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2014年8月

2014年8月 5日 (火)

浜岡原発は原子炉立地審査に違反、よって設置許可は無効

 <浜岡原発訴訟の第十四回口頭弁論の準備書面19より> 

 浜岡原発は原子炉立地審査指針に違反、よって設置許可は無効と弁護団は主張しています。

 福島原発事故では大量の放射能が拡散し、多くの住民が被曝しました。3年半経過した今でも、多くの帰還できない人々がいます。

 住民を放射線被曝から守るために、原子炉の設置基準が定められています。法的体系からその内容を見てみます。

1 原子炉施設の設置許可基準は「災害の防止上支障がないこと」を要請している(原子炉等規制法24条1項3号)。

 その趣旨は、「原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こす恐れがあることに鑑み・・・・・原子炉設置の位置、構造及び設置の安全性につき、科学的、専門技術的見地から十分な審査を行なわせることにある」としている。

2 「災害の防止上支障がないこと」の許可要件を具体化したものが「原子炉立地審査指針」である。

3 原子炉立地審査指針の「原則的立地条件」を以下に記す(ものぐさ 活断層 原子炉立地審査指針に違反する)。

 原子炉は、どこに設置されるにしても、事故を起さないように設計、建設、運転及び保守を行わなければならないことは当然のことであるが、なお万一の事故に備え、公衆の安全を確保するためには、原則的に次のような立地条件が必要である。

(1) 大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。

(2) 原子炉は、その安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること

(3) 原子炉の敷地は、その周辺も含め、必要に応じ公衆に対して適切な措置を講じうる環境にあること

 以上、見るように、(1)~(3)のいずれかに抵触すれば、立地条件を満たしません。

4 原子炉立地審査指針の「基本的目標」として次の2つをあげる。

(1) 最悪な場合には起こるかも知れないと考えられる重大な事故(以下、重大事故)の発生を仮定しても、周辺の公衆に放射線障害を与えないこと

(2) 重大事故を超えるような技術的見地からは起きるとは考えられない事故(以下、仮想事故)の発生を仮定しても、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと

5 「基本目標」達成するための原子炉立地審査指針の具体的な要件を示す。

(1) 原子炉からある距離の範囲(注1)は「非居住区域」であること。

(2) 非居住区域の外側は「低人口地帯」であること。

 「非居住区域」に放射される放射線量の目安は250ミリシーベルト以下でなければならないとされているが、福島原発敷地境界における線量は、2011年4月1日から1年間の累積線量で956ミリシーベルトであった。

 それでは、3年半経過した現時点で、累積被曝線量が250ミリシーベルトを超える地域はどこでしょうか。簡易型線量計を用いた固定測定点における積算線量の測定結果(原子力規制委員会 平成26年7月24日現在)を以下に示します。尚、括弧内は原発からの距離です。

・ 浪江町津島(30km西北西)  125ミリシーベルト

・ 浪江町赤宇木(32km北西)  287ミリシーベルト

・ 飯館村長泥(33km北西)    144ミリシーベルト

 上記に見るように、浪江町赤宇木地区は、原発から32kmも離れているのも関わらず250ミリシーベルトを超えています。簡易線量計の設置は2011年3月23日であり、福島原発の爆発から10日間の放射線量は含まれていません。これを含めると、累積被曝線量は更に大きくなります。このことで明らかなように、福島原発は原子炉立地審査指針に違反していました。少なくても30km圏内は「非居住区域」でなくてはならなかったのです。原発から5km、10km、20kmの地点における累積放射線量を明らかにしてください。250ミリシーベルトを超える地域は更に増えるでしょう。

 福島原発事故における放射性物質の飛散状況を見れば、原発事故により周辺の公衆に放射線障害を与えることは明白となりました。

 浜岡原発から30km圏内には86万人が住んでいます。「非居住区域」でしょうか、「低人口地帯」でしょうか。明らかに、浜岡原発は、原子炉立地審査指針に違反しています。

