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2015年12月18日 (金)

原発推進派の原発アンケート

 原発推進派と思われるA教授のアンケート調査が原発周辺市町の住民に対して実施されました。アンケートの目的は「浜岡原発近隣の住民が政府の環境・エネルギーに関する目標をどのように評価し、原発の稼働に関してどのような意見を持っているのか調査すること」だと、冒頭で述べています。回答者には抽選で100人に3000円のQUOカードを進呈するとも言っています。

 アンケートの内容に違和感を覚えたので、同氏の原発政策に対する立ち位置をネット上で調べてみました。

 「原発なしで電力は賄えるは本当か」というタイトルで同氏は、広瀬隆氏の「原発全廃でも電力不足は起きない」に反論しています。「原発がないと電気が足りなくなる」という電力各社のキャンペーンの欺瞞性が社会的に認知され始めたことに対する原発推進派の焦りに満ちた反論ではないかとネットは指摘しています。

 同氏が原発推進派であることを念頭に読み進めていくと、アンケートがある意図を持って構成されているように感じます。脱原発の世論を薄め、近隣住民を原発推進に誘導しようとしているように感じます。同氏は「アンケート結果によれば、原発再稼働もやむを得ないとの意見も少しずつではあるが増えてきている」と学会や雑誌で発表したいのでしょう。

 アンケート用紙のポスティング費用や30万円ものQUOカード費用はどこから出ているのでしょうか。中電でしょうか。政府の研究補助金でしょうか。余計なことが頭をよぎります。

 さて、本題に進みましょう。

1 アンケートの目的の1つは、政府の環境・エネルギーに関する近隣住民の考えを聞くこと。

(反論) 全国民の意識を調査すべきです。なぜ近隣の住民なのでしょうか。

2 日本で使われているエネルギーは、使えばなくなる化石燃料が90%以上で、ほとんど輸入に頼っている。

(反論) 何十年も前に石油は40年で枯渇すると言われました。石油が枯渇して今困っていますか。今後も心配ないでしょう。シェールオイルやシェールガスの産出により、石油価格は下落しています。現在、ガソリンは1リットル当たり120円です。小出氏はウランの埋蔵量は石油の数分の1、石炭の数十分の1しかないと言っています。使用済み核燃料を再処理して使う核燃料サイクルは破綻しているので、ウランを再利用したプルトニウムによる発電は不可能です。真っ先にウランが枯渇します。

3 石油の85%、天然ガスの30%はホルムズ海峡を経由している。万が一の時には通れなくなる可能性がある。 

(反論) 総電力の石油に占める割合は15%程度です。石油はそのほとんどが発電以外に使われているのです。石油がなくなった場合、プラスチック製品や化学繊維などが作れなくなったり、自動車や飛行機がストップします。そのほうが日本にとっては遥かに深刻です。安保法制の議論でも明らかなようにホルムズ海峡の緊迫感はなくなり、集団的自衛権の根拠となったホルムズ海峡における機雷掃海は非現実的であることが明らかになりました。原発再稼働に誘導したいがためのもっともらしい指摘です。

4 地球温暖化の原因の1つは化石燃料の燃焼にある。海水温や海水面の上昇、氷河の融解をもたらす。

(反論) 温暖化問題が言われるが、死の灰と二酸化炭素と比べてどちらが悪いか。二酸化炭素は必要なもの。原発建設、採掘でも二酸化炭素は排出する。死の灰が無毒化するには100万年かかる。二酸化炭素は温暖化の原因ではない。二酸化炭素は1946年から増加し、温暖化は1800年から始まっている。小出氏はこのように述べています(ものぐさ 小出裕章 講演会)。温暖化の原因の1つとして、太陽の活動が原因だと主張する学者もいます。原発が稼働しないから温暖化が進んでいると言っているように聞こえます。世界における二酸化炭素の排出量は、中国が27.8%、アメリカが15.8%、ロシアが12.4%、韓国が11.5%、次が日本の9.6%です。どの国の二酸化炭素の排出量を厳しくすればよいのか一目瞭然です。温暖化の1側面しか見せないで原発再稼働容認に誘導しています。

5 原発の稼働がゼロになり火力発電の稼働が増加している。これにより年間3.4兆円の燃料費が流出している。4人家族の電気代は年間11万円増加している。家庭用の電気料金は平均25%上昇している。

(反論) 3.4兆円の半分は円安と原油価格の増加である。円安はアベノミクスにより起きたものであり、政府の政策によるものです。アベノミクスによる円安誘導が国富の流出を起こしている。有識者はこのように述べています。

6 再生エネルギーの固定価格買い取り制度により、家庭の月額平均電気料金は470円増加している。電気料金の支払い増額を抑制するよう、審議会が始まった。太陽光発電や風力発電は天候により発電量が変動する。電力供給を安定化するため、火力発電を稼働している。

(反論) 電気料金の支払い増額を抑制させるために、再生可能エネルギーを抑制しなければならないと言っているように聞こえます。ドイツは2050年までにエネルギー消費を2008年の半分に削減する一方、脱原子力とエネルギー転換を進めて、最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を60%(2012年時点の日本は1.6%)に引き上げることを目標としている。電力供給を安定化させるためには、全国規模の連系線の強化(ものぐさ 九州の風力発電等の潜在量)が不可欠ですが、これを強化しようという政府の姿勢は極めて後ろ向きです。

 原発が稼働すれば火力発電は稼働しないで済むのでしょうか。そんなことはありません。原発は一定の出力でしか運転できません。電力の需要に連動した運転はできないのです。そのため電力需要の少ない夜間には火力発電の出力を抑え、昼間には火力発電量を増やさなければなりません。

 以上みるように、①ホルムズ海峡が通れなくなれば石油の供給が途絶え、電気がストップすると暗示させ、②化石燃料は使えばなくなると言って、原発の優位性を暗示させ、③地球温暖化の原因は火力発電であると言い、④火力発電の焚き増しによる国富の流出は3.4兆円にもなると言い、⑤再生エネルギーにより電気料金は上昇し、⑥再生可能エネルギーは天候の変化により発電量が変動すると、同氏はストーリーを組み立てています。

 これを踏まえて、浜岡原発再稼働の是非を問うています。素直な人は、原発再稼働もやむを得ないかと、思ってしまいます。

 アンケートで同氏が言っている内容は一側面からのものでしかなく、他の学説なり、見解について言及していません。原発問題を問うのであれば、原発の負の側面になぜ触れないのでしょうか。

 福島原発事故で10万人以上が故郷を失い、浜岡原発ではM9の地震が予想され、使用済み核燃料の処分方法も定まらず、放射能の無毒化には100万年も要します。原発の是非を問うのであれば、このような負の側面にも言及しなければなりません。原発推進派によるアンケートそのものです。

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