« 2015年3月 | トップページ | 2015年5月 »

2015年4月

2015年4月 3日 (金)

高レベル放射性廃棄物地層処分 日本の地層の現実

 「高レベル放射性廃棄物の最終処分場の適地は国内で7割に及ぶ」と、報道されました。地下に2000以上の活断層がある地震国、降雨量や地下水の多い日本で7割もの適地があるのだろうかと、疑問に思っていました。日本の地層はどの程度堅牢で安定しているのでしょうか。日本の地層と外国の地層を比べて、上記の報道内容が本当に正しいのか検証してみます。

 まず、国内の地層年代と地層の堅牢さを以下明らかにします。

       年代                               割合   性質     

堆積岩   第四紀        0~170万年            19.3%  砂、礫、泥等からなり未固結

       第三紀        170~6500万年        19.4%   砂岩、泥岩、礫岩、凝灰岩等、十分に固結していない

       中生代~古生代  6500万年~5.75億年    23.7%  砂岩、泥岩、礫岩、凝灰岩等、地下変動で亀裂多い

深成岩   新第三紀       170~2400万年          1%   十分堅硬だが亀裂多い

        古第三紀~古生代  2400万年~5.75億年   10.6%  十分堅硬だが亀裂多い

火山岩   第四紀        0~170万年          8.8%  十分堅硬だが亀裂多い

        第三紀~中生代  170万年~2.47億年     17%  十分堅硬だが亀裂多い  

 日本の地層の特徴を簡単に記します。

・ マグマが地表にあらわれ、急冷されたことによる亀裂。

・ 地殻変動の応力による亀裂。

・ 降雨量が多く、地下水が豊富。

・ 亀裂により生じた空間には地下水が浸透。

・ 現在も数年から数10年毎に地殻変動あり。

 このように、未固結若しくは十分に固結していない地層は、全土の38%にも及んでいます。残りは固結しているものの、亀裂の多い地層となっています。これが日本の地層の現状です。

 さて、最終処分場の候補にあがっている外国の地層はどうなっているのでしょうか。

<フィンランド オンカロ(洞窟)>

・ ユーラヨキ地区が最終処分場。

・ 選定条件として①地質上問題がない、②地震が少ない、③活断層がない、④人口密度が小さい、⑤原発から遠くない、⑥自然保護地区でない、等を基準とした。

・ 岩盤は約18億年前、地下深くでマグマがゆっくり冷却固結したもので、堅硬な花崗岩や変成岩からなる。広い範囲にわたって亀裂のない大きな岩の塊がある。

・ トンネルを蜂の巣状に掘るため地下岩盤が弱くなり、ゆくゆくは放射能が地下水に漏れ出る可能性があるという懸念もある。

<スウェーデン>

・ 使用済燃料の最終処分地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定。

・ 10億年以上前に形成された岩盤。岩盤は乾燥しており亀裂が少ない。

<スイス グリムゼル>

・ グリムゼル試験所は、スイスにおける放射性廃棄物処理・処分に関する試験を行うため1984年に建設が着手された。岩石の亀裂が極めて少なく、10~30mの間にわずかな亀裂があるのみ。数億年間地殻変動がない。

・ スイス南部に分布する結晶質岩は、造山運動が激しい(年間約1mm の隆起速度)ことから、長期にわたり地質環境条件(水理条件、地化学条件)が大きく変化する可能性があり、初期の段階で除外。

・ スイス中部に存在が推定される結晶質岩の分布は1000m 以深とされ、工学的に処分場を建設することが困難と判断されるため除外。

・ スイス北部のドイツにつながるエリアには、花崗岩を中心とした結晶質岩が広く分布しており、その生成年代から推定して長期の安定性が確保できる見通しが得られることから、北部エリアを対象岩種として1985年に選定。

・ 低・中レベル放射性廃棄物の処分については、ベーレンベルクにおいて、処分場建設計画があったものの、1995年5月、2001年9月に実施された2度にわたる州民投票で受け入れが否決されている。

・ 2008年11月にスイス北部および中部の6地域が低レベル廃棄物処分場の候補地域として、スイス北部の3地域が高レベル廃棄物処分場の候補地域として選定されている。

<ドイツ ゴアレーベン>

・ 地下900mのところに岩塩層が堆積しており、厚さは300mにも達する。岩塩層は2億5000年前に形成された。

・ 海水が蒸発してできた岩塩層には地下水がないと言われていたが、別の岩塩層で地下水の流入が見つかる。

・ 唯一の候補地として30年以上調査してきたが、白紙撤回となる。

<アメリカ ユッカマウンテン>

・ 降水量の少ない砂漠地帯にあり、凝灰岩からなる地層であることにより、この地が1987年に高レベル放射性廃棄物処分場の唯一の候補地と決定された。

・ 火山噴火の可能性もあり、地元住民やネバダ州議会の反対が強くなり政治問題化し、2009年に中止を決定。

 上に見るように、日本の岩盤は亀裂が多く、現在も数年から数10年毎に地殻変動があります。降水量が多い上に、亀裂もあり、地下水が浸透すれば、放射性物質は漏れ出ます。

 一方、フィンランド、スウェーデン、ドイツなどの処分場は、数億年以上の強固な岩盤であり、亀裂も少ない。それでも、ドイツの処分場の候補地は白紙撤回されました。当然、地震もなく、地殻変動もなく、圧縮応力を受けることによる亀裂も生じていません。