(注1) 重大事故の場合、もし、その距離だけ離れた地点に人がいつづけるならば、その人に放射線障害を与えるかもしれないと判断される距離までの範囲。 

 関連記事 (ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記(不合理な新規制基準 立地審査指針違反 新規制基準の基準地震動は旧態依然 司法が変わる・大飯原発原告勝訴 クリフエッジ) その10 

 

2014年8月 6日 (水)

新規制基準には原子炉立地審査指針がない

 <浜岡原発訴訟の第十四回口頭弁論の準備書面19より> 

 福島原発は原子力安全委員会の策定した原子炉立地審査指針に違反していました(ものぐさ 浜岡原発は原子炉立地審査に違反、よって設置許可は無効)。そして、福島原発事故では多くの住民が放射線に被曝しています。

 原子力規制委員会は、立地審査指針の見直しをしたのでしょうか。同書面は「原子力規制委員会により策定された新規制基準には原子炉立地審査指針がない。」と述べています。

 何故でしょう。このことについて、同書面は「福島原発事故の実情を踏まえて正当な立地審査指針を作ると、日本に原発の立地できる場所がないことがわかってしまったからである。」と述べています。都合が悪いから、何も触れないでおこうと考えているのでしょうか。

 さて、今後の裁判において、原子炉立地審査指針に対する違反を主張することはできないのでしょうか。同書面は、以下のように主張しています。

・ 新規制基準は旧安全基準の範囲を網羅していない。新規制基準から漏れた部分(原子炉立地審査指針)は旧安全基準がそのまま効力を維持する。

・ 仮に、新規制基準策定によって旧安全基準が全て廃止されたと解釈したとしても、浜岡原発設置許可の際に有効であった立地審査指針の適用において看過しがたい過誤欠落があったのであるから、浜岡原発設置許可は違法かつ無効である。

・ 仮に、新規制基準策定によって旧安全基準が全て廃止されたと解釈したとしても、立地審査指針は原発の建設を許可するか否かを決める場合に必須の要素であるから、それを欠く新規制基準は伊方最高裁判決の言う「具体的な審査基準に不合理な点」がある場合に当たるので、元々の違法かつ無効な設置許可により建設されたという瑕疵が治癒されるわけではない。

 原子力規制委員会の策定した新規制基準の「いい加減さ」が明らかになりました。立地審査指針以外にも、専門家から指摘されている疑問点がいくつもあります。例示してみます。

・ 新規制基準には一定の猶予期間が認められています。原子炉格納容器を遠隔操作する「特定安全施設」(第2制御室)、緊急時対策所や加圧水型原発のフィルター付きベント装置が猶予対象ですが、その猶予期間中に大地震が襲来した場合の安全は担保されません。安全基準の「骨抜き」です(ものぐさ 原発 新安全基準にパブリックコメントを(地震・津波))。 

・ 原子炉や格納容器等の破損に至った場合の敷地外への放射性物質の拡散を抑制する設備は放水設備(例えば、放水砲)だけです。しかも、原発から半径30キロ圏に大幅拡大された事故時の住民避難計画のモデルも示せず、自治体任せです(ものぐさ 原発 新安全基準骨子にパブリックコメントを(シビアアクシデント))。

・ 基準地震動評価手法の1つである「耐震スペクトル」の公式はデララメです。公式の基になったデータが12観測点107の地震記録と少なく、スラブ内地震は考慮されず、都合の良いデータだけを使っている可能性があります。その結果、解放基盤上の応答スペクトルが耐震スペクトルを上回った実例は数多くあるのです(ものぐさ 地震用語 「等価震源距離」とは、そして、「耐専スペクトル」のデタラメさ)。

・ 地震動の評価手法は古すぎ、地震動は過小評価されています。地震は実際に観測された地震波を用いて「耐専スペクトル」と「断層モデル」で評価されるが、十数年前に作られて以降、この20年間に収集された国内の地震の観測記録は、計算式に反映されていません(ものぐさ 長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動)。

