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2014年5月20日 (火)

長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動

 長沢啓行(大阪府立大名誉教授)は地震動の評価について「手法が古すぎ、過小評価している。愕然とした。」と述べています(5/1の報道)

 地震は実際に観測された地震波を用いて「耐専スペクトル」と「断層モデル」で評価されるが、「十数年前に作られて以降、この20年間に収集された国内の地震の観測記録は、計算式に反映されていない、とも述べています(ものぐさ 地震用語 「等価震源距離」とは、そして、「耐専スペクトル」のデタラメさ)。

 活断層の有無や長さで派手に電力会社と遣りあっている原子力規制委員の姿勢に、私は信頼を寄せていました。

 ところが、一般人が理解できない基準地震動を過小評価していたのです。同地震動を低く見積もるほど、電力会社は耐震補強工事にかける費用を低く抑えることができます。再稼動のハードルも下がります。同委員会は政府、原子力村関係者と大芝居を演じているのでしょうか。裏切られた気分になりました。電力会社との裏取引ですか。

 同委員会が発表する各原発の基準地震動を監視していく必要があります。同委員会等や電力会社が主張する基準地震動と長沢教授らが主張する基準地震動を以下併記します。

・ 高浜原発    同委員会   700ガル    長沢教授  1000ガル以上

・ 大飯原発    同委員会   856ガル    長沢教授  1500ガル以上

・ 川内原発    同委員会   700ガル    長沢教授  断層モデルの2~3倍(注1)

・ 伊方原発    四国電力    570ガル    美浜の会(武村の式)  2680ガル以上

 基準地震動を上回る確率(超過確率)は1万年に1度です。とすれば588年に1度の確率となるが、下記に見るように、基準地震動を超えた原発は10年間で5度もあります(ものぐさ 地震学の現状・誤り)。

① 2005年8月の宮城沖地震(Mj7.2)の女川原発。375ガルから580ガルに引き上げ。

② 2007年3月の能登半島地震(Mj6.9)における志賀原発。0.36秒から0.39秒までの比較的長周期側の周期において基準地震動の応答スペクトルを超えていた。490ガルから600ガルに引き上げ。

③ 2007年7月の新潟県中越沖地震(M6.8)における柏崎刈羽原発。450ガルから2300ガルに引き上げ(観測データは1699ガル)。

④ 2011年3月の東北地方太平洋沖地震(M9)における福島第一原発。基準地震動(注2)600ガルに対する基礎版上(注3)での加速度を438ガルと想定していたが、基礎版上で550ガルを観測した(注4)。

⑤ 2011年3月の東北地方太平洋沖地震(M9)における女川原発。基準地震動(注2)580ガルに対する基礎版上(注3)での加速度を512ガルと想定していたが、基礎版上で573ガルを観測した(注4)。1階、3階、屋上に行くほど加速度は大きい。

 基準地震動の定義は「地震学的見地に立脚し設計用最強地震を上回る地震について、過去の地震の発生状況、敷地周辺の活断層の性質および地震地帯構造に基づき工学的見地からの検討を加え、最も影響の大きいものを想定する」とされています。このように定められているにも関わらず、観測値はこのレベルを易々と超えています。電力会社は「基準地震動に対する最大応答加速度値を一部上回っているものの、ほぼ同等であった。」などと主張してるが、観測値を遥かに上回る基準地震動を設定しなければ、住民は安心できません。M6~7の地震で、このような有様です。原発直下でM8~9に見舞われたら、基準地震動を大幅に上回り、原発の配管は破断し、制御棒は挿入できなくなり、原発は爆発する可能性もあります。

 福島原発事故のようにならないためにも、基準地震動は更に厳しく評価されなくてはなりません。「再稼動できなくなる原発が続出するから小さく見積もった。古い手法のままでの地震動とした。」と言うのであれば、震災前の原子力安全・保安院と何ら変わりません。地震学者の意見を真摯に正面か受け止めて欲しい。

(注1) 「断層モデル」で評価した基準地震動は、「耐専スペクトル」の評価の1/2~1/3と長沢教授は述べている。すなわち「断層モデル」の2~3倍を基準地震動とすべきである。高浜原発は「断層モデル」と「耐専スペクトル」で評価。「大飯原発は「断層モデル」で評価。

(注2) 基準地震動とは、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」についての解放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の加速度(ものぐさ 地震用語 基準地震動Ss、弾性設計用地震動Sdとは)と定義されています。解放基盤とは、原発敷地において一定以上の固さをもつ地中の地盤の上部を仮想的にはぎとった表面を指す。

(注3) 女川原発の基礎版は地下2階。この基礎版上に原発は設置されている。

(注4) 基準地震動は原発周辺の断層等を考慮して推定した値である。仮にこの基準地震動に相当する地震が起きた場合の原子炉各部(例えば基礎版上、建屋1階、3階、屋上等)の加速度をあらかじめ想定しておく。女川原発の場合、基礎版上での加速度512ガルを想定していたが、今回の地震での観測値は基礎版上で573ガルであった。これは、基準地震動の想定が甘かったことを示している。

 

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