 誰の目にも、日本には処分場に適した地層などないと写るでしょう。ところが、国は処分場ありきで突き進んでいます。理想論を言えば、処分場など建設できないからです。炭素鋼でできたオーバーパック(厚さ19cm)や締め固めた粘土である緩衝材(70cm)からなる人工バリアで水の侵入を防ぐなど」と専門家は真顔で発言しています(ものぐさ 地層処分 楠戸伊緒里氏の資料より)。それで、10万年もの間、放射能漏れを防ぐことができるなどと、誰が信じるでしょう。噓でも言い続ければ、国民を洗脳できると考えているのでしょうか。

 安倍首相は、日本の原発は世界一安全だなどと噓を言いました。世界一安全な処分場だから、東京から離れた山奥に作りましょうなどと言い出すでしょう。首相は50年もすれば墓の中です。1万年後の処分場がどうなっていても痛くも痒くもないのです。

2015年4月15日 (水)

高浜原発再稼動差し止めの仮処分決定 基準地震動を否定

 4/14、関電・高浜原発3、4号機の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、福井地裁(樋口英明裁判長)は、再稼働を認めない決定をしました。

 裁判要旨を見てみましょう。

1 基準地震動700ガルを超える地震

 全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発で5回にわたり基準地震動を超える地震が平成17年度以降10年足らずの間に到来している。福島原発事故が起きたあとであるにも関わらず、地震動の評価については従来方式を踏襲しているに過ぎない。

 算出された基準地震動は、平均的な数値であり、起こりえる最大の地震動を示すものではない。基準地震動は実績のみならず理論面でも信頼性を失っている(入倉教授)。関連記事(ものぐさ 新規制基準の基準地震動は旧態依然)、(ものぐさ 長沢教授 大甘な大飯・高浜・川内原発の基準地震動)。 

 基準地震動を超える地震が到来すれば、炉心損傷に至る危険性が認められる。

2 補強工事もなく、基準地震動700ガルへの引き上げ

 運転開始時の基準地震動は370ガル。基本的な耐震補強工事がなされないまま、550ガル、700ガルへと引き上げられた。このように数値だけ引き上げるという対応は社会的に許されない。基準地震動以下の地震でも冷却機能喪失による重大な事故が発生し得るというのであれば、万が一という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険がある。

3 規制基準に適合しても原発の安全性は確保されない

 原発の脆弱性は、①基準地震動の策定基準を見直し、大幅に引き上げ、根本的な耐震工事を実施する、②外部電源と主給水の耐震性をSクラスとする、③使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む、④使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性をSクラスとすることでしか解消できない。

 また、使用済み核燃料プールに係る計測装置はSクラスでもなく、免震重要棟の設置についても規制対象である。

 専門化が警鐘を鳴らしていた基準地震動のいい加減さを、司法も認めたのです。

 裁判要旨の中に入倉教授自身の過去の発言が引用されています。同教授は「原発の基準地震動は地震の平均像ではなく、個別の敷地の不確かさも考慮して設定されており、決定で『実績や理論の面で信頼性を失っている』としているのは誤った理解だ」と、4/14のNHK Webで弁明していますが、同教授は次の発言を過去にしています(松山地裁準備書面19より)。どちらが本当なのでしょうか。

 <入倉教授の発言>

 基準地震動は計算で出た一番大きな揺れのように思われるが、そうではない。私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、これは平均像を求めるもの。平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。余裕をもって決めたほうが安心だが、再稼動については経営判断だ。

 入倉教授自身が、基準地震動は平均像であり、いい加減なものだ、と述べているのです。

 菅官房長官は記者会見で、「独立した原子力規制委員会が十分に時間をかけて世界で最も厳しいと言われる新基準に適合するかどうかという判断をしたものであり、政府としてはそれを尊重して再稼働を進めていくという方針は変わらない」と述べています。

 「世界で最も厳しい安全基準」について、全くの噓であることは(ものぐさ 日本の原発技術は世界一安全 ?)でも明らかです。

 原子力規制委員会が策定した規制基準は再稼動を前提としたもので、住民の安全を守るためのものではないことが良くわかります。同委員長は、「この基準に適合しても放射能漏れの危険性はあり、絶対安全であることにはならない」と、述べています。