・ 巨大噴火の予知は非常に困難です。噴火の周期やメカニズムは殆んどわからず、噴火の予兆はせいぜい数時間か数日以内です。原発は13万年前以降に動いた活断層の上に建てるなと言っているが、約3万年前のカルデラ噴火(マグマ噴出で地形が陥没する巨大噴火)により川内原発付近まで火砕流が到達した痕跡があるのに、3万年前のカルデラ噴火は問題視されていません。カルデラ噴火が起きれば、大量に軽石が噴出し、海面を漂流し、潮流に乗った大量の軽石が原発の取水口を塞ぎ、冷却機能を阻害する可能性があります(ものぐさ 川内原発 再稼動は住民投票で)。

・ 原発事故により放射能が住民を襲ったときに備える緊急避難計画は自治体に丸投げです。米ニューヨーク州のショーラム原発は、避難計画を州知事が承認しなかったため、運転開始できずに89年、廃炉となりました。(ものぐさ 川内原発 緊急避難計画が不安なら再稼働に反対せよ)。

 これで、「世界一安全な原発だ」と、良く言えたものです。多くの問題点を無視した審査基準とは、如何ほどの意味があり、説得力を持つでしょうが。

 関連記事 (ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記(不合理な新規制基準 立地審査指針違反 新規制基準の基準地震動は旧態依然 司法が変わる・大飯原発原告勝訴 クリフエッジ) その10 

 

2014年8月12日 (火)

新規制基準の基準地震動は旧態依然

 <浜岡原発訴訟の第十四回口頭弁論の準備書面20より> 

 基準地震動を上回る確率は1万年に1度とされていました。ところが、ここ10年の間に基準地震動を上回る地震は5回(注1)も発生しています。2年に1度の確率です。

 その理由は次のように言われています。

・ 地震動の評価手法が古すぎ、過小評価している。

・ 地震は実際に観測された地震波を用いて「耐専スペクトル」と「断層モデル」で評価されるが、「十数年前に作られて以降、この20年間に収集された国内の地震の観測記録は、計算式に反映されていない(ものぐさ 長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動)。

・ 観測された各種データの平均値を用いて、地震動を想定している。

 そして、新規制基準は、地震動の評価を具体的に規定することなく、「適切に設定され、地震動評価がされていることを確認する」などと言った曖昧な文言を羅列しているだけです。何が「適切」なのかは全く記載されていません。

 新規制基準が曖昧な表現にとどまっていることを悪用して、電力会社は、基準地震動策定手法が誤っていたことが明白になった現在においても、旧態依然とした手法で基準地震動を策定しているのです。

 吉岡斉・九州大学大学院教授は7/26、「新規制基準自体の妥当性に加え、その文言があいまいで、それに適合しているという規制委員会の判断は恣意的である」とも述べています。

 まやかしの規制基準です。

 (注1) ①2005年8月の宮城県沖地震における女川原発。②2007年3月の能登半島沖地震における志賀原発。③2007年7月の新潟県中越沖地震における柏崎刈羽原発。④2011年3月東北地方太平洋沖地震における女川原発と福島原発。

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2014年8月14日 (木)

静岡新聞における「日本電気協会新聞部」の広告

 8/10の静岡新聞に、「知っていますか?私たちの暮らしとエネルギー」と題する新聞広告が掲載されました。

 広告主は、「日本電気協会新聞部」となっています。同協会は原発推進の組織であると聞いています。この点を考慮して各識者の発言を読むと、世論を原発再稼働に誘導しようとする意図が透けて見えます。内容から判断しても、4名の有識者全てが原発推進派のようです。これに意を唱える人は参加していません。以下、検証します。

1 静岡新聞の姿勢はこれで良いのか。

 世論調査において、再稼動反対は60~70%にまで達しています。いくら広告収入が欲しいからといっても、国民の過半数以上が反対している原発問題に対して、原発推進派の一方的な見解を掲載しても良いものでしょうか。これは新聞による世論操作です。新聞社の中立性が損なわれています。

2 「日本電気協会」の組織。

 同協会は14名の会長、副会長、理事で構成され、うち8名は電力会社社長・会長等の経験者です。

3 有識者の見解。

(コーディネーター)

