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2015年3月15日 (日)

浜岡原発訴訟 傍聴記(H断層系 緊急避難計画) その12

 3/9、静岡地方裁判所で行なわれた浜岡原発訴訟の第18回口頭弁論を傍聴しました。前回に続き13回目の傍聴となります。

 午前10時5分までに裁判所に集合し、行列に並びました。定員オーバーした場合には抽選です。一般傍聴席40人程度に対し、希望者は13人。全員が入廷できました。

 向かって左に原告、右が被告(中電)です。原告側26人程度、被告側12人程度でした。

 裁判官3人、報道関係者は11人でした。10時30分開廷です。

 被告は提出した準備書面16の概略を説明しました。前回(ものぐさ 浜岡原発訴訟 傍聴記(浜岡原発の防波壁の脆弱性) その11)に対する反論です。以下、要点を記します。

・ 液状化と側方流動

 大規模な液状化が生ずる緩い地盤ではないことを確認している。液状化に伴う側方流動(注1)は発生しない。

・ 防波壁及び改良盛土

 地盤及び砂丘堤防を含む周辺地盤について、地盤調査等を実施し、耐震性及び耐津波性に影響するような緩い地盤ではないことを確認するとともに、一部の地盤については改良を実施している。地震応答解析等を実施して、問題ないことを確認している。

・ 鋼管矢板(注2)

 地震応答解析等を実施して、問題ないことを確認している。

・ 防波壁の洗掘

 防波壁の基礎を強固な岩盤にまで達するような構造とし、複数回の津波によっても洗掘の影響は受けにくい。

・ 地震動評価

 地下構造調査や地震観測記録の分析結果を地震動評価に反映している。5号機において、駿河湾地震による顕著な増幅が見られるが、それ以外の方向では、増幅は見られない。

 これに対して、原告弁護団は、「内容を裏付けるデータがない」と言及しています。原告が「安全でない」といえば、具体的な根拠も示さず被告は「安全だ」と言っているのです。

 次に、原告は「準備書面26」で「H断層系(ものぐさ 浜岡原発 H断層系)は活断層であり、1万年前の活動は明らかでない。」と述べています。被告も「H 断層系は約8万年前以降における活動はない」と主張しています。約12~13万年前以降の活動が否定できないので、当然廃炉にしなければなりません。

 静岡県では、緊急避難計画が策定されていません。100万人もの県民が県外に緊急避難することなど不可能であるから策定できないのです。

 静岡県は,三菱重工業株式会社に委託し,「浜岡原子力発電所の原子力災害に係る避難時間推計業務」の報告書を提出させています(ものぐさ 浜岡原発避難に最長29時間)。

① 国道、県道、主要市町道、東名・新東名高速道路を使用。但し、津波浸水区域の道路は使用不能。 

② 震災や津波で浸水する沿岸道路(国道150号線など)は使用不能。

 上記①②の条件で、UPZ圏内の住民86万人が31km圏外に車で避難する場合、「避難時間は最悪のケースで29時間10分要する」と試算しています。

 さて、原告は「準備書面27」で「静岡県地震被害第4次想定に照らしたときの地震被害を想定すれば、避難計画を策定することは不可能であることを示した以外には、何の役にも立たないものであって、単なる県費の無駄遣いとしか評価しようがない。」と述べています。その根拠を記します。

<南北方向への避難>

・ 南は海に面し、北は山間部であり、北への道路は国道52号線しか存在せず、隘路で、台風等で、崖崩れ等で遮断されることが多く、通行は期待できない。

<東京方向への避難>

・ 富士川断層などの地盤変化により,緊急車両の通行が可能になるまで1週間以上、一般車両にいたっては長期間(1ヶ月以上)幹線道路が通行止めされる。

・ 東名・国道・新幹線・在来線がいずれも海に極めて近い場所を通っている由比のさった峠付近は台風の際にも東名・国道などはしばしば通行止めになる。プレート境界型の大地震が発生した場合には、段差が生じて大きな被害が起きる可能性がある。

・ 大井川、安倍川、富士川という広い河川が存在する。橋脚が河川を遡上する津波や、地震動の揺れによって被害を受けた場合、国道1号線・東名高速道路などの橋脚が全面的に被害を受ければ陸路での避難は不可能になる。

・ 「富士川河口断層帯(注3)」が存在しており、落橋を含めた大きな被害が想定されている。地震時の隆起は7~10m程度になる。

<大阪方向への避難>

・ 国道1号線及び東名高速道路は島田から掛川付近で山間部を多く通過している。法面が崩落し交通が寸断されることが予想される。

・ 天竜川という広い河川が存在する。東京方面と同様、避難は不可能になる。

 このシミュレーションの致命的欠陥は,周辺地域の津波しか考慮していないことである。

 このことについて、静岡県は「家屋倒壊などによる道路閉塞、都市火災などの発生による通行不能、道路損傷(路肩被害、斜面崩壊、局所的な陥没、橋脚の落橋など)を想定すると、被害発生箇所の推定が困難であり、これを取り扱うことは避難時間推計の不確定性を増加させ、本来の避難安全上の問題の検討が困難になる」と言い訳をしています。実際に起こり得るようなことを想定すると、緊急避難計画が策定できないから「それについては考えないことにする」と言っているのです。無責任極まりない主張です。

 M8クラスの地震、それに伴う15mの津波を想定すれば、対策に膨大な費用がかかるから「それについては考えないことにした」東電。その結果が福島原発事故です。

 最近では、川内原発の再稼動にあたって、巨大噴火の可能性が火山学者から指摘されています。これに対して原子力規制委員長は「巨大噴火はここ30年、40年の間に起こるものではない。天災がいつ起きるか分からないので社会的活動をやめてください、という考え方では仕事はできない。」と言っています(ものぐさ 川内原発再稼動と御嶽山噴火)。巨大噴火を想定すると、再稼動できないから「想定しないことにした」と言っているのです。

 浜岡原発が爆発すれば、静岡県民は逃げることもできず、放射能を1ヶ月も浴び続け、急性障害で死んでいくでしょう。このような場所に国は被曝を覚悟して救済に来てくれるでしょうか。天竜川と富士川に挟まれた地域の静岡県人163万人(静岡県人口は370万人)は見捨てられるのです。

 主要論点は出揃ったので、今後の裁判はパワーポイントを使ってのプレゼンテーションになるのではないかと、原告弁護団は見ています。論点が明確になり面白くなりそうです。次回以降の裁判日程は

 次回、5月21日(木)午前10時30分。

 次々回、7月16日(木)午前10時30分。

 その次の回、 9月15日(火)午前10時30分。

 河合弘之弁護士監督の映画「日本と原発」が、御前崎市、牧之原市、菊川市、富士宮市で上映されました。今後、磐田市、沼津市、菊川市、藤枝市、静岡市、浜松市、富士市、掛川市、静岡市清水区で上映される模様です。炉心溶融、核燃料サイクル、避難民の声等、多方面から問題提起された2時間を超える力作です。

(注1) 地盤流動現象の1つで、傾斜や段差のある地形で液状化現象が起きた際に、いわゆる泥水状になった地盤が水平方向に移動する現象をいう。基礎岩盤である相良層が海側に傾斜していることにより、地盤は水平方向に大きく変位する。

(注2) 鋼管に継手を溶接し、横並びにつないだもの。

(注3) 安居山断層、大宮断層、芝川断層、入山断層、中山断層、入山瀬断層。

 

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