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2014年2月

2014年2月 1日 (土)

原発停止なら、イラン危機で日本は一流国から転落?

 新潟県知事を含めた公開討論会の場で、「なぜ同知事が柏崎刈羽原発の再稼働に慎重か」を明らかにしています。1/30の報道で有識者はその理由を3つ挙げていました。

 その報道の後半で、同有識者は、「日本政府は原子力がない場合のリスクを全国民の視点から考えなくてはならない。この状態でイラン危機が起こりガスや石油が途絶したらどうするのか、原子力なく日本が地政学的に一流国であり続けられるのか、・・・政治家は原発の得失を国民の前で議論すべきではないか」と述べています。

 「この状態でイラン危機が起こりガスや石油が途絶したらどうするのか」との発言の裏には、だから原発が必要なのだという主張が見え隠れしています。

 石油が途絶えたら、原子力が稼動していようがいまいが日本は壊滅します。上記主張は、明らかに間違っています。福島原発事故前の統計数値を参考に論じてみます。

1 総輸入量

・ 液化天然ガスの総輸入量は6,831万t(2007)で、中東からは1,742万t(25.5%)

・ LPガスの総輸入量は1,360万t(2007)で、中東からは1,238万t(91%)

・ 石油の総輸入量は2億400万t(2007)で、中東からは1億7,687万t(86.7%)。 1キロリットル=0.85tで換算。

・ 石炭の総輸入量は1億8000万t(2010)で、中東からは0%

2 用途

・ 液化天然ガスの用途は、電力60%、都市ガス28%、製造業6%(2005)。

・ LPガスの用途は、家庭43%、工業22%、化学原料18%、自動車9%、都市ガス5%、電力3%(2007)。

・ 石油の用途は、運輸35%、民生17%、化学原料15%、製造業14%、電力12%(2005)。

・ 石炭の用途は、電力45%、製鉄35%、セメント5%(2009)。

3 考察

・ 総輸入量は6,831万t(液化天然ガス)+1,360万t(LPガス)+2億400万t(石油)+1億8,000万t(石炭)=4億6,591万t。

 うち中東からの総輸入量は、1,742万t(液化天然ガス)+1,238万t(LPガス)+1億7,687万t(石油)=2億667万t。

 更に、中東からの総輸入のうち用途が電力用のものは、1,045万t(液化天然ガス)+37万t(LPガス)+2,122万」t(石油)=3,204万t。

・ 中東からの輸入量のうち、電力用は15.5%(3,204万t/2億667万t)にしかすぎません。85%は電力以外に使用しており、中東からの輸入が途絶えれば、都市ガス、製造業、家庭生活、化学原料、自動車産業は壊滅的な打撃を受けます。原子力発電による電気が灯っても、産業にとって何の足しにもならないことは明白です。原子力があろうがなかろうが日本は壊滅的な打撃を受けるのです。

・ LPガスの3%、石油の12%しか、発電に使用していないことは驚きです。

・ 日本における電源別の発電量は、液化天然ガス29%、原子力29%、石炭25%、水力8%、石油等7%、新エネルギー1%です(2009)。発電量のわずか29%が原子力発電です。純国産電力量は、原子力に水力と新エネルギーを加え、わずか38%にしか過ぎません。輸入が途絶えれば、都市ガス、製造業、家庭生活、化学原料、自動車産業は壊滅します。この38%の電力で国民は何をするのでしょうか。テレビのバカ番組を見て大笑いしているのでしょうか。

 上記に見るように、同有識者の発言は間違いであるうえに、国民を誘導しようとする悪意すら感じます。

 上記試算はエネルギー効率等を無視しており、正確さに欠けていることをお詫びします。しかし、輸入エネルギーの全てを発電用としているのではなく、圧倒的にそれ以外の産業・家庭用に使用していることを理解していただきたいと思います。

 

        

2014年2月25日 (火)

