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2016年2月

2016年2月 8日 (月)

原発と緊急事態条項

 2/2の報道に、2つの記事が掲載されていた。

 1つ目は、福島原発事故で生じた放射性廃棄物の処分問題である。環境省は宮城、茨城、栃木、群馬、千葉で指定廃棄物の処分場を作る方針であったが、地元の反対で現地調査にすら入れない。茨城県については処分場を建設せず、現場での分散保管継続となる見通しである。

 2つ目は、辺野古基地建設問題である。翁長知事は、国交相を相手取り、埋め立て承認取り消しの効力を執行停止とした国交相の決定の取り消しを求め、福岡高裁那覇支部に提訴した。

 ともに共通するのは、国が地元の意見を聞くことなしに、強権力をもって建設を推し進める点である。

 次に気がかりなのは、参院選後に行う憲法改正である。国民のアレルギーの少ないと思われる憲法98条と99条である。この憲法の改悪により、上記のような地元の反対により停滞している施設の建設が、緊急事態宣言により一気に進められてしまうのではないかと言う懸念である。緊急事態条項(自民改憲草案)のどこが問題なのか。

<98条 緊急事態の宣言>

1項 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

2項 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない

<第99条 緊急事態の効果>

1項 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

2項 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない

3項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他の機関の指示に従わなければならない。

4項 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

 原子力関連に対して怖いと思う事項は赤字で書いた部分である。法律で定める緊急事態に上記処分場、高レベル放射性廃棄物の処分場や辺野古基地建設も該当する可能性はないのであろうか。地震等による大規模な自然災害を口実にしたり拡大解釈をすれば、国にとって都合の悪いことは何でもできてしまように思う。該当すれば、内閣だけで法律と同一の効力を有する政令を制定し、地方自治体の長に対して必要な指示をし、国民を従わせることができる。本当に怖い憲法改悪である。

 有識者の懸念事項を列挙する。

・ 緊急事態条項は、憲法の例外体系を形づくって立憲主義を停止しようというものである。

・ ヒトラーのナチス政権は、全権委任法(授権法)を制定して、政府が立法権を乗っ取った。

・ 緊急事態条項は一時的にせよ、憲法で定める三権分立を停止して人権を制限するもの。基本的人権を過度に侵害する危険性もある。

・ テロや武力攻撃には、既に警察法や自衛隊法などに過剰ともいえる仕組みが存在し、対応は可能。例外的権限を憲法に導入すれば、誤用、乱用、悪用の危険が増してくる。憲法に緊急事態条項を入れる必要性は全くない。

・ 地震等による大規模な自然災害に必要とも言っているが、他国からの武力攻撃や内乱に対しても適用できる。災害をダシに憲法を改正するな。

・ 安倍首相は「多数の国が緊急事態条項を採用している」と言うが。他国にあるから日本も、というのは稚拙な議論。しかも各国の緊急事態条項は、権力者が暴走しないよう工夫されている、と指摘する。

・ 米国連邦憲法には緊急事態宣言条項はなく、憲法でない「国家緊急事態法」はある。英国には成文憲法はなく、憲法でない「緊急事態法」がある。独国や仏国には「内閣総理大臣は・・・・緊急事態の宣言を発することができる」、「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる・・・」等の条項はない。

・ 緊急事態が宣言されている間、衆議院は解散されない(99条の4項)。戒厳令を半永久的に敷くことも可能なのだ。

・ 99条3項は完ぺきな戒厳令である。

・ 緊急事態を宣言して、「災害復旧活動の混乱を招くような報道やデマに繋がる通信は規制する」ということで、報道については事前規制を、インターネットについては通信規制をして、違反者への罰則を定めてしまえば、原発事故は簡単に「なかった」ことにできる。

・ 国道は物資の輸送のために使用するから他の車両や人は一切通さない等の理由で、移転の自由を制限して、住民の避難を止めることだってできる。

 ヒトラーのナチス政権による全権委任法(授権法)を持ち出した野党議員に対して、首相は、極端な例えだと述べたが、国民が国を信頼していれば、このような議論は一笑に付されるであろう。しかし、今の与党議員が信頼できないからこそ、このような議論になるのだ。緊急事態条項の本質や具体例が何も説明されていない。

 先に成立した「安全保障関連法」は、成立半年前に、法案の具体例が見え、ほとんどの憲法学者が違憲であると発言し、国民の意識を大きく変えたが手遅れであった。今回の「緊急事態条項」についても上記に列挙したように大きな問題がある。憲法学者や弁護士は、「安全保障関連法」の二の舞にならないように、その問題点を国民に提示し、国民的な「反改憲」運動に結びつけてほしい。憲法違反の「安全保障関連法」を数の力で強行成立させてしまった安倍首相や立憲主義をないがしろにする人たちに「緊急事態条項」を作らせてはいけない。

2016年2月18日 (木)

浜岡原発訴訟 傍聴記 その17

 2/4、静岡地方裁判所で行なわれた浜岡原発訴訟の第22回口頭弁論を傍聴した。前回に続き18回目の傍聴となる。

 午前10時5分までに裁判所に集合し、行列に並ぶ。定員オーバーした場合には抽選。一般傍聴席40人程告に対し、希望者は16人程度。全員が入廷できた。

 向かって左に原告、右が被告(中電)。原告側23人程度、被告側15人程度、記者は5人。10時30分開廷。10時31分閉廷。

 原告、被告、裁判官からなる進行協議にj引き続き、記者会見が始る。

 5/19の訴訟で、映画「日本と原発 4年後  監督河合弁護士」の1時間短縮版が放映される予定だ。

<記者会見要旨>

・ 原発事故から5年がたつが、いまだ10万人が避難している。帰りたくても帰れない多くの人がいる。

・ 福井地裁は高浜3・4号機の再稼働を認めた。新規制基準をクリアしている原発は安全だとの立場に立つ。基準地震動が地震の平均像をもとにして策定されていることに裁判所は真摯に向き合っていない。本来なら予想される地震動の最大値で基準地震動を策定すべきである。基準地震動の算出方法は時間切れで作れず、どこまで厳しくするかは裁量次第だ。このように規制基準を作った専門家は言っている。

・ 合理的な避難計画の策定がないことを良しとする規制基準の欠陥について、福井地裁は全く考慮していない。司法は原発事故以前に戻ってしまった。

・ 浜岡原発1号機の着工は1971年。東海地震説があと5年早く言い出されていれば、着工は認められなかった。M9.6の巨大地震を想定しなければならないのに、中電は、独自の判断でM7の地震を想定すれば足りると言っている。

・ 2/3の防災訓練には300人が参加。道路の損壊は考慮されていない。

・ テロ対策が不備であるとする準備書面の提出を予定している。

・ 争点整理の図表を提出する目的は、原告/被告の争点を明確にして、判決に誤解が生じないようにするためだ。

・ 被告の争点整理の図表は公開されないが、原告のものは公開する予定。

次回    5/19 10時30分

次々回  7/21 10時30分

その次  10/11 10時30分

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