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2014年9月 3日 (水)

不合理な新規制基準

 <浜岡原発訴訟の第十四回口頭弁論の準備書面18より>

 平成4年10月、伊方原発の最高裁判決は「万が一にも事故が起こらないようにするため、科学的、専門的見地から十分な審査をしなければならない。具体的審査基準に不合理な点があり、調査審議及び判断の過程に看過しがたい過誤・欠落があったと認められる場合には違法と判断する」と言及しています。

 このことを念頭に置きながら、新旧規制基準の何が不合理であり、何が看過しがたい過誤・欠落なのか、何が違法なのか考えてみましょう。

 2度と福島原発のような事故を起こさないと、環境省の外局に独立性の高い原子力規制委員会が設置されました。同委員会はその権限に基づき、原発の安全基準を策定し再稼動審査を行なっています。今秋にも川内原発の審査合格が下されようとしている中、新規制基準に対する多くの疑問点が各有識者から発せられています。低い基準地震動の設定、火山噴火への危惧(ものぐさ 川内原発 再稼動は住民投票で)、立地審査指針への不適合、防災計画の不備(ものぐさ 川内原発 緊急避難計画が不安なら再稼働に反対せよ)などです。

 新規制基準はどこが問題なのでしょうか。旧安全審査指針の誤りを指摘することから進めていきます。

 1 旧安全審査指針

・ 5重の壁(注1)と3重防護(注2)により「止める、冷やす、閉じ込める」機能が働き、放射性物質が外部に多量に放出することはない。

・ シビアアクシデント(過酷事故)は無視できる程度の発生確率しかないから、国で規制する必要はなく、原発事業者の自主的努力に任せればいい。

 福島原発事故において、5重の壁と3重防護はあっけなく崩壊し、安全審査指針に対する信頼も同時に崩れ去った。

 2 旧安全審査指針類の不備・欠陥

・ 立地審査指針は、「万が一の事故が起きた場合、公衆の安全を確保するために、原子炉から一定の距離の範囲を非居住区域、その外側の一定の距離の範囲を低人口地帯としなければならない」と要求しています。その目安は0.25シーベルトとなっているが、福島原発の敷地境界における1年間の累積放射線量は0.956シーベルトにも達した。福島原発は立地審査指針に違反していることになる(ものぐさ 新規制基準には原子炉立地審査指針がない 浜岡原発は原子炉立地審査に違反、よって設置許可は無効)。

・ 重要な安全機能を有する機器及び系統は2つ以上必要であり、1つの事故原因で同時に全ての安全機能が失われてはならないとされていた。しかし、福島原発では1つの原因で必要な安全機能が同時に全て故障した。自然現象を原因とする事故であれば、多数の機器が同時に影響を受けるのであるから、機器のうち1つだけが機能しないとした仮定は非現実的である。

・ 事故原因として作業員の誤操作等の内部事象だけを考慮し、自然現象等の外部事象は考えないことにしていた。

・ 外部電源は重要度分類のクラス3に分類され、耐震設計上の分類においても最も低い設計が許容されるCクラスとなっていた。その結果、地震の揺れにより、福島原発の送電鉄塔は倒壊し、送電線は断線し、受電遮断機の損傷等が生じ、外部電源は喪失した。

・ 全交流電源喪失の想定時間は、明確な根拠もなく30分とされていた。

 3 設計基準を超過する東北地方太平洋沖地震

・ 同地震はわが国の過去数百年の資料では確認できなかった巨大な地震であり、耐震設計審査指針の想定を超えるものであった。過去数千年間の地震・津波の記録だけに基ずく地震・津波の推定は難しい。仮にそれを再現したとしても、それが今後発生する可能性のある最大クラスの地震・津波であるとは限らない(ものぐさ 新規制基準の基準地震動は旧態依然)・・・政府中央防災会議。

・ 観測された最大地震加速度が設計地震加速度を超過する事例は、過去10年間だけでも5ケースもある(ものぐさ 長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動)。欧州では超過頻度を1万年に1度としている。

・ 策定された地震動を上回り、多量の放射性物質が放出されること(残余のリスク)を認め、「合理的に実行可能な限りこの残余のリスクを小さくするための努力が払われるべきである」と規定されている。しかし、「合理的に実行可能な限り」と甘い限定となっている。

 4 3重の防護

 これは誤りであった。全ての原発の設置許可は見直されなければならない。国際基準では5重の防護(④にシビアアクシデント管理、⑤に防災対策が加わる)となっている。緊急避難計画の策定は地方に押し付けられ、防災対策の規定は新規制基準に記述されていない。

 5 新規制基準の問題点

・ 福島原発の事故原因も明確でない中で策定された基準である。地震による損傷の可能性が考慮されていない。

・ 福島原発の事故を想定した立地審査指針となっていない。周辺住民の安全性は完全に無視された。

・ 「重要な安全機能を有する機器及び系統は2つ以上あり、1つの事故原因で同時に全ての安全機能が失われてはならない」とされていた旧安全審査指針類はそのまま踏襲されている。2つ以上の機器が同時に機能しなくなることは福島原発事故で明らかになっているにも関わらずである。

・ 外部電源は重要度分類のクラス1、耐震設計上の分類のSクラスに格上げしなければならないが、従来のままである。

・ 地震に関する部分には「適切に評価」、「適切に考慮」という記載が頻繁に使われている。具体的内容は不明で、基準とはいえない体裁である。

・ シビアアクシデントの評価が現実と乖離している。例えば、高圧・低圧注水機能喪失と全交流電源が同時に発生する事故シーケンスは考慮されていない。

・ 格納容器が損壊した場合には、放水設備で放射性物質の拡散を防ぐことはできない。

・ ベント操作の本質は、放射性物質を放出することであり、安全確保策ではない。違法である。

(注1) ①燃料ペレット、②燃料被膜管、③原子炉圧力容器、④原子炉格納容器、⑤原子炉建屋。

(注2) ①異常を発生させない、②異常が発生しても拡大させない、③周辺環境に放射性物質を放出させない。

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