避難指示解除 都路地区 

 2/23、政府の原子力災害対策本部は、都路地区に出されていた避難指示を、4/1に解除する方針を決めました。政府は、解除の要件である「①放射線量が年20ミリシーベルト以下、②生活環境のインフラ整備、③地元との十分な協議」をクリアしたと判断し、「避難指示は憲法が保障する居住の自由を拒む命令、田植えを再開し、家を補修したい人の人生の再建を遅らせる権利は政府にはない」と述べています。更に、「解除したから帰還しなさい、ではなく個々の判断」とも付け加えています。

 一方、説明会に参加した住民の意見は、2分されたままです。帰還に慎重な住民は「将来、子育てをすることを考えると避難指示解除に慎重になるのは当然」と述べています。

 さて、解除の要件は妥当なのでしょうか。上記①、③の要件について検討して見ましょう。

① 「放射線量が年20ミリシーベルト以下」(ものぐさ IAEA 年1~20ミリシーベルト  許容

 IAEA(国際原子力機関)は、「除染をしている状況では、年1~20ミリシーベルトの如何なる個人被曝も許容される」との発言をしています。

 チェルノブイリ原発事故により放射線被害を受けた市民の保護に関する「チェルノブイリ法」は

・ 年間追加被曝線量5ミリシーベルト超は「移住義務地域」。

・ 同1ミリシーベルト超~5ミリシーベルト以下を「移住権利地域」。

と定め、被災者の健康管理や年金増額などの支援策を国は実施しています。

 ICRPは被曝許容値をどう規定しているのでしょうか。

・ 平常時の被曝量 1ミリシーベルト/年。

・ 緊急時の被曝量 20ミリシーベルト~100ミリシーベルト/年。緊急時とは放射線を制御できていない状態。

・  復旧時の被曝量  1ミリシーベルト~20ミリシーベルト/年。復旧時とは放射線のコントロールは取り戻したものの、その場に放射性物質が残ってしまった状況を想定。事故が収束したあとの復旧時になり、住民がその土地に住み続ける場合に該当。

 上記に見るように「20ミリシーベルト」という基準は、復旧時の暫定的な数値なのです。セシウムの半減期を30年とすると、かなり長期間、帰還した住民は被曝を受けることになります。「帰還困難区域」は事故後6年たっても20ミリシーベルトを下回らず、10ミリシーベルトになるには15年以上かかると見られています。1/5に減少するのに15年要します。年間被曝量が20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」にこの比率を適用すると、5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに減少するまでに15年要します。1ミリシーベルト以下にするには、十数年から数十年の月日が必要です(ものぐさ 除染の長期目標1ミリシーベルトは「成り行き任せの希望的な観測だ」)。

 国民や住民の多くが「20ミリシーベルト」という数値に納得しているわけではありません。政府が勝手に定めた数値なのです。「放射線被曝の心配はないから、どうぞ安心して帰還してください」と言っているようにも思えません。

③ 「地元との十分な協議」

 住民の声が2分されている状況下で、「地元との十分な協議」が行なわれたと言えるのでしょうか。そうは思いません。

 政府の言う「避難指示は憲法が保障する居住の自由を拒む命令、田植えを再開し、家を補修したい人の人生の再建を遅らせる権利は政府にはない。解除したから帰還しなさい、ではなく個々の判断だ」については妙に納得してしまいそうです。胡散臭さを感じます。

 文部科学省の原子力損害賠償審査会の指針によれば、月10万円の精神的賠償は避難指示解除後1年で打ち切られます。「帰還するかしないかは個々の自由だが、帰還しない人の精神的賠償金も打ち切る」と政府は言っているのです。放射能が怖くて帰還をためらっているのに、不条理であると感じませんか。政府が勝手に決めた要件を満たしたから避難指示を解除し、精神的賠償金を打ち切ろうとしているのです。これを根拠に、様々な支援が打ち切られていくのでしょう。

