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2014年6月 2日 (月)

内部被曝評価はシーベルトではなくベクレルで

 5/31、福島原発事故の健康影響について報告書をまとめた国連科学委員会のカーマグナス・ラーソン議長は「今ある情報をもとに判断すると、癌の発生率に影響しない」と語っていました。一方、甲状腺癌と診断された子供が多数いることについて「何が原因かを判明させるのは非常に困難だ。事故からまだ3年であり、結論めいたことは言えない」とも述べています。

 一見すると「癌の発症は心配しなくて良い」とも読み取れますが、「今ある情報をもとに」との前提条件がついています。新たな情報が出れば結論は変わってくるのでしょう。政府は健康被害に関する情報を隠蔽し、被曝を過小評価し、福島県は県民の健康を守るのに後ろ向きです(ものぐさ 内閣府 被曝線量隠蔽・データ操作)。5/19現在、「甲状腺癌と確定した子供は50人、がんの疑いは39人」と、100万人当たり300人の発生率です(ものぐさ 福島原発 甲状腺障害)。子供の甲状腺癌の発生率は100万人に1人の割合であると言われていますが、県民健康調査委員会は「原発事故との因果関係は考えにくい」と語っています。

 県民健康調査委員会の山下俊一氏は、当時「シュピゲール」誌の記者に対し、「我々は今200万人及ぶ歴史上なかった規模の放射線影響の疫学調査をしているのだ」と語ったと言います(原発問題の争点・・・内部被曝・地震・東電・・・山田耕作執筆)。嬉々として語っているように感じました。20ミリシーベルト以下の地域に住民を帰還させ,何十年にもわたって、癌や白血病の発症と被曝の関係を調査するのでしょう。県民の健康を守るなら、帰還させるべきではありません。健康よりも自らの好奇心を満たすために低線量被曝を県民に強いているようです。

 前置きが長くなりました。上記に紹介した著書「原発問題の争点・・・内部被曝・地震・東電・・・大田幸嗣、橋本真佐男、山田耕作、渡辺悦司執筆)」に驚きの記述があったので紹介します。少々難しいが、お勧めの一冊です。

 政府関係者は、1日当り3.99ベクレルの食品を1年間食べても、0.0193ミリシーベルトにしかならないから、健康に影響ないと言っています。一方、チェルノブイリ原発事故から26年経過した今でも、癌、白血病の発症や体調不良を訴える住民は後をたちません。23年目の2009年で、甲状腺癌は実に1万人当たり1人の割合です(ものぐさ 福島原発 甲状腺障害)。ベラルーシで発症しているにも関わらず、政府は「福島では健康に影響ない」と何故言えるのか。同じ被曝量で比較しているのか。いくつかの疑問に対して明確に答えてくれたのがこの本でした。

1 バンダジェフスキー(注1)の報告。

・ ゴメリ州における子供の内部被曝によるセシウム137の体内蓄積量は、高い順に甲状腺、副腎、膵臓、胸腺、骨格筋、小腸、大腸、腎臓、脾臓、心臓、肺臓、脳、肝臓となっている。これは、子供から大人まで様々な病気で死亡した患者を病理解剖し測定したもの。

・ ゴメリ地区に住む子供(3~7才)の心電図異常は、セシウム137の体内蓄積量(注2)が18ベクレル/kgで約60%、50ベクレル/kgになると90%。このkgは体重を指す。以下同じ。

・ ゴメリ州の学童(7~17才)の高血圧罹患率は、セシウム137の体内蓄積量が38ベクレル/kg以下で35%、39~120ベクレル/kgで50%。

・ ベトカ地区における白内障の罹患率は、セシウム137の体内蓄積量が20ベクレル/kg以下で14%、21~50ベクレル/kgで13%、50ベクレル/kg以上で24%。

2 バンダジェフスキー博士の医師向けセミナー(2012.3.18)

・ 現在、福島では、4ベクレル/日のセシウム137を摂取している(参加者発言)。

・ 長期間に及ぶセシウム137の体内蓄積量が20ベクレル/kgであれば要注意、50ベクレル/kg以上では致命的病状を引き起こす可能性がある。

・ 内部被曝はベクレルで考えるべきで、シーベルトは意味がない。

3 筆者見解。

・ 日本の新基準は飲料水で10ベクレル/kg、一般食品で100ベクレル/kg、米で500ベクレル/kg。国際法による原発の排水基準90ベクレル/kgより高い。このkgは食物等の重量を指す。

・ 子供が毎日10ベクレルのセシウム137を摂取すると、600日目には、セシウム137が体内に20ベクレル/kg蓄積する(生物学的半減期は40日)。子供の体内蓄積量は70ベクレル/kgで危険レベル、20ベクレル/kgで注意レベル。ベラルーシでは実際に健康被害が出ている。

