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2014年3月14日 (金)

福島原発事故後3年目の原発再稼動論

 3/11、福島原発事故が発生してから3年目となりました。政府のエネルギー基本計画案は、原発依存度について「可能な限り逓減させる」とする一方、再生可能エネルギーに関し「2015年までに最大限加速する」と述べるにとどめています。原発再稼動問題に関して、各有識者等はどのように考えているのでしょうか。以下、関係者の発言を記します。

 <政府関係者>

・ 国民が原発の安全性に不安を持つのは当然。原子力規制委員会の世界で最も厳しいレベルの規制基準に基づき徹底的な審査を行い、適合すると認められた原発は再稼動を進める(安倍首相)。

・ 地元の同意に向け、原発事故に備えた自治体の避難計画作りの支援に取り組む(安倍首相)。

・ 地域の事情が異なるので、(同意自治体を)一律に何kmと規定するのは適切でない(茂木経産相)。

 <野党関係者>

・ 避難計画を策定する原発30km圏内の自治体の「原発再稼動の同意」を義務付けよ(社民党)。

・ 再生可能エネルギーの数値目標を示せ(民主党)。

 <有識者>

・ テロ対策や火災防護の基準が弱く、「世界最高」とは言えない。(世界最高と言うことが)気の緩みを招く弊害がある(佐藤暁氏)。

・ 原発事故で何が起こったのか、再発防止のために何をしたらいいのか明らかにしておらず、危機時の対応策も示していない。福島原発事故の教訓も生かされているとは言い難く、現状のまま再稼働に向かうのは無責任だ。

 規制基準は、交流電源喪失という原発事故の原因分析の上に作られたものではない。活断層や安全設備をめぐり審査が迷走したり、手探りに陥っているのはそのためだ。教訓を規制に反映させるという最重要な仕事には着手さえしていない。

 危機時の政府の対応もまるで見えない。国民を守るために、地元首長と政府の誰がどんな情報を共有し、どの程度の避難を実施するのか、きめ細かいルールを整え、平素から演習しておく必要があるのに作業を進めていない。政府内の誰が責任を負うのかさえ明らかでない。

 いまだに十分な危機対応能力も身につけていない電力会社もある(以上、大前氏)。

・ 安全性が確認されたから再稼動、と言うのは論理が違う。原発事故の教訓を生かしていない。原発の半径30キロ圏の市町村が策定しなければならない避難計画について、計画の正当性が確認されてから再稼働の議論をすべきだ(政府事故調・畑村氏)。

・ 原発の安全性を保つために国際原子力機関(IAEA)が提唱する「5層の多重防護」について、(国内の原発で)やっていない所はたくさんある。3年たっても何も変わっていない(国会事故調・黒川氏)。

・ 事故は再び起こるかもしれない。再稼動の是非は国民がしっかり議論しなければならない。再稼働について、規制委の基準に合うかどうかだけではなく、社会にどれだけの影響を与えるのかをもっと考えるべきだ(民間事故調・北沢氏)。

 <報道>

・ 事故を前提とした取り組みも進んでいるとは言いがたい。原子力規制庁によると、避難計画の策定を義務付けられている原発から半径30km圏内の135市町村のうち、計画を策定済みなのは58自治体にとどまる。

・ 自治任せの弊害が顕在化している格好で、非常時に政府と自治体がどう連絡を取り合って避難開始などの重大な意思決定をしていくか仕組みも曖昧なままだ。

 <電力会社の幹部>

・ 今の会社規模では事故対応の人員確保が難しい。

 以上です。さて、私なりの意見を述べます。

 第一に、エネルギー基本計画案の「原発依存度について可能な限り逓減させる」と言う文言は、「可能でなければ原発は少なくなりませんよ」と言っているのです。

 「可能な限り」とは何を指すのでしょう。「LNGの輸入量が4兆円も増加したから」、「再生可能エネルギーが増えると電源が不安定になり送電線に接続できないから」、「再生可能エネルギーが増えないから(太陽光・風力・地熱等、潜在的には十分あると考える。増えないのは政府の覚悟が見えないから投資が進まないのだ。)」、「電力料金が上がるから」等、国はいくらでも屁理屈を付けて、原発を維持するに決まっています。

 第二に、安倍首相の言う「世界で最も厳しいレベルの規制基準」と言うのは本当でしょうか。有識者は「テロ対策や火災防護の基準が弱く、世界最高」とは言えない」と指摘しています(ものぐさ 日本の原発技術は世界一安全 ?)。日本の原発は世界一危険な断層の上にもあるのです。第2制御室、非常用電源、冷却設備などを備えた「特定安全施設」、免震能力や放射線遮蔽能力を備えた「免振重要棟」、加圧水型原発のフィルター付きベト装置は3~5年程度の猶予があり、不安全なままの再稼働です(ものぐさ 原発 新安全基準骨子にパブリックコメントを(シビアアクシデント))。上記「世界で最も厳しい」は噓です。そういえば、「福島原発の汚染水は完全にコントロールされている」と言う首相の発言も噓でした。

 更に、30km圏外でも放射能で汚染されると言うことが今回の福島原発事故で明らかになったにも関わらず、原子力協定を結ぶ対象自治体は、福島原発事故以前のままのようです(注1)。経産相の言う「一律に何kmと規定するのは適切でない」と言う発言も耳を疑ってしまいます。30km圏外でも放射能汚染されるのです。当然、原子力協定を結ぶ権利は30km圏内の自治体にはあるのです。再稼動のハードルが高くなるのでこのような発言をするのです。住民の安全など微塵も考えていないようです。

 第三に、野党は「自治体の原発再稼動の同意を義務付けよ」とか、「再生可能エネルギーの数値目標を示せ」とか、なぜか再稼動を前提にした議論にトーンダウンしてしまいました。電力労組の支援を受けた議員がこんな発言をしているのでしょうか。但し、社民党の言う「30km圏内の同意義務」は再稼動に関して大きなハードルとなります。原発立地自治体周辺の自治体は原子力安全協定の締結を要求していきましょう。

 第四に、原子力規制委員会は、原発立地自治体に対して、原子力災害対策指針(平成24年10月31日)に基づき、原発立地地域は「具体的な緊急避難計画を立案せよ」と要請しています。しかし、今年1月時点で避難計画を策定した自治体は、135市町村のうち、58自治体にとどまっています。再稼動の有力候補である川内原発は、形式は整ったものの実際の避難訓練は乏しいと、報道は伝えています。たぶん、実効性の乏しい「絵に描いた餅」なのでしょう。米原子力規制委員会のヤツコ前委員長は、日本で計画が整備されていないまま再稼動の議論が進むことに驚いています。実効性のある避難計画なしの再稼動は認められません(ものぐさ 安心できない緊急避難計画なら再稼動するな)。

 第五に、法律によって国会に設けられた国会事故調査意委員会の提言を議論もせずに、再稼動が前のめりで進められていることです。

 (注1) 原子力安全協定の締結により、市町は安全確保のための措置を電力会社に要求し、再稼動時の安全に対し異議を唱えることができます(ものぐさ UPZ区域は原子力安全協定を締結せよ EPZを拡大せよ)。

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