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2016年3月13日 (日)

福島原発事故後の裁判判決

 黒木亮著「法服の王国」は、最高裁を頂点とした司法システムの実態を炙りだしている。最高裁は政府、行政の意向を忖度し、高裁以下の裁判官は、最高裁の意向を忖度して判決を行っている。三権分立はどこにあるのか、絶望感さえ抱かざるを得ない。最高裁の意に沿わない判決を下した裁判官は左遷の憂き目を負わされる。上にへつらい立身出世をするのか、良心に従った真っ当な判決を行うのか、裁判の本質が問われている。

 福島原発事故後の裁判はどのように変化してきているのか、それぞれの判決要旨を比較する。四国電力伊方原発の最高裁判決(1992年)は、安全性の立証責任は国や電力会社にあり、その立証が不十分であれば運転してはならないとするものである。伊方判決の及ぼす影響はどの程度であろうか。

大飯原発3、4号機運転差止請求訴訟・・・再稼働を認めず

 2014.5.21、福井地裁・樋口英明裁判長は再稼働を認めないと決定。以下、要旨を列挙する(ものぐさ 司法が変わる 大飯原発原告勝訴 福井地裁 大飯原発運転差し止め訴訟 原告勝訴

・ ひとたび深刻な事故が起きれば多くの人の生命、身体や生活基盤に重大な被害を及ぼす。

・ 原発の稼動は経済的活動の自由に属するに過ぎず、人格権よりも劣位におかれるべきもの。

・ 原発技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは福島原発事故を通じて明らかになった。

・ ひとたび事故が発生した場合の権利侵害の度合・範囲が甚大であることに照らしても、司法判断を避ける理由は微塵も存在しない。

・ 司法は(人格権を根拠とした差し止め請求に関する)判断能力・適格を有する。

・ 冷却機能喪失による重大事故の生ずる危険は、万が一の危険という領域を遥かに超える現実的で切迫した危険である。

・ 地震大国日本において、基準地震動超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的な見通しに過ぎない。

・ 大飯原発から半径250km圏内に居住する者は、大飯原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的危険がある。

高浜原発3、4号機の運転差し止め仮処分訴訟・・・再稼働を認めず

 2015.4.14、福井地裁・樋口英明裁判長は再稼働を認めないと決定。以下、要旨を列挙する(ものぐさ 高浜原発再稼動差し止めの仮処分決定 基準地震動を否定)。

・ 平成17年度以降10年足らずの間に4つの原発で5回にわたり基準地震動を超える地震が到来している。算出された基準地震動は、平均的な数値であり、起こりえる最大の地震動を示すものではない。基準地震動は実績のみならず理論面でも信頼性を失っている。

・ 運転開始時の基準地震動は370ガル。基本的な耐震補強工事がなされないまま、550ガル、700ガルへと引き上げられた。このように数値だけ引き上げるという対応は社会的に許されない。

・ 規制基準に適合しても原発の安全性は確保されない。

川内原発運転差し止め仮処分訴訟・・・却下>

 2015.4.22、鹿児島地裁・前田郁勝裁判長は、最新の科学的知見に照らし、新規制基準に不合理な点はない、と却下。以下、要旨を列挙する。

・ 規制基準は最新の科学的知見及び安全目標に照らし、その内容に不合理な点は認められない。

・ 基準地震動の策定は、既往地震の観測記録を基礎とする平均像を用いたものとなっているが、地域的な傾向を考慮して平均像を用いた検討を行うことは相当。

・ 過去10年間でその当時の基準地震動を超過した地震が5例あるが、基準地震動超過地震が生じた原因とされる地域的な特性を考慮し、高度化されている。

・ 火砕流等の火山事象の影響を受ける可能性が十分に小さく、火山活動のモニタリングと兆候把握時の対応を条件付けている。

・ 原発からの距離に応じて区分された三つの地域に応じた避難行動が具体的に定められており、避難計画等は、一応の合理性、実効性を備えている。

高浜原発3・4号機の運転差し止め仮処分取り消し訴訟・・・仮処分決定取り消し

 2015.12.24、福井地裁・林潤裁判長は関電の申し立てた意義を認め、仮処分を取り消した。以下、要旨を列挙する。

・ 原子炉施設に絶対的安全性を想定することはできないが、福島原発事故の経験等も踏まえた現在の科学技術水準に照らし、原子炉施設の危険性が社会通念上無視し得る程度にまで管理されているか否かという観点から厳格に審理・判断すべきである。

・ 基準地震動は複数の手法を併用し、最新の科学的・技術的知見を踏まえ,不確かさを適切に考慮して評価している。専門的・技術的知見に基づき中立公正でその内容は合理的である。地盤構造等の調査は信頼性の高い計算手法を用い、かつ、断層の長さや深さを始めとする各種パラメータ等を保守的に設定することで、国際水準に照らしても保守的な評価を行っている。

・ 耐震安全性は基準地震動に対して相応の余裕を有している。

・ 使用済燃料を冷却する施設の耐震重要度分類がBクラスとされているが、代替的注水・冷却手段に高度の耐震安全性を要求することで使用済燃料の安全性を確保している。

・ テロ等の標的になっていることもうかがわれない。

・ ,津波については、専門的・技術的知見に基づき中立公正な立場で個別的かつ具体的に審査している。

大飯原発3・4号機の運転差し止め仮処分訴訟・・・却下

 2015.12.24、福井地裁・林潤裁判長は、大飯原発3、4号機は原子力規制委の審査に合格しておらず、再稼働が切迫していないため、差し止めの必要性はない、と却下。

高浜原発3、4号機の運転差し止め仮処分訴訟・・・再稼働を認めず

 2016.3.9、大津地裁・山本善彦裁判長は運転の停止を決定。以下、要旨を列挙する。

・ 原発の周辺で行った断層の調査は、周辺のすべてで徹底的に行われたわけではなく、地震の最大の揺れを評価する方法はサンプルが少なく科学的に異論のない方法と考えることはできない。

・ 福島の原発事故を踏まえた事故対策や津波対策、避難計画についても疑問が残る。

・ 住民の生命や財産が脅かされるおそれが高いにもかかわらず、安全性の確保について説明を尽くしていない。

・ 福島と同じような事故を防ぐためには、原因の究明を徹底的に行うことが不可欠だが、説明は不十分だ。

・ ディーゼル発電機や電源車などで十分か、社会一般の合意が形成されたとは言えない。

・ 使用済み燃料ピットが崩壊した際の対処策についても十分であると認められるだけの資料が提出されていない。

・ 原発の目の前が避難経路であり、被曝する可能性が非常に高い。

・ 国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要。避難計画を視野に入れた幅広い規制基準が望まれる。基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生している。

・ 万が一の事故発生時の責任は誰が負うのかを明瞭にするとともに、新規制基準を満たせば十分とするだけでなく、その外延を構成する避難計画を含んだ安全確保対策にも意を払う必要がある。

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