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2014年5月10日 (土)

地層処分 楠戸伊緒里氏の資料より

 原発の使用済み核燃料を再処理する工程で出る高レベル放射性廃棄物をガラスで固め、一定期間冷却した後、金属容器に入れて地下300m以上の深い地層に埋める「地層処分方式」が「日本原子力研究開発機構」で研究されています。

 さて、楠戸伊緒里氏は平成26年3月16日開催の「静岡県原子力県民講座」において、「放射性廃棄物の処分について」という題目で講演しています。かつて、同氏は地層処分を研究する「動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)」に所属していました。同講座で配付された資料から、同氏の主張を見てみます。質問して判断したわけではないので、誤解もあるかもしれません。

 「地層処分は最も現実的で確実に最終処分を実施できる方法である。国民的議論と社会的合意が必要になる。」というのが同氏の結論のようです。

 同資料の「まとめ」の部分を引用し、素人ながら反論してみます。

1 原子力政策によって「核のゴミ」の課題は変化するが、原発推進、脱原発に関わらず、既に存在する放射性廃棄物の処理・処分の問題は、必ず解決しなければならない。

(反論) 当然である。しかし、更に原発を推進すれば、新たに発生する放射性廃棄物は、更に増加する。社会的にも技術的にも多くの困難な課題を有する放射性廃棄物はこれ以上増やしてはならない。

2 原発で発電した電気を利用した我々には、放射性廃棄物を生み出した世代としての大きな責任がある。国内で発生した放射性廃棄物は、国内で処分しなければならないので、我々が何も決めずに単に問題を先送りすればするほど、将来の世代により多くの負担を強いることになる。

(反論) 当然である。

3 最も難しい課題は、発生時の放射能が極めて高く、時間と共に放射能が低下するものの、超長期間危険なゴミであり続ける、高レベル放射性廃棄物の最終処分である。高レベル放射性廃棄物を安全に捨てる方法として、300mよりも深い地下に人工的なバリアを設けてゴミを封じ込める地層処分が、世界中で唯一無二の最終処分方法であると認識されている。

(反論) 高レベル放射性廃棄物の処分方法をめぐって、日本学術会議は高レベル廃棄物について「今後数十〜数百年間、暫定保管すべきだ」との提言をまとめています(ものぐさ 日本学術会議 核のゴミは「暫定保管」と「総量管理」で)。更に、科学・技術的能力の限界を指摘し、同会議は「超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たり、現時点の科学には限界がある。特定の専門的見解から演繹的に導かれた単一の方針や政策のみを提示し、これに対する理解を求めることは、もはや国民に対する説得力を持つことができない。」とまで述べている。

4 地層処分は、絶対に安全とは言えないが、科学的で技術的な根拠に基づいて、リスクを最小限に抑えることができ、最も現実的で確実に最終処分を実施できる方法である。

(反論) 「絶対に安全とは言えない」とは、「何らかの危険がある」と言っているように聞こえる。「最小限のリスク」と抽象的に言われても、最小限のリスクとは何を指しているのか不明である。判ったようで判らない文章である。上記3項の反論に見るように、日本学術会議は「安全性に関して、現時点での科学では限界がある」と指摘している。

5 地層処分は処分場の候補地選びから、処分場の閉鎖まで、順調にいったとしても、約100年という長い年月がかかるため、世代を超えた国民的議論と社会的合意が必要になる。「核のゴミ」問題が、専門家と政治家の力だけでは解決できないことは、これまでの経過から明白である。主権在民の日本でゴミ問題を解決するには、一般市民の力が不可欠である。

(反論) 2項で、「放射性廃棄物を生み出した世代としての大きな責任があり、問題を先送りしてはいけない」と述べている。地層処分に科学的な限界がある以上、これ以上のゴミを出さないのも「世代としての責任」である。

 政府は原発再稼働に前のめりで、「核のゴミ」はどんどん増える。一方、国民の責任で「核のゴミ」の処分を解決しろ、地層処分に理解を示せ、リスクはある。なんとも独善的な言い分です。主権在民を持ち出すなら、再稼動を含め、(原子力村関係者ではなく)一般国民の意見を聞けと言いたくなる。

 最後に、資料中の主張で気になった点を記します。

1 どんな発電方法にも欠点があると述べているが、原発事故による放射能被曝は、他の発電方法の欠点(二酸化炭素による地球温暖化、バードストライク、気候変動による発電量の不安定)に比べ比較にならないくらい重大なリスクです。

