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2014年5月25日 (日)

福井地裁 大飯原発運転差し止め訴訟 原告勝訴

 5/21、大飯原発3・4号機をめぐり、住民らが関西電力に運転の差し止めを求めた訴訟において、福井地裁の樋口英明裁判長は運転差し止めを命じる判決を言い渡しました。

 関電が想定した基準地震動より大きい地震動が発生し、施設に影響を与えるか、災害時の過酷事故対策が十分に講じられているかなどが争点でした。福井地裁判決は「具体的な危険性があれば、運転が差し止められるのは当然。原発は社会的に重要だが、電気を生み出す一手段にすぎず、人格権より劣位にある」と指摘しています。

 また、5/1の報道において、長沢啓行教授は地震動の評価について「手法が古すぎ、過小評価している。愕然とした。基準地震動は関電の主張する700ガルに対し、1500ガル以上とすべき。」と述べています(ものぐさ 長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動)。

 基準地震動について原告は何を訴えたか。「大飯原発3・4号機差し止め請求裁判」に提出された準備書面19から見てみます。

・ 観測された最大地震加速度が設計地震加速度を超過する事例
は、福島第一原発と女川原発における2ケースも含めると、平成17(2005)年以降に確認されただけでも5ケースに及んでいる(ものぐさ 長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動)。超過頻度を1万年に1回未満として設定している欧州主要国と比べても、10年間に5回も基準地震動を上回るような事態は異常である。

・ 従前の原発における基準地震動の想定は、著しく過小評価であった。過去に発生した地震の平均像で基準地震動を想定していたことが、超過頻度が5回もあった最大の原因である。平均像で想定を行っているのであるから、現実に発生する地震動が、しばしば基準地震動を超えるのは当然のことである。現在も相変わらず、平均像を基本として地震動を想定をしようとしており、従来と何ら変わりがないものとなっている。

・ 新規制基準のうち基準地震動の想定や耐震設計に関する「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」を見ると、地震動の想定手法は福島原発事故以前と同一で、従前の考え方をほぼ踏襲しており、一部ではむしろ後退しているところも存在する。

・ 「過去最大」と言っても、それはたかだか数100~2000年程度の知見でしかない。「過去最大」を超えることも十分にあり得る。耐震設計の要である基準地震動 をどこまで上回る地震動が原発を襲うかわからないのであるから、そもそも耐震設計のしようもない。 

 要約すれば、準備書面19は、「福島原発事故以前も以後も、過去に観測された地震波を用いて策定される基準地震動は平均値でしかなく、この平均値を超える地震動に見舞われるのは当然である。また、過去最大の地震動を想定したとしても、これを超えることは十分にあり得る。」と主張しています。よって、基準地震動の策定は不可能であり、原発の再稼動は不可能であると言っています。

 それでは、基準地震動について裁判所の見解はどうか。判決文を見てみます。

・ 1260ガルを超える地震によって冷却システムは崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能となり、メルトダウンに結びつく。この規模の地震が起きた場合には打つべき有効な手段がほとんどないことは被告において自認しているところである。

・ 過去の地震データは極めて限られたものであり、大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの想定は不可能である。岩手宮城内陸地震では4022ガルの記録もあり、1260ガルを超える地震は大飯原発に到来する危険がある。

・ 1260ガルを超える地震が来ない限り、炉心損傷には至らないと関電は主張するが、複合的な過酷事故に従業員が対応できるか、以下に示すように、なはだ疑問である。

①従業員が少なくなる夜間の突発的な危機的状況に直ちに対応できる人員は確保されるのか、指揮命令系統の中心となる所長は常にいるのか。

②事故の進行中にいかなる箇所にどのような損傷が起きており、それがいかなる事象をもたらしているのかを把握することは困難である。

③全交流電源喪失から炉心損傷開始までの時間は5時間余であり、炉心損傷の開始からメルトダウンの開始に至るまでの時間は2時間もない。適切な対応は期待できない。

④非常事態に備えてある空冷式非常用発電装置だけで実際に原子炉を冷却できるかどうかをテストするというようなことは危険すぎてできようはずがない。

⑤何百メートルにも及ぶ非常用取水路が一部でも700ガルを超える地震によって破損されれば、水冷式の非常用ディーゼル発電機は稼動できなくなる。

⑥放射性物質が一部でも漏れればその場所には近寄ることさえできなくなる。

⑦大飯原発に通ずる道路は限られており施設外部からの支援も期待できない。

・ 700ガルを超える地震が到来することはまず考えられない、と関電は主張するが、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来しているという事実を重視すべきである。

・ 基準地震動である700ガルを下回る地震によって外部電源が断たれ、かつ主給水ポンプが破損し、主給水が断たれるおそれがある。

・ 主給水ポンプは安全上重要な設備ではないから基準地震動に対する耐震安全性の確認は行われていないと関電は主張するが、主給水ポンプは、冷却機能を維持する要であり、このような設備を安全上重要な設備ではないとするのは理解に苦しむ。

 福島原発事故の原因はわからず、放射能は広範囲に拡散し、16万人が故郷に帰還できず、多くの小児は甲状腺がんを発症しています。それにも関わらず政府は再稼働に前のめりです。多くの国民は「よくぞ言ってくれた」と言う心境です。判決で言っていることは至極当然で単純明快です。

 事故原因も不明な状態で、規制委員会は「再稼動」を前提とした規制基準を作成し、その基準に適合しているか審査しています。安全を審査しているわけではありません。この規制基準の適合を受け、政府は「原発は安全である」と判断して、自治体や周辺住民に再稼動の圧力をかけてきます。周辺住民の緊急避難計画は不完全で、決して住民を守るための計画でないにも関わらず、原発立地自治体は再稼動を承認する。こんなストーリーが進行中です。政府の再稼動要請には、上記のような理論で対抗していきましょう。

 この判決は、全国で提訴されている脱原発裁判に大きな影響を与えるでしょう。大飯原発裁判に続けと。

 

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