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2014年7月

2014年7月14日 (月)

大島堅一教授 原発が電気代を高くする

 7/13、「浜岡原子力発電所運転終了・廃止等請求弁護団」の主催する講演会が、静岡市で行なわれました。演題は「原発の本当のコスト 原子力発電が電気代を高くする」で、講師は立命館大学大島堅一教授です。

 冒頭、弁護団長は挨拶の中で、次のように述べました。

・ 浜岡原発5号機は原子炉の真下に圧力抑制室があり、炉心溶融したデブリは大量の冷却水と接触して、水蒸気爆発を起こす可能性がある。これを食い止めるためのコアキャッチャーは組み込まれていない(ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記(5号機再循環ポンプの点検と水蒸気爆発) その9)

・ 基準地震動の評価が甘い。2001年8月、中央防災会議「東海地震(M8.0)に関する専門調査会」は興津川上流直下にアスペリティーを置いた場合の最大加速度応答スペクトルを3500ガルと想定している。これを中電は認めているが、中電の地震対策工事は2000ガルを想定しているだけだ(ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記(構造の欠陥と海水流入 取水塔 アスペリティー) その3)

・ 中電のごまかしによる逃げ勝ちを裁判は止めなければならない。

 これに引き続き登壇した牧之原市長は、「①原発の安全は担保されない。②避難計画など不可能。③動かすなら市民投票を実施する。④廃炉しやすい企業会計を政府は作るべきだ。」と話した。

 いよいよ、大島教授の講演です。話が多岐に及ぶため、要点を箇条書きにしてみました。発言内容を判りやすく、強調して表現した箇所もあります(ものぐさ)。

<安全性について>

・ 福島原発事故を経て、推進派は「ゼロリスクはありえない」と開き直っている。絶対安全な原発は存在しないことは誰もが認めている。政府は被害を福島にとどめ、見えなくしようとしている。再稼動を容認する人達は、リスクを甘く見ている。

<エネルギーの安全保障(ものぐさ エネルギーの安全保障にもならない日本の原発)>

・ エネルギーが乏しいから原発という理屈は噓だ。

・ 一次エネルギー(灯油による暖房、車の燃料としてのガソリン等)に占める原子力の割合は1割程度でしかない。原発が稼動しなくても1割程度の影響である(ものぐさ 原発停止なら、イラン危機で日本は一流国から転落?)

・ 原子力は「準国産」と主張するが、経済学ではこのようなものは定義されていない。官僚は「備蓄可能だから」と言うが、これは欺瞞だ。備蓄可能性の有無を「準国産」と言うなら、石油もガスも「準国産」だ。

・ 「もんじゅ」実現の見通しは絶望的だ。「2040年を目途とする」と言うが、30年も先のことを念仏のように唱えているだけだ。

・ 「もんじゅ」を核とする核燃料サイクルが実現できなければ、使用済み核燃料も単なるゴミだ。核のゴミは資源ではない。

・ プルサーマル発電の推進でプルトニウムは更に増える。「プルトニウム、ウラン233並びに高濃縮ウラン(ウラン235の濃度が20%以上)は、日米両国政府の合意する施設においてのみ貯蔵・管理する。」と日米原子力協定で厳しく制約を受けています(ものぐさ 日本が怯える日米原子力協定)。国際的に説明できない。MOX燃料を再処理することで、更に毒性の強い核のゴミも生成される。

<環境問題>

・ CO2が出ないから環境に優しいというが、放射能の放出や事故の影響などについては、答えていない。

<原発の発電コスト>

・ 大昔(原発稼動前)から原発は安い(5.3円/kw・h)と言っているが、その根拠はない。

・ 原発のコストは、発電コスト(建設費、燃料費、運転・保守費)と社会的費用(使用済み燃料の処理・処分、廃止措置、事故費、追加的安全対策費、技術開発費、立地対策費)からなるが、安いと言っているのは「燃料費」だけだ。追加安全対策費は、2兆3000億円、立地対策費は1基当たり1400億円。