 安全審査に合格した高浜原発についての緊急性を認め、福井地裁は審理を分離し、仮処分の決定をしました。大飯原発については審理が続いています。ご安心ください。

 川内原発の運転差し止め訴訟に対して、4/22に判決が出ます。注目していきましょう。規制基準が否定されたのです。安全でもない原発の再稼動を認めるのですか。世論を高めて、裁判所に無言の圧力をかけていかなければなりません。

2015年4月19日 (日)

高浜原発の運転差し止めに対する原子力規制委員長の反論

 福井地裁(樋口英明裁判長)が、関電・高浜原発3、4号機の運転差し止め決定をしたことに対して、4/15に原子力規制委員長は早速反論しました。

 判決要旨と同委員長の反論を吟味してみます。

(判決要旨) 新規制基準に求められる合理性とは、万が一にも深刻な災害を引き起こすことがないよう、厳格な基準でなくてはならない。しかるに新規制基準は、緩やかで、これに適合しても原発の安全性は確保されていない。免震重要棟は規制の対象にならず、猶予期間がある。地震が人間の計画・意図とは全く無関係に起こるものである以上、かような規制方法に合理性はない。

(同委員長) 福島原発事故の教訓を踏まえ、かなり厳しい規制基準を要求した。「合理性に欠け、緩やかに過ぎる」ことはない。「絶対安全」を求めると、結局は安全神話に陥る。世界と比較しても、最も厳しいレベルというのは国際的に認知されている。

(ものぐさ) 基本的な耐震補強工事もなく、基準地震動は370ガル、550ガル、700ガルへと引き上げられました。このように数値だけ引き上げるという対応は社会的に許されるものではありません。「かなり厳しい基準だ」と反論しても、再稼動ありきの基準でしかありません。厳密な安全性を求めると再稼動できなくなってしまうからです。甘い基準であり、住民の安全を守るレベルではありません。また、何十年も前に建設された第二世代の原発のどこを見て世界レベルと言うのでしょうか。同委員長は「基準に適合しても、放射能が漏れる可能性がある」と述べ、絶対安全であるとは言っていません。絶対安全でもなく、一旦放射能が漏れれば、広範囲にわたって、長期間帰ることもできず、故郷を失うことになるのです。こんな代物を許せるでしょうか。

(判決要旨) 基本的な耐震補強工事もなく、基準地震動は370ガル、550ガル、700ガルへと引き上げられた。このように数値だけ引き上げるという対応は社会的に許されるものではない。

(規制庁) 高浜の審査で3回の現地調査と約70回の会合を経て、震源モデルや地震発生層の検討など事細かく分析してきた。関電側の甘い地震想定を何度も突き返し、基準地震動を大幅に引き上げた経緯もある。高浜原発の合格は科学技術的に適正に判断した。

(ものぐさ) 会合の回数ではありません。甘い規制基準の中で、猿芝居を何回やっても意味がありません。極めて情緒的な発言で、これこそ科学的とは言えません。

(判決要旨) 使用済み核燃料は、格納容器のような堅固な施設に閉じ込められていない。使用済み核燃料プールの給水設備、非常用発電機の耐震性はBクラスだ。

(同委員長) 給水設備、非常用発電機はSクラスだ。

(ものぐさ) Sクラスだ、Bクラスだなど重箱の隅を突っ突くような反論です。福島原発事故では、使用済み核燃料プールが破壊して冷却水が失われるのではとの切迫した危機感がありました。冷却水が喪失すれば、崩壊熱により核燃料は溶融し、想像を絶する量の放射能が首都圏を襲う可能性もありました。SとかBとか言う前に、使用済み核燃料プールは危険極まりないものだと認識すべきである。

 最後に、判決要旨が指摘する重要な事項についての反論がなされていません。反論する余地がないからでしょう。以下、列挙します。

・ 算出された基準地震動は、平均的な数値であり、起こりえる最大の地震動を示すものではない(入倉教授)。基準地震動は実績のみならず理論面でも信頼性を失っている。

・ 耐震補強工事もなく、何ゆえ基準地震動は700ガルまで増加するのか。

・ 使用済み核燃料プールの危険性への反論がない。

・ 全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発で5回にわたり基準地震動を超える地震が平成17年度以降10年足らずの間に到来している。福島原発事故が起きたあとであるにも関わらず、地震動の評価については従来方式を踏襲しているに過ぎない。

・ 免震重要棟は規制の対象にならず、猶予期間がある。地震は何時来るか分からない。これでよいのか。

 同委員長等は、情緒的に言っているだけで、科学的かつ論理的に反論しているわけはありません。細かいところだけ突っ突いているだけです。全くお粗末な反論です。

 新聞「みんなの広場」の投稿文に、「政府の下請けともいえる原子力規制基準が安全ななどと本当に信じているものがいるのだろうか」との発言がありました。まさに、その通りだと思います。

 判決は「規制基準に適合しても原発の安全性は確保されない」と断じています(ものぐさ 高浜原発再稼動差し止めの仮処分決定 基準地震動を否定)。

« 2015年3月 | トップページ | 2015年5月 »