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2014年2月28日 (金)

浜岡原発の基準地震動策定の不確かさ

 中電は2/14、4号機の適合性審査(安全審査)を原子力規制委員会に申請しました。

 一方、中電は浜岡原発訴訟裁判において、原告側の安全に対する求釈明にまともに応じません。裁判に対しては誠に不誠実です。

 2/6、静岡地方裁判所における浜岡原発訴訟第十ニ回口頭弁論で提出された準備書面13は耐震設計の基礎となる基準地震動策定の不確かさ明らかにしています。中電はその不確かさをどの程度に見積もったかを裁判や同委員会への適合性申請で明らかにしなければなりません。

<準備書面13・・・原子力規制委員会が示した新基準との対比や不確かさ>

・ 中電は原発敷地を走っているH断層系(ものぐさ 浜岡原発 H断層系)には、約8万年以降における活動はないとしているが、新基準では約12~13万年以降の活動が否定できない断層を「将来活動の可能性のある断層等」と定めており、この点で中電の主張は新基準に適合していない。

・ 新基準では、活断層の評価において「変動地形学的調査(注1)」が求められている。これまでは、変動地形学への本質的理解が欠落し、活断層の過小評価が繰り返されてきた。

・ 新基準では、「孤立した短い活断層の扱いに留意し、複数の活断層の連動を考慮すること」、「世界で起きた他の大地震をも考慮した上で震源領域の設定を行うこと」、「地震の不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の長さ・深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等)を組み合わせて基準地震動を策定すること」が求められている。

・ アスペリティの位置が設定できる場合はその根拠を示し、根拠がない場合は原発直下に設定する必要がある。浜岡原発は後者に該当する。

 アスペリティに関して、某東大教授は「地震波から解析されるアスペリティの位置は研究者によりまちまち。その程度の分解能だ。地震の解析は隔靴掻痒(かっかそうよう・・・痒かゆいところに手が届かないように、はがゆくもどかしいこと)で、詳細は現状ではわからない」、原子力規制委員長代理は「平均像のようなものを見ている。解像度を一生懸命よくしようとしているが、本当に中で何が起きているかには手が届かない」と述べています。過去の現象ですら正確に把握しきれないのに、将来の現象など正確に予測できるはずはない。

・ 震源が敷地に極めて近い場合の地震動では、より詳細な評価が求められている。浜岡原発はこれに該当する。

・ 現在用いられている「野田らの応答スペクトルに基づく地震動評価式」は、M5.5以上、震源距離200km以下、震源深さ60km以浅の条件を満足する44地震107記録の分析により得られた平均応答スペクトルに基づいて算出したもの。従来、原発の耐震設計は平均値以上の地震動を考慮しなくても良かったが、最大値で評価をすべきだ。実際に観測された最大値を採用するとしても、観測値はたかだか数十年程度である。「万が一」にも許されない原発では、更なる不確かさが考慮されなくてはならない。

・ 震源断層から破壊が始まる地震発生メカニズムについての諸要素は入倉京都大学名誉教授により提案された。諸要素は、破壊断層面積(断層の長さと幅)、地震モーメント、平均応力降下量、アスペリティの総面積・応力降下量・個数と配置・平均すべり量比、アスペリティの実効応力と背景領域の実行応力、すべり速度時間関数からなっている。諸要素は平均値を算出しているに過ぎず、同氏自身「開発途上であり、特に海溝型地震については信頼性のあるものとはいえない」ことを認めている。地震モーメントが4倍になれば、基準地震動Ssを4倍にしなければならない。

・ 加藤らの応答スペクトルは、日本、カリフォルニアで発生した41の地震のうち、わずか9地震12地点記録を用いたものであり、データとして不十分である。中電も加藤らの知見を参考にして応答スペクトルを定めている。恣意性と過小評価を許す可能性もある。

 地震についての詳細な観測が始まってから、せいぜい80年ほどしか経過しておらず、日本での観測記録はわずか20年程度で、基準地震動策定の基礎となる観測データは極めて限られたものである。そこには大きな不確かさがある。

 中電は、アスペリティを原発直下においた場合、最大加速度応答スペクトルを800ないし1000ガル、5号機では1400ないし1900ガルと見積もっている。中央防災会議は、2001年に行なった想定東海地震で興津側上流にアスペリティを置いた場合、最大加速度応答スペクトルは3000~3500ガルと見積もっている(ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記 アスペリティー・防水扉等の問題点 その6)。地震の不確かさを考慮すれば、中電の想定は到底認められない。中電は不確かさをどのように考慮したかを明らかにしていない。

 中電は、アスペリティを中央防災会議の想定東海地震(Mw8)、南海トラフ巨大地震(Mw9.1)、過去の地震を元に配置したとしているが、過去の地震とは何か。1707年、1854年を指すのか。この時代に地震計はあったのか。震源域は古文書か。評価手法は妥当か。

 このように、基準地震動を策定する各要素は多くの不確かさを有しています。これまで、基準地震動の推定を各要素の「平均値(注2)」で行ない、原発の耐震設計は行なわれてきました。「万が一」の事故から、国民の生命を守る気持ちがあるなら、各要素の不確かさを考慮した上で、その最大値を基に耐震設計をしなければなりません。「平均値」という発想は、国民の生命を守ると言うより、電力会社のコストを意識して出てきたのでしょう。自分の家族が浜岡原発の近くに住んでいることを想像してみてください。原発は「平均値」で設計すればいいんだ、などと言えますか。

(注1) 活断層の認定に当たって、空中写真判読をもとに地形の成因と発達史を明らかにした上で、それを根拠に論理的思考に基づいて行なわれる。

(注2) 「基準地震動が平均像となっているのではないか」と言う原告の主張に対し、中電は東京高裁に提出した準備書面で「対象データの平均だけではなく、バラツキを考慮して大きめのものを取っている」と反論したと聞いています。極めて曖昧な表現です。

 「バラツキを考慮した大きめのもの」とは何を指すのでしょう。バラツキの程度を表す尺度に標準偏差(σ)という概念があります。データの分布は、平均値(μ)を中心に左右対称の釣り鐘型の分布(正規分布)となります。横軸を基準地震動の大きさ、縦軸を過去に発生した基準地震動の個数と考えてください。平均値 と標準偏差の 関係を以下に示します。

・ μ±1σ間にあるデータの個数は、全データの68%

・ μ±2σ間にあるデータの個数は、全データの95%

・ μ±3σ間にあるデータの個数は、全データの99.7%

 このように、+3σの範囲でも基準地震動の最大値は含まれていません。ましてや、2σの範囲では、大きめの基準地震動の2.5%が除外されることになります。不確かさを考慮すれば、更に大きな基準地震動を見積もるべきです。

 もう一点、参考にしたデータは何かを、明らかにしなければなりません。最大値を採用するとしても、観測値はたかだか数十年程度です。千年に1度の地震を想定した場合、これで十分なのですか。

 

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