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2015年11月

2015年11月 2日 (月)

原発回帰論者は福島原発事故を忘れたか

 川内原発が再稼動し、伊方原発は原子力規制委員会の審査に合格し、来年にも再稼動する模様です。

 原発の再稼動を願う識者等の主張に共通して見えるのは、以下の点を全く考慮もせず、無視していることです。重要な問題点に直視しようともしないで、原発回帰の論陣を張ったところで、何ら説得力はありません。再稼動への屁理屈にしか聞こえません。

・ 福島原発の事故では、いまだ10万人の人が故郷を離れ、避難者は慣れない地域での生活を余儀なくしている。故郷には帰れない。

・ 40年で廃炉作業が終了するとはとても思えない。英国のトロースフィニッド原発は1991年に運転停止し、93年からの廃炉作業は90年を要すると試算されている。事故を起こしていない原発でも、この有様だ。小出氏は石棺方式しかないとも言っている(ものぐさ 小出裕章 講演会)。

・ トイレなきマンションとも言われている原発システム。使用済み核燃料を10万年以上にもわたって管理することなど、地震国日本では不可能(ものぐさ 高レベル放射性廃棄物地層処分 日本の地層の現実)。核燃料サイクルは不可能であり、使用済み核燃料は増え続ける。

・ M9クラスの地震や直下型地震も増えていくであろう。このような地震動が発生した場合、規制基準は原発を守ってくれるだろうか。原子力規制委員長自身も「規制基準合格は原発の安全性を担保するものではない」と言っている。

・ 地方自治体に丸投げされた「緊急避難計画」は実効性があるだろうか。不十分であることを周辺住民は知っている。絵に描いた餅だ。

 被曝者の精神的苦しみを他人事と考えている。急性被曝、晩発性被曝による住民の死亡を国や経済界は止むを得ないと考えているようだ。彼らが如何に狭い視野でしか原発問題を見ていないことが分かる。被曝し、古里やコミュニティを失うと言う現実を前にすれば、彼らの発言はとるに足らないたわ言にしか聞こえない。福島原発事故が教えてくれたこのような教訓を踏まえ、識者の主張に反論します。

1 脱原発は原子力分野での国際的立場や発言力を失う。

(反論) 脱原発が日本の発信力を失うなど笑止千万だ。今、福島原発の最優先事項は廃炉だ。全国で老朽化した原発の廃炉も進む。廃炉により獲得した技術で発信力や技術力は更に増していく。現時点で、全世界の原発は439基もある。技術提供を伴った原発の世界輸出も日本の立場を強くする。

2 日本の原発会社は、アメリカ企業を買収し世界の原子力産業の中核になった。日米は「原発共同体」だ。脱原発すれば、アメリカは「核の傘」で日本を守ってくれない。

(反論) 「原発共同体」であるから地震国日本でも原発を進めなければならないなど、論理の飛躍だ。地震の発生しない国々への原発輸出で「原発共同体」の役割は十分果たせる。アメリカは自らの国益のために軍事行動をとるのであって、日本を守ることに戦略的価値がない場合は、あっさりと日本を捨てる可能性もある。「原発共同体」でアメリカに貸しを作るなど小っさな考えは捨て、あらゆる外交的戦略でもって日本の重要性、必要性をアメリカに見せ付けることが重要だ。

3 核兵器は軍事利用だが、原発は平和利用だ。原子力の平和利用を先導する。

(反論) 事故が起きれば原発は放射能を撒き散らす。人が住めなくなることを福島原発事故は教えてくれた。まさに戦争で廃墟になったに等しい。これでも平和利用と言うのだろうか。原爆材料であるプルトニウムは核兵器そのものだ。いざとなったら「いつでも核兵器を作ることができるのだ」と言う核抑止力を、原発推進論者は主張している。まさに、核兵器と原発は同意語だ。

4 中国、台湾、韓国等、30年には100基以上の原発が日本を取り巻く。事故が起きれば、日本への影響は必至だ。原発の技術基盤が原発の安全性を高める。

(反論) 日本で最も多く稼動している原発は「第2世代」と言われるものだ。世界でもこの「第2世代」が主流を占めている。この「第2世代」の原発を「第4世代」の原発に作り変えて安全性を高めることなど費用面から不可能だ。やれるのは小手先のことであり、安全性を高めるのは程遠い。「第2世代」の原発が事故を起こせば、日本にも放射能が降り注ぐ。地震等の自然災害の下では、人間の考えた原発の安全性など吹けば飛ぶようなものだ。世界のほとんどが地震地帯を避けて原発を建設している。安全性を高めるには、地震地帯を避けて建設するしか方法はない。

5 「原発の制御は不能だ」と言う意見もあるが、困難を乗り越えてきたからこそ、今の科学技術がある。

 この科学技術は原子力技術を指すのだろうか。一般的に言われる科学技術の向上は、失敗を徹底的に見直し、改善していくことから始まる。40年もやってきた挙句、福島原発事故だ。それまでも、全国すべての原発でトラブルが発生し、大事故も起きている。そして福島原発の事故原因を突き詰めないまま再稼動を進めている。徹底的に見直しもせず、責任も取らずに物事がウヤムヤに進んでいくのが、この国の体質だ。日本の当事者は原発を進める資格を持っていない。自然災害の脅威を直視すれば、制御可能な原発を作ることなどできない。この発言は不遜であり、傲慢だ。科学技術が進歩しても、飛行機は墜落し化学工場は爆発する。これが許容されるのは、被害が限定的であることがその理由だ。原発事故のように10~100万人が被曝・死亡し、故郷を失うことはない。せいぜい数100人程度だ。

6 原発を再稼動しないから、電気代が高くなる。

(反論) 原発コストは高いと言うことが、今回の事故で明らかになった。経産省は英国で導入予定の「差額決済契約」と呼ばれる仕組みを導入しようとしている。廃炉費用や使用済み核燃料の処分費用を発電コストに含めると、電気料金が高くなるので、その部分を電気料金や税金で補おうとするものだ。原発による電気料金が安いのなら、こんな制度は不要である。国自身が原発による電気代は高いと言っているのだ。原発コストは高く、不合理だ。だったら、発電コストの安くなる発電方式やシステムはどうあるべきか。このように思考を変更すべきである。

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