 下落した固定資産の評価額は補填されるのでしょうか(ものぐさ 福島・田村市都路地区 5ミリシーベルト超でも帰還 ?)。「癌が発症したとしても、放射能との因果関係は認められない」言うのでしょうか。2/8、福島の「甲状腺癌」の子供は33人、「癌の疑い」がある子供は42人に達しました。それでも、福島県の「県民健康管理調査の検討委員会」は「原発事故との因果関係について「考えにくい」としています。子供の甲状腺癌の発生率は100万人に1人が通説であるが、今回の調査では、1万人弱に1人の割合であり、100倍も大きいこととなります(ものぐさ 福島原発 甲状腺障害)。

 帰還した人も放射能の恐怖を感じ生活していくことになります。当然、精神的賠償を要求する権利は残っていると考えます。

 チェルノブイリ原発事故により放射線被害を受けた市民の保護に関する「チェルノブイリ法」は、年1ミリシーベルト超~5ミリシーベルト以下を「移住権利地域」と定め、被災者の健康管理や年金増額などの支援策を国は実施しています。日本国は、旧ソ連よりも酷くありませんか。

 「責任をもって再稼動を進める」という政府の責任とは、こんなものなのです。

2014年2月28日 (金)

浜岡原発の基準地震動策定の不確かさ

 中電は2/14、4号機の適合性審査(安全審査)を原子力規制委員会に申請しました。

 一方、中電は浜岡原発訴訟裁判において、原告側の安全に対する求釈明にまともに応じません。裁判に対しては誠に不誠実です。

 2/6、静岡地方裁判所における浜岡原発訴訟第十ニ回口頭弁論で提出された準備書面13は耐震設計の基礎となる基準地震動策定の不確かさ明らかにしています。中電はその不確かさをどの程度に見積もったかを裁判や同委員会への適合性申請で明らかにしなければなりません。

<準備書面13・・・原子力規制委員会が示した新基準との対比や不確かさ>

・ 中電は原発敷地を走っているH断層系(ものぐさ 浜岡原発 H断層系)には、約8万年以降における活動はないとしているが、新基準では約12~13万年以降の活動が否定できない断層を「将来活動の可能性のある断層等」と定めており、この点で中電の主張は新基準に適合していない。

・ 新基準では、活断層の評価において「変動地形学的調査(注1)」が求められている。これまでは、変動地形学への本質的理解が欠落し、活断層の過小評価が繰り返されてきた。

・ 新基準では、「孤立した短い活断層の扱いに留意し、複数の活断層の連動を考慮すること」、「世界で起きた他の大地震をも考慮した上で震源領域の設定を行うこと」、「地震の不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の長さ・深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等)を組み合わせて基準地震動を策定すること」が求められている。

・ アスペリティの位置が設定できる場合はその根拠を示し、根拠がない場合は原発直下に設定する必要がある。浜岡原発は後者に該当する。

 アスペリティに関して、某東大教授は「地震波から解析されるアスペリティの位置は研究者によりまちまち。その程度の分解能だ。地震の解析は隔靴掻痒(かっかそうよう・・・痒かゆいところに手が届かないように、はがゆくもどかしいこと)で、詳細は現状ではわからない」、原子力規制委員長代理は「平均像のようなものを見ている。解像度を一生懸命よくしようとしているが、本当に中で何が起きているかには手が届かない」と述べています。過去の現象ですら正確に把握しきれないのに、将来の現象など正確に予測できるはずはない。

・ 震源が敷地に極めて近い場合の地震動では、より詳細な評価が求められている。浜岡原発はこれに該当する。

・ 現在用いられている「野田らの応答スペクトルに基づく地震動評価式」は、M5.5以上、震源距離200km以下、震源深さ60km以浅の条件を満足する44地震107記録の分析により得られた平均応答スペクトルに基づいて算出したもの。従来、原発の耐震設計は平均値以上の地震動を考慮しなくても良かったが、最大値で評価をすべきだ。実際に観測された最大値を採用するとしても、観測値はたかだか数十年程度である。「万が一」にも許されない原発では、更なる不確かさが考慮されなくてはならない。