2 「野菜くずはカリウム40を含んでいるが単なる生ゴミ。放射性物質がほんの少し付着した廃材を特別に危険なものとみなす必要はない。」と述べています。野菜くずを引き合いに出している点が気になります。始めから自然界に存在するものと、原発の恩恵を受けた見返りとして人類が作り出したものとを同レベルで比較するのは間違っていると思います(注1)。低レベルの放射能であれば、許容限度はなく青天井でも良いと考えるのですか。地球全体が放射能だらけになります。

3 原発事故由来の放射性物質で汚染された廃棄物(原発事故による災害で発生した廃棄物、除染廃棄物、除染土壌等)は、放射能を持っていても法令上、放射性廃棄物とは呼ばない」としているが、実態は放射性廃棄物であることに変わりません。

4 「核のゴミの危険性に応じた適切な処分方法を選ぶことによって、安全に捨てることができる。つまり、適切な方法で管理や隔離を行なえば、環境中の放射性物質の量を一般の人々が許容できる範囲内に抑えることができ、人体への影響も無視できる程度に小さくできる」とし、更に「管理期間(300~400年)終了後には一般的な土地利用が可能となる」と述べています。

 しかし、ピット処分におけるセシウム137の濃度上限推奨値は1000億Bq/kg。半減期は30年であるので、300年後の濃度は1024分の1の1億Bq/kgです。300~400年程度でその上を宅地や農地にしても良いのでしょうか。地下10m程度の場所に、数万から数億ベクレルの放射性物質が埋設されているのです(ものぐさ 「第二種廃棄物埋設施設」・・・トレンチ処分とピット処分)。

5 高レベル放射性廃棄物であるガラス固化体(直径43cm、高さ134cm)は炭素鋼でできたオーバーパック(厚さ19cm)、締め固めた粘土である緩衝材(70cm)からなる人工バリアで覆われ、その外側は堆積岩からなる天然バリアで覆われていると説明しています。

 炭素鋼、粘土でできた人工バリアは本当に安全なのですか。原発では「5重の安全」という安全神話を信じ、そして裏切られました。

6 1000年後にオーバーパックが機能を失ったと仮定して、一般的な地質環境を仮定し、放射性物質を含んだ地下水が断層破砕帯を移動したと仮定した場合の計算例が示されていますが、3つの仮定が崩れた場合、想定外の汚染に見舞われることはないでしょうか。地質環境はバラツキも多く、地下水の移動速度は、深さ1kmまであまり変わらないとのデータもあります。300mの地中だから移動速度が小さく安全と言うわけでもなさそうです。

 地層処分の安全性に言及していますが、「臭いものには蓋」の諺があります。最も怖いのは、地下で何が起こっているかも判らない状況下で、高レベル放射性廃棄物の存在を国民が忘れてしまうことです。なかったことになれば「何でもあり」と言うことになりませんか。

 「核のゴミ」を何とかしなくてはいけないということについては同感です。しかし、脱原発派も含めた公正な第三者機関がこの問題について方針を示さない限り、地層処分は国民の信頼を得られません。最悪の場合、放射能汚染する可能性があるからです。日本学術会議は、地層処分に否定的です。

 脱原発を進め、これ以上「核のゴミ」を増やさないと言う国の方針がない限り、国民はリスクのある「核のゴミ」問題に真剣に向き合わないでしょう。 

(注1) 著書「原発問題の争点・・・内部被曝・地震・東電・・・」で、山田耕作や大和田幸嗣は、面白いことを言っている。以下引用します。

 人工の放射性物質セシウムと自然放射性物質カリウムは同じベクレル数でも生体内での挙動が異なる。数億年にわたる進化の過程でカリウム40は重要な臓器には長くとどまらず、被害は少ない。一方、人工の放射性物質であるセシウムは心臓、脳、腎臓など重要な臓器に蓄積し、それを傷つける。それ故、放射性セシウムのほうが少量でもカリウム40より危険である。つまり、臓器への取り込みかたが異なる(山田)。

 人の誕生以来、体内に均一に存在する自然放射性カリウム40の量は4000~6000ベクレルと言われている(大和田)。

 カリウム40(半減期は12.5億年)は、生物にとって重要な元素であるから否応なしに体内に入ってくる。しかしカリウム40の代謝は早く体内に蓄積することはない。このような生物の機能は進化の過程で獲得してきた適応の結果なのである。カリウムを蓄積するような生物が仮に現れたとしても、蓄積部位の体内被曝が大きくなり、そのような生物は進化の過程で淘汰される。カリウム40は37億年くらい前から共存してきたもので、人工放射性物質セシウム137等と決定的に違うところである(大和田が市川定夫「新環境論」から引用)。

 

 

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