・ 損害賠償は自動車事故の自賠責保険を基準としている。不誠実で不十分な賠償だ。この賠償費は他人事ではない。福島での基準が既成事実化する。

・ 英国のウインズケール(現セラフィールド)原発は、レベル5の火災事故であったが、2014年現在炉心が取り出せていない。80年かかるとの予測だ。

・ 損害賠償費のほか、除染、中間貯蔵施設、最終処分、汚染水対策、デブリの取り出しと処分等、事故費用は今後も増え続ける。

・ 現時点での事故費用の試算は11兆円(賠償:5兆円、除染:2.5兆円、中間貯蔵施設:1兆円、事故収束・廃炉:2.1兆円など)。しかし除染は1回のみで、廃炉は10年程度の見積もりでしかない。

・ 発電コストと社会的費用を基に電気料金を算出すると、原子力は11.4円/kw・h、石炭は9.4円/kw・h。

<東電支援の考え方>

・ 莫大な費用は、結局国民が払うことになる。東電や国が払えないのに、何故再稼動するのか。一般の企業会計とは異質だ。自力で支払うことができなければ、倒産だ。

・ 2011年、政府は「原子力損害賠償のための資金は援助(あげると言うこと)し、上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、電力会社を債務超過させない。」と閣議決定している。国民にとって原発はリスクがあるが、電力会社や金融機関にとってノーリスクだ。だから再稼動する。銀行も貸し倒れのリスクがないからいくらでも融資できる。

<原発がないと経済が大混乱>

・ 全国的な運用と節電により、電力不足はない。原発が稼動しなくても混乱しないのは実証済み。

・ 原発がないと20年後には電気料金が2倍(2012年9月の枝野資料)になるというが、原発があっても電気料金は1.7倍になる。何故か1.7倍という数字はひた隠し。関連記事(ものぐさ 本当 原発ゼロで電気料金2倍の3万2243円)。

・ 原発が稼動しないことにより中電が負担する燃料費の増加は4817億円と言うが、その内訳は、燃料単価の上昇によるもの2965億円(61%)、原発が稼動しないことによるもの1331億円(28%)、双方の効果によるもの532億円(11%)だ。燃料費増加で大騒ぎしているが、輸入単価の増加によるものが6割も占めている。原発停止による影響は3割弱。

・ 原発稼動時の中電の年間営業費用(追加的安全設備+減価償却費)は1106億円、原発をただちに廃止した場合の火力燃料の増加は496億円。廃炉のほうが600億円も節約できる。原発は動かなくても費用がかかるので、現在のような停止状況では、1500億円にもなる。

<原子力政策の強化>

・ 安井至委員長が運営する「総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会 原子力小委員会」は、今後の原子力政策を具体化する委員会である。

・ 委員の一人である吉岡斉氏は、川内原発再稼働に関する原子力市民委員会の見解を配布しようとした。だが、委員長の判断により、会合において配布されることが許されなかったという。

・ 会議のネット中継は行なわれない。議事録は作成するがいくらでも書き直せる。閉鎖的で危険だ。

<2013年の世論>

・ 原発の即廃止と段階的縮小は84.8%、現状維持は9.8%。2011年の調査では、即廃止と段階的縮小は79.7%、現状維持は16.5%と年毎に即廃止・縮小が増えている。一億総反原発の様相だ。

2014年7月20日 (日)

川内原発 再稼動は住民投票で

 7/17、原子力規制委員会は、川原原発の規制基準への適合を了承しました。

 同委員長は、「一定程度安全性は高まった。再稼動は、九電と住民、政府で判断される。審査をクリアしても安全だとは私は言わない。」と述べています。

 同委員会は、新基準を「世界最高のレベル」と自負するが、炉心溶融したデブリを受けるコアキャッチャーもなく(ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記(5号機再循環ポンプの点検と水蒸気爆発) その9)、航空機の衝突に備えた頑丈なシールド建屋もなく(ものぐさ 日本の原発技術は世界一安全 ?)、IAEAが定めた防災対策(注1)は規制の対象外となっています。火山噴火対策の不備(注2)が指摘され、免震重要棟は2015年、フィルター付きベント装置は2016年まで猶予されています。また、基準地震動の評価が甘いと指摘する専門家もいます(ものぐさ 長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動)。地震の多い日本の原発では世界のどこよりも基準を厳しくしなければならないにも関わらず、地震のないEUの基準にも達していません。どこが世界最高なのか具体的に説明してもらいたいものです。