・ 福島県仲通地区の小中学生のセシウムの体内蓄積量と推定人数は、10ベクレル/kg未満は約32000人、10~20ベクレル/kgは約1万人、20~30ベクレル/kgは約500人、30~35ベクレル/kgは約150人(2011年秋のデータか)。

・ 体内蓄積量が20~40ベクレル/kgで心電図異常・高血圧・白内障等の症状が現れている。6才児の体重は20kgであるから、体内に400~600ベクレルのセシウム137が蓄積していることになる。この被曝量は国際放射線防護委員会(ICRP)流に言えば、年間0.01ミリシーベルト程度であり、「安全な量」なのである。それでも実際に健康被害が出ているのであるから、実効線量(単位 シーベルト)による判断は極めて一面的だ。

4 厚労省の内部被曝調査(2011年9月と11月 福島県)

・ セシウムの摂取量は3.99ベクレル/日。年間被曝量は0.0193ミリシーベルト。

 厚労省のデータによれば、体重30kgの子供の体内蓄積量は2ベクレル/kgとなる。南相馬のデータの1/10。実際の汚染は厚労省の10倍程度であろう(筆者)。南相馬のデータは割愛しているので、福島県仲通地区の小中学生の体内蓄積量と比べてください。

 厚労省は、「1日3.99ベクレルのセシウムを摂取した場合、年間の被曝量は0.00193ミリシーベルト程度で健康には問題ない」言うのでしょう。一方、筆者は、「子供が毎日10ベクレルのセシウム137を摂取すると、600日目には、体内に20ベクレル/kgが蓄積し注意レベルに達する。ベラルーシでは実際に健康被害が出ている。」と述べています。年間に摂取したセシウム量に実効線量係数(単位 シーベルト/ベクレル)を掛けて求める年間被曝量で、低線量内部被曝による健康被害を予測することは不可能である」とも筆者は述べています(ものぐさ 報道されない内部被曝)。

 県民健康調査委員会はどこを見て「原発事故との因果関係は考えにくい」と主張するのでしょうか。

 原発を推進するため、何が何でも放射線の影響を認めるわけにはいかないのでしょう。「健康ありき」で言い訳をするから、都合の悪いことを言う専門家の疫学調査を無視し、細胞に障害を及ぼすペトカウ効果(注3)やバイスタンダー効果(注4)を否定し、噓に噓を重ね、辻褄のあわない安全宣言をしているのです。

 バンダジェフスキーの報告書はベラルーシにおける疫学調査から割り出したものであり、説得力があります。

 特定の器官に集積したセシウムは、細胞の極近くで長期間にわたり放射線を出し続けます。放射線は距離の2乗に反比例して強くなるので、外部被曝と比べるとかなり大きくなります(ものぐさ 福島原発 甲状腺障害)。そして、曝露され続けた細胞が癌化したり、心電図異常を引き起こすのです。素人でも感覚的に納得できるでしょう。

(追記1) 福島県のセシウム基準値超過食品(17件 非流通品)・・・ 厚労省2014.5.19公表。

野生ワラビ(430, 110 Bq/kg) 、野生ゼンマイ(700 Bq/kg) 野生ウド(110~460 Bq/kg)、野生タラノメ(140 Bq/kg) 、野生タケノコ(110 Bq/kg) 、クロダイ(510 Bq/kg)、 コモンカスベ(210 Bq/kg) 、ババガレイ(190, 240Bq/kg) 、イワナ(210, 740 Bq/kg) 、ヤマメ(130, 350 Bq/kg)

(追記2) 福島県のセシウム測定結果(上記以外の食品 非流通品)・・・ 厚労省2014.5.19公表。

原木しいたけ(72 Bq/kg)、アカガレイ(23 Bq/kg)、アイナメ(23 Bq/kg)、キツネメバル(20 Bq/kg)、シロメバル(39 Bq/kg)、スズキ(79 Bq/kg)、マコガレイ(26Bq/kg)、マゴチ(21Bq/kg)、マダラ(39 Bq/kg)、ヒラメ(79 Bq/kg)

(注1) 低線量被曝の危険性を説いたため、ベラルーシ当局により逮捕投獄(1999~2006)。

(注2) ホールボディーカウンタで測定したセシウム137の量を体重で割ったもの。一定量のセシウム137を食物等を介して毎日摂取した場合、一部は大便や尿として排出されます。セシウム137の生物学的半減期を40日として体内蓄積量を算出しているのです。毎日4ベクレル摂取したから10日で40ベクレル蓄積するわけではありません。注意してください。

(注3) ペトカウ効果

 低線量の放射線で長時間照射するほうが、高線量で短時間照射するよりもたやすく細胞膜の透過性を変えて膜を破壊する。

(注4) バイスタンダー効果

 細胞にピンポイントで低線量の放射線を照射すると、照射されなかった周りの細胞にも障害が及ぶ。

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