・ 原発停止で燃料調達費は、1日当り100億円増えている。消費税は価格転嫁できても、エネルギー価格は転嫁できない。

・ 中部電力エリアの電力予備率は3.5%。節電は難しく、製造拠点を海外に移す企業も出てくる。

・ 安定して発電できない再生可能エネルギーを拡大するには蓄電池が必要だが、現実的でない。

・ 火力発電や原発を利用しながら再生可能エネルギーの技術を培うべきだ。

<N氏>

・ 静岡県の景気状況(求人倍率は、09年2月以降全国平均を下回っている。人口の減少。12年の製造品出荷額は07年比4兆円減少。)の悪化を指摘し、「電気料金などエネルギーコストが上がれば深刻な事態になる」と警告。

・ 福島原発直後の計画停電で県東部は大変な影響を受けた。電気の安定供給は大切だ。

・ 09年に県内で10万kwだった太陽光発電は、30年までの目標を30万kwとした。急激な導入で目標は100万kwに引き上げられた。

・ 原発は地域活性化の1つであり、大きく貢献している。雇用・生産・税収と深いかかわりがある。

<S氏>

・ 景気の悪化は大変ショックだ。社会全体として活気を失わないことが重要だ。

・ 大量の物資を運ぶのに、他のエネルギーを使わずに風を利用したヨットやいかだで運ぼうとするのはナンセンスだ。

・ エネルギーは多様性が大事だ。リスクのない社会は活気のない社会だ。リスクの受け入れがどの程度可能なのか、情緒的でなく理性的に判断すべきだ。

<Y氏>

・ 1988年に5兆円であった化石燃料の輸入額は、昨年度30兆円に達した。13兆円の貿易赤字だ。

・ 電力予備率3%台は心配だ。全原発が停止しており、火力発電所は老朽化し、トラブルで停止するリスクが高い。

・ ドイツの一般家庭の再生可能エネルギーの負担が年間3万円にも達した。今年4月には、再生可能エネルギーの導入量目標を下方修正し、固定価格買取制度の対象設備を段階的に縮小する方針を決定した。

・ 平均給与は97年の467万円から、12年には408万円に低下。安定的に電気を供給できなければ、製造業の本格的な回復は難しい。アメリカの調査によれば、1人あたりのGDPと幸福度は相関関係にある。経済成長を支える電気は幸福度と強い相関関係にある。

・ 原発が停止している現在、発電電力量の90%を化石燃料に依存している。リスクが大きい。世界では原発が増えている。

・ 原発には事故リスクがあるが、原発を建設し維持していかなければ、もっと大きなリスクを抱えることになる。

 散々聞かされている原発推進者の経済一辺倒の論理です。この中には原発事故に対する反省も、原発事故で塗炭の苦しみを味わっている住民への思いやりも、原発再稼働に慄いている住民への配慮もありません。今後起きるかもしれない原発事故をリスクの問題で片付けています。

 反論は沢山ありますが、少しだけコメントします。

・ 中小企業は消費税を価格転嫁するのに思い悩んでいるが、電力会社は、(原発が動かないと言う理由で)価格アップを経産省に申請しています。

・貿易赤字の増大は、化石燃料の輸入増加も要因であるが、円安による燃料単価の上昇や、国内製品の国際競争力の低下(パソコン、スマートフォンなどの電子機器等)も大きな要因です。

・ 化石燃料の用途は電気だけではありません。輸入がストップすれば、石油を使用したガソリン自動車、プラスチックなどの化学製品や衣料も生産できません(ものぐさ 原発停止なら、イラン危機で日本は一流国から転落?)。

・ 原発の立地は地域経済にとって大きな負担です。原発事故のリスクを回避するために、一般企業はその地域から逃避するでしょう。原発立地自治体の立地交付金等は年々減少し続け、それを補填するために原発を増設し続けなくてはならない状況に陥っています。原発は麻薬です。

・ オイルショックに見舞われたデンマーク政府は、電力不足を補うために原発を推進しようとした。住民による徹底的な討論の後、政府は原発の推進をあきらめた。デンマークの一人当たりのGDPは世界第6位で、日本の26位を大きく引き離している(ものぐさ 原発で幸せになるか)。2010年の1人あたりの電気使用量は、上位からカナダ、アメリカ、韓国、日本、フランス、ドイツとなっています。ところがデンマークの電気使用量は世界平均以下で、2014年は21位です。