 火山噴火について、専門家は、「巨大噴火の予知は非常に困難。噴火の周期やメカニズムは殆んどわかっていない。噴火の予兆をつかむことはできない。せいぜい数時間か数日以内だ。」と警告しています。また、静岡大学教授は「原発は13万年前以降に動いた活断層の上に建てるなと言っているが、約3万年前のカルデラ噴火(マグマ噴出で地形が陥没する巨大噴火)で川内原発付近まで火砕流が到達した痕跡があるのに問題視されていない。不合理だ。カルデラ噴火が起きれば、大量に軽石が噴出し、海面を漂流する。潮流に乗った大量の軽石が原発の取水口を塞ぎ、冷却機能を阻害しないか。」と述べています。このような指摘があるにも関わらず、同委員長は火山噴火が迫っても、GPSで「少なくても10年前に予兆を捉え、核燃料を運び出すことが可能だ。」と述べています。仮に10年前に予兆を捉えたとしても経済至上主義の九電が、使用済み核燃料を運び出すでしょうか。運搬先は、いつ、誰が、どこに決めるのでしょう。場所を確保し、保管場所を建設してから言ってほしいものです。

 平成3年に発生した普賢岳の火砕流を思い起こしてみましょう。その予兆となる地震活動は、噴火1年前の平成元年の橘湾の群発地震にさかのぼり、更に決定的な予兆現象は噴火4ヶ月前の平成2年に観測されています。そして、火砕流の発生により、取材に当たっていた報道関係者16名(アルバイト学生含む)、火山学者ら4名、警戒に当たっていた消防団員12名、報道関係者に同行したタクシー運転手4名、警察官2名、選挙ポスター掲示板撤去作業中の職員2名、農作業中の住民4名の合わせて43名の死者・行方不明者と9名の負傷者を出す大惨事となりました。

 一方、「安全という結論が出れば、立地自治体の理解を頂きながら再稼動を進めていきたい。同委員会が責任をもって安全かどうかチェックし、その判断にゆだねる。政府と九電がしっかりと責任を果たし、福島原発のような過酷事故が二度と起きないようにしなければならない(以上、首相)。再稼動は九電の判断だ(官房長官)。再稼動は九電任せにできない。関係閣僚会議で国の関与を確認すべきだ(以上、官邸関係者)」と、政府の意思は曖昧です。

 両者の言い分を見て、国民は「原発は安全である」と納得するでしょうか。同委員長が「絶対安全」だと言っていないものを、政府は「規制基準に適合したものは安全だ」とすり替えて解釈しています。

 こんな状況下で、鹿児島県知事は「30km圏内までの要援護者の避難計画は現実的でない」とし、10~30km圏内の災害弱者を見放しました。勝手に避難してくれと言うことでしょうか。川内市長は、「国が決めた基準で審査しての結果なので安全だ」と無責任な発言をしています。不完全な緊急避難計画に住民は不安を抱いています。それでも、住民の声を無視して再稼動を容認するのでしょうか。

 同委員会は、規制基準に適合しただけで安全でもない川内原発に「合格証」を与え、政府は規制基準に適合しただけのものを「安全である」とすり替え、川内市長は、「国の審査によるものだから安全だ」と言っています。いったん事故が起きれば誰が責任を負うのでしょうか。最も国が責任をとると言っても、福島原発事故並みの賠償や除染どまりで、その補償や廃炉費用は国民の負担になってしまうのです。

