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2014年5月 2日 (金)

浜岡原発避難に最長29時間

 UPZ圏内の住民86万人が31km圏外に車で避難するシミュレーションによると、夏季の行楽シーズンの場合、観光バスが7000台増え最悪のケースで29時間10分(注1)かかるとの見解を「静岡県原子力安全対策課」は公表しました。「被曝を可能な限り低減する」、「避難に伴う住民の負担を可能な限り軽減する」ことも考慮してシミュレーションを実施したと、概要は述べています。詳細については「浜岡原子力発電所の原子力災害対策重点区域の避難シミュレーションの結果について」を見てください。

 去る1月に「環境経済研究所」は避難道路を国道のみに限定した試算を公表し、避難は6日間としています。このあまりにも大きな違いに不信感を持ちました。本当だろうか。何か裏はないのか。想定が甘すぎるのではないか。

1 シミュレーションの条件を以下に示す。

・ 国道、県道、主要市町道、東名・新東名高速道路を使用。但し、津波浸水区域の道路は使用不能。 

・ 世帯毎に1台の車で避難するとして、UPZ圏内の避難車両は約28万台。市町別に1時間当たり3000台ずつが段階的に車で避難する。

・ 震災や津波で浸水する沿岸道路(国道150号線など)は使用不能。

・ 避難時間は一定の確率分布に従うものとし、避難車両の90%が避難を完了する時間とした。

・ 観光客の車両台数を約7000台と想定。

・ PAZ圏内の全住民がバスで避難するケースも考慮。

・ 放射性物質の拡散範囲が風向きにより限定されることを想定して、避難範囲を限定(原子力単独災害のみに限定)。

2 疑問点

・ 避難には、国道、県道、主要市町道、東名・新東名高速道路を使用としているが、道路の陥没や液状化、橋梁の崩壊は考慮しているのですか。

・ 東名・新東名高速道路は本当に住民の避難に使えるのでしょうか。日本が壊滅するかしないかの大災害です。自衛隊、消防、行政関係者の優先道路になってしまうようにも思えます。避難6日と試算した「環境経済研究所」は避難道路を国道のみに限定しています。

・ 私道や主要でない市町道は問題ないとしているのでしょうか。ブロック壁の倒壊も考えられます。倒壊により通行不能になれば、避難できません。

・ 放射性物質の拡散範囲を想定して避難範囲を限定(原子力単独災害のみに限定)しているが、何故複合災害を考慮しないのか。福島原発では、地震・津波の影響で道路は壊滅的な打撃を受けているのですよ。

・ 原発の風下に住む住民は風下に逃げないだろう。かといって、原発に近づくことも躊躇する。直感的には、風向に対して直角方向に逃げるのではないか。風下に避難する経路と原発に近づく経路を住民が避けた場合、更に道路は渋滞するのではないでしょうか。

・ 福島原発事故ではSPEEDIの放射能拡散情報もなく、風下に当たる飯館村方面に逃げた人達は、余分な放射能を浴びてしまいました。どうしてSPEEDIの情報とリンクした避難計画としないのですか。「被曝を可能な限り低減する」と謡いながら、なんとも不完全なシミュレーションです。単純化したとするなら、あまりにも意味のないシミュレーションです。「最長29時間」という数値を刷り込むことが目的のようにも感じます。

・ 90%で避難完了としているが、残り10%の避難は何時間必要なのですか。UPZ圏内の避難車両28万台のうち2.8万台は避難できずにいるのです。

 100%避難する場合の最悪値は46時間15分との記述があります。2日間弱自宅で待機し、その後に避難開始した場合のシミュレーションです。この場合、車両の走行時間(車中滞在時間と思われる)は2時間30分(避難車両の90%目の車両の走行時間)と短くなります。ちなみに、最後の車両がUPZ圏外に達する走行時間は7時間55分です。自宅待機した後、移動したほうが運転手の負担が少なくなるようです。

・ 1時間当たり3000台の車両が段階的に避難をするとしているが、細分化は市町内で行い、市町にまたがった細分化は考慮していないとしています。隣町も3000台避難したら、両町合わせて6000台が避難することになります。3町合計すれば9000台になります。想定外の大渋滞でしょう。

