低く制限できるとしています。

 20ミリシーベルト未満でも癌の発症する可能性はあるのです。帰還した住民は「我慢せよ」ということでしょうか。癌発症のリスクに怯えて生活しなければならないとすれば、この恐怖に対しての見返りが必要になります。住民は何ら悪いことをして被害をこうむったわけではありません。復旧時の見返りとしては、1ミリシーベルト以下に放射線量が低減するまでの精神的賠償金、健康診断を無料で受ける権利、癌が発症した場合の治療費(もっとも放射線で癌となったとの証明はできません。泣き寝入りでしょうか)等が上げられます。11/12時点での甲状腺がん患者は26人です(ものぐさ 福島原発 甲状腺障害)。この人達の治療費はどうなっているのでしょうか。復旧時は数10年にも及び、平常時と異なるのです。復旧期の住民に対する支援策が必要です。旧ソ連は「チェルノブイリ法」に基づき実施しています。

 一方、癌発症のリスクを恐れ、1ミリシーベルト以下の地域に移住したいと思う人もいます。リスクに見合った移住手当金を要求する権利があると思います。東電の放出した放射性物質を避けるために、故郷を捨てるのですから。 

 「被災者生活支援法」が、平成24年6月27日に成立しているにも関わらず、何ら具体的な支援が定まっていないことは、政府の怠慢です。このように具体的生活支援の方策を示さないまま、20シーベルト、5ミリシーベルトなどの数値が出てくることに違和感を覚えます。冒頭の関係者の発言は、住民の健康よりお金が第一だと言っているようです。

 次に、IAEAとはどのような目的で設立した機関なのでしょうか。

 その目的には「IAEAは原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的とする」と定めています。明らかに、原発推進の立場で設立された機関です。原発で利益を得る人達の集団である日本の「原子力村」を連想してしまいます。

 このような人達の発言には一定のバイアスがかかっていると見なければなりません。IAEAは、原子力推進の立場からこのような問題を長引かせたくないのでしょう。日本の原発推進側には、IAEAの「お墨付き」を利用しようとする魂胆が透けて見えます。明治維新以来、舶来物に弱い日本人は外国の言っていることだから本当だろうと思ってしまう傾向にあります。注意してください。しかもIAEAは原発に関して、あまり権限を持っていないようです。(ものぐさ IAEAストレステスト「妥当」の意味するものは)。権限のない機関が発する発言の尻馬に乗ろうとしているのが推進側の姿です。

 原発事故が起きる前の許容値である年1ミリシーベルトを越える場合、住民の健康に政府は責任を持ち、追跡調査、賠償など誠意をもって対応に当たるべきです。間違っても年20ミリシーベルトは健康に何ら問題はなく安全だなどと言って欲しくありません。

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