 7/18、環境相は「原発事故に備えた避難計画について、原発から30km圏内にある135市町村のうち、6割の83自治体が5月末までに作成した。」と成果をアピールしています。出来上がった避難計画も実効性のない絵に描いた餅です。形式だけ整えれば「OK」というのが国のいつものやり方です。

 立地自治体とは、どこまで指すのでしょうか。UPZ圏内の自治体は緊急避難計画の策定を義務付けられています。福島では放射能が30km圏外にまでにまで拡散し、今尚、帰還できない地区があります。

 国民が被害をこうむり、国民が後始末の負担を背負わなければならない原発の再稼動の可否は、住民投票若しくは国民投票で決めるのが筋でしょう。九州男児の気概を見せてくだい。

 7/18、内閣支持率は44%に下がりました。安倍内閣の暴走を止め、原発再稼動を阻止するためにも、国民は安倍内閣に「NO」を突きつけなくてはなりません。集団的自衛権の法案の審議は、来春まで延期のようです。その代わりに、秋の臨時国会では、女性の社会進出や地方再生に関わる法案が審議される模様です。安倍内閣は姑息な手口で支持率を回復しようとしています。

(注1) 深刻度に応じて、5段階にレベル分けして、安全対策を考える「深層防護」とも言います。第一段階は「異常の発生防止」、第二段階は「異常の拡大防止」、第三段階は「過酷事故への進展防止」、第四段階は「過酷事故対策」、第五段階は「住民の被曝を防ぐ防災対策」です。第五段階は規制基準に盛り込まれず、規制の対象外となっています。まさに、住民の被曝を許容した基準なのです。

(注2) 昨年12/23、新聞社のアンケートによれば、火山学者50人を対象とした巨大噴火の被害を受けるリスクがある原発として、川内、泊、東通、玄海原発が名指しされています。巨大噴火のリスクがある原発のアンケート結果を示します。( )内は、リスクがあるとした学者の数を示します。川内(29)、泊(25)、東通(18)、玄海(16)、伊方(11)、女川(9)、福島第一(7)、福島第二(7)、東海第二(7)、島根((7)、浜岡(6)、柏崎刈羽(5)、志賀(5)、敦賀(5)、美浜(5)、大飯(5)、高浜(4)でした。

 

2014年7月26日 (土)

浜岡原発のクリフエッジ

 <浜岡原発訴訟の第十四回口頭弁論の準備書面23より> 

 中電はクリフエッジを明らかにせよ。

 関西電力は、再稼動前にストレステストを実施し、最大加速度Ssを700ガル、クリフエッジをSsに係わる最大加速度の1.8倍である1260ガルと特定した。クリフエッジとは、プラントの状況が急変する地震の負荷レベルを指し、これを超える地震により、システムは崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能となり、炉心溶融に結びつく。

 関西電力の地震動評価には誤りがある。事故は万が一にも許されないのであるから、平均的な地震動を想定して求めたクリフエッジは明らかに過小であり、不十分である。1260ガルを超える地震は、大飯原発に到来する危険性がある。

 平成20年6月14日に発生した岩手宮城内陸地震で観測された4022ガルを想定すべきだ。

 中央防災会議想定による「興津川上流アスペリティ」直上地域付近での地震動は3000~3500ガルとなると試算され、中電もこれを認めている。

 浜岡原発に地震動が襲来した場合、炉心溶融、水素爆発あるいは水蒸気爆発を防止できるか否を明らかにするためにも、①地震動による最大加速度、②津波の高さ、③全交流電源喪失及び最終ヒートシンク喪失に係る日数の3点についてクリフエッジを明らかにせよ。再稼動申請をしているからには、クリフエッジを特定していないという言い訳をすることは許されない。

 関連記事 (ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記(不合理な新規制基準 立地審査指針違反 新規制基準の基準地震動は旧態依然 司法が変わる・大飯原発原告勝訴 クリフエッジ) その10 ) 

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