« 「原発の安全神話」から「放射線の安全神話」へ | トップページ | 石原環境相 「最後は金目」発言は「本音でしょ」 »

2014年6月18日 (水)

地震用語 「等価震源距離」とは、そして、「耐専スペクトル」のデタラメさ

 長沢教授は、地震動の評価の1つである「耐専スペクトル」について「手法が古すぎ、過小評価している。」と述べています(ものぐさ 長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動)。

 「耐専スペクトル」とは何でしょう。そして何が過小評価なのでしょう。まず、地震の用語から説明します。

<震源と震源距離>

・ 断層面で岩石が破壊するときに最初に壊れ始める地中の点を震源と言い、震源と観測点との距離を震源距離と言う。

<震央と震央距離>

・ 震源の真上の地表の点を震央と言い、震央と観測点との距離を震央距離と言う。

<等価震源距離 Xeq>

 震源断層面を小さな微小領域に分解し、その各微小領域から放出される地震動のエネルギーの総和が、特定の一点から放出されたものと等価になるように計算された距離を言う。公式は(1式)です。

 Xeq/100Σ/100/Σ    (1式)

  

 ここで、eqは等価震源距離、は断層面上の各微小領域mからの地震波エネルギーの相対的放出分布、は観測点から断層面の各微小領域までの距離。Σは1~mまで加算するという意味です。(微小領域のエネルギーに微小領域までの震源距離を乗じ合計したもの)÷(微小領域のエネルギーを合計したもの)と言うことになります。平均化しているだけです。

<地震基盤>

・ 地震による揺れで地盤の性質や地盤の影響を大きく受けない地下のある深さのところを面的に想定し、その面を地震基盤と呼ぶ。その面のS波速度(主要動)は3km/s。震源からの距離がそれほど違わなければ、地震基盤に入射する波はどこもほぼ同じと考えられる。

<解放基盤>

・ 地震基盤より浅い地盤で、S波速度が300~700m/sの地層を解放基盤と言う(ものぐさ 地震用語 解放基盤 はぎとり波 基準地震動 基礎版)。

<耐専スペクトル>

・ 「原子力発電耐震設計専門部会」と言う部会が、20年間に収集された地震観測記録を基に、大崎スペクトルに代わる経験式を作ったもの。その名前をとって「耐専スペクトル」と命名した。

・ 地震観測データから算出された公式で、地震規模(M)、等価震源距離(Xeq)、地盤の弾性波速度を考慮して解放基盤表面における地震動を算定したもの。公式は(2式)です。

 S(T)(T)×α(T)×β(T)}    (2式)

 ここで、Tは地震動の周期(0.02~5秒)、S(T)は解放基盤表面における平均応答スペクトル(注1)、(T)は地震基盤における平均応答スペクトル、α(T)は地盤増幅率の補正項、β(T)は地盤の卓越周期(固有周期とも言う)の補正項です。α(T)×β(T)、は地盤増幅の補正項となります。また、(T)は地震マグニチュードと等価震源距離(eq)から、α(T)×β(T)は解放基盤表面でのS波速度()と水平動に対する地盤の卓越周期(s1)から求めます。

 (2式)は「解放基盤表面における平均応答スペクトル=地震基盤における平均応答スペクトル×地盤増幅率」と理解して良いでしょう。

 震源で生じた地震動は地震基盤に入力し、その上部にある解放基盤に地震波は達する。地震基盤上の応答スペクトルをいくら正確に定めても、地盤増幅率が正確でなければ、解放基板上の応答スペクトルは間違ったものになります。

<解放基板上の応答スペクトルのデタラメ>

・ 上記に見るように、解放基盤上の応答スペクトルは、地震基盤と解放基盤間の地盤増幅率に大きく影響される。

・ 新潟中越沖地震で柏崎刈羽原発が受けた地震動の解放基板上の応答スペクトルは、(2式)で推定した耐震スペクトルの6倍もあった。

・ これについて、東電は、「①原発地下の堆積層は固い地震基盤の上に5kmもあり、地震波が解放基盤に達するまで増幅したり干渉してしまった。②堆積層が水平でなく、震源から原発敷地に向かって持ち上がっていたため地震波が曲がって伝わった。③地下2kmより浅いところで堆積層が湾曲構造になっていて、地震波が原発敷地に集中した。」と言っている。

・ 解放基盤から地震基盤までの地下構造を調べる必要があったが、全く気にもとめていなかったと聞く。増幅率を決定する際に必要な地下構造を何故調べなかったのか。調査もせず、原発を建ててしまう神経が理解できません。

<耐専スペクトルを求める公式のデタラメ>

 増幅率がデタラメであるばかりか、公式もデタラメのようです。

・ 公式の基になったデータが12観測点107の地震記録と少ない。

・ プレート境界地震は32個、内陸地殻内地震は12個。しかも、プレート境界地震は福島県沖、内陸地殻内地震は伊豆半島付近と発生場所に偏りがある。性質の違う指針をごちゃまぜにして公式を作っている。

・ スラブ内地震(注2)は考慮されていない。

・ 都合の良いデータだけを使っている可能性がある。

<解放基板上の応答スペクトルが耐震スペクトルを上回った実例>

・ 宮城県沖地震(2005)で女川原発が受けた解放基盤上の加速度応答スペクトルは、耐震スペクトルの5倍。

・ 能登半島地震で志賀原発が受けた解放基盤上の加速度応答スペクトルは耐震スペクトルの1.5~2倍。

・ 岩手宮城内陸地震(M7.2)で一関西地下観測点の加速度応答スペクトルは耐震スペクトル(以下、「はぎとり効果」のない加速度応答スペクトルで比較し、耐震スペクトルは「内陸補正なし(注3)」を適用)の1.4倍。

・ 岩手宮城内陸地震(M5.7)で一関西地下観測点の加速度応答スペクトルは耐震スペクトルの5.8倍。

・ 能登半島地震(M6.9)で柳田地下観測点の加速度応答スペクトルは耐震スペクトルの2.5倍。

・ 三重地震(M5.4)で芸濃地下観測点の加速度応答スペクトルは耐震スペクトルの3.7倍。

<耐専スペクトルと基準地震動の関係>

・ (2式)で求められた耐専スペクトルを上回るように基準地震動(Ss)は決定される。

(注1) 応答スペクトルは、横軸に周期、縦軸に速度、図のX-Y面で正の傾きを持った直線群は加速度、X-Y面で負の傾きを持った直線群は変位となります。この図では、各周期に対する加速度、速度、変位を一目で見ることができる(ものぐさ 地震用語 加速度時刻歴波形と加速度応答スペクトル)。

(注2) 海溝などから沈み込んだ海洋性プレートのことをスラブと言う。スラブ内地震はプレート内地震と言い換えることができる。

(注3) 耐震スペクトル「内陸補正あり」は、耐震スペクトル「内陸補正なし」の0.6倍であるから、前者を使えば更に過小評価となる。

« 「原発の安全神話」から「放射線の安全神話」へ | トップページ | 石原環境相 「最後は金目」発言は「本音でしょ」 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 「原発の安全神話」から「放射線の安全神話」へ | トップページ | 石原環境相 「最後は金目」発言は「本音でしょ」 »