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2014年5月15日 (木)

環境省 福島vs青森・山梨・長崎の甲状腺検査 統計的な有意差 ?

 子供の甲状腺がんの発生率は100万人に1人が通説(ものぐさ 福島原発 甲状腺障害)と言われています。国立がんセンターのデータを見てみましょう。

 男性の甲状腺がん罹患割合は、19歳以下で100万人に1人、20歳以上39歳以下で10万人に1人となっています。このデータは国立がん研究センターが全国の地域がん登録事業実施道府県に依頼して集計したものです。甲状腺に何らかの違和感があり来院した患者のデータであるとすれば、症状のない人を含めて実施した罹患割合は100万人に1人の割合よりもっと小さくなると思います。例えば1000万人に1人とか。もし、国が言うように放射能との因果関係がないとすれば、無症状の人も含んだ「福島県民健康管理調査」も100万人に1人の割合よりもっと小さくなるはずです。ところが、実態は100万人に対して275人も発症しています。

 さて、環境省が青森・山梨・長崎で調査した結果(以下3県調査)を以下に示します。

・ 3県調査結果(3/28)

対象者   4,365人   B判定44人     C判定0人  甲状腺がん1人    疑い0人    結果確定数    31人

・ 福島の調査結果(平成25年12月31日現在)

対象者 269,354人   B判定1,795人  C判定1人  甲状腺がん33人   疑い41人   結果確定数  1,342人

 甲状腺の判定基準は、異常なしの「A1」判定、5mm以下の結節や20mm以下ののう胞ありの「A2」判定、5.1mm以上の結節や20.1mm以上ののう胞ありの「B」判定、直ちに二次検査を要する「C」判定に区別されます。

 上記に示した数値「結果確定数」とは、初回検査でBまたはC判定を受けた人のうち、その後の追跡調査に同意した人の数です。例えば「3県調査」では44人のうち、31人が同意しています。

 同調査結果を検討してみましょう。詳しくは、環境省HP「甲状腺結節性疾患追跡調査事業(速報)について(お知らせ)」に詳しく記載されています(平成26年3月28日報道発表)。

・ 最初にB・C判定された人でも、時間経過後にA判定に移行した人の割合は(福島及び3県調査共)35%程度ありました。このことは、時間の経過とともに結節やのう胞が縮小することもあり得ることを示します。「3県調査」では、「結果確定数」31人に対して、B・C判定のままであった人は20人、A判定に移行した人は11人いました。

・ 時間経過してもB・C判定のままであった残りの65%のうち、細胞診を受けた人は、3県調査で20人中2人(10%)、福島調査で871人中369人(42%)となっています。細胞診を受けた人の割合がこんなに違うのはなぜでしょうか。この点についての説明はありません。

・ 福島県民健康管理調査は終了しているわけではないと聞いています。調査対象者が増えれば、甲状腺がん及び疑いのある人は増えていくでしょう。未調査の地域に高線量被曝した人がいれば、甲状腺がん・疑いのある人の割合は更に大きくなるでしょう。

・ 「3県調査」では4,365人に対して甲状腺がんは1人でした。もし0人であれば、「3県調査」で甲状腺がん患者はいなかったと言うことになります。偶然に見つかったとも考えられます。1人いたから100万人に対して229人と福島と同じになったわけです。環境省も統計的な有意差のあるデータではなく、(無いよりましな)目安としてのデータだと言っています。統計的に有意でもないデータが一人歩きし、「放射能との因果関係は考えにくい」と言う空気になってしまうことが心配です。また、この1人が本当に甲状腺がんであったかどうか何の検証もできません。まさかデータの捏造は無いでしょうね。

・ 「因果関係は考えにくい」のではなく、「因果関係は分からない」と報道は伝えていますが、福島の場合100万人に対して275人です。因果関係は明らかです。

 武田教授はガリレオ放談で、「世界恐慌で部数を減らした新聞は、紙面を軍の主張に合わせ、庶民は紙面に影響されてナショナリズムに熱狂し、政府は庶民の支持を得ようと更に軍拡を進め、太平洋戦争に突入して行った実態」を伝えています。そして、最悪のスパイラルから抜け出せずに、東京大空襲、沖縄殲滅、原爆投下と政府は国民を苦しめたのです。そして、日本のマスコミは「空気を製造しているだけだ」とも言っています。KY(空気を読め)など最も注意しなくてはいけない言葉です。

 現在、インターネット等の影響で新聞の発行部数やテレビの視聴率が減っていると聞いています。広告収入の欲しいマスコミは原子力村からの誘惑に手を染めるのでしょうか。原子力村や政府の主張に紙面を合わせ、庶民は紙面に洗脳されて原発の必要性を受け入れ、政府は電気料金の高騰に喘ぐ庶民の支持を得ようと再稼働に突入して行くなんてことは無いでしょうね。

 秘密裏に会議(いわゆる秘密会)を繰り返し、事前に調査結果に対する評価をすり合わせ、議事録までも改ざんしていた「県民健康管理調査」の実態が報道により明らかにされました。そこで専門家や県行政は「①どこまで検査データを公表するか、②どのように説明すれば騒ぎにならないか、③見つかった甲状腺がんと被曝との因果関係はない」などを話し合っていたようです。更に、秘密会の後に行なわれる検討委員会のシナリオまで用意していました。福島県民の健康を守り、被曝による将来の健康被害に如何に対応していくのかを策定するのがその役割なのに、まさに「放射能の影響はなく、因果関係はない」ありきの検討委員会です。放射能の影響はなかったものとしたいのでしょう。

 「美味しんぼ」の鼻血描写は、専門家や県行政の不誠実さに対する国民の怒りを代弁しているものと考えます。これに対して、専門家や国はその火消しに躍起です。このマンガが、原発の危険性、放射能の怖さ、いざとなったときの国の冷酷さを再認識する良い契機となることを期待しています。

 統計的に有意でもないデータを国は公表し、マスコミはこれを黙認し、そのデータが1人歩きし、原発事故による放射能の影響をなかったものと庶民は勘違いしていく。こんなストーリーを国は狙っているのでしょうか。

 関連記事(ものぐさ 内部被曝評価はシーベルトではなくベクレルで)。

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