 幸福度とGDPに(正の)相関があるとすれば、デンマーク人(6位)は日本人(21位)よりも幸福度が高いことになります。これは納得。

 Y氏は、電気使用量と幸福度も(正の)相関があると言う。この説によれば、日本人(4位)はデンマーク人(21位)よりも、幸福度が高くなければならない。Y氏の発言は支離滅裂です。

・ 「ヨットで運ぶのはナンセンスだ」と言っているが、大量の電気をロスの大きい送電線を使って東京まで運ぶほうがナンセンスだ。東京近県に発電所を作って東京まで送電するほうがより効率的で、送電ロス(熱になるだけ)は少ない。電気の地産地消が言われだした。

 インドネシア新大統領は8/11、インタービューに答えて、「我が国には、石炭やガス、地熱など豊富な天然資源があり、それを優先する」と述べ、現時点での原発導入に否定的な考えを示しました。その理由として「福島事故のような深刻な事故が起きる可能性がある」と強調しています。

2014年8月16日 (土)

浜岡原発(ABRW型)は水蒸気爆発の可能性あり

 <浜岡原発訴訟の第十四回口頭弁論の準備書面21より>

 炉心溶融により溶融した燃料(2500℃以上)に冷却水が接触すると、冷却水は急激に蒸発し、体積は瞬時に1600倍も増加します。この爆発現象を水蒸気爆発と呼びます。それによる爆発力・破壊力は福島原発で起きた水素爆発の比ではありません。

 改良型沸騰水型軽水炉(ABWR型)と呼ばれる浜岡原発5号機は、福島原発に採用されている沸騰水型軽水炉(BWR-4 Mark-1型)と比べて、遥かに水蒸気爆発の危険性が高いと言われています。

 その理由を構造上の違いから説明します。

・ Mark-1型の下部に位置する圧力抑制室はドーナツ状の構造となっているため、溶融燃料が落下したとしても、原子炉下部に圧力抑制室はなく、水蒸気爆発は起こりにくい構造となっている。

・ ABRW型は原子炉の直下に圧力抑制室のある構造となっており、落下した溶融燃料が圧力抑制室隔壁を破壊し、冷却水と接触する可能性の高い構造となっている。

 水蒸気爆発の事例をいくつか見てみましょう。

・ 火山噴火

 マグマの熱で付近の地下水が気化して大量の水蒸気が発生すると、急速に上昇した水蒸気圧力により火口や山体が破壊される。これを水蒸気噴火と言う。一方、マグマが直接地下水や海水に接触して起こる爆発をマグマ水蒸気爆発と言う。地球中心温度は6000℃、地殻とマントルの境界面(マグマ溜り・・・地下30km程度の場所にある)のマグマ温度は1000~1200℃です。この程度の温度で、マグマと地下水が接触すれば、水蒸気爆発が起こり、山体を破壊してしまう。

・ スリーマイル島原発事故

 溶融燃料20tが圧力容器底部に落下し、水蒸気爆発が起きた。

 以下、日本原子力研究所(2002年3月)の資料より抜粋した。研究の背景として、次のような記述がある。

 蒸気爆発は、高温液体と低温液体の接触混合時に、急速な熱伝達のために低温液体が急激に蒸発し、衝撃圧縮を生じる熱的相互作用である。このような蒸気爆発による事故、災害を未然に防ぐために蒸気爆発の発生条件ならびに蒸気爆発が発生した場合などの規模をあらかじめ知ることが極めて重要である。しかしながら、蒸気爆発現象は極めて短時間に起こる現象であり、その観察、測定が難しく未知の部分が多大に残されており、今後、蒸気爆発現象の発生メカニズムなどに関する研究を行なって行くことが求められている。

 研究目的は、原子炉のシビアアクシデント時において発生する可能性のある蒸気爆発のトリガー機構を解明することです。この点がが興味深いところです。

・ 鹿島コンビナート事故(1958年)