・ 行政の指示による屋内待機に住民は理解を示すでしょうか。我先に逃げようとします。自家用車で逃げろ、しかし行政の指導に従えですか。先の韓国船沈没事故では、船内アナウンスに従ったほぼ全員の生徒が死亡し、行方不明です。

・ 災害弱者にバスは迎えに来てくれるのですか。必要なバスは手配できるのですか。

・ 福島原発事故では、津波到来からわずか4時間で炉心溶融が始まっています。格納容器の圧力が上昇すれば、直ちにベントも始まるでしょう。避難に29時間かかろうが、想定が甘くそれ以上かかろうが、住民が急性被曝しようが、行政は責任を取らないでしょう。自らの保身は担保されるのです。

・ 同課は実効性のある避難を実現するための課題を提起し、国、関係市町、防災関係機関等と検討し、策定中の避難計画に反映していくと言う。不完全なシミュレーションであることを認めているのでしょう。それなら何故、この時期にと感じざるを得ません。

・ 不完全なシミュレーションで避難計画を策定するのですか。実効性のない「絵に描いた餅」になりませんか。避難計画のハードルを下げたいとする思惑はないですか。

・ 同課は本当に県民の安全を考えているのですか。

・ 同課は、「原子力県民講座」を主催しているが、講師に偏りはないですか(注2)。後日、彼らの発言を紹介したいと思います。

・ シミュレーションは三菱重工業に委託したものと聞きました。三菱重工業は原発を製造しています。これが本当なら驚きです。果たして信用できるのですか。

 以上見るように、多くの矛盾や課題があります。全く中立的な第三者のシミュレーションと県民からのパブリックコメントを募集して欲しいものです。避難は不可能でしょう。だとしたら、避難しなくても良いように、原発を廃炉にするしかありません。同課は「県民が安心できる避難計画の策定は不可能です」と国に対して言うべきです。報道も、同課の発表をそのまま伝えるのではなく、深く掘り下げて問題点を明らかにして欲しいものです。

3 このシミュレーションについて、各方面から否定的な意見が出されているので紹介しておきます。

(島田市長) 東日本震災の教訓を考えれば、計画通りには行かない。実際に事故が起きたら、皆が我先に避難となり混乱は大きくなる(4/24)。

(白鳥元原発訴訟原告代表) 浜岡原発緊急避難に要する時間は中日新聞で28時間、朝日新聞で32時間と報道されているが、原発直下でドカンと来たら、逃げ切れない。牧之原市は4000人が津波で死ぬと言う。こんな状況でどうして車で逃げ切れるのか。牧之原市長以下4人の幹部は逃げ切れないと言っていた(ものぐさ 菅元首相・河合弁護士 原発シンポジウム)。

(袋井市長) 一刻も早く避難したいと思う市民感情に応える結果ではない。①避難経路を特定する必要がある。②放射能汚染を除染するスクリーニング地点が天竜川を越えた浜松市に設置されるが、袋井市から向かう場合、使える橋は6ヶ所しかないため、大渋滞が予想される。③障害者や入院している人達への対応が加味されていない。④問題点を加えたシミュレーションの実施、避難先の速やかな決定、防護服の確保など具体的な対策を要望する。⑤どこに逃げるのかを決めないと現実的な避難計画にならない(4/29)。

 関連記事(ものぐさ 静岡県の緊急避難計画 その1

(注1)

・ UPZ圏外へ90%の車両が避難できる時間。          29時間10分

  90%目の車両がUPZ圏外へ脱出するまでの走行時間。   19時間30分

・ UPZ圏外へ100%の車両が避難できる時間。         40時間20分

  最後の車両がUPZ圏外へ脱出するまでの走行時間。     30時間05分

(注2) 原子力県民講座

・ 平成25年 3/17

 福島第一原子力発電所事故から得られた課題、教訓と対策・・・
名古屋大学大学院工学研究科マテリアル理工学専攻山本章夫教授。

 放射線・放射能に関する基礎知識・・・東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻小佐古敏荘教授。

・ 平成25年 10/20、12/15、12/25

 福島第一原子力発電所事故から得られた教訓、課題と対策・・・古屋大学大学院工学研究科テリアル理工学専攻本章夫教授。

 放射線の基礎とその影響・・・岡大学大学院理学研究科・附属放射科学研究施設長野健二教授。

・ 平成26年 3/16

 放射性廃棄物の処分について・・・戸伊緒里。

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