・ 震源断層から破壊が始まる地震発生メカニズムについての諸要素は入倉京都大学名誉教授により提案された。諸要素は、破壊断層面積(断層の長さと幅)、地震モーメント、平均応力降下量、アスペリティの総面積・応力降下量・個数と配置・平均すべり量比、アスペリティの実効応力と背景領域の実行応力、すべり速度時間関数からなっている。諸要素は平均値を算出しているに過ぎず、同氏自身「開発途上であり、特に海溝型地震については信頼性のあるものとはいえない」ことを認めている。地震モーメントが4倍になれば、基準地震動Ssを4倍にしなければならない。

・ 加藤らの応答スペクトルは、日本、カリフォルニアで発生した41の地震のうち、わずか9地震12地点記録を用いたものであり、データとして不十分である。中電も加藤らの知見を参考にして応答スペクトルを定めている。恣意性と過小評価を許す可能性もある。

 地震についての詳細な観測が始まってから、せいぜい80年ほどしか経過しておらず、日本での観測記録はわずか20年程度で、基準地震動策定の基礎となる観測データは極めて限られたものである。そこには大きな不確かさがある。

 中電は、アスペリティを原発直下においた場合、最大加速度応答スペクトルを800ないし1000ガル、5号機では1400ないし1900ガルと見積もっている。中央防災会議は、2001年に行なった想定東海地震で興津側上流にアスペリティを置いた場合、最大加速度応答スペクトルは3000~3500ガルと見積もっている(ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記 アスペリティー・防水扉等の問題点 その6)。地震の不確かさを考慮すれば、中電の想定は到底認められない。中電は不確かさをどのように考慮したかを明らかにしていない。

 中電は、アスペリティを中央防災会議の想定東海地震(Mw8)、南海トラフ巨大地震(Mw9.1)、過去の地震を元に配置したとしているが、過去の地震とは何か。1707年、1854年を指すのか。この時代に地震計はあったのか。震源域は古文書か。評価手法は妥当か。

 このように、基準地震動を策定する各要素は多くの不確かさを有しています。これまで、基準地震動の推定を各要素の「平均値(注2)」で行ない、原発の耐震設計は行なわれてきました。「万が一」の事故から、国民の生命を守る気持ちがあるなら、各要素の不確かさを考慮した上で、その最大値を基に耐震設計をしなければなりません。「平均値」という発想は、国民の生命を守ると言うより、電力会社のコストを意識して出てきたのでしょう。自分の家族が浜岡原発の近くに住んでいることを想像してみてください。原発は「平均値」で設計すればいいんだ、などと言えますか。

(注1) 活断層の認定に当たって、空中写真判読をもとに地形の成因と発達史を明らかにした上で、それを根拠に論理的思考に基づいて行なわれる。

(注2) 「基準地震動が平均像となっているのではないか」と言う原告の主張に対し、中電は東京高裁に提出した準備書面で「対象データの平均だけではなく、バラツキを考慮して大きめのものを取っている」と反論したと聞いています。極めて曖昧な表現です。

 「バラツキを考慮した大きめのもの」とは何を指すのでしょう。バラツキの程度を表す尺度に標準偏差(σ)という概念があります。データの分布は、平均値(μ)を中心に左右対称の釣り鐘型の分布(正規分布)となります。横軸を基準地震動の大きさ、縦軸を過去に発生した基準地震動の個数と考えてください。平均値 と標準偏差の 関係を以下に示します。

・ μ±1σ間にあるデータの個数は、全データの68%

・ μ±2σ間にあるデータの個数は、全データの95%

・ μ±3σ間にあるデータの個数は、全データの99.7%

 このように、+3σの範囲でも基準地震動の最大値は含まれていません。ましてや、2σの範囲では、大きめの基準地震動の2.5%が除外されることになります。不確かさを考慮すれば、更に大きな基準地震動を見積もるべきです。

 もう一点、参考にしたデータは何かを、明らかにしなければなりません。最大値を採用するとしても、観測値はたかだか数十年程度です。千年に1度の地震を想定した場合、これで十分なのですか。

 

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