 約1300℃の溶融マンガンが15t流出し、水と接触して水蒸気爆発。

・ 兵庫県での製鉄所(1988年)

 1500℃の銑鉄が数百kg漏れ、水と接触し水蒸気爆発。

・ 大阪府の製鉄所(1989年)

 製鉄所のタンクが倒壊し、水が流出。停車中の高熱溶融物の運搬車両が水をかぶり水蒸気爆発。

・ 山形県の廃品回収工場(1990年)

 火災で溶けたアルミと消火のために放水した水が接触して水素爆発。

・ 富山県アルミ鋳造工場(1984年)

 800℃の溶融アルミと雨を含んだアルミスクラップが接触して水蒸気爆発。

・ 米軍用沸騰水型原子炉SL-1(1961年)

 制御棒の引き抜きにより水蒸気爆発。

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2014年8月20日 (水)

司法が変わる 大飯原発原告勝訴

 <浜岡原発訴訟の第十四回口頭弁論の準備書面22より>

 福井地裁は「大飯原発を運転してはならない」とする判決を言い渡した。以下、要点を列挙する。

・ ひとたび深刻な事故が起きれば多くの人の生命、身体や生活基盤に重大な被害を及ぼす。「人格権(注1)」は差し止め請求の具体的根拠となりえる。人格権は憲法上の権利でもある。

・ 生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、人格権そのものについて侵害行為の差し止めを請求できる。

・ 原発の稼動は経済的活動の自由に属するに過ぎず、人格権よりも劣位におかれるべきもの。

・ 原発技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは福島原発事故を通じて明らかになった。

・ 人格権を奪われる具体的事態が万が一にでもあるのか否かいう点に(判決は)集約され、規制基準への適合性の判断とは別個・独立に司法は判断できる。

・ ひとたび事故が発生した場合の権利侵害の度合・範囲が甚大であることに照らしても、司法判断を避ける理由は微塵も存在しない。

・ 原子炉規制法等のあり方、内容によって司法が左右されるべきではなく、司法は(人格権を根拠とした差し止め請求に関する)判断能力・適格を有する。

・ 判決は、①地震学の知見の限界、②構造物の材質のばらつきや溶接等の良否などの不確定要素の存在、③緊急時における回避措置の不確実性や事態把握の困難性等を指摘し、冷却機能喪失による重大事故が生ずる危険は「万が一の危険という領域を遥かに超える現実的で切迫した危険である。」と述べている。

・ 地震大国日本において、基準地震動超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的な見通しに過ぎない。

・ 大飯原発から半径250km圏内に居住する者は、大飯原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的危険がある。

 原発推進派は、原発がなければ経済は成り立たないとか、電気料金が上昇するとか、石油の輸入がストップすれば日本は壊滅する(ものぐさ 原発停止なら、イラン危機で日本は一流国から転落?)とか、世界一厳しい規制基準で世界一安全な原発だ(ものぐさ 日本の原発技術は世界一安全 ?)とか、放射能は怖くない(ものぐさ 「原発の安全神話」から「放射線の安全神話」へ)とか、汚染水は完全にブロックされている(ものぐさ 汚染水漏れ これでも「完全ブロック」か)とか屁理屈を主張しています。政府と原発推進派が束になって、国民を洗脳しようとしています。原発再稼動ばかりではなく、集団的自衛権の閣議決定、特定秘密保護法制定、沖縄辺野古基地移転など国民の声に耳を傾けることなく、政府は強引に政策を推し進めています。安倍首相は反対派の意見に耳を傾ける度量もなく、アメリカと経済界の言うことしか聞かない、と言われています。

 このような状況下において、胸のすくような判決でした。福島原発の悲惨な現状をみて、理不尽な思いを抱きつつ「まあしょうがないか」とあきらめているのではないでしょうか。司法は国民の味方です。専門知識に疎い国民にとって人格権は大きな武器となります。人格権を根拠に、原発再稼動反対を堂々と主張していこうではありませんか。

(注1) 

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

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